今回は、リクエスト記事ということで、企業研究記事第一弾として大手CROであるエイツーヘルスケアについて企業研究をしていきたいと思います。
就活生を対象にした記事の構成ですが、転職を考えている方にとっても企業研究は必要かと思いますので、エイツーヘルスケアへの就
職・転職を考えている方は是非覗いていってください。
はじめに
まず始めに、企業研究記事第一弾ということで、企業研究記事のスタンスなどをお話させていただきます。
これから企業研究記事を作成していく際に共通していることなのですが、事実(その企業が取り組んでいることなど)に関しては、基本的には就活生でも入手することが出来る情報を元に企業研究をしていくスタンスとします。
そのスタンスについて、臨床開発職として現役で働いている立場から私見でコメントを追加していきます。
恐らく私の私見については、賛否両論あるとは思いますが、「こういう考え方もあるよね」というような一意見として捉えていただくのが良いかと思います。
対立意見があったとしても、その両方を聞いてみて納得できる部分を良いとこ取りしてみなさん自身が選べば良いだけなので、肩の力を抜いてお菓子でも食べながら眺めてみてください。
企業研究の記事では、「どんなことをどんな視点で調べれば良いのか?」という疑問に対してきっかけを作るようなイメージで作成していきますので、この企業研究の記事で得たイメージを会社説明会やインターンで補強していき最終的に皆さん自身の考えを織り交ぜて最終成果物として下さいね!
…業界のこと色々知っていると、色々な噂も聞こえて来ますが、まぁそれはただの噂でしかなく信憑性も無いのでここではそういうことは書きませんよということですね。。
ではでは、前置きはこれくらいにして本題に入っていきましょう。
エイツーヘルスケアの会社概要
まずは、エイツーヘルスケアの会社概要から見てみましょう。
エイツーヘルスケアのホームページにある会社概要から、就活に関連しそうな場所だけ抜粋して掲載しています。
会社名 | エイツーヘルスケア株式会社(英語表記:A2 Healthcare Corporation) |
所在地 | 【本社】 〒112-0002 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル20F(総合受付) TEL:03-3830-1122(代表) FAX:03-3830-1155 |
【本町事業所】 〒550-0004 大阪府大阪市西区靭本町1-4-12 本町富士ビル 7F(受付) TEL:06-6444-1000(代表) FAX:06-4803-2815 |
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【淀屋橋事業所】 〒541-0042 大阪府大阪市中央区今橋3-3-13 ニッセイ淀屋橋イースト13F TEL:06-4707-0230(代表) FAX:06-4707-0528 |
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設立 | 2003年7月 |
代表者 | 香取 忠 |
従業員数 | 1,155名(2021年4月1日現在) |
事業内容 | 医薬品・医療機器・再生医療等製品・ワクチン開発、 製造販売後調査等、臨床研究受託事業 ・モニタリング ・RBM ・データマネジメント ・eSubmission(eCTD/CDISC) ・eClinicalソリューション ・割付・症例登録 ・統計解析 ・メディカルライティング ・安全性情報管理 ・GXP監査 ・薬事情報サービス ・医学専門家 ・臨床薬理 ・医師主導治験 ・オンコロジー開発 ・人材派遣(事業) ・プロジェクトマネジメント ・SMO渉外/治験薬管理 ・医療情報データベース調査・研究 |
株主構成 | 伊藤忠商事株式会社(93.5%) 株式会社ベルシステム24ホールディングス(6.5%) |
加盟団体 | 日本CRO協会(理事会社) 日本計算機統計学会 CDISC 日本メディカルライター協会 eCTD研究会 日本QA研究会 |
会社概要 | A2 Healthcareより一部抜粋
■22卒時の採用データ
募集職種 | ・CRA(臨床開発モニター)職 ・データマネジメント職 ・統計解析職 |
募集人数 | 全職種合わせて40名程度を予定 |
募集対象 | 大学卒以上(文系、理系どちらでも可) |
勤務地 | 東京本社・淀屋橋事業所・本町事業所 |
基本給 | 【2020年4月実績】 学部卒 224,000円 院了・6年制薬学卒 245,000円 |
採用フロー |
①マイナビよりエントリー
②会社説明会(Web開催) ③適性検査 ④グループワーク ⑤グループディスカッション ⑥個別面接 ⑦グループ面接 ⑧内々定 |
マイナビ2013より一部抜粋
エイツーヘルスケアは事業内容を見ても分かる通り、CRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関)の会社になります。
本社は東京の後楽園から徒歩5分程のところにあり、本社以外にも大阪の本町や淀屋橋に事業所があるようです。
「事業内容」の欄を見てもらっても分かる通り、CRAの業務であるモニタリング以外にも様々な業務を展開しており、場合によっては新卒でCRAとして入社したあとに統計解析やメディカルライティングの部署へ移り経験を積むことが出来るかもしれませんね。
また、1つ注目すべきポイントは複数の職種を募集していますが、しっかりと職種別採用されるという点です。
他のCRO(例えば、IQVIA等)については、募集職種が「臨床開発関連職(総合職)」となっており、選考後に就活生の適性に応じて職種が振り分けられるパターンになっています。
つまり、外勤が多く発生するCRAになるか、外勤がほとんど発生しない統計解析職になるのかが入社後でないと分からないということです。
その点において、エイツーヘルスケアは、CRA職、データマネジメント職、統計解析職を職種別に応募できるため、”どの職種に振られるか分からない”という状況はなく、安心できる方もいるのではないかと思います。
他のCROを受ける際にも、職種別採用なのかそうでないのかはしっかりと確認しておくと良いでしょう。
エイツーヘルスケアは伊藤忠の子会社
注目すべき点は、エイツーヘルスケアは伊藤忠グループのCROであるということ。
同じCROでもシミックやイーピーエスは、それぞれホールディングスの中のCRO部門のようなイメージですが、エイツーヘルスケアについては伊藤忠商事の子会社で大元が商社になります。
つまり、伊藤忠のヘルスケア部門に対する意向でエイツーヘルスケアの運命が変わってくるということです。
もっと言えば、伊藤忠が仮にヘルケア部門から撤退すると表明した場合は、エイツーヘルスケアがどこかの企業に買収される可能性もあるということになります。
ちなみににエイツーヘルスケアの前身であるアスクレップ株式会社は、親会社であるインテージ株式会社(マーケティングの会社)から切り離され、更にアスクレップの臨床開発事業が切り離され2014年11月に伊藤忠傘下であったアクロネットと合併しているという経過を辿りました。
今では落ち着いてきましたが、少し前まではCROは合併を繰り返すことが多くありました。
合併をすると、当然職場環境や労働条件も変化していくことが考えられますので、安定性を求めて親会社はどこなのかという視点でCROを見ることもできます。
CRO業界は、1992年にシミックが日本初のCROとしてその活動をスタートしてから2021年で29年になります。 業界としてはまだまだその歴史は浅く、この29年の間にも数々のCROが誕生しては、合併を繰り返し淘汰が進んでいる業界でもあります。 その流れは、最近でも続いています。例えば、2015年4月にはPPDと新日本科学の臨床開発部門が合併し新日本科学PPDとなったり、2018年にはPVネクストとメディクロスが合併し、パーソルファーマパートナーズとなったり、2020年3月には、ACメディカルがイーピーエスに吸収合併がされたりなど色々な動きがありました。 そして、今回の記事では、2021年6月に予定されているメディサイエンスプラニングとMICメディカルの合併について紹介していきたいと思います。
もっと分かりやすく言うと、親会社があるCROの場合は、親会社とのシナジーを活かせることが大きなメリットで、親会社が無いCROの場合は、親会社の都合によって切り離されることも無いので親会社の意向に振り回されないというメリットがあります。
エイツーヘルスケアの場合、伊藤忠というとても大きな商社とのシナジーを発展にどう活かしていけるのかがとても重要なポイントだと考えます。
シナジーが無ければ子会社であるメリットは薄くなりますからね…
エイツーヘルスケアでは、そのシナジーについて少し触れているページがあるので、そちらも見てみてると良いでしょう。
簡単に言うと、医薬品開発という観点でそれぞれの会社とシナジーがあるという意味に見えますが、”エイツーヘルスケアにとって”どんなシナジーがありどんな良いことがあるのかを考えることが大切です。
ぱっと思いつくのは伊藤忠のリソース(人材やお金など)を使うことが出来ることかと思いますが、他にも色々と考えてみたり会社説明会で聞いてみると良さそうですね。
●A2は伊藤忠の子会社であるため、親会社の意向で方針が変わることもある。
●伊藤忠の子会社であることで発揮されるシナジーについて考える必要がある。
決算状況からエイツーヘルスケアを分析
エイツーヘルスケアは、内資の大手CROに分類されますが、それだけでは規模感がいまいち掴みづらいと思います。
そこで、同じく内資大手CROのシミックとEPSとも比較しながら決算状況でエイツーヘルスケアの規模感を分析していきます。
まずは、大まかな会社の規模を把握するためにそれぞれの売上高を見てみます。
A2のデータは2018年度しか見つからなかったため、シミック、EPSも2018年度のデータを載せて比較しています。
シミック:372億円
EPS:288億円
A2:115億円
※シミック、EPSはCRO部門の売上を記載しています。
※エイツーヘルケアのデータは、マイナビに記載されているデータを参照しました。
※シミック、EPSについては、決算説明資料から情報を抜粋しています。
この結果からは、イメージとしては、シミック、EPSが2トップ、その2トップに対してA2ヘルスケアが後を追っているという構図が分かるかと思います。
エイツーヘルスケアは大手3社には入っていますが、2位のEPSと比較すると売上高が2倍以上離れているので、そこの差をどこまで縮めていけるかというのが今後の目標になってくるでしょう。
もちろん、売上高からだけでは議論は出来ません。
次に、大まかな会社の成長率を把握するために営業利益を見てみます。
会社名 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
シミック |
58億円
(+7.8%) |
66億円
(+13.8%) |
68億円
(+3.7%) |
EPS |
63億円
(+3.7%) |
63億円
(+0.2%) |
50億円
(-20.6%) |
A2 | – | – | – |
エイツーヘルスケアは何故か「-」になっていますね。
そうなのです、エイツーヘルスケアは上場をしていないので、決算から営業利益の情報を得ることが出来ないのです。
この数字を知ることが出来れば、CRO本業でどれだけ成長しているのかが見えてくるのですが、データが無ければ残念ながらそれを正確に知ることは難しいということですね。
シミックとEPSについては、シミックはやや横ばいではあるものの年々営業利益を積み重ねているのに対してEPSは2017年度以降営業利益が右肩下がりになっているのが気になるところです。
ちなみに、EPSは、2021年5月27日にMBO(経営陣が株式を買い取ること)によって株式を非公開化し、上場廃止となる見通しを発表しました。
上場廃止後は、医薬品卸大手のスズケンが20%を出資する形で、EPSはスズケンの持ち分法適用関連会社(とても簡単に言えば、スズケンはEPSに対して影響力を発揮できるが、子会社のように支配はできない状態です)となります。
そのため、今後はEPSの営業利益なども確認できなくなることが想定されるため、エイツーヘルスケアとの比較も難しくなってくるかと思います。
今回はエイツーヘルスケアのお話なので、EPSについてはここまでにしますが、いずれにせよ、エイツーヘルスケアは現在のところ内資系CRO上位3社には入っていると言って良いでしょう。
●事業規模を大まかに知るには売上高を見ると良い。
●成長率を大まかに知るには営業利益を見ると良い。
●A2は内資系CRO大手3社の企業である
エイツーヘルスケアの強み
会社HPを見てみると、「エイツーヘルスケアの強み」について記載されていますので、企業研究をするうえでこちらの意味もしっかり理解しておく必要があるかと思います
着目するポイント毎に1つずつ分析をしていきたいと思います。
医薬品・医療機器の臨床開発ソリューションを提供する総合CRO
”臨床開発”と聞くと、まず始めに医薬品の開発を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
”臨床開発”は医薬品に対してだけでなく、医療機器の開発も含まれるので、ここでエイツーヘルスケアが言いたいことは、「医薬品にも医療機器にもどちらにも対応していますよ」ということになります。
またもう少し読み進めると、「臨床開発ソリューションを提供する」とあります。
この部分は少しイメージしにくい方もいるかもしれませんが、分かりやすい表現で言うと「臨床開発における全ての要望に対応するサービスを提供する」となります。
先ほどの医薬品、医療機器のお話と合わせると要するに「臨床開発で必要な要望には全て答えるよ!」というイメージで良いかと思います。
そういう意味で「総合CRO」という言葉にもなっているのではないかと考えられます。
あとで詳しく後述しますが、事業範囲についてはその強みに記載されている通り、ほぼ全てと言って良い程の範囲がカバーされている状況です。
現在のエイツーヘルスケアのフェーズは、既に幅広い事業範囲であるため、その幅広い事業内容により付加価値を付け品質を上げているフェーズと考えられます。
幅広いサービスの提供に強みを置いている以上、将来的に今事業内容に書かれているサービスを減らしていくということはあまり考えにくいのではないかと思っています。(規模の縮小などはあるかもですが…)
ちなみにですが、最近では、DCT(Decentralized Clinical Trial:分散型臨床試験)の発展が急速に進んでいます。
DCTは、来院に依存しない臨床試験を達成するために発展していますが、その実現には医療機器の活躍も必要な要素となります。
そのことからも、今後は医療機器の開発も発展していくことが予想されることから、エイツーヘルスケアのような「医薬品・医療機器の臨床開発ソリューションを提供する総合CRO」の価値観がより高まっていくものと考えています。
DCTについては、当ブログでも記事に概要を分かりやすく記事にまとめる予定です。
私たちの持つライフサイエンス分野の高品質な専門性を発揮
こちらのフレーズからも「広く浅く」ではなく、「広く深く」を強みとして挙げていることが分かります。
その1つの根拠として、エイツーヘルスケアはRBM(Risk Based Monitoring)というモニタリング手法の知識に非常に長けているという特徴があります。
業界的にはニーズが高まっているRBMですが、そこでも高品質な専門性が発揮されていることが分かります。
RBMについてはまた後で触れるのでここでは詳細は割愛します。
医薬・医療の発展と人々のQOLの向上に貢献
こちらのフレーズからも「広く浅く」ではなく、「広く深く」を強みとして挙げていることが分かります。
その1つの根拠として、エイツーヘルスケアはRBM(Risk Based Monitoring)というモニタリング手法の知識に非常に長けているという特徴があります。
業界的にはニーズが高まっているRBMですが、そこでも高品質な専門性が発揮されていることが分かります。
RBMについてはまた後で触れるのでここでは詳細は割愛します。
●A2は、臨床開発で必要な要望に全て答えられることを強みとしている。
●サービスは広く浅くではなく、広く深くを強みとしている。
●他CROと差別化できるポイントは、”高品質な専門性”の内容にかかっている。
●業界で注目されているRBMに力を入れている。
エイツーヘルスケアの注目すべき特徴
さて、ここまででエイツーヘルケアがなんとなくどのような規模の会社でどんな強みがあるかのイメージは少し出来てきたかと思います。(成長率については分かりませんが…)
次に、エイツーヘルスケアのCROとしての特徴を見ていきます。
エイツーヘルスケアはCROでも大手であることは間違いありませんが、上位2社に追いつくためにどのようなことに取り組んでいるかを知る必要があります。
そして、就活生の皆さんは、その取り組みについて賛同できるかどうかを考えてみて下さい。
賛同できるようであれば自ずと志望動機も見えてくるでしょう。
と、いきなり言われても賛同出来るかどうかジャッジが出来ないと思うので、私の記事ではエイツーヘルスケアの取り組みについて咀嚼してなるべく分かりやすく表現をしてみたいと思うので、それを元に考えていただければと思います。
私から見たエイツーヘルケアの注目すべき特徴をいくつか紹介していきたいと思います。
事業内容が幅広い
エイツーヘルスケアは、先ほどもお話した通り、かなり幅広い事業内容を展開しています。
どれくらい幅広いかと言うと、治験をする上で必要になってくる業務の9割以上(ほぼ全て)をカバー出来ている印象です。
つまり、治験を実施する上で、製薬メーカーから依頼された場合、そのほとんどの業務をエイツーヘルケアはこなすことができるだけの規模があります。
このあたりがさすが大手だなぁと感じます。
実はこの幅広い業務を請け負えるということは、個人的にはとても大きなことだと考えています。
というのも、大手製薬メーカーであれば自社でもある程度の部門を持っているので、モニタリングのみをCROに委託するということがあるのですが、規模が小さい製薬メーカーの場合、自社にもあまり部門を持っておらず、治験で必要な業務をまるまる委託したいと考えている製薬メーカーも少なくはありません。
幅広い業務の受託が出来るということは、大手の製薬メーカー~規模が小さい製薬メーカーまで幅広い製薬メーカーを顧客にすることが出来るため、多くの案件を獲得できる環境であると考えられます。
また、案件獲得という観点だけではなく、キャリアチェンジについても幅広い選択肢がある可能性があります。
例えば、事業内容がモニタリングのみのCROの場合は、CRAはキャリアチェンジしたかったとしてもCRA以外の職種がほぼ無いためキャリアチェンジは難しいと考えられますが、エイツーヘルスケアのようにモニタリング以外にも様々な事業を展開している場合、CRAからキャリアチェンジで他の部署に異動できる可能性もあるため、選択肢が増えるというようなイメージです。
実際には、どれくらい部署異動が活発に行われているのかまでは分かりませんが、もしキャリアチェンジも考えているということであれば、会社説明会などで聞いてみるのも良いかと思います。
●A2は、大手~小規模の製薬メーカーの依頼を幅広く受託できる環境である。
●事業内容が幅広いということはキャリアチェンジの可能性も広がる。
RBMに強い
先ほど少し触れましたRBM(Risk Based Monitoring)について、エイツーヘルスケアはかなり力を入れている印象を受けます。
私の印象では、CROの中で最もRBMに力を入れていると言っても過言ではないレベルだと思っています。
そして、このRBMに力を入れているということこそ、他のCROとの差別化を図っている1つの手段になっていると考えられます。
そもそも就活生の方の場合、このRBMというもの自体よく分からないと思うので、とても簡単に説明をしておきます。(しっかり説明すると逆に分からなくなるかもしれませんので、ここでは軽くにしておきます)
まず、CRA(臨床開発モニター)というお仕事は、医療機関に行き、治験のデータが適切に収集されているか、治験が適切に実施されているかを確認するお仕事というところまでは大丈夫でしょうか?
RBMを導入していないと、例えば、治験が10施設100人の被験者さんで行われているとしたら、CRAはその全てについて、医療機関に出張をして確認をしなければいけません。
それが、RBMという方法を導入すると、5施設50人の被験者さんについて確認をすれば良くなることがあり、そうすれば結果としてコストも削減されますし、医療機関、SMO、製薬会社、CROなどそれぞれの負担も軽減されるという訳です。
「だったら、全部の治験でRBMを導入すれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、このRBMを導入することはそう簡単ではありません。
導入にはリスク評価など、様々な準備が必要で、その準備をするためには高い専門性(RBMという仕組みに対する知識)が必要になってきます。
製薬メーカー側としては、コストが削減できるのであれば、当然大歓迎なのですが、コストが削減できてもデータの質が低下してしまったら元も子もありません。
今の開発業界では、RBMが徐々に浸透はしてきているものの、依然としてRBMを導入していない(できてない)治験も多くあります。
そこで、エイツーヘルスケアはセントラルモニタリング部門というRBM専門の部門を立ち上げ、RBMの先駆者的な位置付けを確立していきました。
「CROなんてどこも似たり寄ったりで特徴がよく分からない…」というお話も就活生からチラホラ聞こえてくることもありましたが、このRBMのエキスパートであるということは、他CROと大きく差別化できるものだと私は思います。
RBMはエイツーヘルスケアを語るのであれば、重要なキーワードになってくるかと思いますので、企業研究にプラスアルファでRBMについても少し知っておくと”エイツーヘルスケアを志望した理由”の補強素材として使えるかもしれません。
●A2はRBMに力を入れている。
●RBMを導入したくても専門的な知識が必要で導入できていない治験も多くある
●RBMのニーズは今後増していくと私は考えている。
●A2はRBMのニーズに一早く対応できるようパイオニア的存在となっている。
RBMについては、当ブログでも記事にまとめていますのでご紹介をしておきます。
この記事は、実際に臨床開発職として働いている方向けに書いた記事になるので、全てを理解する必要はありません。なんとなくのイメージを持っていただければOKです。
リスクに基づくモニタリング(Risk-Based Monitoring:RBM)という考え方は、2011年8月にFDAとEMAにより相次ぎ発表されたガイダンス案が始まりでした。 その後、2013年には日本でも「リスクに基づくモニタリングに関する基本的な考え方について」が発出され、2015年にはICH-E6 Step2ガイドラインに掲載されました。 今までもよりも適切で効率的なモニタリング手法として考案されたRBMですが、昨今のCOVID-19の蔓延もあり、再度注目が高まってきています。 今回はそんなRBMについて、基礎的なところからお話していきたいと思います。(意外に単純なので、就活生や経験が浅い方も理解できると思いますよ!)
その他、製薬協の資料で読みやすい資料がありましたので、そちらも併せてご紹介をしておきます。
Patient Centricityに力を入れている
エイツーヘルスケアは、RBMに力を入れていることをご紹介しましたが、Patient Centricityにもかなり力を入れている企業です。
Patient Centricityとは、ざっくり言うと、患者さんの声を医薬品開発に活かしていこうという考え、つまり「患者中心」という概念のことです。
日本は、欧米に比べ、まだまだ”患者さんが医薬品開発に参画”という点において遅れを取っています。
そのような課題に挑戦すべく、エイツーヘルスケアは被験者募集/治験情報提供大手の3Hホールディングスと2019年に業務提携を結んで活動をしています。
こちらのニュースリリースに詳しい情報がありますので、そちらもしっかりと押さえておきましょう!
具体的に患者さんの意見がどのように医薬品開発に活かされていくのかなど、詳細な説明については、また当ブログでしっかりと記事にまとめる予定です。
全ゲノム解析を含めた医薬品開発サービスを提供している
エイツーヘルスケアは、2020年6月23日のプレスリリースにおいて、全ゲノム解析事業を展開する株式会社 iLACとの業務提携を発表しました。
この業務提携により、エイツーヘルスケアが受託した臨床試験(治験+臨床研究)において、被験者さんから同意を貰ったうえで、ゲノムサンプルをiLACがおこない、依頼元である製薬メーカーに情報を蓄積出るようになります。
現在は、個別化医療に対応した医薬品開発も進められており、2020年には薬機法も改正され、日本でも環境整備が進んでいます。
ゲノム解析×医薬品開発の組み合わせは、今後も発展していくことが想定できる訳ですが、国内初となる「全ゲノム解析を含めた医薬品開発サービス」を提供するエイツーヘルスケアの今後にも個人的には注目しています。
令和2年8月31日に医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律が改正となり、それに伴いGCP省令も改正されました。 改正されたGCP省令には新たに「治験使用薬」という文言の定義が加わりましたが、GCP改正直後ということもあり、治験使用薬が新たに定義された経緯やそれがどのような薬剤を指すのかが今一ピンとこないという方も多いのではないでしょうか。 今回は、そんな治験使用薬について、私が勉強会や各種通知を通して確認した内容をまとめていきたいと思います。
倒産する可能性はかなり低い
最後におまけ的なものですが、エイツーヘルスケアは親会社が伊藤忠商事なので、倒産するリスクはかなり低いと考えられます。
商社の基本スタイルは、業績が悪化して株価が安くなった企業を買収して、経営のテコ入れをしてより価値のある企業へ成長させていていくものです。
経営のテコ入れには、当然伊藤忠のリソース(資金や人材など)も共有されるので、そう簡単に倒産は無いかと考えます。
1つ注意することがあるとすれば、伊藤忠がこの業界から撤退する方針を取ったときには子会社のため、どこかの会社に買収されてしまう可能性もあることです。
ただ、こちらも完全に私見ですが、伊藤忠全体の売上比率に占めるエイツーヘルスケアの売上比率はかなり低いため、業績が少し悪くなったところで、親会社に及ぼす影響は限定的と考えられるため、買収もそれほど可能性は高くないのではないかなと思っています。
まとめ
今回は、内資系CRO大手のエイツーヘルスケアについてまとめていきました。
エイツーヘルスケアの大きな特徴は、RBMとPatient Centricityに勢力的に取り組んでいることです。
いずれも、医薬品開発においては重要な要素になるので、今後も発展していく分野になります。
このような分野にパイオニア的存在として取り組んでいることからも今後更に会社の規模感を増していく期待が持てるのではないでしょうか。
製薬メーカーやCROの臨床開発職は他の職種と比べると就活の難易度は高いのですが(特に製薬メーカー)、実はしっかりと就活対策ができている方は一握りです。
【ゼロから分かる!】製薬業界&CRO業界の就活戦略まとめの記事には就活戦略を大ボリュームでまとめていますので、そちらも読み込んでおくことをおすすめします!
また、積極的には推奨はしていないのですが、以前よりご要望があった、実際のES課題についての解説記事についてnoteにまとめましたので、ご必要な方のみどうぞ!