【臨床開発職】シミックの強みとは?企業研究をしたのでご紹介_v2

企業研究記事第1弾、2弾とやってきていよいよ第3弾ですね。

第3弾は、内資CRO最大手であるシミックについての企業研究記事になります。

内資最大手ということもあり、色々な特徴を持っているCROですが、その中でも特にCRA(臨床開発職)に特化した内容で企業研究を進めてみました。

本記事で分かること
シミックの特徴や働いている方のリアルな意見
就活対策に必要な情報
のりすのりす

製薬業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は6,200人程。今回もなるべく分かりやすく解説をしていきたいと思います!

シミックの会社概要

シミックの会社概要

では、いつも通りまずはシミックの会社概要から見ていきましょう。

会社名 シミック株式会社 CMIC Co., Ltd.
本社所在地 〒105-0023 東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング
創業 2012年1月4日
代表者 代表取締役社長執行役員 三嶽 秋久
事業内容 ・薬事コンサルティング
・メディカルライティング
・モニタリング
・データマネジメント
・eClinical Trials 関連(EDC)
・統計解析
・メディカルライティング
・症例登録
・品質管理
・プロジェクトマネジメント
・監査・信頼性保証
・ファーマコヴィジランス
・臨床薬理試験
・ICCC(治験国内管理人)
・専門職人材(無期雇用労働者)派遣
・臨床試験総合システム「Forum PLUSR」

会社概要|シミック株式会社より抜粋

ではでは、こちらもいつも通り概要の中の注目ポイントを1つずつ見ていきましょう。

全体的なバランスが良く先輩のフォローが特に手厚いCRO

シミック_レーダーチャート2023

2023年に実施したCROアンケートでは、「教育・研修面の充実さ」、「キャリア形成の柔軟性」と「人柄の良さ」について推している方が多く新卒や業界未経験者でも安心できる環境が整っていることが分かります。

昇給率を上げてほしいという声が挙がっている一方で、全体的に業務量も安定しているという声も多くワークライフバランス重視型の方にとっては特におすすめできるCROです。

国内最大手のCRO

第1弾、第2弾の企業研究の記事でも売上高については触れているので、あえて言うまでも無いのですが、この記事から見ている方もいるかと思うので、復習の意味も兼ねて見ていきます。

国内大手3社と比較するために、事業規模を推測するのに役立つ売上高を並べてみました。

データはエイツーヘルスケアの売上高について2018年度分しか発見が出来なかったので、2018年度で比べています。

順位の傾向は2024年現在もさほど変わりません。

シミック:372億円
EPS:288億円
A2:115億円

※シミック、イーピーエスはCRO部門の売上を記載しています。
※エイツーヘルケアのデータは、マイナビに記載されているデータを参照しました。
※シミック、EPSについては、決算説明資料から情報を抜粋しています。

2位のEPSに84億円の差を付けて堂々の1位に君臨していることが分かるかと思います。

シミックグループは、1992年に日本で初めてCRO事業を開始しており、リーディングカンパニーとしての地位を確立してきた企業です。

のりすのりす

CRA(臨床開発職)目線で注目すべきポイントは後述していきますので、まずはここでは、シミックは国内最大手のCROなんだなぁというイメージを持ってもらえばOKです。

シミックは2024年3月に上場廃止している

シミックは2024年3月28日をもって東京証券取引所への上場が廃止されています。

上場廃止と聞くと、「経営状態がヤバいのかな…?」と思うかもしれませんが、今回の上場廃止は経営がうまくいっていなくて上場廃止となったというよりは、大胆な経営転換をするために上場廃止をしたというポジティブな理由なのでご安心を。

今のCRO業界は外資系CROが頭角を現してきており、シミックを始めとする内資系CROは苦戦を強いられているというのは事実です。

この状況を打破するためには、時には思い切った経営戦略を立てる必要がありますが、上場企業の場合は株主の意向も気にしなければいけません。

そこで、シミックの会長である中村和夫会長が代表を務める企業がTOB(株式公開買い付け)をして株式を非公開化しました。

のりすのりす

個人的にはシミックさんの上場廃止は今後の更なる発展のためには、やはり避けては通れない道だったと思っています。
これからが楽しみですね!

シミックホールディングスの最近の経営状況のまとめ

上記でお話した通り、シミックホールディングスは2024年3月28日をもって上場廃止となりましたので2024年1月31日に発表された2024年9月期 第1四半期 決算概要が企業の経営状況を把握できる最後の資料となっています。

シミックの経営状況について簡単にですがご紹介をしていきましょう。

2023年度から過去4年間の営業利益の推移

営業利益(百万円) 増減率(前年度比)
2023年度 10,267 -13.3%
2022年度 11,845 +140.7%
2021年度 4,920 +88.8%
2020年度 2,605 -40.9%

2023年度は2022年度から営業利益が少なくなっていますが、その要因はヘルスケアソリューション事業の減収減益が大きく影響しています。

ヘルスケアソリューション事業では、新型コロナウイルス感染症関連の自治体支援業務の収益が計上されていましたが、その収益が減が主な要因です。

そのため、2021年度と2023年度を比較した場合には営業利益が伸びておりホールディングス全体としては堅調に成長していることが分かります。

2023年度から過去4年間のCRO事業の業績推移

営業利益(百万円) 増減率(前年度比)
2023年度
2022年度
2021年度 4,364 -13.6%
2020年度 5,052 -26.8%
2019年度 6,899 +3.6%

シミックホールディングスは、色々なヘルスケア事業を展開していますが、この記事を見ている方のほとんどはCRO事業に関連している方かと思いますので、CRO事業の業績推移をまとめてみました。

ただ、2022年度以降は以下のように報告セグメントが変更となっており、CRO事業単独での営業利益率は分からくなってしまったため2022年度以降は数字を記載していません。

シミックの2022年度のセグメント変更について出典:2024年9月期 第1四半期 決算概要

2019年度から2021年度のCRO事業の営業利益を見てみると、2020年度、2021年度と連続でマイナスとなっていたため好調ではないことが伺えます。

シミックホールディングスは、CRO事業の売上が占める割合が大きいので何とかこの状況を打破したいという思いもあって2024年3月の上場廃止に繋がっていたのでしょうね。

のりすのりす

CRO業界では外資系CROの追い上げが凄いので、内資系CRO各社は新たな戦略を練って戦っていますね。

2021年度9月期決算から見るCRO業界の状態

シミック_2021年9月期 通期見通し

2020年9月期 決算概要|シミックホールディングスより抜粋

こちらは、2021年9月期の通期見通しです。

CRO事業では2021年度は5,550百万円の営業利益(+9.9%成長)を見込んでいたわけですが結果はどうだったのか見てみましょう。

結果はこちら。

シミックの2021年度CRO事業の営業利益

2021年9月期決算説明資料|シミックホールディングス より抜粋

55億円の営業利益の予測でしたが、結果は43億円の営業利益ということで予測よりも下振れる結果となりました。

その理由としては、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前期における臨床業務の受注が低調であったこと」とされていました。

2021年7月には4回目の緊急事態宣言が発出されるなど、コロナの影響は想像以上に長引いており、それがシミックの決算にも影響を及ぼしていたということでしょうね。

のりすのりす

医薬品開発全体を見れば、2020年に初めて緊急事態宣言が発出された辺りから比べると随分と開発は再開されていた印象ですが実際にはなかなか厳しかったのでしょうね。

ただ、2020年上期の営業利益の下落要因として挙げられていた以下の3点については、コロナとは別物であり、未だ解決されたものではないため、シミック(あるいは、内資系CRO全体)の状況を考慮する上では外せないポイントなので、引き続き押さえていく必要があるでしょう。

2021年度CRO事業の不調要因
新薬開発難易度の上昇/臨床試験の小型化
日本における国際共同治験の増加
大型臨床開発案件の終了

これらについての考察は非常に重要なので、それぞれの項目について、1つずつお話をしていきましょう。

新薬開発難易度の上昇/臨床試験の小型化

新薬の開発難易度の上昇というのは具体的には、バイオ医薬品や再生医療等製品などの開発が増えてきたということを指しているものと思われます。

イーピーエスでは、このように開発難易度が上昇している背景があり今後もそのニーズは拡大すると考えて、再生医療等製品開発支援サービスを展開していく道を選びましたね。

そのような背景を考えると、やはり今後はバイオ医薬品や再生医療等製品の案件も受託できるだけの体制構築も必要そうだということが分かります。

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シミックについても、モニタリング業務を含め再生医療等製品の開発実績があり、今後のトレンドに置いていかれるといったことは無さそうですけどね!

日本における国際共同治験の増加

「日本における国際共同治験の増加」だけだと少々分かりにくいかと思いますが、要するに外資のCROが勢力を伸ばしてきているよということです。

これは、2019年度のイーピーエスの営業利益の下落要因でも触れられていたので、大手2社が同じ見解ということはほぼ間違いないと考えて良いでしょう。

ちなみに、国際共同治験がどれだけ増えているかはこちらのグラフを見ると、とてもよく分かります。

国際共同治験に係る治験計画届件数の推移_令和5年度10月末時点

出典:令和5年度のこれまでの事業実績及び今後の取組みについて|PMDA

令和4年度の時点で国際共同治験の届出件数が実に61.2%に上っています。

日本の治験の6割程が国際共同治験という現状を考えれば、外資系CROが勢力を伸ばしているのも頷けますよね。

外資系製薬メーカーの場合、同じく外資のCROであるIQVIAやPAREXELあたりとプリファードベンダーというお得意様契約みたいなものを結んでいる場合があり、優先的に外資CROに案件が流れるなど、内資CROにとっては厳しい環境にあるのは確かです。

なので、内資系CROを見ていくときには、「外資系CROに対抗するだけの対応策を持っているか?」という視点で考えてみるというのも1つの手ですよ!

のりすのりす

『日本における国際共同治験の増加に伴い、外資系CROが勢力を伸ばしてきている⇒そのため、内資系CROはそれに対抗するための対応策が必要であると考えている⇒御社の●●●は〇〇〇〇という観点からまさに外資系CROにも負けない武器であると感じている』なんて流れで語れたらとても高い評価が貰えると思いますよ!

大型臨床開発案件の終了

これは一過的なものであるため、あまり気にし過ぎないでも良いかと思います。

ですが、どういう状況なのかは知っておいても良いかと思うので簡単に説明していきましょう。

ある大型案件があったとしましょう。

その案件にはCRAが30人、チームに配属されているとします。

その大型案件の終了の目途が立つと、業務量も減ってくるので、30人いるCRAを徐々にチームから外して新しいプロジェクトにアサインしていきます。

時期 大型案件 PJ 1 PJ 2 PJ 3
1月 30人 0人 0人 0人
2月 25人 5人 0人 0人
3月 20人 5人 5人 0人
4月 10人 5人 5人 10人
5月 5人 7人 7人 11人
6月 0人 7人 9人 14人

この例では、1月時点で大型案件に30人のCRAがいましたが、6月に終了という目途が経ったら、PJ-1の案件獲得を目指し、無事案件を獲得出来たらそのプロジェクトに大型案件からCRAを移動、次にPJ-2の案件の獲得を目指して…というようなイメージでCRAを配置していきます。

そうすれば、6月に大型案件が終了となりますが、CRAは無事他のプロジェクトにアサインされている状態になります。このことを”CRAの稼働率が高い状態”と言います。

ここで少し考えてみてください。

大型案件が6月に終わりそうだという目途がたっているにも関わらずPJ-1、PJ-2、PJ-3の案件を獲得できなかったらCRAはどうなると思いますか?

6月になってもプロジェクトに配属されず、PJ-1、PJ-2、PJ-3の案件を獲得できるまで待機することになります。この状態を”CRAの稼働率が悪い”と言います。

CRAにはプロジェクトにアサインされていないとしても給料は支払わなければいけませんので、ひたすら人件費のみかかってしまっている状態となります。

シミックは、この”CRAの稼働率が悪い”という状態になってしまったことにより営業利益の減少に繋がったと説明をしています。

難しいことばで言うと「リソースマネジメントがうまくいかなかった」という表現になるのですが、これは”CRAの稼働率が悪かった”ということを意味しています。

ここで考えるべきは、何故CRAの稼働率が悪くなってしまったのかです。

案件を取ってくる営業が悪い?(だとしたら営業の強化が必要ですよね)、それとも外資CROに案件を奪われてしまって案件をうまく受託できなかった?(だとしたら、外資CRO対策はどうするかが必要ですよね)、はたまた、大型案件が炎上してしまいなかなかCRAのメンバーを減らすことが出来なかった?(だとしたら、チームマネジメントの問題の解決が必要ですよね)という疑問が浮かんできます。

この件に関しては、後程紹介するQAにその答えが載っていますが、他の事に関してもこのようなステップで疑問点を洗い出して解決していくと良いかと思います。

Level.1:シミックや業界の現状を知っているか
Level.2:問題点についてどのように取り組んでいるかを知っているか
Level.3:その取り組みについて賛同できるか。更に何故賛同できるかを説明できるか

Level.3まで到達できれば、他の就活生とは差別化できる程の質の良い回答が面接で出来ることでしょう。

もちろん難易度はかなり高いのですが、Level3に到達するまで情報整理をしておけば一気に内定に近づくので是非頑張ってみて下さいね。

決算電話会議でのQA

2020年度の決算発表(電話会議)では、決算に対しての質問事項が何点か上がっていました。

CRO事業に関連し目を通しておいた方が良いものをピックアップしてみました。

Q. 稼働率が低下したのは、案件の小型化によるものか。今後稼働率を上げることは可能か。

A. 案件の小型化による影響がある。市販後試験や臨床研究のニーズが高いため、今後はそれらのプロジェクトを通じて稼働率を上げていく。

2020 年 9 月期 第 1 四半期決算電話会議|シミックホールディングス株式会社より抜粋

CRAの稼働率の低下については、案件の小型化による影響があるとのことです。

小型の案件の場合、CRAの入れ替えが短期スパンでおこなわれることになりますので、次から次へと案件を受託する必要が出てきます。

大型の案件であれば、多くのリソース(CRA)を必要とする分、CRAの入れ替えについても比較的長期スパンで計画を立てやすいことが想定されますが、小型案件の場合はそのあたりが厳しいということになります。

Aで回答されている市販後試験や臨床研究についても一般的には小型な案件になります。

つまり、今後も案件の小型化は継続するだろうと推測されており、案件の小型化に対応するのであれば、小型案件を絶やさず受注できる体制を構築しようというのが意図なのかと思います。

これはQAからの私の推測ではありますが、そのシミックのスタンスについてどう思うか(共感できるか)は就活生のみなさん次第です。

Q. ポストコロナで、CRO事業及びCSO事業に与える変化はあるか。

A. CROでは、デジタル化が進行すると予想している。日本では遠隔診療を行うには障壁があったため、欧米では実施されているバーチャル治験の導入が難しかったが、これを機に進展が見込まれる。CSOでは、ITを活用した効率的なMR活動が進むとともに、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)のように専門的な情報提供も拡がることが見込まれる。

2020 年 9 月期 第 2 四半期決算電話会議 Q&A|シミックホールディングス株式会社より抜粋

このQAからは、シミックとしての考えが伺えますね。

シミックとしては今後、バーチャル治験の進展が見込まれると予測しているようですね。

みなさんは治験の業界では今後デジタル化が進んでいくと思いますか?

のりすのりす

就活生の段階では正確な推測は難しいのですが、就活ではこのようなことを如何に考えることが出来るかが内定獲得の分かれ目にもなってきます。正答を出すことは重要ではなく、”考えること”が重要なので皆さんなりの答えを考えてみて下さいね!

Q. CRO の事業環境について、開発案件の小型化や価格競争の状況、業界再編の可能性など、見解をききたい。

A.CRO 業界は、コロナ感染症拡大による臨床試験の中止や延期により、一時供給過剰の状態もあった。現状、案件が再開されつつあるが、今後は人材教育や経験を含め、特徴がない CRO は生き残りが難しく、業界再編の可能性もあるだろう。マーケットアクセスをいかに早くできるか、医薬品の価値を最大化できるかという観点で開発全体を考えると、CRO にも一定の規模が必要になると考えられる。シミックとしては、単に人数を増やすための買収をするつもりはなく、文化・ノウハウ・人財の面でシナジーが出る場合に検討していく。

2021 年 9 月期 第 4四半期決算WEB会議 Q&A|シミックホールディングス株式会社より抜粋

こちらのQ&Aでは、CRO業界の今後についての見解が述べられていますね。

私が考察する内容とも一致しており、こちらのQ&Aで述べられているように、今後はある一定のサービスのみ提供をするCROの生き残りは難しく、トータルでのサービスが提供できるCROが生き残っていくだろうと考えています。

それまでの間は、機能をお互いに補う形でCRO同士での合併がしばらく続くだろうと予測しています。

シミックに関しては、CROが提供できるサービスを網羅していることから、その必要性は他CROと比較すると少ないものと思われますが、規模感を拡大するという意味では、どこかのCROを買収することも考えられるのではないかと思っています。

シミックの注目すべき特徴・強みとは?

シミックの注目すべき特徴・強みとは?

ここからは、シミックの注目すべき特徴や強みついて触れていきたいと思います。

シミックは最大手のCROであるため、取り組んでいることは色々とあるのですが、いくつかピックアップをして解説付きで紹介をしていきます。

就活生や中途入社希望の方はシミックの志望動機にも使えるのでしっくり来るテーマの話題があったら是非深堀してみて下さいね。

シミック独自の事業モデルPVCとPHVC

シミックはCROのパイオニアとして業界に誕生して以降、医薬品が誕生して上市されまでのほぼ全ての過程において製薬企業をフルサポートするという事業モデルであるPVC(Pharmaceutical Value Creator)を展開してきました。

PVCについて視覚的に理解するためには以下の図がとても分かりやすいです。

シミックのPVCモデルについて

2019年9月期 決算概要|シミックホールディングスより抜粋

創薬に始まり非臨床試験、臨床試験、製造、上市…そして、上市後も継続的な医薬情報提供(MRのお仕事ですね)や安全性定期報告(PVのお仕事ですね)が続いていきます。

シミックは、CRO、CDMO、SMO、IPM、CDMO、CSO、HCと総合的に事業を展開しており、まさに「製薬企業をフルサポートするという事業モデル」といことですね。

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PVCは、製薬メーカーからのどのような要望にも応えられる体制ということですがこれだけ展開できていればそれが達成されていることが分かりますね。

このシミックのPVC事業モデルで凄いところは、ただ単に製薬メーカーからの幅広い要望に応えるだけに留まらない点です。

というのも、CSO事業やヘルスケア事業などのそれぞれの事業を見てみると、実は治験にも活用できるような技術の開発が進んでおり、大きなシナジーを生み出す可能性を感じました。

具体的には、ヘルスケア事業で開発が進んでいる電子お薬手帳harmoについて特に着目をしているのですが、詳しいことは後述していきます。

就活生のみなさんは、PVCについては以下のようなポイントを考えておくと就活時に使えると思いますよ!

PVCについて考えておきたいこと
  1. PVCモデルで製薬メーカーからの幅広いニーズに応えられそうだけど、具体的にはどのようなニーズがありどのように応えることができるのか。また、それについてあなたはどう思うのか。
  2. 幅広い製薬メーカーからのニーズに応えるということについては、EPSやA2でも同じだが、それらとシミックのPVCモデルはどのように違うのか。またその魅力は何か。

「製薬メーカーからのニーズ」と一言でいっても、大手の製薬メーカーのニーズと中堅やベンチャーの製薬メーカーのCROに対する要望は違うという点に気を付けましょう。

大手製薬メーカーの場合、色々な部署があり上市までのいくつかの過程では自社で対応できる会社が多く、CROへの依頼もスポット(モニタリングだけの注文など)でのニーズが多いことでしょう。

一方で、中堅やベンチャー企業の場合、リソースに限りがあるので実務を一括で委託するようなトータルソリューションのニーズが高くなります。

のりすのりす

PVCモデルでは、大手~ベンチャーまでの幅広いメーカーのニーズに応えることができるということですね。

2つ目のポイントは、PVCモデルでカバーしている範囲に着目すると良いでしょう。

EPSやA2でも、メーカーからの様々なニーズに応えるため、色々な対応を取っていますが、シミックのPVC事業はイメージとしてはその枠よりもやや広めにカバーしている感じになります。

例えば、ヘルスケア部門を例にとってみると、その取り組みは一見、医薬品を開発する過程では直接的には関係が無いように見えますが、よくよく見てみると実は治験をするうえで効率化を実現できるような取り組みがあったりもします。

それは、本来のニーズから一歩先に踏み込んでいると捉えることもできるのですが、このあたりについて皆さんがどう思うのかを考えてアウトプットしてみるのも良いかもしれませんね。

ちなみにですが、シミックは2021年にPVCからPHVC(Personal Health Value Creator:PHVC)という最終目標への以降を宣言しています。

PHVCは、製薬メーカーという枠組みを超えて幅広いヘルスケアを手掛けることで個々の人たちの健康にも寄与するビジネス形態ですが、まさに最終ゴール地点と言えます。

シミックのPHVCモデル

多くのCROは、この図で言うところPVCを目標としているところ、シミックはその一歩先であるPHVCを目指して事業展開をしているということですね!

のりすのりす

もし就活でPHVCについて触れるのであれば、PHCVの一環を担うCRAとして自分に何が出来るのか…という部分も考えておくと面接での受け答えの質が上がりますよ!

シミックは先進的な取り組みに非常に積極的

医薬品開発の世界でも日々新しい概念や手法が誕生しているのですが、シミックはそのような先進的な手法などを積極的に取り入れている会社です。

2024年現在で言えば、DCT(Decentrized Clinical Trial)やRWD(Real World Data)などがトレンドですが、シミックは業界でも他のCROに先駆けてDCTに力を入れていました。

DCTというのは、とても大雑把に言うとオンライン診療などを駆使した治験のことです。

のりすのりす

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんのような病院に来院することが難しい方でも治験に参加することできたり、ご高齢の方や仕事で忙しいサラリーマンなども治験に参加できる機会が増えるということですね。

シミックは、DCTが普及し出した2020年6月頃にオンライン診療等の医療機関向けアプリケーション事業や医療データをAI等で解析・活用する事業を展開している株式会社MICIN(マイシン)と「オンライン診療を活用した臨床試験の実施」というテーマでウェビナー(Web+セミナー)を開催していました。

オンライン診療と臨床試験

最新情報|株式会社MICINより抜粋

オンライン診療を治験に取り入れることで、上記のようなメリットがあるよという資料になります。

この中で特に注目してもらいたいのが「治験薬の配送」という項目です。

新型コロナウイルスの感染拡大があった時には、被験者さんが来院を拒否する場面がちらほらありました。

それはそうですよね、病院に行くというだけでリスクがあるので、不要な通院はしたくないと思うのは当然かと思います。

でも、治験薬が無くなってしまったら治験薬を処方してもらうためにどうしても医療機関に行かなければいけません。

そんなときに、「リスクをおかすくらいなら治験は辞退で良いや…」と被験者さんが考え、治験を辞退してしまい、貴重な1例が中止となってしまうことが実際にありました。

治験のデザインによっては、絶対に来院しないといけない試験もあるかとは思いますが、オンライン診療が普及して、リスクをおかしての来院をしなくて良くなるのであれば、治験を辞退する被験者さんも減るのかもしれないですよね。

パンデミックはこれからもいつ起こるか分かりません。パンデミックが起こる度に治験が止まってしまうと治療薬を待ち望んでいる患者さんにとっても大きな不利益になってしまうので、DCTは今後更に発展していってほしい手法だなと思っています。

就活のためのワンポイント
このような「新しいことへの取り組み」というのは、企業としてはリスクを伴います。
そのため、やった方が良いとは思いながらも多くの企業は他の企業が取り組んでいる様子を観察して問題なさそうならやってみようというスタンスです。
その中、シミックは先陣を切って「新しいことへの挑戦をしている企業」なので、シミックの大きな魅力ポイントの1つと言えますよね。

電子お薬手帳を基盤とした医療連携システムharmo

harmoは、2014年に開発された電子お薬手帳を基盤とした医療情報連携システムです。 harmo単体でも約40万人の利用者がおり、当初よりも一般の方々にもかなり普及が進んできている印象を受けます。 また、このharmoの凄いところは、ただの電子お薬手帳に留まらず、患者さんの服薬情報を医療関係者間で共用できるようなシステムとなっており、服用している薬剤の安全対策措置に関わる緊急安全性情報・安全性速報を登録しているスマートフォンに通知する等、一歩進んだサービスを提供しているところです。

harmoは、2014年に開発された電子お薬手帳を基盤とした医療情報連携システムです。

harmo単体でも約40万人の利用者がおり、当初よりも一般の方々にもかなり普及が進んできている印象を受けます。

また、このharmoの凄いところは、ただの電子お薬手帳に留まらず、患者さんの服薬情報を医療関係者間で共用できるようなシステムとなっており、服用している薬剤の安全対策措置に関わる緊急安全性情報・安全性速報を登録しているスマートフォンに通知する等、一歩進んだサービスを提供しているところです。

シミック_電子お薬手帳harmoの仕組み

トップページ|harmoより抜粋

harmoはCRO事業ではなく、ヘルスケア事業で開発されているものなので直接的には関係は無いのですが、個人的には治験の場でも応用できる可能性を秘めていることから注目をしています。

少し説明をしていきましょう。

まず、治験では、一般的に被験者から得られた情報はEDC(Electronic Data Capture)という電子システムに集積されていきます。

CRAは、治験実施医療機関に訪問をして治験のデータが記載されている資料(カルテや各種検査結果報告書など)の内容がしっかりとEDCに入力されているかを確認します。

つまり、照合・確認作業みたいなことをしますが、これをSDV(Source Document Verification)と呼びます。

CRAは医療機関でSDVをわけですが、そのときに照合・確認する治験のデータの内容には以下のような項目があります。(就活生のために表現はあえて簡易的にしています)

治験に入れる条件であるか(適格性と言います)
合併症や既往歴
併用薬
治験中に起きた副作用等の情報
治験薬の服薬状況

他にも色々とあるのですが、とりあえず上記の項目で考えていきます。

対象とする疾患などによって様子は違ってきますが、適格性や併用薬情報そして副作用の情報はCRAが確認するのに比較的苦労することが多い項目になります。

そして、これらのうち、併用薬の情報についてはharmoを活用することができればCRAやCRCの負担を大きく削減することが出来るのではないかと思っています。

harmoを活用した治験の効率化

現状として、併用薬については各課程において手入力で対応しなければいけないことが多く、そのため誤記や入力漏れが発生しやすい項目でもあります。

そこで、harmoのように電子媒体で併用薬情報が蓄積されている媒体から、直接EDCに情報を反映できるようになれば、それぞれの課程で手入力が発生しなくなり、CRAやCRCの負担を大きく軽減できる可能性があると私は考えます。

また、負担が減るだけでなく、各手順を自動化することでそれぞれの課程で発生するミスを減らせるので質の高いデータを収集することも可能かと思います。

他にも考えられる使い方があります。

これはもしかすると私だから気付いたのかもしれませんが、実は別で運営している治験関連の私のサイトでは、治験に重複して参加してもバレないかという質問を受けることがしばしばあります。

治験では安全性に考慮して、前回の治験薬投与から一定期間空いていなければ治験に参加することが出来ません。

ただ、やはり残念ながら一定数の方は”治験で稼ぎたい”という考えの方がいて、前回治験に参加したことを隠して新たに治験に参加する方がいるようです。

そうなると、薬の相互作用で重大な副作用を引き起こす可能性もあることから、絶対にそのような重複参加は防がなければいけません。

そこで、もしharmoに治験に参加した情報も蓄積することができれば、治験の重複参加、そして重大な副作用を引き起こすリスクを下げるところに大きく貢献できると思っています。

上記のように使い方によっては治験の場でも活躍する可能性を秘めているので私はharmoに注目をしています。

シミックでCRAとして働いていればもしかしたら、harmoを治験で活かす場を経験できるかもしれないのでそういう意味でも注目出来るのかなと思っています。

グローバル対応力

シミックの強み_グローバル対応力

シミックはアジアを中心に世界8ヵ国に拠点を持っています。

海外拠点の採用については、現地法人にておこなう方針とのことで、現在拡大しているグローバル試験にも対応しできる体制が構築されています。

イーピーエスの決算やシミックの決算でも外資系CROが勢力を伸ばしていることが伺えますが、内資系最大手であるシミックも外資系CROに負けない体制を構築している段階と言えるでしょう。

そしてグローバル試験は今後も増えていくことが想定され、もはや内資CROにおいてもグローバル対応力は必須の能力になってくると考えられます。

就活生的には以下の内容を答えられればベストかと思います。

CRO業界の今後にはグローバル対応力が必須と考えられるがその根拠は何か。
シミックはグローバル対応力の強化に対して具体的にどのような取り組みをしているか。

CRO業界において、グローバル対応力が何故求められているのか説明をしたあとにシミックがその課題についてどのような対応策を取っていて、あなたは何故その取り組みに注目したのか、そしてあなたはその取り組みに対してどのように貢献できるかまでを1セットにしてまとめておけば面接の際に質問があったとしても説得力のある回答が出来るでしょう。

私はこのブログで1例としてグローバル対応力が求められている理由を、EPSやシミックの決算の情報から読み解いていきましたが、他にもアプローチはあるかと思います。

是非そのあたりから考えてみると良いかと思います。

その過程で考察した内容は、シミックだけではなく他のCROや製薬メーカーの開発職を受ける際にも使えるでしょう。

高い提案力

シミックの強み_高い提案力

今は製薬メーカー側にいる私ですが、CROに求めるものの1つとしてまさにこの高い提案力があります。

製薬メーカーの開発は(少なくとも私は)、CROにお仕事をお願いするときには開発のスペシャリストに仕事をお願いする姿勢でいます。

CROは、色々な製薬メーカーの色々な薬剤の開発に携わっているため、製薬メーカーよりもノウハウを蓄積しています。

製薬メーカーの場合、自社製品の開発にしか携わらないため、どうしてもやり方などが限定的になりがちなのため、何かうまくいかなくなったときにCROのノウハウを活かした提案は非常に重宝します。

ここまではCRO全般に言えることなのですが、シミックの場合はそこから1歩先に進んでいる提案をしようという姿勢が垣間見れます。

例えば、今世間では、AIが発展をしてきているのはご存知ですよね?

製薬業界にもAIは広がってきており、製薬メーカーが保有している大量の医薬品に関するデータ(業界ではビッグデータと呼ばれています)をAIによって分析をして、新たな創薬に繋げるという試みがあります。

シミックはその最先端のトレンドも敏感に察知し、サスメド社と提携をして、ビッグデータの簡易解析ソリューションの提供を始めています。

このように、最先端の技術を駆使して製薬メーカーへサービスを提供することも始めているため、この”1歩先に進んだ提案の提供”というのはシミックの大きな特徴の1つです。

CMIC’S CREED

CMIC’S CREEDs

シミックグループの志である「CMIC’S CREED」については、インターンのES課題や稀に面接で聞かれることがあるため、しっかりと内容を押さえておいた方が良いです。

CMIC’S CREEDには「W&3C」(WELLBEING:その瞬間を生ききる、Change:常識に安住せず変革する、Challenge:新たな視点で可能性を切り拓く、Communication:人や社会へ積極的に動きかける。)が含まれていますので、これらに関連したエピソードを準備しておきましょう。

WELLBEING(その瞬間を生ききる)

人々に与えられた時間は有限です。

その瞬間を無駄にすることなく全力で生ききることが重要であるということを意味していますが、噛み砕いて言えば「学生生活を通して熱心に打ち込んだことがあるか」という考え方に近いと思います。

目的を設定して、しっかりと計画を立て、時間を無駄にすることなく取り組んだ経験ということになりますね。

京表具井上光雅堂三代目の井上雅博さんが語るWELLBEINGの記事もイメージを膨らませる参考になりますよ。

参考:永く受け継がれていく作品、その一瞬に携わる仕事 「Like a DJ」DJをする感覚で空間を表装する

Change(常識に安住せず変革する)

人は何も考えずに生活をしていると、つい常識に捉われがちです。

思考停止状態では、イノベーティブな発想も得られませんし、自己成長の妨げにもなってしまいます。

「本当にこれはこの方法で良いのか?」など、常に考えて変えていくべきものはしっかりと変えていくという心構えが重要ということですね。

江戸時代初期の茶人である小堀遠州が打ち立てた「綺麗寂び」という精神を現代的にどのように表現するかを追求した松林豊斎さんのお話もまさにこの「change」に関するエピソードなので参考になります。

参考:内の目と外の目が紡ぐ「綺麗寂び」の伝統

Challenge(新たな視点で可能性を切り拓く)

Changeからの派生です。

常識に捉われて思考停止状態になってしまうのから脱却をしたら、「本当にこれはこの方法で良いのか?」について色々な角度から考えていく必要があります。

「もしかしたら、こうしたらもっとうまくいくのではないか?」、そのような新たな視点を持つことで可能性を切り拓いていく必要があるということですね。

固定観念を打ち破って西陣織を世界の一流ブランドへと成長させた西陣織の老舗、株式会社細尾代表取締役社長の細尾真孝さんのお話が参考になりますよ!

参考:固定観念を打ち砕き、西陣織を世界一流のブランドへと成長させる

Communication(人や社会へ積極的に動きかける)

このように切り拓かれた新しい可能性について、自分だけで留めることなく周囲にも良い影響を及ぼすことで社会全体の貢献に広がります。

新たな可能性を見出したとしても、自分ひとりの力では成し遂げられないこともあります。

例えば、大学の部活で大きな改革をしようとする時には部員の協力が必要不可欠でしょう。なので、部員にも協力を仰ぐ必要がありますが、その際にはしっかりと自分の思いやその改革を行うことの重要性を説く必要があります。

その働きかけに感化されれば、部員も積極的に動いてくれるはずですので、このように良い意味で周りを巻き込んで新たな未来を切り開いていくことが重要であると考えられます。

京都で作られている刺繡の装飾技法の1つである京繡の魅力をComunicationのエピソードを交えながら語られている京都の刺繡工房「繍司長艸」3代目の長艸(ながくさ)真吾さんのお話も心に刺さるので是非読んでみて下さい。

参考:伝統技法を生かしながら、進化し続ける「京繡」の魅力

シミックの過去の出題から考えるES対策と面接対策

シミックの就活対策は本記事をじっくり見て自分なりに考えていただくだけで十分かと思いますが、それだけでは不安な方や時間が無くてじっくり考えられない方もいるかと思います。

noteでは、過去にシミックで出題された内容を元に分析をしている記事もあるので必要に応じて使ってみて下さいね。

まとめ

シミックの臨床開発職を受ける場合であっても、CRO事業のみではなくシミックグループとしてどのような取り組みをしているのか全体像を把握することが大切な印象を受けました。

例えば、harmoのお話をしましたが、一見治験とは直接的には関係無いように思いますが、よくよく考えてみると治験にも応用できる可能性を秘めており、そのシステムを使って製薬メーカーにメリットを訴求すれば他社CROと差別化され大型案件を勝ち取ることもできるかもしれません。

そのようになってくると、CRO事業とは無縁とも言えないのかなと感じていますので、シミックの場合はグループ全体としての方針や取り組みをある程度把握しておく必要があると思いました。

PVCそしてPHVCという目標達成のためにあなたがどのようにシミックに貢献できるのかについて、しっかりと企業研究をして得た情報を根拠にアピールすることが出来れば面接官にも伝わるのではないでしょうか。

今回はシミックの企業研究記事を書いていきましたが、就活戦略の全体像を把握して適切に対策をとっておくことが重要です。

CRO業界や医薬品開発業界の就活戦略についてまだモヤモヤしているという方は就活戦略のまとめ記事もしっかりと読み込んでおくようにしましょう!