忙しいのはもう嫌だ!のんびり働きたい薬剤師の選択を解説

薬剤師の仕事は近年、高齢化や生活習慣病の増加などの影響で、ますます需要は高まっています。一方で、薬局の数が急増したことで、薬剤師の負担はますます大きくなっているのが現状です。

そんな中、調剤ミスや仕事の忙しさに悩み、薬剤師を辞めたいと考えている人もいるのではないでしょうか。

増える一方の業務量に残業続きの日々、そんな中でもミスがないように神経をすり減らして頑張っているのに、患者さんには「なんでこんなに時間がかかるのか」と怒られ…

新卒で働き始めた頃の輝かしい志はどこへやら、日々何とか重い体を起こして出勤し、目の前の業務をこなすので精一杯なことでしょう。

そこで今回は、「自分のペースでのんびり働きたい!」そんな薬剤師の理想に近づくための選択肢についてしょうこさんにご紹介していただこうと思います!

のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は4,900人程。日々患者さんのためにやりがいのある充実したお仕事に取り組んでいます!

薬剤師はのんびり働けない?選択肢は無いの!?

のんびり働きたい薬剤師の選択肢

薬剤師の仕事は日々の処方箋の対応と薬歴の処理に雑務とで毎日大わらわ。

人件費の高い薬剤師は会社としても人数に余裕を持たせることができず、ギリギリの人数で必死に働かなければならない環境になってしまうことが多いです。

病院では、病床数に対する薬剤師の人数が決められてしまっていますので、労働環境改善の見込みは薄いと言わざるを得ません。

仮に人員に余裕があったとしても、1分でも早く出せとばかりに患者さんが待ち構えていますから、なかなか時間に追われず自分のペースでというわけにもいきませんよね。

では、薬剤師でいる以上ボロボロになるまで激務を続けなければならないのでしょうか?

答えはNo!

実は薬剤師をやりながらのんびり働く選択肢や薬剤師の資格や経験を活かしたキャリアチェンジなど色々とあったりします。

今回の記事ではこの辺りについて色々と深堀をしていこうと思います。

のりすのりす

ちなみに、忙し過ぎて仕事でミスが増えてきて落ち込んでいるという方はのんびり働ける環境に行くことが必ずしも本質的な解決とはなりません。
【薬剤師の岐路】ミスとの向き合い方と辞めたい心の整理の記事でミスとの向き合い方も紹介しているので、まずはミスと向き合ってみることも大切です!

薬剤師としてのんびり働く選択肢を考察

薬剤師としてのんびり働く選択肢を考察

まずは薬剤師としてのんびり働くための選択肢について考えていきましょう。

具体的な例を挙げながら1つずつ説明をしていきます。

管理薬剤師は避ける

管理薬剤師は、薬局の責任者として、調剤業務のほか、人材育成や経営管理などの業務も担います。

そのため、業務量が多く責任も重いため、のんびり働くことは難しいでしょう。

ただし、薬剤師は昇進しないと将来的に年収が伸びにくいため、収入面のデメリットはあります。

在宅に積極的な企業は避ける

在宅医療の需要が高まっていること、及び調剤報酬獲得のため在宅に積極的な企業が増えています。

薬剤師としてのやりがいはありますが、在宅医療では、患者のもとに出向いて薬を届けるため、移動時間や訪問時間の確保が必要となるため現場の負担は大きくなりがちです。

患者さんの容態によっては緊急の訪問依頼が来ることもあり、突発的な残業や休日出勤を余儀なくされることもあります。

個人病院とマンツーマンの関係にある薬局を選ぶ

総合病院、駅前やショッピングモールなどの好立地のクリニックでは処方箋の数が多く、調剤業務も複雑になります。

マンツーマン型の薬局では、処方箋の数や面処方の割合が少なく、見慣れた処方箋ばかりなので調剤業務は比較的落ち着いてできるでしょう。

地域に根ざしたかかりつけの患者さんが多いため、比較的患者さんも優しい傾向にあります。

ただし、立地的には郊外や駅から離れた場所になるので通勤は不便になるかもしれません。

のんびり働ける転職先の例

のんびり働ける転職先の例

転職を考える場合、薬剤師の資格を活かしつつワークライフバランスをコントロールしながら働ける転職先にはどんな選択肢があるのでしょうか。

職場の選び方のポイントも紹介します!

通勤や収入面で妥協して調剤薬局で働く

調剤薬局でのんびり働きたい場合は、年収は高望みしない方が良いでしょう。

薬剤師の年収が高い会社は人件費がかさむため、忙しい環境下で高いパフォーマンスが求められます。

のんびりとは程遠い働き方をしなければなりません。

どんな仕事でも、高年収とライフワークバランス両方が成立することは難しいです。

「高年収でバリバリ働いた挙句、体を壊してしまい休職や退職を余儀なくされる」くらいなら、「年収は少しだけ妥協して、長く働き続けられる職場に転職する」方が、結局は生涯年収が高くなる可能性が高いです。

安定期の患者さんが利用する病院に転職する

病院でものんびり働ける職場はあります。

例えば、回復期リハビリテーション病院や、療養型病院などが考えられます。

症状が安定・寛解している患者さんのための病院なので容態が急変して薬が必要になったり、高度でハイリスクな薬を扱ったりすることは極めて少ないため、忙しい中で大きな医療事故に怯えながら働く必要はありません。

ただし、高度かつ先進的な医療を学べるという病院ならではのやりがいは少なくなってしまうでしょう。

医薬品、医療機器メーカーなどの企業で働く

企業では基本的に接客をすることがなく、自分に与えられた案件を期日までにこなせば良いので、分単位で時間に追われることはありません。

医療現場よりは突発的な残業は発生しにくく、最近は働き方改革の一環で残業削減や有休消化に力を入れている企業が多いので、労働環境の改善は望めるでしょう。

薬剤師の経験や資格を活かせてワークライフバランスをとりやすい職種には次のようなものがあります。

臨床開発職(CRC、CRA)

医薬品開発の際の承認申請の際に必須である臨床試験、いわゆる治験に関わるお仕事です。

ざっくり違いを説明すれば、治験に関わるさまざまな業務のうち、CRAは製薬企業側の仕事を、CRCは治験を行う病院側の仕事を担います。

臨床開発職のお仕事は忙しい時期もありますが、エンドユーザーを相手にする薬剤師に比べると仕事のペースはコントロールしやすく、有休取得もしやすい環境にあります。

のりすのりす

ただし、会社によっては激務度が高い会社もあるので注意が必要です…
未経験からの転職を考える場合には、しっかりと口コミ情報などをチェックしましょう。

製薬企業の管理薬剤師

製薬業を行っている企業には、医薬品の品質・在庫管理・薬事申請・DI職などを担う管理薬剤師を置かなければなりません。

比較的時間外の業務は発生しにくく残業は少ない印象であり、薬剤師の資格が“必須”であるためおすすめですが、必要人数も少なく働きさゆえに枠が空かないため募集自体が希少です。

DI職

病院や薬局から寄せられた医薬品に関する問い合わせに対し、情報提供する仕事。

問い合わせ窓口は、製薬企業内に設けられている場合もありますが、多くは委託先の企業で受け持っていることが多いです。

基本的にコールセンターなので営業時間外の対外業務はなく、残業は発生しにくいでしょう。

本社で業務にあたる場合と、製薬企業に派遣されて働く場合があります。

のんびり働くために考えるべきこと

のんびり働くために考えるべきこと

のんびり働ける職場を探すためには、ポイントや注意点があります。

いくつかご紹介しますので転職先を探す前によく考えてみてくださいね。

正社員以外の働き方を検討する

正社員として働くと、残業や休日出勤などの可能性も高くなります。

働きやすくて通いやすい店舗に配属されたとしても、社員には異動がありますから数年後、もしかしたら数ヶ月後には忙しい店舗に行かなければならないかもしれません。

そのため、のんびり働きたい場合はパートや派遣など正社員以外の働き方も検討しましょう。

ただし、正社員でなくなれば雇用安定性や年収や福利厚生の面でデメリットが生じる可能性があります。

新しくオープンする店舗を狙う

新しくオープンする店舗は、まだ患者数も多くないため、のんびり働くことができます。

しかし、会社としてはその立地で出店すれば処方箋枚数の獲得が見込めると信じ出店しているわけなので、いずれは忙しいお店に成長する可能性があります。

その点は覚悟はしておいた方が良いでしょう。

とはいえ新規オープンなら人間関係も作っていきやすく、古い店舗にはない新しい調剤機器が導入や動線に配慮したレイアウトによって業務効率向上が図られており働きやすいというメリットはあります。

スキルアップを諦めない

のんびり働くことを第一に考えると、スキルアップを諦めてしまう人もいるかもしれません。

しかし、スキルアップを諦めてしまうと、将来的に転職や独立が難しくなる可能性があります。

そのため、のんびり働きながらもスキルアップを目指すことが大切です。

年収よりも時間単価で考えよう

例えば調剤薬局から未経験で病院や企業に転職する場合、年収は100万くらいは下がる覚悟が必要です。

管理薬剤師をしていれば尚更、200万は下がります。

実際筆者は年収700万の管理薬剤師から、年収450万円の企業へ転職したのですが、そこへ踏み切れた理由についてお話しします。

さすがに薬剤師も10年目、大型店の管理薬剤師としてバリバリ働いていた私にとって、年収200万以上ダウンはプライドが両手を広げて邪魔をしていました。

それでも転職に踏み切った理由。それは、求人票を見ていてあることに気づいたからです。

私の勤めていた調剤併設ドラッグストアは、年間休日数116日、所定勤務時間8時間でした。

しかも私の場合、管理薬剤師手当の中に見込み残業代20時間分が含まれていました。

一方、企業の求人を見ると年間休日125日、所定勤務時間7.5時間なんてざらにあります。残業をどちらも同じ月20時間と仮定すると、年間の労働時間が192時間も違うのです!

「なんだ…いっぱい働いてるんだからいっぱいもらえて当たり前じゃん…」

まして企業ならば在宅ワークも可能な場合もあり、通勤時間を大幅に減らすことができます。

そう考えて通勤時間込みで時給換算したときに、実は時間単価は薬剤師として働くのと大きく変わらない、ということに気づいたのです。

「薬剤師の方が高収入」という概念が私の中で崩れた瞬間でもありました。

稼ぐ方法としては、何とも効率が良くない。

もし収入面がネックで転職に踏み切れずにいる人がいるとすれば、こういう考え方も大事にしてほしいな、と思います

まとめ

どんな仕事でも会社に無駄な人件費をかけるわけにはいかないので、「のんびりできる」というと語弊があるのですが、とはいえ残業するタイミングや休みのとりやすさなど自分で働き方をコントロールできるのとできないのとでは大違い。

そして、薬剤師の環境でそれが叶えにくいのは確かです。

働き方を自分でコントロールしやすいという点では、企業や行政機関の方がワークライフバランスを大切にする人には合っているかもしれませんね。

私自身、両親に苦労をかけて薬学部に行かせてもらったのに薬剤師を辞めることにはかなり抵抗はありました。

それでも、「薬剤師にはいつでも戻れるけれど、未経験の企業への転職は年齢を重ねるほど難しくなる。だったら今しかない!」と考えて私は転職活動を始めました。

納得いく転職ができなければそのときは薬局へ行けばいい。

薬剤師免許がある以上はどう転んでも食いっぱぐれることはないのだから、何だってできる。

薬剤師免許という支えがあったからこそ、未経験の企業転職に踏み切ることができたのだと思います。

薬剤師そのものを辞めてしまうとしても、ちゃんと使える資格をとっておいて良かった、決して無駄ではなかった、と思えたのです。

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