CRAに求められる資質とは?具体例を挙げて解説をしてみる

CRAは専門的な知識を生かして治験がしっかりとおこなわれているかを確認するお仕事になります。

その他、治験が円滑に行われるために医療機関の関係者に治験の説明をしたり、治験資材を搬入したりと幅広い業務を担っており、CRAに必要な資質は多岐に渡ります。

この記事では、その中でもCRAの資質として重要なものをいくつかピックアップして紹介をしていきたいと思います。

CRAに求められる資質

CRAに求められる資質で代表的なものは主に3つあります。

コミュニケーション能力、スケジューリング能力そしてロジカルシンキング能力です。

もちろん、これ以外にも重要な資質はあるのですが、私の中ではこの3つが軸となる重要な部分かと思うので、この3つの資質についてゆっくりとお話をしていきたいと思います。

コミュニケーション能力

まずは、コミュニケーション能力についてです。

これは、CRAでなくても社会で働くうえでは欠かせないものなのですが、CRAはこのコミュニケーション能力が特に求められる職業と言えます。

というのも、CRAは社内の人とだけ接すれば良いのではなく、SMOや医療機関のスタッフや医師など、色々な立場の人とコミュニケーションを取る必要があるためです。

そして、CRAとしてのコミュニケーション能力とはただ単に「私は明るい性格で初対面の人とでも気兼ねなく話すことが出来ます」みたいなものではありません。

もし、私が面接官の立場でそれを聞いたら、「ちょっと違うんだなぁ…」と感じてしまうでしょう。

CRAに求めらえるコミュニケーション能力とは、言葉のキャッチボールがしっかりとできて、自分が伝えたいことを正確に相手に理解してもうこと、そして、相手の言っていることもしっかりと聞き理解することが出来る能力です。

実際のCRAの仕事と照らし合わせ具体例の一例を見ていきましょう。

社内でのコミュニケーション

CRAのメインの仕事は、医療機関に訪問をして、治験実施中の被験者さんの電子カルテや治験用に収集されたデータ(専門用語では、CRFと言います)を閲覧し、治験が適切に実施されているかを確認するものになります。

確認の結果、疑義事項があれば、CRC(治験コーディネーター)や治験責任医師に問い合わせをする場面も出てきます。

そして、CRAはその確認した疑義事項について、会社に戻ったら、モニタリング報告書に記載をしたり、上司に報告をすることになります。

このとき、医療機関で確認してきたことをしっかりと上司に報告することが出来るかということがCRAにとってはとても重要な事になります。

報告以外にも、連絡・相談も重要になってきますが、ここを疎かにしてしまうと後々大きなトラブルに発展する可能性もあるので、社内でのコミュニケーションも非常に重要であると言えます。

CRC(治験コーディネーター)とのコミュニケーション

CRAが最もコンタクトを取ることが多い社外の人はCRC(治験コーディネーター)になります。

極稀にCRCがいなく、直接先生とやりとりすることもありますが、基本的にはどの医療機関にもCRCがいるものと思ってもらって問題ありません。

CRAは依頼者(製薬会社)側の立場ですが、CRCは医療機関側の立場の人になります。

CRCは、治験が適切に実施されるように医療機関側で先生のサポートをしたり、被験者さんに治験参加時の同意説明の補助をしたりするのが主な業務で治験には欠かせない存在です。

何か疑義事項がある際にも、CRAの代わりに先生に聞いておいてくれたりと、CRAにとってもかなり密接に関わります。

最近では、フジテレビのブラックペアンというドラマにも登場していました。(色々問題ありでしたが…)

CRCはCRAにとっても非常に頼りがいのある存在である一方、CRCとのコミュニケーションが良好ではない場合は、CRAは仕事が非常にやりにくくなってしまいます。

そのため、CRCとは特に良好なコミュニケーションを築いておく必要があります。

良好なコミュニケーションを築くには、とにかくCRCに信頼されることが重要です。

信頼されるには、医療機関側の疑義事項に正確に迅速に回答することや医療機関側の事情もしっかりと考えて発言や行動をすることがコツです。

製薬会社側と医療機関側とでは事情が異なります。そこをいかに円滑に持っていけるかはCRAの腕の見せ所と言えます。

医師とのコミュニケーション

CRAはCRCとのコミュニケーションを取ることが圧倒的に多いのですが、もちろん医師とのコミュニケーションを取ることもあります。

治験の業界では、治験責任医師、治験分担医師と呼ばれる方々とのコミュニケーションが該当します。

用語の説明については、この記事ではとりあえず置いておいてお話を進めます。

まず、新卒でCRAになった方であれば、患者さんの立場として以外で医師とお話をするという機会が無い場合がほとんどだと思います。

医師とお話することは、他の方とお話をするよりも格段に緊張をすることでしょう。

医師とのコミュニケーションで注意すべきことは、先生のキャラクターをしっかりと把握しておくことです。

とても忙しい医師の場合、治験の問い合わせのために会ったとしても5分程度しかお話が出来ない場面なども出てきます。

その時には、しっかりと要点を押さえて端的に分かりやすく質問をし、回答を得ることが必要になってきます。

だらだらと質問をしてしまってグダグダになってしまった場合には、最悪、医師から怒られてしまうこともあるので、要点を分かりやすく短くまとめて相手に伝えるというコミュニケーション能力が必要となってきます。

他にも色々な性格の先生がいるので、臨機応変に対応する力が必要となります。

スケジュール管理能力

CRAは、新しく治験を医療機関で始める時の手続きの時が非常に忙しいです。

というのも、新しく治験を始めるには、GCP省令で定められた事項をしっかりこなすのはもちろんのこと、各病院の標準業務手順書(SOPと呼ばれています)やルールを読み込み、それぞれの締切期限をしっかりと守りながら業務をする必要があります。

厳しい医療機関の場合は、締切期限を過ぎてしまったら手続きが1ヵ月遅れてしまうということもあったりしますので、そのようなことが無いようCRAはしっかりとそれぞれの業務の締切期限を把握しておく必要があります。

この当たり前とも言えるようなことでも、しっかりと管理するのはかなり難しいことです。

何故なら、治験の立ち上げ時期は、自分も忙しいですが、自分を指導してくれる立場の先輩も忙殺されているからです。

先輩のキャパシティ等にもよりますが、CRAの仕事の中でもトップクラスに忙しい時期なので、新卒の面倒を見れないくらい忙しいということもざらにあります。

簡略的にですが、治験の立ち上げに伴う業務の具体的な例を見ていきましょう。

GCP省令で規定されていること

・医療機関、治験責任医師の選定をすること
・治験実施計画書の内容について治験責任医師より合意を得ること
・治験審査委員会で承認を得ること
・医療機関との契約を締結すること
・契約締結後、治験薬を搬入すること

各医療機関で規定されていること

・選定に際しての手順
・各医療機関スタッフへのヒアリング(治験の説明)の手順
・契約書の案の提出期限、押印完了済の契約書の提出期限
・治験審査委員会で必要な資料とその締切期限
・治験薬搬入に際してのルール

他にも細かいことは色々あるのですが、ざっと挙げただけでも上記のことが規定されており、CRAはすべてを適切な時期にしっかりと完了させる必要があります。

「期限を守る」ということだけ見れば当たり前で簡単なように思えても、これだけ多くの業務をしっかりと把握しながら業務を進めるには高いスケジュール管理能力が必要になります。

そして、CRAは3~4施設を担当することが比較的多いのですが、それぞれの施設によってルールが違うので、そのすべてを把握するのはとても大変なのです。

もし、就活で面接を受け、スケジュール管理能力をアピールするのであれば、並行して多数の仕事の締切を把握しながら仕事を進めた具体的なエピソードを伝えられれば、とてもインパクトがあるかと思います。

CRA経験者の私から見ても、スケジュール管理能力が高いCRAに入社してもらえるのであれば、とても魅力的に感じます。

ロジカルシンキングの能力

CRAの仕事は、ロジカルシンキング、つまり論理的思考もかなり重要になってきます。

CRAは、医療機関に行ったら基本的には原資料(カルテや検査データ等のことを指します)とCRF(治験のために収集するデータのことです)を見比べて齟齬が無いかを確認する作業がメインになります。

しかし、ただ見比べて齟齬が無いかを確認するだけでしたら、CRAではなくても誰でも出来ることです。

CRAが見るということは、ただ単純に見比べるだけではなく、論理的に考えてしっかりと矛盾が無いかまでを確認することが求められます。

言葉だけでは、分かりにくいので具体例で考えてみましょう。

みなさんも是非一緒に考えてみて下さい!

あなたは、CRAとして医療機関に訪問をしています。
以下のようなシチュエーションであったらどのようなことを確認しますか?

【カルテの内容】
2019.12.01のカルテ
・治験薬は予定通り2019.11.20から服用している
・咽頭部の痛みで来院
・3日前から微熱があった
・身体所見や検査結果より感冒と診断
・治験薬との因果関係は無し
・5日分(~2019.12.06)の感冒薬を処方
・治験薬については、変更なく処方

2019.12.20のカルテ
・2019.12.06には熱や咽頭部の痛みも完全に治った
・5日分の感冒薬を飲み切った
・身体所見、検査所見も異常なし

【治験の情報として収集されていたデータ】
有害事象名:感冒
発現日:2019年12月1日
終了日:2019年12月6日
治験薬との因果関係:関連なし
重篤度:非重篤
併用薬:PL配合顆粒 5日分(毎食後)

CRAとして見るべきポイントは色々あるのですが、【治験の情報として収集されたデータ】を見て何かおかしいことに気が付いた就活生の方がいたらセンスがあります!

このデータで確認すべき点は「発現日」になります。

2019.12.01のカルテに感冒について記載されていて一見、この日が発現日で問題無いと思ってしまいがちですが、よく見ると3日前から微熱があったと記載されています。

この「微熱」について、感冒の症状の1つなのか、それとも別のイベント(業界では有害事象と呼びます)なのかを確認する必要があり、感冒の症状の1つ(つまり随伴症状)であった場合には、発現日が3日前の2019.11.28になります。

経験を積めばこの違和感に気が付くことが出来ますが、普段から色々な物事の矛盾などについても気を配っていると洞察力、そしてそこから発展してロジカルシンキングの能力も身に付いてくるかと思います。

 

CRAは薬学部以外の方も活躍している

CRAに必須ではないスキルとは?

CRAは、薬の開発に携わる仕事ですので、薬の知識が必須と思われている方も多いかと思います。

ですが、CRAを目指すには薬学部である必要はありません。

もちろん、薬学部出身の方が、薬についての知識は多いので、CRAとしてのアドバンテージはありますが、CRAは薬の知識というよりも上に挙げているような資質が重要であると思います。

そのため、薬学部以外の出身であってもCRAとして問題無く働くことができます!(私も薬学部出身ではありません)

私の場合ですが、薬のことでよく分からないことがあったら、薬学部出身の同僚に教えてもらいに行っていましたし、臨床検査値のことで分からないことがあったら臨床検査技師から中途で入ってきた社員に教えてもらいに行っていました。

分からなければ、自分で調べることも出来ますし、社内で聞くことも出来るので薬学部ではなくてもCRAにチャレンジすることは全く問題ありません。

まとめ

CRAは奥が深い職業で、その分求められる資質も多くあるのが事実です。

この記事だけでは書ききれないことも沢山あります。

就活の情報収集でこの記事に辿り着いて見ている方がいらっしゃいましたら、是非、ご自身の経験やスキルとCRAに求められる資質を照らし合わせてアピールをしてみることをおすすめします。