
薬剤師から治験業界への転職を考えている方で、臨床開発モニター(CRA)のことを調べている方も多いかと思います。
今回はCRA経験者として薬剤師からCRAへの転職について色々とご紹介をしていこうと思います。
●CRAとしての働き方とはどのようなものか。
●薬剤師の知識や経験はCRAでも活かせるのか。
治験業界でかれこれ10年以上働いていまのりす
治験業界のお仕事
治験業界への転職を考え始めたばかりの方は、そもそも治験業界の基礎的なところから知りたいという方もいるのではないでしょうか。
治験業界について全く知らない方でも分かるようにご紹介をしていきます。
ただ、いきなり治験業界全体を説明してしまうと訳が分からなくなってしまうと思うので、「未経験から治験業界へ転職する」というシチュエーションでお話を進めていきます。
未経験から治験業界へ転職する時のメインの転職先は、臨床開発モニター(CRA)か治験コーディネーター(CRC)になります。
ざっくり分けると、製薬メーカー側の立場で仕事をするのが臨床開発モニター(CRA)、医療機関側の立場で仕事をするのが治験コーディネーター(CRC)です。
ですので、それぞれが働く主な職場は以下のようになります。
主にオフィス(リモートの場合は家)で勤務。施設に出張もある。
主に施設で勤務。出張は少なく、基本的には所属する支店の近くでの勤務になる。
治験コーディネーターは、主に施設での勤務になるので中途の転職の場合は看護師さんや臨床検査技師さんの割合が非常に多いです。
薬剤師さんはというと治験コーディネーターの場合は、4.6%程と少ないですよね。
割合的には調剤薬局の薬剤師さんの転職が多いので、「病院内で働く」というよりも「会社に所属してオフィスで働く」という方がイメージしやすいとお話される方もいました。
ちなみに、臨床開発モニター(CRA)に未経験で転職される方は私の体感では、「薬剤師>MR>看護師>臨床検査技師」のような感じです。
その他、治験コーディネーターは女性の割合が非常に多い(8割以上)ですが、臨床開発モニターの場合は男女が大体同じくらいという会社が多いです。
臨床開発モニター(CRA)のお仕事
臨床開発モニター(CRA)のお仕事内容は、大まかには以下の2つになります。
●治験が治験実施施設で円滑に行われるようマネジメント・対応をする。
そして、もう少し具体的な業務を書き出してみると以下のようになります。
CRAは、治験がプロトコールやGCPという治験の規制を遵守して施設で適切に実施されているかを確認していくモニタリングが主なお仕事となります。
つまり、治験のデータとして施設から報告されたデータの品質を確認するようなお仕事ということですね。
ただ、「モニタリングが主なお仕事」と書きましたが、実は内勤業務も地味に多かったりします。
出張がとても詰まっている時は、週1ほどのペースで北海道や九州や大阪などに飛び回るということもありますが、それ以外の時はオフィスなどで報告書を書いていたり、治験関連の資料を作成していたりなどの内勤をしています。
CRAのお仕事の詳細についてはCRAに向いている人とはどんな人?未経験者のために1から解説の記事にもまとめてありますので、そちらも見ていただければと思います。
また、未経験からCRAになるにはCROという会社に転職するパターンがほとんどになります。
製薬メーカーはCROへ、医療機関はSMOへ、それぞれ業務委託をしている都合上、CROにはCRAが数多く在籍しており、SMOにはCRCが数多く在籍しています。
未経験からいきなり製薬メーカーへ転職するというパターンはほぼ皆無ですので、CROのCRAとしてキャリアをスタートすることが一般的です。
臨床開発モニター(CRA)を目指す薬剤師さんが見ているポイント
私のTwitterアカウントに、CRAを目指す薬剤師さんからのご連絡をいただくことがあります。
薬剤師さんからの転職で色々相談に乗ってきましたが、みなさんが気にされていたポイントを少しまとめてみたいと思います。
労働環境や勤務地
CRAは、土日祝日休みのフレックスタイム制で有休の取得もかなりしやすいことから労働環境が引っ掛かる方は少ない印象です。
ただ、CROは東京や大阪など都心にあることがほとんどですので、地方の調剤薬局の薬剤師さんの場合は通勤できる範囲内に引っ越しが必要になることもあります。
一方で、治験コーディネーターの場合は全国各地に支店があったり、地域密着型のSMOがあったりしますので、地元で働ける可能性が高いです。
その他、調剤薬局の場合は狭いコミュニティーで仕事をするため、人間関係にうんざりしているというお話や立ち仕事が多くて結構大変など、色々なお話を聞きます。
その辺りは、CRCよりもCRAの方がストレスの感じ方が少ないかなという印象です。
未経験から治験業界への転職を考える時に候補に挙がってくる治験コーディネーター(CRC)。薬剤師や看護師や臨床検査技師から治験コーディネーターを目指す方も多くいます。 今回は薬剤師から治験コーディネーターを目指す時に知って …
年収面
厚生労働省のデータによると、薬剤師の東京の平均年収は594.3万円でCRAの東京の平均年収は512.5万円になります。
薬剤師の場合、開業する方もいるのでそのような方たちが平均年収を押し上げているという要因がある一方で、CRAの場合は開業がなく純粋なサラリーマンとしての年収となります。
CRAの場合は、チラホラと年収1,000万円クラスの求人が出ることもあることや製薬会社へのキャリアアップで年収が上がる方もいるので年収的なデメリットはほぼありません。
一方で、CRCの東京の平均年収は440.1万円ですので年収面を考慮してCRAを選択する薬剤師さんも多く見てきました。
治験業界の職種の中では未経験からの転職も多い治験コーディネーター(CRC)。治験業界のお仕事は一体どのくらい年収が貰えるのか気になる方も多いと思います。 今回は、治験コーディネーター(CRC)からスタートして年収1000 …
薬剤師としての経験が活かせるか
やはり6年制の薬学部を出て薬剤師免許がありながら、企業に就職することについて抵抗を感じるという方もいました。家族など周りからの理解が得られないという方もいましたね。
ただ、この後の項目でしっかりと紹介をしますが、治験業界のお仕事は薬剤師としての経験もしっかりと活かすことができますので、今までの経験や知識は決して無駄にはなりません。
また、CROの新卒入社は半分以上が薬学部出身者という会社も多いので、同じような境遇の方も社内に多くいるはずです。
CRAとして薬剤師の経験が活かされる場面
ここからはCRAの実際のお仕事を例に出しながら、薬剤師の経験や知識がどのような場面で活かされるかを具体的にお話していきたいと思います。
治験薬の作用機序の理解
CRAは治験を開始する時には施設で治験薬の作用機序をお話する場面があります。
例えば、タケキャブを開発する試験であった場合、作用機序や治験薬の特徴を説明する時にはタケプロンとの比較をしながらお話をした方が先生には伝わりやすいです。
「PPIとP-CABの違いは?」、「遺伝子多型は?」、「夜間の胃酸分泌抑制は?」などなど…
既存の薬剤についての知識がある場合、その薬剤と比較してどのような臨床的メリットがあるのかを示すことが説得力のある治験の説明ができるのです。
もちろん、全ての既存の薬について作用機序を含めて詳しい訳では無いと思います。
ただ、そのような場合でも「調べて理解する力」は薬剤師以外の方と比較すると差が付きますので、薬剤師としての知識や経験が活かされます。
より実践的な内容に踏み込める
調剤薬局の場合、患者さんのカルテや臨床検査値の結果などまでじっくり見る機会は無いかと思います。
一方で、CRAは治験に登録された被験者さんの適格性を確認するために電子カルテや臨床検査値などを閲覧し、治験に適格な症例であるかを確認する作業があります。
その際には、薬学部で学んだ臨床検査値の知識やその他医学的な知識が役に立ちます。
また、例えば以下のようなシチュエーションの場合、「ん?おかしいぞ」と気が付くことが出来るのも薬剤師としての経験や知識が活かされる場面です。
イメージがしやすいように簡単な具体例を見ていきましょう。
・重篤な心疾患系の合併症がある患者はNG
→薬剤師としての経験があれば「変形性膝関節症」がある患者の場合、将来的にNSAIDsが継続的に処方される可能性について考えることができる。CRAとしても、カルテに記載されている変形性膝関節症の程度を確認し、今後NSAIDsの継続投与が計画されていないかを確認しなければいけない。
→「重篤な心疾患系の合併症がある患者はNG」という規定があるため、要確認。
「アミサリン錠」と聞いて不整脈をすぐに連想できるのは薬剤師の経験があったからこそで、薬剤師のバックグラウンドが無いCRAの場合は薬剤をしっかりと1つ1つ検索をしながら確認をすることになる。
つまり、仕事の効率という観点でも薬剤師にメリットがあることになる。
その他、実務ではあまり使わなくても国試の勉強で出てきたような知識も実際のモニタリングで使用する場面があります。
まとめ
今回は薬剤師から臨床開発モニター(CRA)へ転職をする際のお話をしていきました。
別業界への転職となると「本当にうまくやっているけるのだろうか」と不安になることもあるかもしれませんが、治験業界の場合は薬剤師としての知識や経験を活かせる場面があるので全く0からスタートするわけではありません。
始めは治験としての決まり事を覚えなければいけませんが、そこを覚えてしまえば薬剤師の経験と知識を活かしてお仕事をすることが出来きますので、治験業界に興味がある場合は積極的にチャレンジしてみて下さいね!
ただ対策はしっかりとしなければ転職もなかなかうまくいかないので、【完全版】未経験から治験業界に転職するための戦略まとめの記事にまとめた内容をじっくり読み込んで転職対策を固めておきましょう。
今回の記事では未経験からCRCやCRAなどの治験業界に転職を目指している方向けに転職に必要な情報を網羅的に詰め込んで紹介をしていきます。 治験コーディネーター(CRC)や臨床開発モニター(CRA)の違いやおすすめの転職サ …
“薬剤師からCRAへの転職はやっていけるのか?経験者が詳しく解説!” への1件のフィードバック