薬剤師は割に合わないは本当?色々な側面から分析をしてみた

薬剤師の仕事は何かと大変で、色々な場面で「割に合わない」と感じることもあるのではないでしょうか?

そこで今回は、薬剤師が「割に合わない」と感じるいくつかの場面について実際のところ本当に割合わないのかどうかを分析していきたいと思います。

この記事で分かること
薬剤師が割に合わないと感じる場面と実状。
薬学部時代にかかった学費がしっかりと回収できているのか。
薬剤師が割に合わないと感じた時の対処法。
のりすのりす

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薬剤師は割に合わない職業?

薬剤師は割に合わない職業?

薬剤師になるためには6年制の薬学部に通って国家試験に合格をする必要があり、いくつものハードルを越えていく必要があります。

そして、いざ薬剤師になっても夜勤や当直があったりクレーマー気質な患者対応などもしなければいけない場面もあるにも関わらず、昇給率は一般企業よりも控えめということもよくあります。

そんな状態では、ふと頭によぎってしまいますよね。

薬剤師って実は割に合わなくない…?と。

実は薬剤師が割に合うか合わないかは考え方によって異なるため、一概に「割が合わない職業」ではなかったりもします。

そこで、本記事では「薬剤師が割に合うか合わないかの判断ポイント」についていくつかの観点から分析をして考察をしていきたいと思います。

薬剤師が割合わないと思われる理由を分析!

薬剤師が割合わないと思われる理由を分析!

薬剤師が割に合わないと思われる理由はいくつか考えられます。

そこで、「薬剤師が割に合わない」と思われている理由について、それぞれ実際のところどうなのかを分析していきたいと思います。

理由1:年収と学費が釣り合っていない

薬剤師になるためには6年制の薬学部に通う必要があるため、私立に通うとなると多額の学費が必要になってきます。

多額の学費が必要になるので、その分、薬剤師になってからは周りと比べても多くの収入が得られることを期待するわけですが、実際のところはどうでしょうか。

まずは、薬学部の学費が他の学部と比べてどれ程高いのかを見ていきましょう。

薬学部とその他の学部の卒業までの学費

卒業までの学費を文部科学省が公開している「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」から算出をしました。

人数の比率で考えると私立大学の薬学部を卒業した薬剤師が多い訳ですが、卒業までにかかる学費は平均で1,000万円を超えており私立大学の理学・工学部と比較しても2倍近くの差が出ています。

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では、次にそれだけ高い学費に見合った年収が貰えているのかを見ていきましょう。

年齢/職業 薬剤師 看護師 臨床検査技師 研究者 システムエンジニア
25~29歳 4,648,800 4,770,400 4,153,900 4,864,200 4,341,800
30~34歳 5,641,300 4,788,700 4,671,000 5,807,700 5,182,700
35~39歳 6,080,700 5,058,300 5,260,500 6,788,300 6,016,900
40~44歳 6,304,100 5,297,400 5,116,300 7,706,400 6,255,600
45~49歳 6,412,200 5,653,600 5,761,600 8,393,600 6,859,800
50~54歳 6,656,000 5,663,800 6,587,800 8,789,800 7,017,500
55~59歳 7,173,900 5,784,500 7,111,100 9,725,100 6,986,800
60~64歳 5,823,000 4,831,100 5,117,000 6,674,400 5,339,300
生涯収入 2億4,370万円 2億923万円 2億1,889万円 2億9,374万円 2億4,000万円

薬剤師とその他のいくつかの職業の年齢別の平均年収を並べてみました。

高い学費に見合っただけの年収が貰えているかという視点で見ていくと、4年制である看護師や臨床検査技師と比較すると30代に入ると100万円近くの年収差が付くため高い学費に見合った年収になっているように見えます。

しかし、医療職ではなく就職先が一般企業である研究者やシステムエンジニアと比較をしてみると年齢が上がるにつれて薬剤師の平均年収を上回っているという結果でした。

生涯年収について見てみると、全職種の大卒の男性の中央値が2億1,280万円、女性の中央値が9,120万円なので学費分以上の金額はしっかりと回収できていることが分かります。

このことから、生涯年収の観点からは薬剤師は割に合う年収を貰っていると言えるかと思います。

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看護師や臨床検査技師と比較すると高年収ではありますが、企業と比較すると昇給率が低い傾向にあり、年齢が上がるにつれて「割に合わない」と思う場面が増えそうですけどね。

理由2:業務量の割が合わない

薬剤師はやることが多く、業務量が多い割にあまり年収に反映されていないのではないかという意見もよく耳にします。

先ほどは年収を単純に比較してみましたが、確かに業務量も大切な要素です。

具体的には、残業が月に50時間あって年収が600万円の人と残業が月に0時間で年収が600万円の人がいたら後者の方が割が良いですよね?

そこで、それぞれの職種の平均残業時間と1時間当たりの単価について比較をしてみました。

職種/項目 30~34歳の平均年収 所定内実労働時間 月の平均残業時間 月の総労働時間 1時間当たりの単価
薬剤師 5,641,300 167時間 12時間 179時間 2,626円
看護師 4,788,700 156時間 7時間 163時間 2,448円
臨床検査技師 4,671,000 162時間 14時間 176時間 2,211円
研究者 5,807,700 164時間 14時間 178時間 2,719円
システムエンジニア 5,182,700 166時間 11時間 177時間 2,440円

薬剤師を見てみると、月の総労働時間が179時間と他の職種と比較しても長いことから「やることが多く忙しい仕事」というのは間違いなさそうですね。

次に1時間当たりの単価ですが、年収と月の総労働時間から単純計算すると薬剤師は2,626円/時間と研究者に次いで高い単価であることが分かります。

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この結果から、薬剤師の仕事はやることが多く忙しいながらも時間当たりの単価としては高くて割が良い職種に分類されるということですね。

理由3:接客が大変なのに割が合わない

【資格を活かす】薬剤師として働きたくない人におすすめの方法をご紹介でも触れましたが、薬剤師にとっては接客ストレスがかかるため、クレーマー気質な患者さん対応をした時には「割に合わない」と感じる方もいますよね。

そこで、薬剤師の接客層となるべく近いような条件(比較的広い幅の層の接客をする)の職種との平均年収等を比較してみました。

項目/職種 薬剤師 市役所職員 飲食店店員 航空機客室乗務員
25~29歳 4,648,800 3,384,441 3,071,700 3,785,600
30~34歳 5,641,300 4,334,485 3,449,900 4,552,600
35~39歳 6,080,700 4,875,147 3,563,800 5,434,600
40~44歳 6,304,100 5,495,757 4,044,300 5,656,700
45~49歳 6,412,200 5,953,711 3,545,900 6,409,300
50~54歳 6,656,000 6,524,092 3,635,900 6,673,600
55~59歳 7,173,900 6,717,454 3,425,900 6,775,000
60~64歳 5,823,000 2,844,600

市役所の職員や飲食店の店員やキャビンアテンダントも薬剤師と同じく幅広い層の接客をしなければいけませんが、34歳までの年収を見てみると薬剤師の平均年収が100万円以上上回っています。

しかし、40代から市役所職員やキャビンアテンダントとの年収差はどんどんと縮まり、50歳代前半ではほぼ横並びになるようです。

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30代までは接客が大変な他の職種よりも100万円以上平均年収が高いため割に合わないとは言えなそうですが、40代以降では年収差が縮まるため「割に合わない」と思う方が増えそうですね。

薬剤師が割に合わないと感じた時の対処法

薬剤師が割に合わないと感じた時の対処法

薬剤師が割に合わないと感じる場面についていくつか分析をしてみましたが、概要は以下の通りでした。

年収と学費のバランスからの観点
  • 45歳以降は4年制の職業との年収差が縮まり割に合わないと感じる場面が多くなりそうである。
  • とはいえ、生涯年収は全職種の生涯年収より大きく上回っており、学費に見合うだけの年収を貰っていると言える。
業務量からの観点
  • 月の就労時間は他職種と比較すると多い傾向にあるが、時間当たりの単価の水準は高く割に合っていると言える。
接客からの観点
  • 接客が大変だと思われるいくつかの職種と比較すると50歳代前半で年収差が縮まる傾向がある。
  • 50歳代前半付近では割に合わないと感じる場面がありそうだが、生涯年収で比較するとやはり割が良い部類と言える。

特に45歳以降について他職種と比較すると年収差が縮まっていることからその付近の年齢で「割に合わない」と感じる場面が多そうですが、色々な観点で分析をしても「割が良い」という傾向があるようでした。

生涯薬剤師として働いても割が悪いということはあまり考えにくいですが、45歳以降で他職種との年収差が大きく縮まっていることを考えると、キャリアチェンジ等の対策をして生涯年収を最大化することも可能です。

もちろん、収入の観点以外からも「割に合わない」と感じた時にどのように対処していけば良いのかをご紹介していきます。

対処法1:企業への転職

他職種との年収差を比較すると40代以降の年収については差を詰められている傾向にあるため、35歳までの間に企業への転職を目指すというのも手です。

【製薬会社の社員が解説】薬剤師以外の異業種への転職総まとめの記事では薬剤師から製薬会社(CROを含む)への転職について触れていますが、その中でも臨床開発モニター(CRA)は40代後半で1,000万円近くの年収に到達するため、このような職種へ転職をするという方法もあります。

CRAはCRAで患者さんの接客とは違ったストレスもあったりすのですが、在宅勤務やフレックス制度がかなり進んでいる点で魅力的な職業です。

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将来的に製薬会社の臨床開発職としてキャリアを広げていきたいと考えている方は、CRAが登竜門的位置付けになるのでどのような職種か調べてみるのも良いと思いますよ!

対処法2:安定期の患者さんが利用する病院に転職する

忙しいのはもう嫌だ!のんびり働きたい薬剤師の選択肢を解説の記事でも触れましたが、回復期リハビリテーション病院や療養型病院など、安定期の患者さんが利用する病院に転職することで日々の多忙からの脱却を目指す方法があります。

高度でハイリスクな薬を扱うことが少ない分、精神的なプレッシャーからは解放されるので「割に合わない」と感じる場面が少なくなるかもしれません。

対処法3:マンツーマン型の薬局に転職する

こちらも先ほどの記事で紹介をしていますが、マンツーマン型の薬局は見慣れた処方箋を扱う機会が多いことやかかりつけの患者さんが多いことから患者さんも優しい方が多い傾向にあり、接客のストレスを減らせることが期待できます。

ストレスを減らせるという意味では良いのですが、年収とストレスはトレードオフの関係なのでガッツリ働く場合と比較すると年収面では低くなってしまうことがほとんどです。

そのため、自分にとって「割が良い」と思える境界がどのあたりかを見極めていくことが重要です。

まとめ

今回は薬剤師が割に合わないと感じる場面について、実際のところどうなのかを分析していきました。

記事では割に合う合わないを年収面を尺度に考えていきましたが、実際のところはお金だけでは他の様々な要素が絡んできます。

例えば、薬剤師は正社員でなくてもパートとしての働き口も沢山あり給料も他の職種と比較すると大分高いので「割が良い」と考えることもできます。

逆に処方薬について医師に確認をする時に理不尽に怒られたり、患者さんに理不尽に怒られることを経験すると精神的な負荷がかなり大きいのでいくら年収が良かったとしても「なんか割合わない…」と思うことも多いでしょう。

いずれにしても、自分の中でどこまでのラインであれば割り切れるかというのが一番大切だと思います。

精神的な安定なのか高い年収なのか、ご自身にとって特に大切にしているものを考えると視野が広がり違った世界が見えてきそうですね!