CRAのキャリアプランとは?パターン別で徹底解説

CRAには色々な要素の能力が求められますが、その分キャリアパスも多岐に渡り、将来的に自分が製薬会社(あるいはCRO)でどのような姿になっていたいかを予めイメージしておくことが重要です。

将来のキャリアパスをイメージすることで、就活の時はもちろん、転職においてもどの会社、どの職種(あるいは役職)にフォーカスをすれば良いのかが見えてきます。

今回は、臨床開発職(特にCRA)のキャリアパスについてご紹介をしていきます。

経験は計画的に効率的に積み重ねることが重要

本来であれば、自分が思い描いているゴールに向けて、必要な経験を全て学んで経験を積み重ねていくのが良いのですが、残念ながら時間は有限なのでそうもいかないのが現状です。

そうなると、限られた時間の中で自分の思い描いているキャリアプランに向かって効率的なキャリアパスを構築していく必要が出てきます。

CRA(臨床開発モニター)にはどのようなキャリアパスがあり、どのようなキャリアプランが考えられるのかを掘り下げて一緒に考えていきたいと思います。

また、私が描いているキャリアパスについては以下の記事にまとめてありますので、ご興味がある方はどうぞ!

みなさんの思い描いているゴールは?

就活生の方で本記事を読まれている方は、本記事を読み進めていただく前に何となくでも良いので、ご自身が今考えているゴールを想像してみて下さい。

そうすることで、この後の内容がすんなりと頭に入ってきやすくなると思いますよ。

将来どのようになっていたいですか?
生涯現役!CRAのエキスパートになる!
経験を積んでマネジメントをやりたい!
CDPやプロトコルの作成にも関わりたい!
経営に関わるような仕事をしたい!
etc…

まだ今の時点では何も思い浮かばないという方はそのまま読み進めていただいて結構です。

ちなみに私がゴールとして設定しているのは「治験に対するネガティブな印象を払拭することに貢献できる開発パーソンになりたい!」です。

治験に対してネガティブな印象がもっと少なくなればより治験も迅速化でき、更に医療リテラシーも向上することで各々が医療について適切に向き合うことができるだろうという思いでいます。

就活生のみなさんにとっては、ご自身が製薬メーカーやCROを目指す最も根幹の部分になりますので、就活対策のためにも最終的には軸をしっかりと固めて就活に挑むことをおすすめします。

具体例で考えるキャリアプラン

具体例で考えるキャリアプラン

就活をしている頃やCRAとして新人の頃は医薬品開発業界全体のことをあまり知らないのも当然です。

ここでは、なるべくイメージしやすいようにしっかりと具体的な例を出しながらお話を進めていきますので、先ほどイメージしていただいた皆さんの「思い描いているゴール」をイメージしながら読んでみて下さい。

今回は、臨床開発職の中でもCRA職にフォーカスをして考えていきます。

CRAから全くの職種へ行くパターンもあるのですが(後の章で出てきます)、まずはそれよりも割合が多い、CRAとしての仕事の延長線上のお話からしていきます。

1つ前の章で紹介した、「将来どのようになっていたいですか?」の中で例示したものでキャリアプランの例をご紹介していきますね。

生涯現役!CRAのエキスパートになる!

ゴリゴリの生涯現役プレイヤーということですね。

マネジメントには興味は無いけど、CRAとしての仕事が好きで、その道を究めていきたいというパターンになります。

会社によっては、「最終的にはCRAを管理する側の立場になりなさい」というスタンスもありますが、最近ではCRAをそのまま生涯現役として続ける道とプロジェクトを管理する立場という道を選択できる会社も増えてきました。

生涯現役でCRAを続けたいと考えている方は、会社側もそのスタンスを認めている会社を選ぶと良いでしょう。

内資系最大手CROのシミックもどちらのスタンスで進めるか社員の意向を聞くスタンスと聞いています。

また、CRAのエキスパートを目指す場合は、転職を有利に進められるように幅広い経験を積んでおくことをおすすめします。

一般的にCRAの経験として着目されているポイントをいくつかまとめてみます。

これらはCRAの転職の際にもよく見られているポイントになります。

CRAの経験とは?
国際共同治験のモニタリング経験があるか?
経験した試験数は?
担当していた施設数、症例数は?
担当していた開発相は?
大学病院など大規模な施設の担当経験があるか?
オンコロジー領域のモニタリング経験はあるか?
モニタリングリーダーとしてチームを取りまとめた経験はあるか?
治験を立上げ~クローズまで経験したことがあるか?
英語のモニタリング報告書の作成経験はあるか?
監査対応の経験はあるか?
使用したことのあるシステム(モニタリング報告書作成ツール、EDCの種類)は?

もちろん、他にもポイントはあるのですが、大まかなところでは上記のような項目となります。

ですので、CRAとしてスペシャリストを目指す場合には、上記の項目を経験として内容を充実させていくことになります。

出来ることが多ければ、転職時も有利でしょうし、年収交渉時にも影響してくることもあります。

”CRAとしての自分の市場価値を高める”という観点で考えるなら、上記にまとめてあるような経験値を高めておくことが大切です。

CRAとしての業務に集中したい場合はCROがおすすめ

CRAの仕事に集中をしたいと考えているのであれば、製薬メーカーのCRAよりもCROのCRAの方がおすすめです。

というのも、製薬メーカーのCRAの場合は、純粋なCRAとしての業務以外にも様々な雑務をこなさなければいけないこともあるためです。

また、製薬メーカーのCRAの場合は、所属している製薬メーカーの医薬品開発の経験に限定されますが、CROの場合は製薬メーカーも疾患領域も限定されませんので、経験の幅広さという観点ではCROのCRAの方が広いと言えるでしょう。

CRAとしての純粋な業務(主にモニタリング)以外にも、医薬品開発に関わるその他の仕事にも触れてみたいという考えであれば、CROよりも製薬メーカーのCRAの方がチャンスはあります。

また、製薬メーカーの場合は他部署に異動となる確率がCROよりも高いですので、その点でもCRAの業務に集中したい方はCROの方が良いと言えます。

製薬メーカーで生涯現役のCRAでいたい場合は注意が必要

製薬メーカーのCRAの魅力は、CROよりも治験薬についての情報量が多いことが1つとして挙げられます。

その他、CROよりもCRA以外の業務も振られることが多く、色々な仕事に触れてみたいと考える方は製薬メーカーのCRAに向いています。

また、製薬メーカーの場合は将来的にCROのマネジメントをする側に回ることも多い為、現場での経験を積んだ後、マネジメントを経験してみたい方にも向いていると言えます。

ただし、「生涯現役CRAでいたい!」という場合には少し注意が必要かもしれません。

現在の製薬業界の状況を見ると、毎年の薬価改定などが重しとなり、日本市場の魅力が減ってしまっており、将来的に日本がグローバル試験から排除される日も来るかもしれないと業界内で話題になっています。

外資系製薬メーカーを中心にCRAのリソース削減も場合によってはあり得るので、いざという時に備えてCRA以外の職種に異動になった場合の身の振り方も考えておくことが重要です。

経験を積んでリーダー(管理職)をやりたい!

こちらのゴールを目指すには、新卒でCRAになり、CRAとしての経験を積みながらその経験を活かしてリーダーになる必要があります。
このパターンを目指すのは王道で、最も多くの方が目指しているゴールなのではないかと思います。

また、一言で「リーダー」といっても、色々なパターンがあるのです。。

リーダーの種類
グループリーダー(GL)
モニタリングリーダー(ML)
サブリーダー(SL)
プロジェクトリーダー(PL)
ラインマネージャー(LM)
プロジェクトマネージャー(PM)

また、厄介なことに製薬メーカーやCRO各社でポジションの呼称が違うことも多く、慣れないうちは結構混乱してしまうかもしれません(例えば、PLのポジションは会社によってはCOL:Clinical Operation Leaderと呼ばれているなど…)。

呼称が若干異なりはしますが、概ね以下のようなイメージでいれば大きくは外れないはずです(説明の簡略化のため、細かい部分は若干はしょっています)。

各役職のマネジメント範囲

それぞれの役職の色とマネジメントする範囲の色を表してみました。

マネジメント範囲も会社によって若干違うこともありますので、なんとなくこんな感じなんだなぁとくらいに思っていてください。

では、1つずつ簡単に紹介をしていきます。

グループリーダー(GL)

新卒からCRAとしての経験を積み重ね、5年目程になると段々とGLを任される人が出てきます。

グループに所属するCRAは、1~4年目程となり、自らも施設を担当しながら自分のグループのCRAの指導にもあたります。

規模が小さいプロジェクトの場合は、GLがいなくてCRA、SL、PLという組み合わせになったりします。

また、「チームリーダー(TL)」と呼んでいる会社もあるようです。

モニタリングリーダー(ML)

GLの中で一番経験がある人やSLと兼任してなるパターンが比較的多く見られる印象です。

プロジェクト内のモニタリング関連のマネジメントをする立場であり、しばしばCRAが作成するモニタリング報告書の一次チェックを業務として任されることがあります。

サブリーダー(SL)

PLの補佐的な立場になります。

経験でいうと7年目以降のCRAが担当する印象です。

マネジメント範囲はプロジェクト全体に及ぶので、モニタリングのみならずプロジェクト運営全体について改善案などを提案できるレベルの実力が求められます。

ここまで来ると転職する際などに「PLの補佐としてSLの経験があります」と言えるようになり、先方からも評価されることがあります。

プロジェクトリーダー(PL)

その名の通り、プロジェクト全体をマネジメントする立場の役職になります。

プロジェクト運営に責任を持つ立場になるので、経験も10年以上の方が多く、様々な能力が求められます。

よく「PLにはどうしたらなれるのか?」と質問を受けますが、個人的にはGL、ML、SLと着実にステップアップし、それぞれのステップでしっかりと評価された人がPLのポジションに付いているのがほとんどの印象です。

会社によっては、早期からPLを任される事例も知っています。

ここまで来ると、CRAのキャリアとしてはかなりのプラスポイントとなってきますし、人によってはゴール地点になることもあります。

プロジェクトのマネジメントの他にCROの場合は、案件を取りに行くためにコンペに駆り出されることも出てきます。

CRAから見た”できるPL”は、依頼者(メーカー)としっかりと交渉してCRAにかかる負担を軽減することができる人、会社から見た”できるPL”は、チームの営業利益を確保して案件を獲得できる提案力とプレゼン力を持っている人と私は思っています。

ラインマネージャー(LM)

ラインマネージャーは外資独特の役割になります。一部内資系CROにもこの役職はありますが、内資よりも外資の方がLMという役職があることが多いです。

役割としては、プロジェクト内のみではなく、様々なプロジェクトに所属するCRAをマネジメントすることでのCRAの質の向上を目指すというものになります。

色々なプロジェクトのCRAを見ていますが、それぞれのプロジェクトに深く関わっていないことも多く、プロジェクト内の事情はSLやPLの方が把握していることになります。

あくまで”CRAとしての質の向上”を目指すので、それぞれのプロジェクトについては浅く広く知っている印象です。

経験値としては、様々ですが、早くて5年目以降のCRAのステップアップ先になるイメージです。

プロジェクトマネージャー(PM)

会社の中のプロジェクトを組織している各部門間の調整をする役割になります。

会社の経営にも影響するレベルのマネジメントになるので、CROにおいてはマネジメントの終着地点と言っても過言ではないでしょう。

プロジェクトマネージャーは、色々な部門の調整役になりますので、良い仕事をするには幅広い知識と経験が求められます。

バックグラウンドは様々な印象ですが、モニタリング経験者の方が多い印象で、CROの場合は製薬メーカーからの転職者も所属していることがよくあります。

別職種へのキャリアチェンジ

CRAから別職種へのキャリアチェンジをされる方も多く、CRAはキャリアチェンジという観点から見ても将来的な選択の幅は広い職種です。

ちなみに、私の周りでは産休明けでCRA→QCになられた方や、CRA→PV、CRA→MSLというパターンが比較的多いのかなという印象です。

また、CRA時代に仲が良かった同僚は薬事職や事業開発に転職をした方もいたのでCRAからのキャリアの広がりはそこからも広いということが分かりますね。

しかも、結構「CRAをやっていてその時の経験が生きた!」という方もいて、ネガティブな意見の方が少ない印象なのも◎。

この辺りは、周りにどのような属性の人が多いかによるので色々な方の意見を聞いて見る方が参考になります。

Twitter上で界隈の方がキャリアチェンジについてお話しているものがあったのでご紹介しますね。


いつもお世話になっているMJさんの素晴らしいまとめ!

「上市前」と「上市後」に分けて図式化してくれているので、治験に関わるお仕事なのか、既承認薬についてのお仕事なのかが分かりやすくまとまっています。

一般的には、「上市後」に属するグループへのキャリアチェンジは「上市前」と比較すると数は少ないことが多い印象ですが、これもまた年ごとのトレンドにもよるので、何とも言えないところですかね。

MJさんのTweetへのリプも凄く参考になるので、是非見てみて下さい!


続いて、我らがエンターテイナー・一途さんのTweet!

一途さんのまとめでは、太線>実線>破線の順にキャリアチェンジしている人が多いという人数的な情報も入っていますね。

CRAから伸びている線を見てみると8本もあるので、やはりキャリアチェンジ先については豊富であることが分かります。

もちろん、線が伸びていない職種に行った事例も知っていますが(例えば、薬事など)、私の感覚でもやはりかなり少なめですので、イメージ通りの図でした。

私のイメージもMJさんや一途さんの図とほぼ一致していますので、恐らく業界内のイメージも概ねこのような感じかと思っています。

まとめ

今回はCRAのキャリアについて考えていきました。

日本の治験は特に迅速化・効率化が求められており、RWD/RWEに基づいた薬事承認やDCTやRemote Monitoringの普及などによりCRAの数が今後減少することも考えられます。

しかし、本記事でもお話をした通り、CRAからのキャリアチェンジ先は豊富にあるのでCRAになって将来的に待った行くところがなくて困ってしまう…という事態にはあまりならないのかなと思っています。

CRA一筋でお仕事をされるのももちろん良いのですが、「もしCRAではないとしたら」のパターンも考えておくといざという時に機動的に動けると思うのでおすすめです!