CRAに向いている人とはどんな人?未経験者のために1から解説

最近ではCRCの求人に加えてCRAの求人も活発化しているようで私のTwitterアカウントでも看護師さんを始め多くの治験業界に興味を持っている方にフォローされています。

今回は治験業界の中でもCRAについてどのような人が向いているかについてお話をしていきます。

この記事で分かること
CRAとはどのような立ち位置の仕事か
CRAに向いている人はどのような人か
どのような能力がCRAの仕事で活かせるか
のりすのりす

製薬メーカーで働いている現役の臨床開発職です。Twitterのフォロワーが3,000人を超えた辺りから未経験中途の方からのお問い合わせが相当増えました!

CRAとは?治験のお仕事での立ち位置とお仕事内容

この記事を読んでいるのは就活生の方か未経験から治験関連のお仕事に興味を持っている方が多いと思うので、まずは簡単にCRAというお仕事についてお話していきましょう。

治験業界の登場する職種の一例

治験業界は、大きく分けると治験依頼者側(製薬メーカー/医療機器メーカー側)と施設側(治験実施医療機関側)の2つに分けることが出来ます。

もちろん、実際には他にも色々あるのですが、あまり話しすぎると混乱してしまうのでまずは「2つに分けることができる」くらいでOKです。

そして、今回お話するCRAという職種は治験依頼者側(製薬メーカー側)の立場でお仕事をする職種です。

なので、主な勤務場所はオフィスになります(今は在宅でのお仕事も多いです)。

オフィス

医療職からの転職者も多いCRAですが、今まで病院で働いていたこともあってオフィスで仕事をするのが新鮮と話している方が多い印象ですね(まぁ、すぐに慣れてしまうのですが…笑)。

CRAの仕事はカレンダー通り土日祝日休みで夜勤も無いので、プライベートも充実させたいという看護師さんには特におすすめです。

CRAのお仕事内容

治験業界のことをあまり知らない方も多いと思うので、まずは「治験」についても触れておきます。

医薬品開発の大まかな流れ

ザックリと治験とは医薬品や医療機器の有効性や安全性をヒトで確かめる臨床試験のことを指しています。

治験が終わって治験薬の有効性と安全性が確認できたら上市されるという流れですね。

この医薬品開発の流れの中の「治験」の領域でお仕事をするのがCRAになります。

そして、CRAの主な役割は以下の2つになります。

CRAの役割
治験実施施設で治験が適切に行われているかを確認すること。
治験が治験実施施設で円滑に行われるようマネジメント・対応をする。

つまり、CRAのお仕事内容は「治験実施施設で治験が適切に行われているかを確認するお仕事」と「治験が治験実施施設で円滑に行われるようマネジメント・対応をするお仕事」になります。

順番にゆっくり説明をしていきますね。

治験実施施設で治験が適切に行われているかを確認すること

治験は、法律等の決まりやプロトコールという試験計画が規定されている資料に記載されている通り治験がしっかりと行われているかを確認します。

このことを「モニタリング」と呼ぶのですが、CRAはモニタリングをする人という意味で「モニター」とも呼ばれています。

治験毎に作成されているプロトコールや手順書の内容がしっかりと守られて治験が行われているかを医療機関に行って確認をします。

なので、医療機関への出張もそれなりにあるという特徴があります。

詳細は、CRAの実際のスケジュールを大公開!解説付きで徹底解説!の記事でも書いていますが、忙しさに波があるのも特徴ですね。

CRAは色々な領域の案件を担当することになりますが、経験したことが無い領域であっても過度に心配し過ぎる必要はありません。

プロトコールの内容はもちろん読み込む必要がありますが、【新人CRA/CRCにおすすめ】仕事に役立つ本をまとめてみたで紹介しているくらいの知識があればそれ程仕事に困ってしまうということは無いです。

この点は、前職での知識が活かせる看護師さんや臨床検査技師さんのような中途の方は強いですね。

治験が治験実施施設で円滑に行われるようマネジメント・対応をする

CRAの主なお仕事は、上で紹介をした「モニタリング」なのですが、治験が施設で円滑に行われるようマネジメントするというのも大きな役割の1つです。

治験の主な流れとCRAとしてのお仕事をまとめると下のようになります。

治験の大まかな流れとCRAの業務この図を見てお気付きですかね?CRAはモニタリング以外にも治験に関連する色々な対応をしていますよね。

CRAが対応する範囲は会社によって若干変わってきますが、大まかには上の図のようなイメージを持ってもらえれば大きくは外れません。

モニタリングをするために施設に行くので出張も多のですが、意外に内勤業務(雑務)も多かったりします。

その他、施設で順調に症例が組み入れられているかの進捗確認や症例組み入れ促進などもお仕事の範囲内なので、取り扱う業務の幅は結構幅広かったりもします。

ただ、業務が幅広い分キャリアパスは広がるので他にやりたいことが見つかればキャリアチェンジというのもしやすい部類の職種ですよ。

詳しくは【CRAのキャリアパスは意外に広い!?】CRAのキャリアプランについてパターン別にご紹介でもまとめています。

CRAの立ち位置

CRAの立ち位置

CRAは、主にCRCさんと連携を取ってお仕事をすることになります。

CRAが治験で最も関わる時間が長いのはCRCさんになりますので、CRCさんとのコミュニケーションは非常に重要です。

ちなみに、CRCさんは医療機関側の方で被験者さん(患者さん)と接しますが、CRAは製薬メーカー側の人なので被験者さんと顔を合わせることはありません。

なので、患者さんとのコミュニケーションをしたいという方はCRCさんをおすすめします。

CROとは?

CRAという職種のお話をしましたが、実は治験の業界にはCROという言葉も存在します。

CROとはContract Research Organizationの略で「開発業務受託機関」という会社のカテゴリーのことです。つまり、「銀行」や「証券会社」とかのようなものですね。

製薬メーカーや医療機器メーカーにもCRAという職種はあるのですが、メーカーは新卒や経験者の中途の募集であることがほとんどで、未経験中途の場合はCROのCRAを目指すというのが一般的です。

では、CROとはどのような会社なのか?図で見てみましょう。

CROとSMOについて

先ほど依頼者側(製薬メーカー側)には、CRAやデータマネジメントや統計解析などの職種があると書きましたが、それらの業務を受託しているのがCROになります。

「CRA」という職種が同じであっても「製薬メーカー/医療機器メーカーのCRA」と「CROのCRA」というのがあるということですね。ややこしいですよね。

更にCROとは別にSMOというのもあったりします。

CROは製薬メーカー/医療機器メーカーから業務を受託していましたが、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)は医療機関から業務を受託している会社になります。

こちらも「医療機関のCRC(院内CRC)」と「SMOのCRC」というのがあります。

ポイント
SMOとは医療機関からCRC業務や治験事務局業務を受託している会社。
CROとはメーカーからCRA業務などを受託している会社。
立場は違うが、主な業務内容は大体同じ。
未経験中途の場合は、CROかSMOへの転職ことが多い。

CRAに向いている人とはどんな人?

CRAに向いている人とはどんな人?

CRAは、業務内容が多岐に渡っていることやお仕事上で接するのが社内外どちらもあることから多くの能力が求められます。

正確に言うと、多くの能力を持っていなくてもCRAの仕事をやろうと思えばできるかもしれません。ですが、CRAになってから潰れてしまったり後悔してしまったりすることになるので大まかにでもどのような人が向いているかを把握しておくことが重要だと思います。

ちなみに、CRAになってから慣れで習得するものもあるので全てに当てはまらなくても「私はCRAには向いていない人なんだ」と思わなくても大丈夫ですよ。

気遣いができる人

CRAが主にコンタクトを取るのがCRCさんになります。そして、そのCRCさんはJCOGのCRC活動調査レポートによると91.7%が女性であると報告されています。

つまり、CRCさんは圧倒的に女性が多いということですね(ちなみにCRAは男女比が大体5:5くらいです)。

ですので、特に男性はあまり気遣いが出来ず細かいことの積み重ねで信用を落としてしまうことには注意しておきたいところです。

前に私が開催した現役CRA、CRCさんとのお社会イベントでも「気遣いができる人」というのはCRAには重要な要素だよねというお話をしたことがあります。
参考>>「できるCRA」を目指すには?現役CRCさんとポイントを考えてみる

ただ、新人のうちはどうしても気が行き届かないこともあるかと思います。

重要なのは、しっかりと被験者さんのこと、CRCさんのこと、先生のこと、など相手の立場に立って考えようとするかどうかです。

失敗しても次に直せば良いのです。「気遣い?何それ?おいしいの?」というスタンスではなく謙虚な姿勢でいれば大丈夫。

外勤が苦でない人

CRAは、内勤業務も結構ありますが外勤業務も多いです。

最近はコロナ禍で以前よりは施設訪問は減っていますが、コロナ禍が終わればまた施設訪問が増加してくるかと思います。

新人のうちは遠方の施設の担当になることはあまり多くないと思いますが、仕事に慣れ始めると北海道や九州など遠方の施設を担当することになります。

新幹線や飛行機での長時間の移動などもCRAの場合は頻繁にあるので、その辺りが苦でない方が向いています。

私は飛行機に乗ってマイルが貯まったり、ご当地の美味しいごはんを食べるのが好きだったり、色々なホテルに泊まるのが好きだったり…その辺りを楽しんでいたので、遠方の外勤も苦ではなかったですね。

外勤から帰ってくる新幹線ではお酒を飲んで帰る…という方も結構多いですよ!(私は疲れて寝ていることが多いかな…)

論理的な思考ができる人

CRAは、ただ単純に治験実施医療機関に行って機械的に資料をチェックすれば良いというわけではありません。

治験のデータとして報告されていることが、論理的にも成り立っているかのチェックが必要です。

例えば、ある有害事象を収集する時のお話をしましょう。

治験のデータとして収集されていたもの
・有害事象名:感冒
・発現日:2022年8月5日
・転帰日:2022年8月9日
・転帰:回復
・治験薬との関連性:関連なし
・重篤度:非重篤
カルテ等に書いてあった情報
・被験者さんが2022年8月5日に来院。
・診察時に2日前から喉の痛みと発熱が続いていると訴えがあり、感冒と診断。PL配合顆粒を処方。
・感冒はウイルス感染が原因であり治験薬とは関連が無いと判断。
・2022年8月11日に来院。8月9日に喉の痛みと発熱は完全に収まって薬も飲み切った。

CRAは、治験のデータとして収集されたものが原資料(カルテや看護記録など)の情報と齟齬が無いかを確認していきます。

上の例の場合、治験のデータとして報告されているのは「発現日:2022年8月5日」ですが、カルテの情報では診察日(8月5日)の2日前から感冒の症状が出ているため、発現日は「2022年8月3日」とするのが正しいです。

これはまだ単純で分かりやすい例ですが、このような確認をしていかなければいけないため、「ん?これは何かおかしいのでは?」と気が付けるような人でなければ見落としてしまいます。

この感覚はCRAもそうなのですが、CRCさんも同じです。

ただ、この感覚は慣れで培われていくものなので、色々なパターンを経験しながら覚えていくのでも良いと思います。

重要なのは、脳死状態ではなくしっかりと考えながら資料を確認していくことです!

CRAのお仕事で活かされる能力

CRAのお仕事で活かされる能力

CRAは未経験の中途を募集することもあるわけですが、未経験の方に求められているのは「医療現場で働いていた経験」や「医学的な知識」だと思っています。

CRAは医療機関に訪問をしてお仕事をしたり、医療機関側の方とコミュニケーションを取ることが多いのですが、現場のことを知らないと非効率的な提案をしてしまったり、現場のことを全く考えない発言をしてしまったりが起こってしまいます。

ですが、医療機関で働いたことがある人であれば相手の立場に立って考えやすいこともあり、その経験が求められています。

また、「医学的な知識」と書きましたが、これは凄い詳しくなくても大丈夫です(お仕事でどのようなことをやっていたのか、どのような領域をやっていたのか等が何となく言える程度で大丈夫な印象です)。

ニュアンス的には「医学的なお話にも抵抗感が無いこと」という方がより正確かもしれません。

CRAは治験についての仕事であるため、医学的なお話も仕事では多く扱います。

医療職の場合、医学的なテーマを扱うという意味ではCRAと同じなので、みなさんが経験した範囲の医学的な知識もお仕事で役に立ちます。

例えば、看護さんであれば担当をしていた領域の疾患についての知識が役に立つこともありますし、臨床検査技師さんであれば治験で測定する臨床検査値や心電図などの結果が意味することを解釈するのに経験が活かせます。

まとめ

最近では看護師さんや臨床検査技師さんで治験の業界に興味がある方からのフォローもとても増えてきました。

ご相談のDMもよく頂くのですが、CRAのお話をすると年収面のことや働き方(CRAはフレックスが大半、土日祝日はお休み)が気になる方が多い印象でした。

一方で、病院で働いていたので「会社で働くこと」に不安を持っている方も多いようでした。

治験業界への転職を考えている方は、良い面や悪い面を総合的に考えてみて決めることをおすすめします。

CRAはCRCの転職関連の情報は以下の記事に集約しているので転職を選択肢に入れている方は一読してみて下さい!