メディサイエンスとMICメディカルが合併!CROの合併について考えてみる

CRO業界は、1992年にシミックが日本初のCROとしてその活動をスタートしてから2021年で29年になります。

業界としてはまだまだその歴史は浅く、この29年の間にも数々のCROが誕生しては、合併を繰り返し淘汰が進んでいる業界でもあります。

その流れは、最近でも続いています。例えば、2015年4月にはPPDと新日本科学の臨床開発部門が合併し新日本科学PPDとなったり、2018年にはPVネクストとメディクロスが合併し、パーソルファーマパートナーズとなったり、2020年3月には、ACメディカルがイーピーエスに吸収合併がされたりなど色々な動きがありました。

そして、今回の記事では、2021年6月に予定されているメディサイエンスプラニングとMICメディカルの合併について紹介していきたいと思います。

メディサインエスプラニングとMICメディカルについて

メディサイエンスプラニング(以下、MPI)とMICメディカル(以下、MIC)は共にエムスリーの100%子会社になりますが、2021年2月18日のエムスリーのプレスリリースでMPIがMICを吸収合併することが発表されました。

そんなMPIとMICメディカルですが、まずは各社の概要について簡単に触れていきたいと思います。

メディサイエンスプラニング

メディサイエンス_ロゴ

設立 1982年
所在地
①東京都港区赤坂1丁目11番44号
②東京都港区虎ノ門三丁目4番7号 虎ノ門36森ビル
③東京都港区赤坂一丁目1番14号 野村不動産溜池ビル
④東京都中央区東日本橋一丁目1番7号 野村不動産東日本橋ビル
⑤東京都中央区日本橋浜町一丁目2番1号 HF日本橋浜町ビルディング
⑥大阪府大阪市中央区平野町三丁目6番1号 あいおいニッセイ同和損保 御堂筋ビル
⑦福岡県福岡市博多区店屋町6番18号 ランダムスクウェア
従業員数 1,010名(2021年1月現在)
事業内容
■モニタリング業務
■RBM(Risk-Based Monitoring)サービス
■国際共同治験業務
■再生医療サービス
■臨床薬理試験業務
■コンサルティング・薬事業務
■治験国内管理人業務
■プロジェクト・マネジメント
■DM/統計解析業務
■ファーマコヴィジランス業務
■製造販売後調査業務
■臨床ITソリューション
■治験薬保管管理、通関業務
■特定派遣業務
■メディカルライティング業務
■品質保証業務
■食品開発業務
■症例登録業務
■医用画像解析業務
■臨床研究関連業務
■CDISC関連サービス
主要取引企業

メディサイエンス会社概要|マイナビ2022より引用

MPIは、内資系CROで臨床試験の受託に関しては、一通りのサービスを提供することができる体制が整ったCROです。

MPIには、インターナショナル・コミュニケーション アンド クリニカルシステム室(ICCS室)という部署があり、モニタリング報告書の英文添削やグローバルミーティングの通訳をしたりと、グローバル案件にも柔軟に対応できることに加え、Risk Based Monitoringにも積極的に対応する等、今後のトレンドに合わせたサービス展開をしているのが特徴です。

また、MPIは代表取締役会長兼社長 CEOの浦江氏の存在が大きいことも特筆すべき点だと思っています。

浦江氏は、医師・医学博士であり、日本臨床薬理学会の専門医・指導医であり、「健常成人男子における塩酸フェキソフェナジンとエリスロマイシンの薬物相互作用に関する臨床薬理試験」など、臨床薬理試験に関する論文も発表されている臨床薬理試験のエキスパートです。

そのため、臨床薬理試験の受託には特に強みを発揮できるという特徴もあると言えるでしょう。

MICメディカル

MICメディカル_ロゴ

設立 1986年
所在地
①東京都港区赤坂1丁目11番44号 赤坂インターシティ10階
②東京都港区虎ノ門4丁目3番9号 住友新虎ノ門ビル
③大阪府大阪市中央区平野町3丁目6番1号
従業員数 400名(2018年4月1日現在)
事業内容
①医薬品・医療機器の臨床開発業務
・CRA派遣
・モニタリング
・QC
・QA
・メディカルライティング
②医薬品・医療機器の製造販売承認申請支援業務
③医薬品・医療機器の製造業許可及び製造販売業許可申請支援業務
・CRA、MRの教育研修支援業務
・上記に係る各種コンサルティング業務
主要取引企業
医薬品関連 33社
医療機器関連 39社※2020年4月1日現在

会社概要|株式会社MICメディカルより引用

MICメディカルは、「治験のe化」を推しているCROで、治験君を始めとして、電子カルテとEDCを紐付け、効率的な医薬品開発を実現しようと試みているCROです。

現在の医薬品開発業界では、eTMFなど、治験の手続き関連の資料を電子化(つまりe化)する流れは徐々に浸透してきていますが、電子カルテとEDCの紐付けの部分に関しては、導入までに色々なハードルがあることからほとんど普及していない印象です。

もし、EDCと電子カルテの紐付けがかなり普及することになれば、医薬品開発の迅速化という意味でとても面白いかと思います。

両社の特徴

上記の会社情報を見ていただくこと分かる通り、メディサイエンスはモニタリング~DM/統計解析と医薬品開発に必要な機能をトータル的に受託することが出来る体制が整っているCROになります。

一方で、MICメディカルは、モニタリングのサービス提供を主力とするCROで、DM/統計解析部門は無く、会社全体の規模感に関してもメディサイエンスと比較するとやや小さめなCROです。

組織体制以外に、受託実績にもそれぞれの特徴が出ています。

MPIとMICの受託実績(開発相別)

各社HPの「受託実績」より改変抜粋

まず、両社の受託実績のうち、開発相別に見てみるとMPIでは、第Ⅰ相の治験をかなり多く受託していることが分かります。一方で、MICメディカルを見てみると、第Ⅱ相・第Ⅲ相の受託実績がメインになっています。

MPIでは、otherの比率も高いですが、この中には、BE試験や化粧品・健康食品の臨床試験も含まれているので、比較的小規模な案件の比率が多い様子が伺えます。

CROの売上高は、モニタリングの受託による売上高が全体の多くを占めているため、両社の合併による規模感の拡大はインパクトがあるものと考えられます。

そんな両社の合併は、どの程度のインパクトがあるのかについて深堀していきたいと思います。

2社の合併により会社の規模がより上位に

2社の合併により会社の規模がより上位に

MPIとMICの合併によって、どの程度規模感が大きくなったのかをイメージするために、売上高と従業員数から見たCRO各社の規模感で比較してみます。

会社名 売上高(百万円) 従業員数
シミック 76,098(2020年9月期) 7,023名(2019年10月時点)
EPS 66,689(2020年9月期) 6,718名(2020年9月時点)
IQVIA 非公開 4,022名(2018年4月)
MPI(合併後) 非公開 1,410名
パレクセル 非公開 1,300名(時点は不明)
エイツーヘルスケア 11,500(2018年度) 1,207名(2020年4月時点)
MPI(合併前) 非公開 1,010名(2021年1月時点)
新日本科学PPD 8,808(2019年12月時点) 730名(2020年4月時点)
MIC 非公開 400名(2018年4月時点)
会社名 売上高(百万円) 従業員数
シミック 76,098
(2020年9月期)
7,023名
(2019年10月時点)
EPS 66,689
(2020年9月期)
6,718名
(2020年9月時点)
IQVIA 非公開 4,022名
(2018年4月時点)
MPI(合併後) 非公開 1,410名
パレクセル 非公開 1,300名
(時点は不明)
A2 11,500
(2018年度)
1,207名
(2020年4月時点)
MPI(合併前) 非公開 1,010名
(2021年1月時点)
新日本科学PPD 8,808
(2019年12月時点)
730名
(2020年4月時点)
MIC 非公開 400名
(2018年4月時点)

各社HP、四季報やマイナビに掲載されている情報から売上高と従業員数をまとめた結果になります。

本来は、売上高や営業利益などを元に各社の規模感を比較していきたいところでしたが、CROは未上場の会社が多く、売上高も非公開の会社が多くあり、比較が難しい現状になっています。

そのため、次の指標として従業員数も並列をして記載しています。

「従業員が多い=規模が大きい」とは必ずしも言えませんが、上の表をご覧いただいても分かる通り、ある程度売上高とリンクしているので、参考程度にはなるかと思っています。

それを踏まえて、MPIとMICの合併について考えてみると、合併前はエイツーよりも規模が小さめではありましたが、合併後は上位3社にはまだ追いつかないまでもエイツーやパレクセルと肩を並べるくらいの規模感になることが推測できます。

上位3社に食い込んでいくには、更なる事業拡大が必要になりますが、MPIの親会社はヘルスケア首位のエムスリーであることを考えると、今後のエムスリーとの連携次第では上位3社に食い込める…かもしれないですね!

合併によって期待されるシナジー効果

合併によって期待されるシナジー効果

【両社の特徴】でも記載しましたが、MPIは治験の中でも第I相試験の受託割合が高く、Ⅱ・Ⅲ相の受託割合が30%と、MICの85%と比較すると随分と差がある状態です。

一般的に治験案件の規模感は、第Ⅰ相⇒第Ⅱ相⇒第Ⅲ相の順に大きくなっていきます(第Ⅳ相は製造販売後臨床試験なので、ここでは別枠にしています)。

つまり、MPIにとって、今後更に規模を大きくしていくには、第Ⅱ相、第Ⅲ相のような案件の規模が大きめの試験を受託していく必要がある訳ですが、それらの試験を受託するには、受託実績とリソースが必要になってきます。

そこで、今回MICを吸収することによって、第Ⅱ相、第Ⅲ相のモニタリング経験があるCRAリソースを多く獲得することになるため、MPIにとっては大きなメリットとも考えられるかと思います。

更に、CRAだけではなくCROがメーカーから案件を獲得する際に重要な要となる”提案力のある人材”を獲得できることも大きいと考えます。

CRO業界では、外資系CROが徐々に勢力を伸ばしてきている背景もあることから、案件獲得の競争が激化してきています。

その中で勝ち残るためには、メーカーのニーズをしっかりと満たすような”提案力のある人材”が必要であり、このことは、プレスリリースの中でも「提案体制強化の更なる推進」という言葉で表現されています。

合併時の体験談

合併時の体験談

実は、私自身もかつてCROにいた時代に合併を経験したことがあります。あくまで主観的な感想ではありますが、合併時に感じたこと等についてもお話していきたいと思います。

最初は不安が先行する

私の場合は、”吸収される側”の立場にいたので、やはり合併の話があったときには大きな不安を持ちました。

「年収下がるのかな?」、「アサインされているプロジェクトはどうなるの?」、「○○さん、辞めるらしい。○○さんも…○○さんも…、自分だけ取り残される?」、「今の会社はアットホームで居心地が良いけど新しい会社の社風に馴染めるかな?」…それはもう色々な考えが頭の中を巡ったわけです。

結局、合併するまでは自分がどうなってしまうのか等も何も分からず流れのままに新しい会社に所属することになりました。

待遇が発表される

今後自分がどうなるのかもあまりよく分からないまま、新しい会社に引っ越しが決まり、しばらくすると給与面や手当面についての説明会が行われました。

私は、まだまだ若手のCRAだったので、給与面は変わらなかったのですが、PL以降の偉い方々は説明会後、ガヤガヤしていたので、待遇が悪くなった方もいたのだと思います(吸収された側なのでしょうがないのですが…)。

手当面に関しても、合併前の会社の方が外勤手当が高かったのですが、合併先の会社の水準に合わせる形となり、結果的に外勤手当の減額となりました(CRAは外勤が多いのでインパクトはかなり大きかったです…)。

少しモヤモヤという気持ちでしたが、給料が減らないだけマシかと思い、とりあえず様子見をすることにしました。

PLを中心に動きが…

待遇やその他もろもろの説明会を受けた後は、PL以上の偉い方を中心に慌ただしい動きとなりました。

吸収された側の部長級は、やはり居場所が無くなる形で会社から去っていき、部長を慕っていた一部の方も釣られる形で会社を去っていきました(恐らく部長の会社に行ったのかな?)。

部長が変われば、当然方針も変わってきます。その影響をダイレクトに受けたのが、各プロジェクトのPLだったように思えます。

今まで方針がガラリと変わる部もありましたので、一部のPLには相当な負荷が掛かっていました。そうして、負荷の掛かったPLから徐々に会社を去っていったのですよね。

CRO業界は転職が非常に多い業界で、特にCRAについてはフットワークが軽い方も多く、待遇が悪くなってしまえば、待遇が良い会社に転職するということも頻繁に見かけます。

こうして、PLが相次いで辞めてしまうようなプロジェクトに関しては、やや炎上気味になっていた様子でした。

逆に多くのプロジェクトは、さほど大きな炎上はせずに何だかんだうまくやっていたので、特に一般のCRAは極端に心配することはないかと思います。

しばらくすると平穏に

合併後は色々と混沌としていましたが、1年も経った頃には随分とその会社にも馴染み、当たり前のように出社して仕事をしていました。

私の周りでは、新卒入社の子たちが合併に対してとても不安に思っていた記憶があるのですが、合併先の人たちはむしろ仲間として歓迎する形で迎え入れてくれたので、新人研修も大人数でワイワイ楽しくやっていました。

その子たちから話を聞いても、最初は不安でいっぱいだったようですが、良い人も多く、安心したと言っていました。

私についても同じで、「吸収された側だ」という負い目などは全然無く、仕事をすることが出来ましたので、負い目を感じそうで不安な方は安心してもらって大丈夫だと思います(^^

吸収する側の会社も、必死に就活をしてCRAになった方がいる会社なのですからね。

もちろん必ずしもハッピーにはるとは限らない

心配する必要はあまり無いと言いましたが、私はたまたまさほど影響が無かっただけで、影響を大きく受けてしまう方も中にはいるでしょう。

そんな時には、無理してその会社に所属をせずに転職を考えても良いかと思います。

実際に私も、待遇が悪くなったからという理由ではないものの、やはり合併が影響でその後に結局転職をしていますし、今考えてもその時の決断は間違っていなかったと思っています。

今後、その辺りの話についてもブログで記事を書いていきますので、少しでも参考になれば嬉しいです。

CRO業界の今後の行方はどうなる?

CRO業界の今後の行方はどうなる?

今回は、MICがMPIに吸収されることになりましたが、MICが歩んできた道を見返してみると、少しCRO業界について見えてくることがあるかと思います。

MICはもともと、大証ジャスダックに上場している企業でしたが、2012年にエムスリーによるTOB(株式公開買い付け)により完全子会社化され、エムスリーグループの仲間入りとなりました。

合併されるまでのMICは、受託型と派遣型を組み合わせるハイブリッド型CROとして特徴付け事業を展開していました。

受託型と派遣型

受託型:メーカーから案件を受託しCRO内で仕事をする。

派遣型:メーカーにCRAを派遣し、CRAは一定期間メーカーで仕事をする。

CRO業界でのスタンダードは、どちらかというと受託型になりますが、モニタリング機能の一部分のみ(必要な部分のみ)を委託したいと考えるメーカーもあり、自社CRAのリソースが不足しているチームにCROのCRAを派遣で迎え入れることもよくあります。

CRA個人としては、CROに所属しながらも、メーカーのオフィスで仕事をすることができ(名刺もメーカーのものを使います)、面白い経験が出来る一方、CROとしては、リソースが外部で固定されていることや優秀なCRAが引き抜かれることもあり(堂々とは引き抜きしませんが…)、それなりのリスクが伴う方法だと個人的には思っています。

派遣型を100%否定しているわけではないのですが、やはり受託型の方がCROにとっては売上が大きく付くため、派遣型に偏りすぎてしまうと、会社も不安定化してしまう恐れがあると考えています。

実は、この考えを支持する面白い資料もあります。

【2013年エムスリー決算資料】MICメディカルの状況

2013年第1四半期決算資料|エムスリーより抜粋

この資料は、エムスリーの2013年7月に発表された決算資料になります。

資料を見ても分かる通り、エムスリーはMICをどのようにテコ入れしていったかというと、派遣と受託に注目したのですね。

2012年6月には、受託PJにアサインされているCRAが29人、派遣PJにアサインされているCRAが71人でしたが、2013年6月には受託58人、派遣42人とその数が逆転しています。

それに伴い、業績も一気にV字回復することになりました。

もちろん、エムスリーグループとなったことによる他のプラス要因もあったものと思われますが、やはり派遣型と受託型がCROの売上に大きく影響していることが分かるかと思います。

では、最近のMICはどうだったでしょうか?派遣などに行かれるCRAが増えていたでしょうか?

ここではこれ以上触れませんが、いずれにせよCRO業界で今後生き残りを考えていく上では無視できない要素であると私は思います。

その他、CRO業界全体の展望を見極める要素は色々ありますが(例えば、モニタリングonlyのCROは今後厳しそうなど…)、今回の件もそんなCRO業界を考えていく上で重要な出来事だったのではないでしょうか。

まとめ

今回は、メディサインエスプラニングとMICメディカルの合併についてお話をしていきました。

CRO業界は最近も合併の話題がチラホラでてきており、今後、より一層淘汰が進んでいくものと思われます。そのような中で生き残るにはどうしたら良いのか?

外資系CROも力を伸ばしてきている状況なため、特に内資系CROにとっては厳しい展開が予想されますが、どのような打開策を打ち出してくるのか、もともとCRO業界にいた身としては注目をしています。