治験コーディネーターで年収1000万円は可能か?キャリアパスを考えてみた

治験業界の職種の中では未経験からの転職も多い治験コーディネーター(CRC)。治験業界のお仕事は一体どのくらい年収が貰えるのか気になる方も多いと思います。

今回は、治験コーディネーター(CRC)からスタートして年収1000万円に到達するまでの キャリアパスについて解説していきます。

この記事で分かること
治験コーディネーターで年収1000万円は可能かどうか
治験業界で年収1000万円を目指すまでのキャリアパス
のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterのフォロワー3,000人超え。誰でも分かりやすいように解説をしていくよ!

SMOのビジネスモデル

SMOのビジネスモデル_top

治験コーディネーターには、医療機関に所属している院内治験コーディネーターとSMOに所属している治験コーディネーターがいますが、今回は中途での転職者が多いSMOの治験コーディネーターについて考えていきたいと思います。

今回のテーマを考えていくうえでまずはSMOのビジネスモデルについて知っておく必要があります。

SMOのビジネスというのは概ね以下のようなイメージになります。

SMOのビジネスモデル

SMOは医療機関から「治験コーディネーター業務(CRC業務)」や「治験事務局業務(SMA業務)」などの委託を受けてお仕事をしています。

そして、ここが少し特殊なのですが、一般的にSMOに委託する費用については医療機関ではなく製薬メーカーが支払う形態になっています。

細かいことを言えば、派遣CRCなど他の形態もあるのですが、未経験の方がお話を聞くときは混乱してしまうと思うので、「一般的にSMOに委託する費用については医療機関ではなく製薬メーカーが支払う」と覚えておけばOKです。

SMOがいなければ治験が回らない

医療機関には大学病院~地域のクリニックまで幅広い規模がありますよね。

治験も幅広い医療機関で行われているのですが、治験の手順や規定を医師が全て把握することは非常に難しいため、やはり治験コーディネーターの存在は欠かせません。

クリニックには院内治験コーディネーターがいないので、SMOの治験コーディネーターが入らなければそもそもその医療機関で治験は出来ませんし、大学病院では院内の治験コーディネーターはいますが、人手が足りない施設も多いのでやはりSMOの治験コーディネーターが必要になります。

つまり、医療機関にとっては必要不可欠な存在ということですね。

では製薬メーカー側にとってはどうでしょうか?

製薬メーカー側から見たSMO

【コミュ力最強!】治験コーディネーター(CRC)に向いている人とは?の記事でも触れましたが、日本の医薬品市場は薬価の改定により厳しい状況となっていて、それが原因で開発コストの削減が求められています。

治験を行う上で治験コーディネーターの存在は必要不可欠であることは分かっているものの、院内の治験コーディネーターと比較すると高い費用がかかるため開発コストという観点で考えると製薬メーカー側にとっては苦しい状況です。

もっと分かりやすく言ってしまうと、「コストカットできるのであればしたい」というのが製薬メーカー側の正直な気持ちだと思います。

治験コーディネーターが1000万円を貰うということは、その分会社の売上もそれなりになければなりません。

会社が儲かっていないのに人件費で1人に1000万円も払っていたら潰れてしまいますからね… コストをカットしたいと思っている製薬メーカー、売上を伸ばしたいと思っているSMO。

この利害関係の対立をどのように解決していくかがSMOの課題とも言えるでしょう。

SMOの売上の推移

では、SMOの売上の推移はどのようになっているのでしょうか。

2022年3月に実施された日本SMO協会の調査によるとSMOの売上は以下のようになっています。

SMOの売上推移
出典:日本SMO協会データ2021

2012年をピークに横ばいかやや下降気味ですね。

厚生労働省のデータによると治験コーディネーターの平均年収は423.4万円となっていますので、まずは会社として大きく売上を伸ばす必要があることが分かるかと思います。

依頼者視点から考えるSMOの将来性とは?明暗を分かつ要因を考えてみるの記事で詳細をお話していますが、今までのやり方に捉われず新たに試みに挑戦するSMOでなければ会社として売上を大きく伸ばすことは難しいでしょう。

治験の業界では今はDCT(Decentralized Clinical Trial:分散化臨床試験)というものがトレンドになっています。

DCTはとても簡単に説明すると、在宅でも治験に参加できるというものですが、そのために訪問看護とのコラボレーションが注目されています。

SMO各社はそのトレンドにしっかり対応するために看護師ライセンスを持った中途社員の採用の強化など体制を整えていたりするのですが、そのような取り組みに乗り遅れずにしっかりと着いていかなければいけません。

年収1000万円を目指すということであれば、どのSMOに就職するかが非常に重要になってくるということですね。

会社としての売上が上がればそれだけ年収1000万円に近付くことになりますしね。

治験コーディネーター(CRC)で年収1000万円は難しい

治験コーディネーター(CRC)で年収1000万円は難しい

ここまでは現状と年収1000万円を目指せる会社について触れてきました。

しかし、実際のところ私の周りでは年収が1000万円を超えている治験コーディネーターさんは聞いたことはありませんし、恐らくいたとしても極々少数であると思われます。

治験の業界にいるので色々な求人に触れる機会もあるのですが、SMOの場合は管理職の求人で年収が600~700万円程が多いので、年収1000万円となると更にその1.5倍の年収ということになります。

管理職クラスの更に1.5倍となると管理職の中でも更に上位層になるので、治験コーディネーターで年収1000万円を目指すというのはハードルが極めて高いと言えるでしょう。

治験業界で年収1000万円を目指すためのキャリアパス

治験業界で年収1000万円を目指すためのキャリアパス

治験コーディネーターで年収1000万円を目指すのは非常に難しいとお話をしましたが、SMOに限らずもう少し視野を広げて治験業界全体で年収1000万円を目指すとしたらどのようなキャリアパスがあるかを考えていきたいと思います。

この記事を読まれているのは未経験での転職を考えている方が多いと思いますので、未経験から治験業界のお仕事に挑戦することを想定してお話していこうと思います。

治験業界で未経験から年収1000万円を目指すキャリアパス
この図で赤枠で囲っている部分が年収として1000万円を目指せる可能性がある職種だと想定されます。

SMOに所属をしながら年収1000万円を目指す場合

あまり現実的ではありませんが、やはり治験コーディネーターからキャリアをスタートさせて管理職まで登りつめていく王道パターンになるかと思います。

色々な会社の求人を見てみると治験コーディネーターの経験は10年程が求められている傾向にあるので、目安としては10年は治験コーディネーターとして現場で経験を積み、管理職へとキャリアアップを図っていくイメージです。

ただし、先ほども少し触れましたが、管理職になったとしても年収が600~700万円程のレンジに収まる可能性が高いので、そこから抜け出していくには更に頭一つ抜けていく必要があります。

管理職になってからも大きな功績を上げて会社から評価される必要がため、ハードルは非常に高いことでしょう。

臨床開発モニター(CRA)を目指す場合

未経験から治験業界への転職を考える方がまず始めに見るのが治験コーディネーターというパターンが多いのですが、実は年収1000万円を目指すという意味では臨床開発モニター(CRA)の方が現実的です。

というのも、臨床開発モニターの場合は年収1000万円をモデルケースにした求人が実際にあることや私の周りでも年収1000万円に到達した人を知っているからです。

厚生労働省のデータによると東京都の臨床開発モニター(CRA)の平均年収が512.5万円であるため、治験コーディネーターの平均年収である423.4万円よりも約90万円程高くなっています。

また、臨床開発モニターの場合は出張が多いため出張時には日当が付きます。日当の額は会社によって異なりますが、私が所属していた会社では7時間以上の出張を月4回おこなうと大体年間で14万4,000円程でした。

先ほどの平均年収に日当を足すと約527万円になりますね。

ただし、臨床開発モニターではCRAに向いている人とはどんな人?未経験者のために1から解説でも紹介をした通り、求められる能力が治験コーディネーターと違うことや、その大部分が残業代という構成になってきますので適性があることや体力面、精神面が強くないと厳しいかと思います。

臨床開発モニターからキャリアアップをする場合

臨床開発モニター(CRA)で無理矢理年収1000万円を目指すよりは、臨床開発モニターを経験してプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーなどへのキャリアアップを目指していく方が個人的に健全に年収1000万円を目指していけるのではないかと思います。

プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャークラスになると、年収1000万円をモデルケースとした求人は一気に増えますし、製薬メーカーへチャレンジすることも可能になります。

私が知っている元看護師さんは、CROで臨床開発モニターを経験してプロジェクトリーダーとなり、製薬メーカーに転職して年収1000万円に到達していました。

もちろん、非常にうまくキャリアを進めていく必要があり決して楽ではありませんが最終目標としてみても良いのではないかと思います。

まとめ

結論としては治験コーディネーターで年収1000万円を目指すことは難しいだろうというものでしたが、未経験から治験業界に転職する場合、最初のステップとして治験コーディネーター(CRC)を目指してそこから臨床開発モニター(CRA)を目指していくというのもキャリアプランとしてはありだと思います。

私の周りを見てみても「看護師/臨床検査技師→治験コーディネーター→臨床開発モニター」という方も結構見かけるのでキャリアパスとしては浸透してきているのかもしれませんね。

ただ、いずれにしても年収1000万円に到達するには茨の道であることは間違いないので、年収なのかそれともプライベートの充実なのか、そのあたりのみなさんの優先順位などもしっかり考えた上でキャリアパスを選択してみることをおすすめします!

以下の記事では、CRC以外にもCRAという選択肢や転職戦略について網羅的にまとめていますので年収1000万円を本気で目指していきたい方は是非読み込んでみて下さいね。