薬剤師からのキャリアチェンジで製薬会社などの企業を考えている方からご連絡を頂くことがよくあります。
そこで、今回は薬剤師から企業未経験でも転職が可能なのかをご紹介していきたいと思います。
●薬剤師から企業に転職をする場合の選択肢
●薬剤師から企業へ転職する時のおすすめの職種
●企業に転職する場合のキャリア形成
治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterでのフォロワー数は4,900人程。今回も分かりやすさを重視して解説をしていきます!
薬剤師から未経験でも企業に転職できる?
今まで薬剤師としてのみキャリアを積んできていると企業に転職できるか不安に思うこともありますよね。
結論からお話すると、企業未経験でも薬剤師から企業に転職することは可能です。
私は治験業界(医薬品開発業界)で臨床開発職をしていますが、実際に薬剤師からキャリアチェンジをしている方をよく見かけますよ!
ただし、35歳を超えてくる頃からは難易度が大きく上がりなかなか内定が決まりにくくなるので、30代までの方でこの記事を見ている方はまさに今がキャリアの分岐点ということになります。
なので、手遅れにならないうちにファルマスタッフなどの転職サイトでサクッと情報収集などのアクションを起こすことをおすすめします。
…とはいえ、いきなりそんなこと言われても踏み出せない方も多いと思うので、この記事でしっかりと説明をしていきますね。
薬剤師から目指せる製薬業界の職種
薬剤師から未経験でも目指せる企業は食品メーカーや化粧品メーカーなど色々ありますが、その中でも特に目指す方が多いのはやはり製薬業界ではないでしょうか。
そのため、ここでは薬剤師から目指せる製薬業界の主な職種について見ていきましょう。
実際は企業によって異なってきますが、薬剤師から未経験として転職をした場合の大まかなイメージは以下のようになります。
職種 | 年収 | 働き方 | 転勤 | 会社 |
臨床開発モニター(CRA) | 約450万円 | 内勤+外勤 (遠方あり) |
なし | CRO |
治験コーディネーター(CRC) | 約380万円 | 内勤+外勤 (遠方なし) |
なし | SMO |
安全性情報管理職 | 約330万円 | 内勤 | なし | CRO |
メディカルライティング職 | 約420万円 | 内勤 | なし | CRO |
品質管理職 | 約350万円 | 内勤 | なし | 製薬会社 |
MR | 約450万円 | 外勤 | 可能性あり | CSO |
職種 | 年収 | 働き方 | 転勤 | 会社 |
臨床開発モニター(CRA) | 約450万円 | 内勤+外勤 (遠方あり) |
なし | CRO |
治験コーディネーター(CRC) | 約380万円 | 内勤+外勤 (遠方なし) |
なし | SMO |
安全性情報管理職 | 約330万円 | 内勤 | なし | CRO |
メディカルライティング職 | 約420万円 | 内勤 | なし | CRO |
品質管理職 | 約350万円 | 内勤 | なし | 製薬会社 |
MR | 約450万円 | 外勤 | 可能性あり | CSO |
概略はざっとこのような感じですが、1つずつ簡単に紹介をしていきます。
概略なのであくまでご参考程度に!
臨床開発職
医薬品開発のお仕事のうち、臨床開発職である臨床開発モニター(CRA)や治験コーディネーター(CRC)は職種未経験者でも比較的多くの募集を出されており、企業への転職を考える時には目にする機会が多い職種になります。
医薬品開発は基礎研究から始まり、非臨床試験を経て臨床試験が行われますが、臨床開発職はそのうちの「臨床試験(治験)」に関わるお仕事をしています。
とても大まかにお仕事内容をお話すると、CRAは製薬メーカー側の立場から医療機関で治験がしっかりと行われているかをモニタリングする役割を担っていて、CRCは施設で治験が円滑に実施できるように関連部門との調整役を担っています。
「開発職」というとよく「研究職」と混同されがちですが、開発職は研究職と違い実験をする…という業務ではありませんのでご注意を(笑
薬剤師から未経験として転職をする場合、やはり年収ダウンがネックになってきますが、臨床開発モニターの場合は未経験からの転職の場合でも比較的高い年収が提示されることがあるため、人気の職種の1つと言えます。
ただ、CROは東京や大阪などの都市部に出社をする必要がある会社も多く、地元で働きたいという方の場合はCRCを選択される方も多くいます。
その他、CRAは主にオフィス勤務になりますが、一方でCRCは主に施設勤務になるという違いもあります。
安全性情報管理職
安全性情報管理職はファーマコビジランス職(PV職)とも呼ばれており、治験や市販後の副作用情報を管理するお仕事になります。
PV職は製薬メーカーとCROとでメインに行う仕事内容が異なりますが、未経験から転職をする場合にはCROのPV職に応募することになります。
CROのPV職は主に収集された安全性情報をデータベースに入力していく作業がメインになるため、データ入力のお手伝いをしてくれる派遣さんを管理したりすることもあります。
外勤は無く内勤のみではありますが、突発的な対応が入ったり時間制限(当局への報告期限)もあることから対応時間にシビアな一面もあったりします。
ちなみに、メーカーのPV職は副作用の発現傾向を分析したり、文献情報を踏まえてリスクマネジメントプランの立案をしたりするお仕事もあります!
メディカルライティング職
メディカルライティング職(MW職)は、治験の結果がまとめられている治験総括報告書や薬事承認申請に使用するCTD(Common Technical Document)などの資料を執筆するお仕事になります。
治験では、主要評価項目/副次評価項目を設定した上で有効性が検証されていたり、安全性情報が収集されています。
それらの情報は解析されたうえで、その結果を治験総括報告書にまとめていく必要があります。
更に薬事承認申請をする場合には、臨床試験(治験)の情報に加えて製造関連の情報や非臨床試験の情報等をCTDという資料にまとめていく必要があり、メディカルライティング職には医薬品開発に関わる幅広い知識が求められます。
未経験からの転職の場合は、手探りで経験を重ねていけば良いのですが、文章を構成する上で論理的思考がかなり重用になってくるため、ロジカルな考え方が出来る方がメディカルライティング職には向いていると言えるでしょう。
MW職の方は文章を書くお仕事がメインのため、在宅でお仕事をされている割合も多いように感じます!
CRAやCRCさんが苦労をして集めた治験のデータは治験総括報告書にまとめられることになりますが、実は中身をじっくり見たことが無いという人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、治験総括報告書の概要とCRA/CRCさん …
品質管理職/品質保証職
品質管理職/品質保証職は、医薬品の製造~流通に至るまでの製品の品質に関わるお仕事です。
品質管理では、決められた規格に沿って医薬品が製造されているか、決められた品質がしっかりと保たれているかを品質試験によりチェックをしていきます。
製剤の安定性試験や類縁物質の検出など、手順に沿って試験を実施していく必要があるため、勤務地は本社ではなく工場に配属されることも多くあるのが特徴です。
また、品質保証はGMP(製造に関連する省令のこと)に沿ってしっかりと現場での作業が運用されているかやPMDAなどの査察対応を行うお仕事になります。
MR
MRは薬剤師の皆さんであれば普段接する機会もあると思うのであまり詳細に説明をする必要はないと思いますが…少しだけ触れておきましょう。
MRは営業職に分類されますが、営業活動だけではなく自社製品の副作用情報の収集や新規の医薬品が発売された際には情報提供をする役割も担っています。
最近では、学術的な知識をカバーするためにMSL(メディカルサイエンスリエゾン)と連携をして医師に情報提供を行うなど、他部門との連携も求められるため、高いコミュニケーション能力が必要とされています。
製薬メーカーのMRの場合は転勤が多いのですが、CSOのMR(コントラクトMR)の場合は転勤が少ない傾向にあります。
薬剤師から企業への転職でおすすめは治験業界
薬剤師から目指せる主な職種について色々と見てきましたが、個人的におすすめなのが治験業界の職業であるCRAです。
CRAがおすすめな理由は【資格を活かす】薬剤師として働きたくない人におすすめの方法をご紹介の記事でも詳細をお話しましたが、年収面の安定性やテレワーク制度(在宅勤務制度)が整っている事など働きやすさが抜群に良いことなどが挙げられます。
その他、企業未経験では行ける確率が皆無に等しい製薬会社の臨床開発職ですが、CROでCRAのキャリアを積めば将来的には製薬会社への転職もチャレンジできるようになるため、キャリア形成的な意味でもその入り口となるCRAはおすすめできます。
また、CRAへの転職がなかなかうまくいかない場合には、まずはCRCとしての経験を積んだ後にCRAに挑戦をすると内定確率が大きく上がることがほとんどなため、そのようなキャリア戦略もありだと思います。
CRA
CRAは、治験が施設で適切に実施されているかモニタリングをする役割を主に担っていますが、多くの製薬会社はCROという会社にCRA業務を委託しています。
そのため、薬剤師から未経験でCRAを目指す場合にはCROのCRAを目指すというのが一般的です。
僅かではありますが、一部の製薬会社(主に外資系)ではCRAが自社にいる場合もありますが、製薬会社のCRAはCRA経験者の募集のみとなるため、CROでCRAとして経験を積んで将来的に製薬会社のCRAにチャレンジをするというキャリアパスもあります。
薬剤師から未経験で企業へ転職する場合は、CRAがおすすめとお話しましたが、CRAを経験しておくと将来的なキャリアパスが広がるというのが1つの理由です。
CRAとしてキャリアを積み上げていくと、同じクリニカルオペレーション部門のラインマネージャー(主にCRAの育成を担う職)やスタディマネージャー(主にモニタリングの統括を担う職)に昇格をしていくことが多いです。
そのままクリニカルオペレーションを極めていくことでももちろん良いと思いますが、CRAの経験があると他部門へのキャリアチェンジがしやすいため、もしクリニカルオペレーションの仕事が合わなかった場合に融通が効く点が大きいかと思います。
薬剤師から企業への転職でキャリチェンジを考えている方もいるかと思いますが、その中でも医薬品開発業界に興味がある方もいるのではないでしょうか? ただ、同じ医薬品を扱うにしても医薬品開発となるとどのようなことをやっていたり年収面や労働環境なども気になるところですよね。 そこで、今回は医薬品開発業界の職種の1つである臨床開発モニター(CRA)についてご紹介をしていきます!
CRC
治験コーディネーター(CRC)は、施設で治験が円滑に実施できるように施設スタッフ間の調整を図ったり治験責任医師/分担医師のサポートをするお仕事が主な業務内容になります。
大学病院等の大規模な病院であれば院内CRC(施設に所属しているCRC)がいるのですが、クリニックや院内CRCがいる施設であっても人手が足りない時にはSMOという会社にCRC業務を委託していることがあります。
そのため、薬剤師から未経験で治験コーディネーターを目指す場合には、病院に就職をして院内CRCとなるかSMOに就職をしてCRCになるかの2択となります。
製薬会社側は、治験に関する部門が数多くある一方で施設側に関しては、製薬会社程多くの関連部門があるわけではありません。
ただ、CRCの経験があるとCRAへの転職が非常に有利になるため、キャリアチェンジをしようと思えばしっかりとチャンスがあります。
CRAへの転職以外にも全く別職種(例えば、治験に関連するシステムベンダー等)への転職もチラホラ聞きます!
治験コーディネーター(CRC)は医療職からの転職者が多く、医薬品開発業界の職種としてはメジャーな職種の1つです。 未経験から医薬品開発業界へ転職をする場合には、治験コーディネーターか臨床開発モニターが一般的ですが、今回はそのうちの治験コーディネーターについて基礎から解説をしていきたいと思います。
まとめ
今回は、薬剤師から未経験で企業に転職をする場合にどのような選択肢があるのかをお話していきました。
薬剤師から未経験で企業に転職をするのは一般的には難易度が高いと言われていますが、私が面接官を担当した時に感じたのは「あまり転職活動の準備ができていないのでは?」ということでした。
面接では、「CRAという職種を理解しているか(業務内容やタスク等)」や「CRCとCRAの違いを理解しているか」などを確認していきますが、職種研究があまりできていないとしっかり回答することができずに面接で落ちてしまうということもあります。
つまり、逆にしっかりと職種研究や業界研究ができていれば内定が貰える確率が大きく上がるということですね。
とはいえ、未経験の領域の知識を自力で集めるのは非常に大変かと思います。
当ブログでも治験業界やCRA/CRCの情報を数多く掲載していますが、ファルマスタッフなどの情報量が豊富な信頼できる転職エージェントからも情報収集をしておくことが非常に重要です。
私もすぐに転職は考えていなくても常に鮮度の高い情報を得るためにいくつかの転職エージェントさんに登録のみしています。
しっかりと対策をして納得できるキャリアパスを突き進んで下さいね!!
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