【薬剤師の岐路】ミスとの向き合い方と辞めたい心の整理

薬剤師の仕事は人の命や健康に関わる仕事なので、ミスは許されません。

とはいえ、薬剤師も人間です。時にはミスをすることだってありますし、ミスをして辞めたいと思うことだって普通です。

そこで、今回は薬剤師から企業へ転職をされたしょうこさんに薬剤師の仕事におけるミスやその結果との向き合い方、気持ちの立て直し方についてご紹介をしていただきます!

この記事で分かること
薬剤師の仕事でミスをしてしまった時の心の整理の方法
ミスが続いて薬剤師を辞めたいと思った時の対処法
筆者が薬剤師を辞めたいと思った時の経験談
のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は5,000人程。日々患者さんのためにやりがいのある充実したお仕事に取り組んでいます!

過誤やミスとの向き合い方と辞めたい心の整理

ミスとの向き合い方と辞めたい心の整理

過誤やミスの多くは些細なもので、直接患者さんの健康被害につながるケースはあまり多くはありません。

だからといってミスをしても良いということではないですが、そこで自信を失ってしまったら、神経をすり減らして疲労が重なり、余計ミスをしかねませんし自分自身の健康を損なうことだってあり得ます。

そのため、ミスが起こった原因を落ち着いて分析をして次に活かしていくことが薬剤師として成長していくためには重要です。

とはいえ、既にミスを重ねてしまい精神的に負荷が大きくなっている状態ではそのまま薬剤師を続けていくよりも企業へ転職をする方が正解なこともあります。

そこで今回の記事では、ミスを重ねて辞めたいと思った時にどのような選択肢を選ぶのが良いのかを解説していきたいと思います。

のりすのりす

「薬剤師として頑張っていくか」それとも「企業へ転職をしてキャリチェンジに挑戦をしてみるか」みなさんなりの答えを探してみて下さいね!

薬剤師のミスとはどのようなものか

薬剤師のミスとはどのようなものか

そもそもミスが起こらなければ落ち込む必要はないのですから、まずはミスの原因を振り返ってみましょう。

ミスやトラブルの大きさに対して必要以上に落ち込んでいませんか?

自分だけのせいではないのに、自分を責めすぎていないでしょうか?

ミスの種類と起こり得る問題

まずは薬剤師の仕事の中で起こり得るミスと想定される問題の大きさについて考えてみましょう。

薬剤師の主なミスの内容
病院名や処方医の名前、処方内容の入力を間違える。
薬の数を間違える。
別の薬を渡してしまう、患者を取り違える。
医師の処方が誤っていることに気づかず、渡してしまう。
併用禁忌の組み合わせに気づかず、飲み合わせの悪い薬を飲ませてしまう。

あくまで経験則にはなりますが、ほとんどの過誤は重大な健康被害に繋がってしまう頻度が低いです。

のりすのりす

もちろん、風邪に対する処方と循環器やがんの治療の場合とで間違えたときのリスクは大きく異なるのでケースバイケースではあると思いますけどね!

過誤が無いようにすることも大切ですが、起こってしまった出来事に関して薬剤別のリスク、疾病別のリスクを理解した上で対応を考えることができるのも薬剤師のスキルとして大切です。

薬局が間違えたわけでなくても、患者さんが薬を飲み間違えてしまったら同様の対応が必要になりますよね。

ミスを反省すると同時に、薬剤師としての知識とスキルを磨く良い機会と考えて切り替えましょう。

ミスの原因と対策

では、ミスが起こる状況や原因について考えてみます。

原因を考えた上で、自分でできること職場の仲間と話し合えることはないでしょうか?

薬剤師のミスの主な原因
時間に追われ、焦っていた
疲労が溜まっていた
機器のトラブルやレイアウト
従業員どうしの伝達が不十分だった

ミスが起こったときに大切なのは、繰り返さないよう原因を取り除くことです。

「○○を徹底する」は目標であって対策ではありません。

ミスをしようと思ってミスをしている人はいませんよね。

必ず、何か他の要因があって(マルチタスク状態に陥っていた、調剤台の上が散らかっていて見落とした、など)徹底すべき確認が抜けてしまったのですから、その要因を取り除くことのできる対策を行いましょう。

例えば…

  • 「申し送りを徹底する」⇒「申し送りは○○色の付箋で処方箋に貼るよう統一する」
  • 「鑑査中は他のことをしない」⇒「鑑査中に集中できるよう、各自の業務量を見直す」
  • 「(疲れていても)確認を徹底する」⇒「見落とさないよう(or 業務効率を上げるため)調剤室内を整理整頓する」

    といった具合です。

    のりすのりす

    これを見て頂ければわかるように、ミスが起こった後にすべきことは、1人が頭の中でウンウン悩むことではなく、職場全体を良くしていくことだ、とわかるのではないでしょうか?

    過誤やミスが与える心理的影響

    薬剤師のミスによる心理的影響

    過誤やヒヤリハットを起こしたら大抵の人は落ち込みます。

    まったく反省の色が見えないのは困りものですが、だからと言って必要以上に落ち込む必要はないのです。

    まずはミスをしてしまった人が感じる感情のステップについて知っておきましょう。

    過誤やミスをしたときの感情と思考

    薬剤師がミスや過誤をした時の感情と思考

    自分のミスが発覚した後、本人が感じるであろう感情を時系列順に並べてみました。

    始めはショックが先行しますが、次第に恐怖や不安や焦りが押し寄せてきて気持ち的に滅入ってしまうこともあるでしょう。

    ただ、このような気持ちは誰しもが感じる事です。

    のりすのりす

    大切なのはしっかりとミスと向き合うことですね!

    過誤による自信喪失や罪悪感

    過誤の頻度や大きさによっては、自分のやっていることが怖くなって自信を失ってしまうこともあるでしょう。

    自分のミスで他の人が患者さんに怒鳴られてしまったり、残業して患者さんの家に謝りに行ったり…なんてことがあると、申し訳なくて、自分が怒られるよりもつらいですよね。

    しかし、そういった気持ちがあるからこそ「次は絶対に間違えないようにしよう」という気持ちが湧くはずです。

    対策を考えるためのモチベーションに変わる大切なステップですから、どっぷりハマりすぎず対策を考える方にエネルギーをかけましょう。

    「どうすればミスが防げるか」がわかれば自然と自信も回復するはずですから、沈みすぎないでくださいね。

    ミスによるストレスや不安

    ミスを繰り返すのが不安、患者さんにまた怒鳴られるのが怖い…

    という負のループに陥ってしまうことがあります。こうなると、とても大変。

    ストレスや不安が原因でミスを繰り返し、何度も確認しすぎて時間がかかって患者さんに怒られ、更に怖くなって…と悪循環に陥ってしまうのです。

    心身共に不調をきたし、そのまま働けなくなってしまう人もいます。

    そうなる前に、必ず周りの人や上司に相談しましょう。

    のりすのりす

    「そんなの相談できる空気じゃないよ…」という方は、正直その職場に長くいることはあまりおすすめしません…
    転職をして職場を変えてしっかりと相談できる環境を整えることが大切です。
    でなければ、遅かれ早かれ精神的に苦痛になってしまいますからね…

    薬剤師のミスから立ち直る方法

    薬剤師のミスから立ち直る方法

    ミスをした後に大切なことは、この後ミスとどう向き合っていくのか、どう気持ちの整理をつけるのかです。

    ミスをした後の心構えについて考えてみましょう。

    ミスを受け入れることの大切さ

    まずはミスをしたことを受け入れましょう。

    自分の非を受け入れるって実は結構勇気のいることです。

    自分のミスで悩んでいるということはきっと、きちんと自責の念を抱いているという点でしっかりと一歩前に踏み出せているのです。

    だからといって、いつまでも自分を責め続けていても仕方ありません。

    真面目な人は、ここで「忙しくても徹底的に確認しなければ」と悩んでしまいます。

    「徹底的に確認」して改善するのは自分だけ。むしろ、神経をすり減らす一方です。

    でも、「忙しくならないように工夫」したら、みんなが良くなります。

    そういう気持ちでいたら、深く思い悩まずに、あるいはもっとポジティブな悩みに変換できるかもしれませんね。

    ミスから学ぶことの意義

    我々医療従事者の仕事は確かに、ミスが許されない仕事です。

    でも、「ミスが許されない仕事」だと言えばミスがなくなるのなら、そもそも薬剤師の仕事は要りません。

    医師がミスをしなければ良いだけのことですから。

    でも、人間が間違えることを前提としているから私達の仕事がある。

    結果として取り返しのつかない事態が起こっていないのならば、ミスから何を学ぶかの方が大切です。

    自分がミスした内容、原因を共有することで他の人が同じミスを起こしにくくなります。

    同様のミスが多発しているなら、レイアウトや労働環境などの経営者が憂慮すべき環境要因もあるはず。

    そういったミスを解析してミスを減らすための学問として研究している人もいます。

    ミスをすること自体が必ずしも問題なのではありません。大切なのは以下の2つです。

    1. 結果として何が起こったのか
    2. どのように次に繋げていくのか

    そして同じことが起こらないように次につなげていくのはミスをした本人だけの仕事ではありません。

    周囲にいる人、会社全体、医療業界全体が、明日は我が身と思い自分事として考えていくべきこと。だから1人で背負って落ち込まないでくださいね。

    筆者の体験談:薬剤師を辞めたくなったときの話

    筆者の体験談:薬剤師を辞めたくなったときの話

    筆者も薬剤師を10年近くやっていますから、もちろんミスをしたことは一度や二度ではありません。

    ここでは、私が薬剤師の仕事でミスをしたときの経験をお伝えします。

    ミスで落ち込んでいる方の参考になれば幸いです。

    筆者が起こしたミスとその結果

    私が薬剤師になって6年目くらいのことです。

    患者さんから「お薬手帳に書かれている病院の名前が違う!」と電話がかかってきました。

    正直、病院名は薬局が保険請求で必要だから入力しているものであって、患者さんに渡す帳票類への記載義務もなければ、間違っていたところで害はありません。

    そんな私の「大した間違いではなくて良かった」という気持ちが声や口ぶりに出てしまったのでしょう。

    「病院を間違えた”だけ”って…こんな間違いがあって、この薬信用して飲めると思う!?怖くて飲めないから薬も全部作り直して持ってきて!」

    (実際は訴えたら勝てそうなくらいの言葉を散々浴びせられたのですが…)

    間違えていることは事実だし、神経質な方だと1つ間違いを見つけただけで全部信用できなくなってしまう人も多いので、ぐっと飲み込みその日は薬を届けに行くことになりました。

    筆者が感じた心境と悩み

    先述の通り、病院名の入力間違いは薬局側の都合であって、患者さんに害はありません。

    薬局で起こるミスの中でも最も些細なものの1つと言って良いでしょう。

    患者さんの言い分もわからなくはないけれど、あんなに怒るほどのことでは…

    仕事でミスをするのなんて、どんな仕事でも、誰だってあるはず。きっと私に暴言を吐いたあの人だって、仕事でミスの1つや2つしたことはあるだろう。

    それが、実害の出ていないミスでこんな言われ方をしなければならないのか?

    客商売って、どうしても従業員は心のないロボットかのように心ない言葉を浴びせられる。

    他の仕事なら絶対ここまでひどい目に遭うことはないよなぁ…

    そんな風に思っていました。

    筆者がミスから立ち直った過程と気づき

    この1件に関しては割とすぐに気持ちを切り替えることができました。

    一番大きかったのは、翌朝他の従業員がみんな揃っているときに「ちょっと聞いてよ!昨日の夜ね…!」と吐き出すことができ、職場の仲間たちが当人である私以上に憤慨してくれたからです。

    たぶん、内心で私は相手が相当ひどいことを言っているとわかっていても「命に関わる仕事だから、些細なミスでさえすごく怒られるのは当たり前で、こんな風に思ってしまう私が悪いのだろうか…」と思っている節はあったのでしょう。

    「そこまで言うなんてひどい!」とみんなが私の気持ちを代弁してくれたおかげでだいぶ気が晴れました。

    みんなに話したことで、「またこういうことが起こらないように」と全体の意識も上がった気がします。

    まとめ

    医療現場で起こる過誤は、自分だけが再発を防げばよいものではないので、「みんなで改善しよう」という輪を広げていくことが大切です。

    1人で悩んで落ち込んで、神経をすり減らし続けないように必ず周りに相談してくださいね。そのためにも、日頃から他の従業員とのコミュニケーションも大切です。

    でももし、職場がギスギスしていて、とても相談できる雰囲気ではなかったら?

    すでにミスが怖くて神経をすり減らし切ってしまい、限界を迎えてしまっていたら?

    患者さんに怒鳴られるのが怖くて、接客自体がトラウマになってしまっている人もいるかもしれませんね。

    もし、どうしても今の状況を打開することができそうにないのだったら、思い切って環境を変えてしまうのも1つの手です。

    異動を願い出る、他の会社や病院に転職する、思い切って薬剤師を辞めて企業で働く、などできることはたくさんあります。

    環境を変えたら今の仕事の良さが見えてくることだってきっとあります。

    資格を持っているからこそ、薬剤師にはいつだって戻れるのですから、悩んでいるのなら思い切って行動してみてくださいね!

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