治験コーディネーターとは何をする人?仕事内容や適性をご紹介!

治験業界へは、看護師や薬剤師や臨床検査技師からの転職が多いのですが、治験のお仕事についてあまり詳しく知らないという方も多いはず。

今回の記事では、「治験コーディネーターとは?」をテーマにお仕事内容や適性について紹介をしていきます。

この記事で分かること
治験コーディネーターのお仕事内容
治験コーディネーターの適性(向いている人)
未経験でも治験コーディネーターを目指せるか
のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterのフォロワー3,000人超え。誰でも分かりやすいように解説をしていくよ!

治験コーディネーターとは?

治験コーディネーターとは?

治験コーディネーター(CRCClinical Research Coordinator)とは、医療機関で実施されている治験が円滑に進むように院内の調整を行うお仕事をする人です。

お仕事では医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師や医事課など様々な部門の方々と関わるため、医療現場での実務経験がある中途の方が多いのが特徴です。

その他、日本SMO協会のデータによると治験コーディネーターの約91%は女性と報告されているように圧倒的に女性が多い職種であることも特徴です。

治験の現場で職種を簡易的に表すと以下のようになります。

治験コーディネータと臨床開発モニター

治験に関わる職種はもちろん、もっとたくさんあるのですが、あまりごちゃごちゃ書いても紛らわしくなってしまうので、ここではあえて一部の職種しか書いていません。

治験のお仕事をイメージしてもらう時には、「医療機関側の人たち」と「製薬メーカー側の人たち」に分かれていることを知っていると分かりやすいです。

そして、治験コーディネーター(業界では「CRC(シーアールシー)」と略語で呼ばれることが多いです)は、「医療機関側の人たち」に分類されます。

ですので、主な勤務場所は医療機関になります。

治験コーディネーターにも種類がある

治験コーディネーターにも種類がある

実は「治験コーディネーター」と言っても、「病院に所属している治験コーディネーター」と「会社に所属している治験コーディネーター」の2種類があります。

少しややこしいですね。図で見てみましょう。

院内CRCとSMOのCRC

大学病院や総合病院のような規模が大きい施設の場合、大抵は院内の治験コーディネーターがいるのですが、治験の件数が多くリソース不足となることも多いため、治験コーディネーターの業務を外部の会社へ委託していることがあります。

その委託先の会社を治験施設支援機関(SMOSite Management Organization)と言います。

株式会社EP綜合やシミックヘルスケア・インスティテュート株式会社あたりが大手SMOにあたり、求人も積極的に行っているため未経験で治験コーディネーターを目指す方は一度は見かけることになると思います。

病院に所属している治験コーディネーター(院内CRC)

病院に所属している治験コーディネーターは雇用先が病院になります。そのため、院内のスタッフという位置付けです。

私が関わってきた院内の治験コーディネーターはほとんどが院内の別の部署(薬剤部や看護部など)から異動をしてきた方でした。

治験コーディネーターとして一般の求人で募集をかけることもありますが、数としてはさほど多くは無い印象です。

院内のスタッフであるため、医師や薬剤師とも連携が取りやすいことが特徴です。

会社に所属している治験コーディネーター(SMO・CRC)

一方で、院内のスタッフではなく治験施設支援機関(SMO)に所属する場合は一般企業への就職になるので会社員ということになります。

SMOのCRCの場合、院内のCRCとは違い、担当するエリアの医療機関のCRC業務をするため、1つの施設だけではなく色々な施設を回ることがあります。

一般的には、自分がメイン担当となっている施設の業務が主となりますが、サブ担当という形で他の医療機関のCRCとしても業務をすることになります。

また、大学病院や総合病院のように大きな施設の場合は院内CRCもいるのですが、一部の治験を院内CRCが担当をし、その他の部分をSMOのCRCが担当をするというシチュエーションもよくあります。

大学病院や総合病院とは対照的にクリニックでは院内CRCがいることはほぼ無いので、SMOのCRCのみがCRC業務にあたることになります。

院内CRCとは違いSMO・CRCは積極的に転職者を募集しているため、未経験の中途から治験コーディネーターを目指す場合にはSMOのCRCを目指すことが一般的です。

治験コーディネーターの仕事内容

治験コーディネーターの仕事内容

治験コーディネーター(CRC)には、「院内CRC」と「SMO・CRC」の2種類があるということをお話しました。

細かい部分を見ると両者で仕事の内容は若干異なりますが、「治験コーディネーター」としての主な業務についてはほとんど変わりがありません。

全体像としては以下のような感じです。

治験での登場人物の簡易相関図②

ここでは治験コーディネーターの代表的な業務を紹介していきます。

治験がルール通りに行われるようにコントロールする

治験は、法律や治験実施計画書で決められているルールに従って行われます。

特に治験実施計画書は治験毎に異なり、決められているルールも異なります。

例えば、被験者さんの来院タイミングや検査の細かい手順などが挙げられます。

治験を担当する医師ももちろん治験の法律や治験実施計画書の内容を把握しておく必要があるのですが、現実では細かい部分のルールまで全て把握している先生は非常に珍しいです。

そのため、治験コーディネーターが治験実施計画書などを読み込み医師のフォローをすることになります。

ただし、医学的な判断については当然医師にしてもらう必要があるため、治験コーディネーターが医師の判断を確認し、その判断に従い治験の手順を回していきます。

治験を行うための院内の調整

治験によっては治験薬の調製が入ったり、医療機器を使用したり、治験独特の費用が発生したりということがあります。

つまり、薬剤部、看護部、SPD、医事課など色々な部門に話を通しておかないとのちのちトラブルに発展してしまうことになります。

当然慣れるまでの間は先輩がフォローをしてくれますが、多くの部門との連携を取って対応の調整をすることが求められます。

候補患者への治験説明と被験者のフォロー

治験の候補患者を探すというカルテスクリーニングや候補患者来た際に治験の同意の補助説明を行うのも治験コーディネーターのお仕事です。

治験関連のお仕事は治験コーディネーター以外にもあるのですが、治験コーディネーターは被験者さんとの距離が最も近い職種になります。

治験に参加をしてからも被験者さんからの悩みを聞いたり、来院時には一緒に診察室に入ったりもするので被験者さんから感謝の言葉を貰えることもあったりします。

この点は、他の治験関連のお仕事では経験出来ないことなので治験コーディネーターのやりがいとも言えますよね。

臨床開発モニター(CRA)の対応

治験関連のお仕事の1つに臨床開発モニター(CRA)という職種があります。

このCRAは、製薬メーカー側の人なのですが、主に治験が医療機関で適切に行われているかを確認するお仕事をしています。

CRAは一定期間(例えば2ヶ月に1回など)の頻度で、医療機関に訪問をしてカルテの閲覧や治験関連で収集されたデータについて確認をします。

イメージとしてはプチ監査みたいなものですね(監査ほど堅苦しいものではないと思って下さい)。

治験コーディネーターは、CRAが訪問をしてきた際の疑義事項に回答をしたり、医師との面会のアポイントを調整したりします。

治験コーディネーターが製薬メーカー側の人と最も関わるのがこのCRAという職種の人で、治験を進めていくうえで何か分からないことがあればこのCRAに問い合わせて疑問を解消していくことになります。

治験コーディネーターについての動画

治験コーディネーターについて厚生労働省が動画を作成しているのでご紹介しておきます。

厚生労働省の動画なので少しお堅いですが、何となくでもイメージとして参考になるかもしれません。

治験コーディネーターの適性がある人(向いている人)

治験コーディネーターの適性がある人(向いている人)

治験を円滑に行うためには院内の様々な部門との連携が必要不可欠であるため、治験コーディネーターには各部門間の調整能力が求められます。

院内において治験はどうしても「普段の業務のプラスアルファの業務」と捉えられがちで、ルーティンの作業から外れたことをしなければいけないことも多いため対応を面倒くさがられることも多いでしょう。

治験コーディネーターとしては、如何にそれぞれの立場の方のことを考えちょうど良い妥協点を見つけ出していくかが重要なので、異なる立場の方の意見をまとめることが出来る方は治験コーディネーターに向いていると言えます。

その他、治験コーディネーターはカルテを閲覧したり被験者さんの臨床検査値を見たりと医学的なデータと触れる機会も多いです。

ルーティンをこなすというよりは、様々な状況に合わせて適切なアクションを取ることが求められるため、自らもしっかりと考えて行動できる能力も治験コーディネーターとしては備えておきたい能力です。

未経験からの治験コーディネーター

未経験から治験コーディネーターを目指している方のお話を聞く機会も多くあるので、みなさんが思っていることや悩まれていることで特に多いものを紹介してみようと思います。

仕事に着いていけるかが心配

ここまで治験コーディネーターの業務や適性についてお話をしてきましたが、もしかすると「難しいでしょ…私には出来ないと思う…」と心配になられた方もいるかもしれません。

私自身、多くの治験コーディネーターの方々とお話をさせてもらっていますが、未経験で入られたばかりの頃はみなさん同じように心配されています。

しかし、仕事というのは不思議なもので始めはそのように思っていても仕事を始めてみると案外できてしまってりするのですよね。

冒頭でもお話をした通り、治験コーディネーターはそのほとんどが未経験の中途の方が転職されてきていますので、未経験であることで負い目を感じる必要はありません。

この記事を読まれている方には看護師さんや薬剤師さんや臨床検査技師さんなどもいるかと思いますが、みなさんのお仕事も新人から見たら「私にはできない…」と思われていることも多いはずです。

年収面の心配

仕事の内容も大事ですが、年収面についても大事ですよね。

地域にもよりますが、治験コーディネーターの平均年収は423.4万円(厚生労働省HPより)であるため、看護師さんや薬剤師さんから転職をする場合、年収が下がってしまう方も多いかと思います。

ただ、夜勤が無かったり土日休みであったり有休が比較的取りやすいというメリットもあるため、ワークライフバランスにどこまで重点を置くかによって考え方は変わってくるかと思います。

年収面を重視するのであれば、治験業界のお仕事の中では、30代後半で約600~700万円程になる臨床開発モニター(CRA)がおすすめです。

ただ、CRAに向いている人とはどんな人?未経験者のために1から解説の記事でもお話している通り、CRAはCRCと働き方が異なり、全国に外勤をするスタイルであるため、体力面では治験コーディネーターよりも少し大変かもしれません。

治験コーディネーターは将来性がある職業なのか

医薬品に関しては、薬価の改定もありなかなか厳しい状況ですが、治験は医薬品だけではなく医療機器や再生医療等製品についても行われています。

その他、臨床研究というものもあり治験コーディネーターの経験があれば色々と応用が利くのが強いところ。

ただ、SMOに所属している治験コーディネーターについては、SMOの経営状況に振り回されてしまうこともあるかもしれません。

詳細は【明暗分かれる】治験コーディネーター(CRC)の将来性を分かりやすく解説の記事にまとめていますが、いつでも身動きが出来るように治験コーディネーターになってからはなるべく広い経験を積んでおく方が将来的な選択肢も増えるでしょう。

具体的には先ほどお話した医療機器や再生医療等製品の経験などが今後強いと思います。

そもそも未経験から治験コーディネーターを目指せるのか

先ほども少し触れましたが、治験コーディネーターは中途で入っている方が非常に多いので未経験からでも十分に目指せます。

とはいえ、適当に転職活動をしていてはさすがに厳しいでしょう。

治験コーディネーターになるための面接では、「治験に関する基礎的な知識がしっかりあるか」や「治験コーディネーターの仕事を理解しているか」などが確認されたり、ビジネスマナーについても見られています。

職務経歴書もしっかりと書く必要があるので、信頼できる転職エージェントにお願いすることが重要です。

私のブログでも治験に関する基礎的な知識や業務内容についてはかなり網羅されているはずですので、エージェントに登録をしてブログを読んでもらえれば十分対策可能です。

わざわざお金を出して有料の情報を見る必要はなくて無料で全然対策できてしまいます。

まとめ

今回は治験コーディネーターのお仕事内容と適性についてお話をしてきました。

治験業界への転職に興味がある方でも何から始めたら良いのか分からないという方も多いかと思います。

治験業界のお仕事であるCRCやCRAの情報については以下の記事で網羅的にまとめてありますので、良い点や悪い点をしっかりと知るために是非見てみて下さいね。