薬剤師からCRAへ転職をしてやっていけるのか?難易度もご紹介!

薬剤師から企業への転職でキャリチェンジを考えている方もいるかと思いますが、その中でも医薬品開発業界に興味がある方もいるのではないでしょうか?

ただ、同じ医薬品を扱うにしても医薬品開発となるとどのようなことをやっていたり年収面や労働環境なども気になるところですよね。

そこで、今回は医薬品開発業界の職種の1つである臨床開発モニター(CRA)についてご紹介をしていきます!

この記事で分かること
CRAの薬剤師の割合と転職難易度はどれくらいか。
CRAの年収や働き方はどのようなものか。
薬剤師の知識や経験はCRAでも活かせるのか。

のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)のフォロワー数は4,900人程。誰でも分かりやすいように解説をしていくよ!

薬剤師からCRAへの転職は十分可能!

薬剤師からCRAへの転職は十分可能!

薬剤師から企業への転職を目指すも、大体が未経験扱いになってしまうため年収ダウンが気になる方も多いはず。

そのような中、医薬品開発業界の職種の1つである臨床開発職(CRA職)は、転職直後には年収が一時的に下がるものの30代後半からは年収が逆転し40代になると平均で100万円以上の差が出てきます。

また、CRA職に転職することで製薬会社の他職種へのキャリアアップも目指せるため、最終的に年収が1,000万円を超える方も。

その他、CRA職がある企業はフレックス制度やテレワーク制度が非常に整備されている会社が多く働きやすが抜群に良いのも特徴の1つです。

ただ、その分就職難易度が高かったり、そもそも臨床開発職としてやっていけるのかという心配もあるかもしれません。

結論からお話すると、しっかりと対策をすれば臨床開発職として内定を貰うことも可能ですし薬剤師としての知識や経験を活かして活躍していくことも十分に可能です!

転職を考えている方は、CRAの求人も多数掲載されているファルマスタッフなどで情報収集をしていくことをおすすめしますが、まずはその前に基礎知識を知っておきたいという方も多いかと思います。

そこで本記事では、CRAの基礎的なことから薬剤師としての知識や経験がどのように活かせるのか解説をしていきます。

のりすのりす

当ブログではCRAを含めた医薬品開発の基礎知識の記事や転職戦略の記事を多数揃えています。
本気で転職を目指す方は是非参考にしてみて下さいね!

治験に関する基礎知識

それでは、まずは治験に関する基礎知識から簡単にご紹介をしていきます。

この記事ではあまり深いところまではあえて触れないで、「CRAとはザックリとどのような立ち位置の仕事なのか」という部分にフォーカスをしてお話をしていきますね。

製薬メーカー側の立場と施設側の立場

治験が行われまでの流れ

治験は製薬メーカーが治験のプロトコールを作成して、そのプロトコールに沿って治験を実施してくれる施設を探すところから始まります。

製薬メーカー側の人たちは施設に治験の説明をしに行くわけですが、施設側が治験をやっても良いよという場合には契約を締結して治験がスタートします。

このように、治験では「製薬メーカー側(依頼者側)の立場」「施設側(治験実施医療機関側)の立場」の2つの立場で構成されています。

臨床開発モニター(CRA)と治験コーディネーター(CRC)

治験には実際は色々な立場の方が関わっているのですが、ここでは理解のしやすさを重視してシンプル化してお伝えしますね

製薬メーカー側と施設側で治験に関わる職種について見ていきましょう。

製薬メーカー側

製薬会社側の職種

製薬メーカー側には、治験薬の安全性情報を取り扱う職種や治験のデータベースを構築する職種など色々な職種の方が治験に関わっています。

その中で、CRAという職種は施設に訪問をして治験がプロトコールに沿って適切に実施されているかを確認する仕事がメインになります。

普段はオフィスなどで内勤業務(報告書の作成など)をしていて、月に何回かは外勤で担当をしている施設に訪問をして治験に参加をしている被験者さんのカルテ閲覧や治験データの確認などを行っていきます。

のりすのりす

CRAは治験に関わる製薬メーカー側の職種で最も外勤が多い職種ですね。
一般的には月に数回の外勤なので”常に外回り”という程ではありません。(意外に内勤業務も多かったりします)

施設側

施設側の職種

施設側は、主に治験責任医師/治験分担医師、治験コーディネーター、治験事務局や治験薬管理者がメインとなって治験が行われています。

治験コーディネーターは、看護師や臨床検査技師からの転職者が多く、製薬メーカーから提供されたプロトコールに沿って円滑に治験が実施できるよう治験責任医師/治験分担医師や院内の各部門の調整役を担っています。

院内での立ち回りが重要になるため、薬剤師から転職をしている方では調剤薬局の薬剤師よりも病院薬剤師が多い傾向にあります。

CRAなどの製薬メーカー側の立場の方は被験者さんと会うことはありませんが、CRCは治験の補助説明を被験者さんにしたりと被験者さんとの関りがあるのも特徴の1つです。

のりすのりす

CRCの場合は主な勤務場所は施設になるため、主な勤務場所がオフィスであるCRAとは環境が異なりますね。

都心部への引っ越しが難しい場合や、オフィスではなくて医療機関で働きたい場合には治験コーディネーターという選択肢がおすすめです。

CROとSMO

CROとSMO

治験では「製薬メーカー側(依頼者側)の立場」と「施設側(治験実施医療機関側)の立場」の2つの立場で構成されているとお話しましたが、もう一歩踏み込んだお話をします。

製薬メーカー側や施設側は多数の治験を担当している場合もあるため、人員(リソース)に限りがあります。

1人CRAやCRCが複数の試験を担当するとしても、限界がありますよね?

そのような時には、別の会社にCRA業務やCRC業務を委託することとなります。

製薬メーカーはCRO(開発業務受託機関)へ、施設はSMO(治験施設支援機関)へそれぞれ委託するということですね。

そのため、薬剤師からCRAに転職をする場合には製薬会社へ転職するのではなくCROに転職するのが一般的です。

のりすのりす

製薬会社にもCRA職はありますが、未経験からの転職は募集は見たことがありません。
難易度は非常に高いですが、CROでCRA職を経験した後に経験者として製薬会社のCRA職を目指すというキャリアパスがあります。

臨床開発モニター(CRA)のお仕事

臨床開発モニター(CRA)のお仕事

それでは、ここからは臨床開発モニター(CRA)のお仕事内容について触れていきましょう。

CRAのお仕事はざっくり言うと以下の2つになります。

CRAの役割
治験実施施設で治験が適切に行われているかを確認すること。
治験が治験実施施設で円滑に行われるようマネジメント・対応をすること。

そして、もう少し具体的な業務を書き出してみると以下のようになります。

CRAの仕事の概要

治験は大まかに分けると「立ち上げ時期」、「治験中」、「終了時期」と3つの時期に分けることができます。

それぞれの時期別に簡単に説明をしていきます。

立上げ時期

この時期は、施設で治験をやるために契約書の締結準備をしたり、資材の搬入の手続きをしたり、施設の事務手続きをしたりと全期間を通して一番忙しい時期になります。

外勤はたまにありますが、メインは内勤業務になり手順書などを一生懸命読みながら資料を作成したり提出をしていきます。

大体の手続きには期限が決められているため、スケジュール管理能力が非常に重要な時期であると言えます。

資料の作成をする傍らで、担当している治験のプロトコールを読み込んだり疾患に関する知識を勉強したりとやることが盛りだくさんですが、流れは大体どの試験でも同じなので慣れればスムーズに対応できるようになりますよ!

治験中

施設の立上げが完了すると今度は治験に参加をしている被験者さんのデータを確認していくことになります。

特に重要なのは、「施設で被験者さんの適格性の確認がしっかりとされているかを確認すること」になります。

治験のプロトコールには、選択基準と除外基準が設定されており、適格と判断された被験者さんのみに治験薬が投与されることになります。

適格かどうかの判断は、治験責任医師/治験分担医師がするのがですが、CRAは「それらの判断がしっかりと妥当性があるものか」を確認していくことになります。

例えば、除外基準に「NSAIDsの継続投与が必要な患者」という基準が設定されていて、合併症に「関節リウマチ」がある被験者さんが組み入れられた場合、「NSAIDsの継続投与が必要な患者」に本当に該当しないかをカルテや処方記録から確認をする必要があります。

これはほんの一例です。

併用薬以外にも臨床検査値、心電図、バイタルサイン、画像診断結果など多岐に渡る記録を確認していく必要があります。

のりすのりす

始めは「そんなのできるのか…」と思うかもしれませんが、1つ1つ経験をしながら勉強をしていけば大丈夫ですよ!

終了時期

治験の終了時期には各種資材や治験薬の回収をしたりとクローズの手続きを進めていきます。

立上げ時期程忙しくはありませんが、治験のデータを固定しなければいけないため、タイムリミットが定められた中で対応をしていく必要があります。

CRAのお仕事の詳細についてはCRAに向いている人とはどんな人?未経験者のために1から解説の記事にもまとめてありますので、そちらも見ていただければと思います。

臨床開発モニター(CRA)を目指す薬剤師さんが見ているポイント

臨床開発モニター(CRA)を目指す薬剤師さんが見ているポイント

私のTwitterアカウントに、CRAを目指す薬剤師さんからのご連絡を頂くことがあります。

薬剤師さんからの転職で色々相談に乗ってきましたが、みなさんが気にされていたポイントを少しまとめてみたいと思います。

労働環境や勤務地

CRAは、土日祝日休みのフレックスタイム制で有休もかなり取りやすいことから労働環境が引っ掛かる方は少ない印象です。

ただ、CROは東京や大阪など都心にあることがほとんどですので、地方の調剤薬局の薬剤師さんの場合は通勤できる範囲内に引っ越しが必要になることもあります。

のりすのりす

一部のCROでは完全リモートOKの会社もあり、全国どこでも募集をしている会社もありますよ!

一方で、治験コーディネーターの場合は全国各地に支店があったり、地域密着型のSMOがあったりしますので、地元で働ける可能性が高いです。

その他、調剤薬局の場合は狭いコミュニティーで仕事をするため、人間関係にうんざりしているというお話や立ち仕事が多くて結構大変など、色々なお話を聞きます。

その辺りは、CRCよりもCRAの方がストレスの感じ方が少ないかなという印象です。

年収面

薬剤師からCRAに転職をする場合は、大半が未経験者扱いとなります。

そのため、一時的に年収が下がってしまう確率が高いでしょう。

しかし、長期的に見てみると年収面では薬剤師を上回る傾向にあります。

年齢層 薬剤師 CRA
20代後半 464.9万円 約500万円
30代前半 564.1万円 約600万円
30代後半 608.1万円 約700万円
40代以降 663.7万円 約800万円
年齢層 薬剤師 CRA
20代後半 464.9万円 約500万円
30代前半 564.1万円 約600万円
30代後半 608.1万円 約700万円
40代以降 663.7万円 約800万円

薬剤師のデータは厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果から算出していて、CRAの年収は以前私のアカウントで調査をした結果を参考に記載しています。

こちらのデータからも30代後半から年収の差が拡大していることが分かるかと思います。

そのため、薬剤師→CRAは30代前半までに転職をすることを目指すことで30代後半以降の年収が逆転することになるので、なるべく早いうちからの転職が有利ということになります。

薬剤師としての経験が活かせるか

やはり6年制の薬学部を出て薬剤師免許がありながら、企業に就職することについて抵抗を感じるという方もいました。家族など周りからの理解が得られないという方もいましたね。

ただ、この後の項目でしっかりと紹介をしますが、治験業界のお仕事は薬剤師としての経験もしっかりと活かすことができますので、今までの経験や知識は決して無駄にはなりません。

また、CROの新卒入社は半分以上が薬学部出身者という会社も多いので、同じような境遇の方も社内に多くいるはずです。

CRAとして薬剤師の経験が活かされる場面

CRAとして薬剤師の経験が活かされる場面

ここからはCRAの実際のお仕事を例に出しながら、薬剤師の経験や知識がどのような場面で活かされるかを具体的にお話していきたいと思います。

治験薬の作用機序の理解

CRAは治験を開始する時には施設で治験薬の作用機序をお話する場面があります。

例えば、タケキャブを開発する試験であった場合、作用機序や治験薬の特徴を説明する時にはタケプロンとの比較をしながらお話をした方が先生には伝わりやすいです。

「PPIとP-CABの違いは?」、「遺伝子多型は?」、「夜間の胃酸分泌抑制は?」などなど…

既存の薬剤についての知識がある場合、その薬剤と比較してどのような臨床的メリットがあるのかを示すことが説得力のある治験の説明ができるのです。

もちろん、全ての既存の薬について作用機序を含めて詳しい訳では無いと思います。

ただ、そのような場合でも「調べて理解する力」は薬剤師以外の方と比較すると差が付きますので、薬剤師としての知識や経験が活かされます。

より実践的な内容に踏み込める

調剤薬局の薬剤師の場合、患者さんのカルテや臨床検査値の結果などまでじっくり見る機会は無いかと思います。

一方で、CRAは治験に登録された被験者さんの適格性を確認するために電子カルテや臨床検査値などを閲覧し、治験に適格な症例であるかを確認する作業があります。

その際には、薬学部で学んだ臨床検査値の知識やその他医学的な知識が役に立ちます。

また、例えば以下のようなシチュエーションの場合、「ん?おかしいぞ」と気が付くことが出来るのも薬剤師としての経験や知識が活かされる場面です。

イメージがしやすいように簡単な具体例を見ていきましょう。

治験での規定
・NSAIDsの常用が必要な患者はNG
・重篤な心疾患系の合併症がある患者はNG
カルテの記載の概要とCRAの確認事項
・直近の傷病名一覧で「変形性膝関節症」が追加されている。 現在は経過観察となっており、薬剤は処方されていない。
→薬剤師としての経験があれば「変形性膝関節症」がある患者の場合、将来的にNSAIDsが継続的に処方される可能性について考えることができる。CRAとしても、カルテに記載されている変形性膝関節症の程度を確認し、今後NSAIDsの継続投与が計画されていないかを確認しなければいけない。
・アミサリン錠が処方されている。
→「重篤な心疾患系の合併症がある患者はNG」という規定があるため、要確認。
「アミサリン錠」と聞いて不整脈をすぐに連想できるのは薬剤師の経験があったからこそで、薬剤師のバックグラウンドが無いCRAの場合は薬剤をしっかりと1つ1つ検索をしながら確認をすることになる。
つまり、仕事の効率という観点でも薬剤師にメリットがあることになる。

その他、実務ではあまり使わなくても国試の勉強で出てきたような知識も実際のモニタリングで使用する場面があります。

まとめ

今回は薬剤師から臨床開発モニター(CRA)へ転職をする際のお話をしていきました。

別業界への転職となると「本当にうまくやっているけるのだろうか」と不安になることもあるかもしれませんが、治験業界の場合は薬剤師としての知識や経験を活かせる場面があるので全く0からスタートするわけではありません。

始めは治験としての決まり事を覚えなければいけませんが、そこを覚えてしまえば薬剤師の経験と知識を活かしてお仕事をすることが出来きますので、ファルマスタッフのような情報量が多い転職エージェントをうまく活用しながら情報収集からでも始めてみて下さいね!