大手製薬メーカーやCROなどインターンの選考を経験すると思った以上に苦戦をしたという方も多かったのではないでしょうか?
製薬メーカーの臨床開発職や研究職は就職難易度も特に高く、しっかりと就活戦略を練っておかないと内定に辿り着くのは至難の業です。
今回は、臨床開発職やCRA職の就活戦略を中心にお話をしていきます。
●CROのCRA職の内定獲得までの戦略
●業界に入ってからのキャリア戦略
治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterのフォロワーは3,000人超え。今回も分かりやすく解説をしていきます!
戦略の概要
私は製薬メーカーやCROの臨床開発職以外にも数多く難関企業に内定を貰った就活生を見てきましたが、成功している人の共通点はしっかりと就活戦略を練っている点です。
逆に就活に失敗をしてしまう方はやはり就活戦略が甘いことが多く、そのことに気が付いた時には既に手遅れというシチュエーションが多いです。
製薬メーカーの臨床開発職や研究職などは特に競争率が激しく「自分には無理だ…」と思っている方も多いかもしれませんが、意外に”しっかりと”就活戦略を立てられていない方が多いので難関を目指せる余地はあります。
この記事では、内定までに必要な戦略や準備などをまとめていますが全てしっかりと出来ている方はほんの一握りです。
逆に言えばここに書いてあることを全てこなせれば内定が貰える確率はグッと上がるというわけですね。
就職のために頑張ってきた受験勉強や学校での勉強や就活を無駄にしないためにもしっかりとやりきりましょうね!
下準備
まずは下準備からです。
ここで紹介する就活系のサイトはすべて無料で利用できるので、登録がまだの場合は一通り登録しておきましょう。
世の中には大量に就活系サイトがありますが、とりあえずここに書いてあるサイトだけで就活は十分戦えます。
どれも超有名サイトなのでこの記事を読んでいる方はほとんど登録しているかもしれませんが、念のため紹介しておきます。
ちなみに、有料サイトへの登録は必要ありません。正直そこにお金を割くくらいなら美味しいものでも食べておきましょう。
Acaric(アカリク)
就活中の大学院生(薬学部6年制含む)の3人に1人が利用している大手就活サイトのAcaric(アカリク)では大手製薬メーカーやCROからのスカウトも届きます。
中外製薬、大日本住友製薬やアステラス製薬などの大手製薬メーカーも登録しており、アカリク経由の情報収集もできます。
その他、新日本科学PPDなどのCROも登録しているため、CROからのスカウトが届くこともある点が魅力的です。稀にですが、製薬メーカーからのスカウトもあるようです。
プロフィールを登録しておいてそれを見た人事からのスカウトがあるというスタイルですが、登録をしておいてまず損はありません。
また、アカリクはAmazonギフト券プレゼントキャンペーンをよくやっているので登録時には必ずチェックしておきましょう。条件も緩い&抽選ではなく条件を満たせば誰でも貰えます。
貰えるものはしっかりもらっておきましょうね。
難関企業を目指している方にとって登録しておくべき就職エージェントサイトのアカリクの評判等についてまとめていきます。 「アカリクとは?」という方からアカリクを使いこなしていきたい方まで読めるよう網羅的に解説をしていきます。 …
マイナビ
言わずも知れた超大手就活サイトのマイナビです。
同じく超大手就活サイトではリクナビもありますが、製薬系やCROの求人はマイナビに掲載されている件数の方が多いので、臨床開発職を目指すのであれば必須で登録しておきたい就活サイトです。
もし「リクナビしか登録していない」という方がいる場合は、臨床開発職/CRA職を目指すのであればマイナビに登録しておきましょう。
パレクセル採用サイト
大手外資系CROのパレクセルは、マイナビにもリクナビにも登録しておらず自社の採用サイトでのみエントリーを受け付けています。
マイナビなどの情報のみで情報収集していると見逃してしまうことになるので外資系CROを視野にいれている方はしっかりと登録しておきましょう。
ONE CAREER
就活対策系サイト大手のONE CAREERでは、4万企業以上のESや体験談の情報が閲覧できます。
やはり志望する企業のESの回答例や面接などの体験談などを知っておくと何も知らないよりは対策が取りやすいのは間違いないので、登録推奨のサイトです。
製薬メーカーやCROの情報もしっかりと網羅されていますので、過去問対策ということであればかなり武器になるはずです。
ちなみに、ONE CAREERの少し面白いところは、ESや就活体験談を自分が投稿した場合、謝礼が貰えたりする点です。
24卒のアステラスについては、上のような感じで金額が設定されていました。
これがマッキンゼーとかだと1万円を超える相場になることもあるので凄いですよね…
情報収集サイトとしての機能はもちろんのこと、就活後にはちょっとしたお小遣い稼ぎもできるという面白いサイトですね。
これは少しお好みになりますが、「業界で働いている人たちのリアルな声が聞きたい」ということであればTwitterでの情報収集もおすすめです。
私もTwitterで就活関連のイベントをやっていたりしますので、気になる方は登録してこっそり業界の方々のお話を聞いてみても良いかもしれませんね。
説明会やインターンでは教えてくれないようなリアルな会話が繰り広げられているので、業界の人たちの現実を知りたいときには役に立ちます。
ただし、Twitterなどの匿名SNSではネガティブな発言の方が目立つ点には注意が必要です。
例えば、「私の彼氏は本当に最高!何でも分かってくれる!」という発信よりも「私の彼氏は全然分かってない。例えば、○○とかありえない」のような発信の方が割合的には多くなるということです。
満足している人はわざわざ「~最高!」などはあまり言わない場合が多いので、その点には注意が必要でしょう。
ちなみに、CRAの転職理由のアンケートを取った時の結果からもそのことが分かります。
次回のブログの記事で紹介をしたいため、アンケートにご協力をお願いします🙇♂️
【CRO/CRAの方で転職された方へ】
あなたが転職をした最も大きな理由は何ですか?※「その他の理由」やコメントなどがありましたら、是非リプ欄にお願いします🙃
— のりす (@Chikennochikara) March 28, 2022
ツイートだけを見ていると、ネガティブな理由で転職している方がかなり多いように見えますが、実際にはポジティブな理由で転職をしている方の方が多いようですね。
業界の構造を把握する
最初のステップになりますが、まずは業界の構造を大まかにでも把握しておくところから始めていきましょう。
今回は製薬メーカーやCROの臨床開発職にスポットを当ててお話をしていくので、その周辺の構造も何となく知っておくと会社説明会やインターンや面接で相手の話が理解しやすくなるはずです。
治験を取り巻く業界
治験に関わる業界を大まかに表すとこのようなイメージになります。
治験をメインで動かしているのは、医療機関、製薬業界/医療機器業界、CRO業界、SMO業界の人たちになります。
そして、治験をおこなうためには様々なベンダーが必要になってきますので、被験者募集を担うPROや治験薬関連のベンダーなど色々なベンダーが治験には関わっています。
当局は治験の実施には直接的には関与しませんが、治験開始時にメーカーから相談を受けたり、薬事承認申請の際には必ずPMDAが登場します。
ですので、一言で「治験に関わりたい」と言ってもこれだけの業界が関わっているので、専門の人からすれば「関わりたいのは分かったけど、どこで?」となるわけですね。
この部分をしっかり説明することができるかを確認する目的を担っているのが「CRA職の志望動機は?」のような質問ということです。
つまり、「CRA職の志望動機は?」を考える時には、この図をイメージしないとうまく書けないので、この部分は覚えておきましょう。
自分が何をやりたいのかを把握する
就活生が志望動機などを考える時には、志望する企業があってそこからその企業の志望動機を考えていくパターンが多いです。
しかし、これをやってしまうといざ志望動機を書こうとしたときにいわゆる「ありきたりな志望動機」になってしまいがちです。
そして、何より矛盾があるのでどうしても志望動機に無理が生じてきます。熱意がこもったものになりません。
例えば、上の例ではファイザーに行きたい本当の理由は「世界でもトップカンパニーだから」ですよね?でも、そんなことを面接で言うわけにはいきません。
だから必至でファイザーの強みを考えます。そして、そこから捻り出された志望動機はどうでしょうか?質が高いものだと思いますか?
もちろん、「世界でもトップカンパニーだから」を企業選びの要素のうちの1つとするのは良いのですが、軸にはしてはいけない部分になります。
では、どうしたら良いのか?ということになりますよね。
まずは「人生で何をやりたいのか」を考える
これって意外にやってみると難しいんですよ。
なぜなら、これは言い方を変えれば「あなたは何のために働くのですか?何のために生きているのですか?」という問いに近いからです。
私が就活生の時に出したこの問いへの回答は以下の通りでした。
私が生きている理由は、多くの人たちのためになるような社会貢献がしたいから。私の仕事で人が笑顔になって「ありがとう」と言われれば嬉しいし、仕事のモチベーションも上がると思う。
漠然と見えるかもしれませんが、私の根幹はこれですし実は今も変わっていません。 ここまではとても大きなスケールでのお話ですので、皆さんも似たような感じになる方も多いかもしれませんが、それでOKです。
新卒の場合、職歴が無いので採用側としては完全にキャパシティー採用となります。なので、人間性の部分は当然ながらじっくり見られるのでしっかりと対策をしておいた方が良いでしょう。
もしあまりイメージが浮かばなかったら本を読んでみるのも良いかと思いますよ。
おすすめは、池上彰が書いた「なぜ僕らは働くのか-君が幸せになるために考えてほしい大切なこと」です。
テーマは「なぜ働くのか」と重めでありながらも、中身は文字だけではなく絵もふんだんに使われていてとても読みやすいのが特徴です。
また、実際に働いている人の声の紹介もあるので何かヒントを得られるかもしれません。
なぜ医薬品の領域で人生の目標を達成しようと考えたのか
私の場合は、社会貢献をすることで多くの人に笑顔になってもらえて「ありがとう」と言われるような仕事に就きたいというものでした。
ただ、これを達成するにためには様々なお仕事があるわけですね。
飲食店では、お客様に美味しいものを提供して笑顔になってもらえますし、ブライダルショップもお客様の幸せを目の前で見ることが出来ます。
その中でも、私は「医薬品に関わる領域」を選んだわけですよね。
なぜ医薬品に関わる領域に興味を持ったのかは人それぞれだと思いますが、私の場合は「小学生の頃から病院通いが続いていて医療が身近にあったから。特に、手術ではなくて薬で治せるという選択肢を知った時にとても安心したから」というものでした。
みなさんはいかがですか?
この部分は「職種の志望動機」の材料になりますのでしっかりとまとめておきましょう(「企業の志望動機」ではなく「職種の志望動機」であることに注意)。
ESや面接対策は就活では避けては通れない道。 その中でもメインとなる志望動機や長所のアピールは、自己分析がしっかりと出来ていないと軸がブレてしまいモヤモヤな回答になってしまうことも。 今回の記事では、私が実際に20卒の就 …
製薬メーカーまたはCROを選んだ理由を考えてみる
ここまでで、「自分の人生としての目標」と「医薬品に関わる領域を選んだ理由」が明確になりましたね。
どんどん掘り下げていきましょう。
次に考えるべきは、「医薬品に関わる領域」の中でも製薬メーカーやCROを選んだ理由です。
この記事の最初の方で治験に関わる業界を紹介しましたが、製薬メーカーやCRO以外にも色々ありましたよね?それなのになぜ製薬メーカーやCROを選んだのかという観点です。
私の場合は、将来的には医薬品開発の上流での仕事(臨床開発計画の立案やプロトコールの作成など)をしたいと考えていました。
ただ、「手術ではなくて薬で治せるという選択肢を知った時にとても安心した」という気持ちが強く、疾患領域というよりも“医薬品という治療の選択肢を増やしたい”という点にフォーカスしていました。
そのため、「様々な疾患領域の患者さんのために広く貢献したい」という意識が強かったため、CROを選択しました。
就活では、製薬メーカーの開発職からの内定も貰っていましたが、自分なりの信念もありその時はCROを選択したことになります(周りからは猛反対でしたけどね…笑)。
私の場合は、この時の選択は大正解でCROで広い領域の治験に関われたからこそ知識や経験の幅が広がり、今の仕事でもそこがしっかりと活かせているのを実感しています。
CROと製薬メーカーのCRA職についてどちらも経験した身として印象をまとめておきます。
製薬メーカー | CRO | |
関われる疾患領域 | ある程度限定される | ほぼ全て |
医薬品以外の開発経験 | 積めないことが多い | 積める可能性がある |
治験薬の情報量 | 多い | 少ない |
住宅手当等 | ある企業も多い | 無し |
年収 | CROよりもやや高い | 5年目くらいまでは製薬メーカーより高いことも |
働き方 | ・CRA以外の雑務があることも ・将来的にマネジメントに回ることが多い |
・基本的にCRAとしての仕事のみ ・マネジメントorプレイヤーで選択することも可 |
業種 | 製造業 | サービス業 |
運用の応用力 | 自社のやり方しか知らない場合が多い | 色々なメーカーのやり方を知っている |
CDPやPRT作成に関われる機会 | 状況によってある | ほぼ無し |
別部署への転籍 | CROよりは機会が多い | 基本的にはあまり無い |
製薬メーカー | CRO | |
関われる疾患領域 | ある程度限定される | ほぼ全て |
医薬品以外の開発経験 | 積めないことが多い | 積める可能性がある |
治験薬の情報量 | 多い | 少ない |
住宅手当等 | ある企業も多い | 無し |
年収 | CROよりもやや高い | 5年目くらいまでは製薬メーカーより高いことも |
働き方 | ・CRA以外の雑務があることも ・将来的にマネジメントに回ることが多い |
・基本的にCRAとしての仕事のみ ・マネジメントorプレイヤーで選択することも可 |
業種 | 製造業 | サービス業 |
運用の応用力 | 自社のやり方しか知らない場合が多い | 色々なメーカーのやり方を知っている |
CDPやPRT作成に関われる機会 | 状況によってある | ほぼ無し |
別部署への転籍 | CROよりは機会が多い | 基本的にはあまり無い |
このあたりは、もちろん会社によって状況が異なるので一概にこの表の通りではないことにご注意下さいね。
一般的に、製薬メーカーの場合は1つの治験薬の第I相~第III相までのデータを知る機会があるので、治験薬の情報については詳しい一方でCROの場合はスポットでの案件受託となる場合もあるので、「第II相のみ担当」というシチュエーションもあります。
ご自身が目指している方向性と合致するのはどちらなのかをじっくり考えてみて下さい。
ここでしっかりと考えることで、面接時によく質問される「あなたはなぜメーカーではなくCROを志望するのですか?」や「製薬メーカーではなくCROは志望しないのですか?」のような質問に対応することができます。
CRAを志望する理由を考える
ここまでで、「医薬品業界に興味を持った理由」、「その中でも製薬メーカー/CROを選んだ理由」をまとめていきました。
次は、「CRAを志望する理由」を考えてみましょう。
お仕事には、「天職」という言葉などがあるようにその人との相性というものも存在します。相性が悪いと仮に内定を取って入社したとしても苦しくなるだけです。
もちろん、入社前から相性が良いかどうかは正確には分からないと思いますが、何も考えずに入社するのとは全然違ってきます。
基本的には、「自分の強みがCRAという仕事に活かすことができるか」を見ていくと良いでしょう。
これは実は自己PRを考える時と同じ考え方になります。
ワンランク上の自己PRの書き方とは?就活で使える例文もご紹介の記事で具体的な考え方の手順を紹介していますので、じっくり考えてみましょう。
テンプレートの作成
1つ前の「自分が何をやりたいのかを把握する」の章では、みなさん自身のことをまとめていきました。
いわば、ここまででまとめた内容がみなさんの「軸」となる部分です。
軸がしっかりしていないと、この後の「企業への志望理由」がブレブレになってしまい、説得力が無い志望理由やありきたりな志望理由になってしまいます。
逆に言えば、軸さえしっかりとしていればあとは企業の強みや方向性に合わせてカスタマイズをしていくだけになります。
テンプレートは、以下の問いへの回答として持っておくと良いと思います。とりあえずは、文字数はあまり気にせず文章を持っておくとカスタマイズがしやすいですよ(どうしても目安が気になる場合は400字程度にしておくと大体の企業をカバーできます)。
- 医薬品業界に入って成し遂げたいことはなんですか?
- 医薬品業界に興味を持った理由はなんですか?
- その中でも製薬メーカー/CROを選んだ理由はなんですか?
- CRAを志望する理由はなんですか?
大事なのでもう1度書いておきますが、これらの質問の回答はみなさんにとっての「軸」となる部分です。ですので、どの企業を志望するにしても基本的にはこの軸がブレないよう構成していく必要があります。
…と言ってもこの段階ではなかなかイメージが付かないと思うのでそのまま読み進めていきましょう。
企業を志望する理由を組み立てていく
さて、次は「企業の志望理由」について考えていきましょう。
完成形の目標は、「ありきたりな志望理由にならないこと」です。
「ありきたりな志望理由」にならないためには、以下の要素を掛け合わせて志望理由を組み立てていくことが重要です。
医薬品開発の課題×企業の強み×皆さんの考察/見解
しかし、「ありきたりな志望理由」では、「企業の強み」のみにフォーカスされていることがほとんどです。
例えば、「弊社はがん領域の医薬品開発に強みがある」と会社説明会や会社HPで見たら、「貴社はがん領域の開発に強みがあり強く魅力を感じています」というような内容になってしまうとかですね。
これでは、説明会やHPの説明をそのまま書いているのに近いので、他の人と被ってしまいますよね。
なので、ここに医薬品開発の課題を加味した上でのみなさんの考察/見解が加わえてオリジナリティの高い志望理由にしていく必要があります。
【完全保存版】CRAの志望理由など面接対策について経験者が徹底解説!の記事でも組み立て方は紹介していますが、こちらでも少し別のパターンとして紹介していきます。
日本の医薬品開発の課題
製薬メーカーにしてもCROにしても日本の医薬品開発の課題解決に向けて様々な取り組みをしています。
ですので、まずは日本の医薬品開発にはどのような問題があるのかを知っておく必要があります。
ただ、就活なのであまり深く知らなくてもなんとかなります。深く知れば精度は上がりますが、そこまで余裕が無い場合はサラッとでもどのような問題なのかを表面上でも知っておくと違ってきます。
物凄く簡単にまとめると以下の通りになります(もちろん、こちらで紹介している以外にもあります)。
日本市場の魅力の低下
薬価改定などにより薬価が低下傾向にあり、これはつまり「売上高の低下」に繋がります。
更に2022年は急激な円安に見舞われているため、ますます「日本で薬を売ること」への魅力が減ってしまっています。
企業の利益は、とても簡単に表すと「売上-コスト=利益」となりますので、売上が下がってしまったらコストを下げなければ利益は確保できなくなってしまいます。
つまり、「開発コストの削減」が課題となっています。
「開発コストの削減」を達成するためには、色々な手段があるわけですが、その「色々な手段」というのが各企業の強みとなります。
小児医薬品の開発
小児治験ネットワークの情報によると日本で小児に使用する医薬品の70%以上は適応外使用という現状であると紹介されています。
私も小さい子どもがいるのですが、子どもは錠剤が飲めないので錠剤を潰して投与したりミルクなどに溶かして飲ませることもありますが、なかなか溶けずに思うように薬を服用できないこともしばしばあります。
小児医薬品の開発が進まない背景には、収益性の問題であったり日本の制度上の問題(例えば米国では大人用の医薬品を開発する際に小児用の医薬品も同時に開発する決まりがあります)があったりします。
医療制度上の問題
日本は、国民皆保険で更に全国どこにいても大体は医療機関があるので、「いつでもどこでも質の高い医療を受けることができる」という魅力があります。
一方で、治験の目線で考えると「症例が分散している」と考えることもできます。
極端な話、日本で病院が1つだけしかなければ全ての症例はその1施設に集まることになりますので、治験の手続きも1施設分のみで良いですし、施設訪問も症例進捗管理もかなり楽になります。
しかし、実際には全国各地に症例が分散しているため、当初設定していた目標の試験期間を越えてしまうこともよくあり、「治験の効率化」という観点での問題を抱えています。
企業研究
日本の医薬品開発の課題について、どのように解決していくかは企業によって異なります。そして、この違いこそが「企業の特色」になります。
本ブログでも、CROの企業研究記事を公開しています。「企業研究記事」の記事一覧にあるような感じで志望する企業をじっくりと研究していきましょう。
…とさらっと言われても難しいと思うので、いくつか情報収集の手段を紹介しておきますね。
製薬系ニュースサイト
製薬系ニュースサイトでは、Answers NewsやミクスOnlineが信頼できる情報を発信しているのでおすすめです。
ニュースでは、医薬品開発以外のテーマにも触れているので、志望理由を組み立てていく材料を得るために開発関連のテーマをピックアップして企業ごとにまとめておくととても分かりやすいです。
ただ、数日でその作業をするのは難しいですので、メーカーの採用が本格化する3月あたりまで継続的にニュースを読んで知識を蓄積しておくことをおすすめします。
決算説明会の資料
上場企業であれば、決算説明資料が公開されていることが多いので、ここから情報を得るのも有効です。
決算説明資料は、投資家向けの資料で製薬業界の方以外にも分かるように記載されていますので、少し頑張れば就活生のみなさんでも何となく情報が分かると思います。
ネット検索で「○○○(企業名)+IR」と検索をすれば大体は資料が出てきますので試してみて下さいね。
例えば…「中外製薬 IR」と検索をしてみましょう。
そうすると、一番上に中外製薬の決算関連の資料が出てきます。
会社HPの中の「説明会資料」でPDFが閲覧できます。
IR資料からは色々なことが分かります。例えば、中外製薬の自社創製品の世界売上高なども載っています。アクテムラが売上を牽引していますね。抗体医薬品の開発に強みを持つ中外らしいデータですよね。
こちらのスライドの「②開発」という部分が臨床開発のパートです。
2つ目に記載されている「デジタルを活用した先進的且つ効率的な臨床開発オペレーション」を2030年に向けた成長戦略として掲げていることが分かります。
ですので、みなさんが次に起こすべきアクションは「では、デジタルを活用した臨床開発オペレーションとはなんだろう?」と考え、調べて自分なりの解釈をすることです。
間違っていても良いのです。就活の段階では「考えること」が非常に重要であることを意識しましょう。
調べた情報をまとめて志望理由を組み立てる
志望理由を考えていくうえで必要な情報は、この時点ではまだ断片的になっています。
最後にこの断片的な情報を繋ぎ合わせてパズルを完成させていく必要があります。
組み立て方のイメージが付かない場合は、次章の例を参考にしながら考えてみて下さいね。
就活の軸と企業の志望理由
ここまでの情報を少しおさらいしておきましょう。本記事で例に出したものを使いながら情報を整理していきます。
就活の軸をしっかりと決めて、その上で企業の強みを分析し組み合わせることで1つのストーリーのようなものが完成します。
面接では「志望動機」や「自己PR」など色々なことを聞かれるわけですが、それらは言ってみればこのストーリーの内容を聞かれているようなものです。
ストーリーの作者がみなさんならストーリーのことを聞かれてもどうってことないですよね。私からすれば就活とはこの(人生の)ストーリーを完成させることだとも思っています。
軸の部分
私は、多くの人たちのためになるような社会貢献を医薬品業界の立場から達成していきたいと考えている。
このような考えに至ったのは幼少期から医療に接する機会が多かったことが影響している。
特に小学3年生の際に手術が必要なまでに持病が悪化したことがあったが、幸いにも医薬品での治療により手術を免れ、医薬品に対してとても感動した経験が大きい。
体にメスを入れることによる身体的負担、入院や手術による金銭的負担、そして手術への不安に対する精神的不安を解消できる医薬品に大きな魅力と可能性を感じていた。
就活に至るまでの学生生活では様々な経験をした。
学業や研究では医学、薬学の知識を始めプレゼン能力や論理的思考が培われた。部活では部長を務め、コミュニケーション能力やマネジメント能力が培われた。
「医薬品業界の立場から社会貢献をしたい」と考えていた私は、学生生活で培った自身の強みと性格的な適性を考え、臨床開発職/CRA職を目指すこととした。
とりわけ、CROを選んだ理由は、できるだけ広い領域の多くの患者さんに貢献をしたいと考えたからである。
2000年代後半の日本ではドラッグラグ問題が話題となっていた。その後、一時は改善に向かったが、2022年現在、薬価の毎年改定が続けられ、ドラッグラグ問題再燃の懸念が生じている。
ドラッグラグ問題再燃を防ぐためには、日本の市場魅力性の維持、すなわち「医薬品開発コストの削減」が課題となる。
課題の解決の手段は様々あるが、中でもDX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使しての治験の効率化に興味を持っている。
なぜなら、治験におけるDXは単純に治験コストの削減のみならず被験者の負担軽減という別の側面からの魅力も非常に大きいからである。
企業の強みと組み合わせる
中外製薬においては、2030年に向けた成長戦略の一環として「デジタルを活用した先進的且つ効率的な臨床開発オペレーションの実現」を掲げている。
具体的な取り組みとして、CHUGAI DIGITALが挙げられる。
その中でも特に興味を持ったのは、デジタルバイオマーカー(Digital Biomarker;dBM)である。
デジタルバイオマーカーは、スマートフォンやウェアラブルデバイスから得られるデータを用いて、病気の有無や治療による変化を客観的に可視化する指標であるが、治験の効率化として注目されているDCTとの親和性が非常に高いと考える。
抗体医薬品に代表される個別化医療の発展という中外製薬の大きな目標はもちろんのこと、開発品目というテーマ以外にも治験の効率化に対する具体的なアクションが明確化されている点は魅力的である。
また、自社のみならずActiGraph社やWelby社など、他社との協業も行っており、チーム全体で難局を乗り越えてきた学生生活に刺激を感じていた私にとってはモチベーションが高く維持できる環境だと考える。
トップイノベーターとしての挑戦を常に続ける貴社にとって、私の強みを活かして貢献していきたい。
あとは文字数整理
ストーリーが完成したら、あとはそこから課題の文字数に合わせて調整をしていきます。
500字で志望理由を書くよう求められているのであれば、ストーリーの内容を取捨選択して500文字に調整をしていきます。
この手順を踏んでいれば何文字で指定されたとしても「文字数が足りない!!他に何を書けば!!」という状況にはなりません。
しっかりと練り込めていれば、むしろ「500文字に収めるのが難しい!」のようになるはずです。
面接対策
ここまでの対策をしっかりと取れていれば、面接対策の半分は終わったようなものです。
自分で組んだストーリーの内容に矛盾が無いか、話の展開に無理が無いかをしっかりと点検しておけば説得力のある話の流れができているはずです。
では、残りの半分はというと「場数による慣れ」と「面接官の質問の意図の考察」かと思います。
とにかく面接は慣れもあると思うので、少し大変かもしれませんがインターンの時から積極的にエントリーをして場数を踏むことを意識していきましょう。
そして、面接はただ受けるだけではなく面接官の質問の意図や何を目的に聞いているのか等をしっかりと考察していくことが重要です。
例えば、「研究概要について簡単に説明をして下さい」という問いがよくありますよね?
あれは、「難しい内容のものを分かりやすく説明をして下さい」という意図を含んでいることが多いです。
ですので、自分の研究を事細かに説明をすることを求められているのではなく、「要点をしっかりとまとめて分かりやすい表現で端的に回答すること」が求められています。
「難しい内容」というのは、実は何でも良いのですが、ほぼ全ての就活生の方は研究室に所属していると思いますので、研究内容にしているにすぎません。別に何でも良いのです。
なぜなら、臨床開発職の仕事においてみなさんがどのような研究テーマを扱っていたのかというのはあまり関係が無いからです。
もし研究テーマで決めているとすると、研究テーマは自分で選べないことが多いのでそれだけで不利になるのはあまりにも理不尽ですよね?
内定を貰ってからの準備
就活が終わって実際に入社をするまでの間のお話ですが、一人暮らしをしようと考えている方は生活の基盤を整えておくことをおすすめします。
正直、新卒の時は結構資金がカツカツなので、ある程度予算のシミュレーションをしておかないと就職をしてからカツカツ生活でストレスが溜まってしまいます。
【体験談】新卒新入社員だった頃の生活戦略を赤裸々に振り返ってみるの記事でもお話しましたが、「美味しいものを食べることを我慢する!」というストレスが溜まりそうな節約よりも「電気代や家賃などの固定費を抑える」という節約の方がストレスが溜まりにくいので色々シミュレーションをしてみて下さい!
少子高齢化が進んでいて年金を受け取る頃には今よりも減額されている可能性が高いので、自分でもしっかりと資産を構築しておいた方が良いですからね。
内定~就職までの勉強
よく就活生のみなさんから「入社するまでの間に勉強をしておいた方が良いことはありますか?」と質問を受けます。
私個人の意見としては、社会人になるとまとまった休みを取りにくくなるので「勉強は不要。思いっきり楽しむ方が良いと思います」という回答です。
CRAになってから勉強をするのでも全然間に合うと思いますが、それでも何か勉強をしておきたいという方は新人CRA/CRC向けの本をまとめたページもあるので、その中から興味が沸きそうなものを読んでみると仕事に役立つはずです。
最近は、4月に近づいていることもあり、CRO、製薬メーカー、SMOに入社される方から治験のお仕事をしていく上で仕事に役立つような本などが無いかというご相談を多く受けています。 そこで、今回は、私自身CRAからキャリアをス …
製薬業界に就職後のキャリア構築
【CRAのキャリアパスは意外に広い!?】CRAのキャリアプランについてパターン別にご紹介の記事でも触れましたが、実はCRA職/臨床開発職からは色々なキャリアの選択肢があったりします。
Twitterをよく観察していると分かるかもしれませんが、この業界は転職をしてキャリア構築をしていくことがよくあります。私もそうですね。
実際に仕事を始めてみないと本当に自分が何をやりたいのかが見えてこないこともあるのですが、臨床開発職の場合は色々なキャリアパスがあるので、仕事に就いてからもしっかりと自己研磨をして自分に付加価値を付けていけばステップアップのチャンスはしっかりとあります。
就活の時点でもかなり険しい道のりかもしれませんが、その分目指すだけの価値はあると思うので、是非頑張ってみて下さいね!
まとめ
今回はかなりのボリュームの記事になりましたが、就活を進めていくうえでのポイントをまとめていきました。
読むのも大変なくらいのボリュームだったと思いますが、この内容をどこまで食らいついてしっかりとやっていくかで勝負が決まります。
下準備の段階から既に差が付いていることも多く、大抵の方はここまでの準備をしっかりと出来ないため多くの方がメーカーの選考を中心に苦戦を強いられます。
やるかやらないかはみなさん次第。やるにしても結構大変ですが、やり切れればチャンスは見えてきます。
臨床開発職を本気で目指している方とは是非一緒に働きたいので、業界でお待ちしています!嬉しい報告があったら是非ご連絡下さいね!
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