未経験からの転職も多い治験コーディネーターですが、治験コーディネーターの将来性について気になる方も多いかと思います。
今回は治験コーディネーターの将来性についてキャリアパスを含めてご紹介をしていきます。
●治験コーディネーターになってからのキャリア形成について
治験業界でかれこれ10年以上お仕事をしています。Twitterのフォロワー数は4,400人超え。分かりやすさを重視してお伝えしていきます!
治験コーディネーターの将来性
医療職からの転職先として人気が高い治験コーディネーターですが、その将来性についてどうなのかというご質問をよく頂きます。
治験コーディネーターの将来性を考えていくには色々と複雑なことも考えなければいけないのですが、ざっくり個人的な結論をお伝えすると近い将来に需要が無くなることはないが長期的には少々分からないかもしれないというものです。
ちょっとハッキリしない感じですよね。。
このような回答をした理由は色々とあるのですが、今回の記事ではその辺りをじっくりと分かりやすく解説をしていきたいと思います。
日本の医薬品開発業界の将来性
治験コーディネーターの将来性を考えるには、そもそも日本の医薬品開発がどのような状態になっているかを知っておく必要があります。
今の日本の医薬品開発は正直に言うと「このままではヤバい」というのが本音です。
では、どのようにヤバいのかを説明していきましょう。
日本のヤバさが最も顕著に表れているのが国別の医薬品市場成長率です。
米IQVIA社の調査によると、2022~2026年の全世界の医薬品市場の年平均成長率は+3~6%であるのに対し、日本は-2~-1%とマイナス成長の予測となっています。
先進国の中では日本だけが唯一のマイナス成長の予測となっており、このことからも日本が世界から取り残されつつあることが分かるかと思います。
その主な理由は、2021年度から始まる毎年の薬価改定で、薬価改定はその性質上、改訂をする度に薬価が下がっていく仕組みであるため、2021年度からは更に日本の医薬品市場が縮小してしまうだろうと予測されています。
製薬メーカーとしては薬価が下がってしまい、薬の売上が落ちてしまうと利益が下がってしまい、外資系製薬メーカーを中心に日本での医薬品開発から撤退してしまう(日本で治験が行われてなくなってしまう)可能性があります。
儲からない市場からは撤退する。これはビジネスとしては当たり前のことですよね。
しかし、「日本での医薬品開発から撤退されてしまう」ということは、「日本で使える医薬品が少なくなってしまう」ということなので、製薬業界としては焦っているわけなのです。
そして、日本の医薬品業界の人は考えます。
「日本から撤退しないようにするにはどうしたら良いのか」
色々方法はあるのですが、その答えの1つとして「医薬品開発コストの削減」というのがあったります。
これこそが、治験コーディネーターの将来性を考える上で非常に重要なことなのでまずはここを覚えておいて下さい。
●その主な原因は薬価の改定によるものである。
●日本で医薬品開発をするためには、医薬品開発のコスト削減をする必要がある。
治験コーディネーターの立ち位置とSMOの将来性
治験コーディネーター(CRC)とは何をする人?仕事内容や適性をご紹介!でもお話をしましたが、治験コーディネーターは医療機関側の人で治験が円滑に進むように調整をする役割を担っています。
そして、治験コーディネーターには「医療機関に所属する治験コーディネーター」と「SMO(会社)に所属する治験コーディネーター」がいました。
このような感じですね。
ここで注目をしてもらいたいのが、“SMOへの委託費は誰が払っているのか”ということ。
医療機関がSMOに業務を委託しているので、医療機関が支払っていると思いますよね?
でも実際は違って、製薬メーカーがSMOの費用を支払っていたりします。
ということは、医療機関がSMOに業務を委託しているところで治験をやろうとすると、製薬メーカーはSMOへの支払もあるので、コストが多くかかってしまうことになるのです。
先ほど医薬品業界全体のお話のところでも触れましたが、製薬メーカーとしては開発コストを削減したいと考えていましたね?
SMOを使用するということはコストが多くかかってしまうということは、製薬メーカー側からしたらコスト削減のターゲットになってしまうことが想像できますよね。
ですので、依頼者視点から考えるSMOの将来性とは?明暗を分かつ要因を考えてみるの記事でもお話をした通り、SMOとしてしっかりと付加価値を製薬メーカー側に示さなければ今後の将来性にも大きく影響してきてしまうので、「生き残るSMO」と「潰れてしまうSMO」の二極化が進んでいくのではないかと考えています。
院内治験CRCとSMOのCRC
治験コーディネーターには、院内の治験コーディネーターとSMOの治験コーディネーターがいるため、分けてお話をしていこうと思います。
院内の治験コーディネーター(CRC)
院内の治験コーディネーターの費用はSMOの治験コーディネーターの費用と比較すると安価である傾向にあります。
それに加えて、治験コーディネーターがいなければ治験を円滑に回すことは非常に厳しいため、治験がある限り治験コーディネーターがいなくなることも無いでしょう。
現在の日本の制度では、診療報酬などの形で治験コーディネーターに費用が支払われることがないため、院内の治験コーディネーターの数は担当している試験数に比較して少ないことが多く、むしろ人手不足の状態の施設が多い印象です。
そのため、今後衰退していくということも考えにくいです。
SMOの治験コーディネーター(CRC)
「生き残るSMO」に所属できるかどうかが鍵になるかと思います。
院内の治験コーディネーターの費用と比較すると、SMOの治験コーディネーターの費用の方が高く、製薬メーカーとしてはそれだけ高額な費用を支払うに値するかどうかという観点がより一層強まるのではないかと考えています。
私は製薬メーカーで勤務をしていますが、SMOにかかる費用も大きいため、その必要性については社内でも議論になることが多くなってきていることを実感しています。
とはいえ、個人レベルで何かできるかというと何もできないのが現実です。
仮に転職した先が「生き残るSMO」ではなかった場合でも、それまでの経験は積めるわけなので、「生き残るSMO」に転職をすれば良いだけです。
経営者の場合はそれが出来ませんが、皆さんの場合は会社が危なくなったら転職をすることが出来るのが強いところですよね!
治験コーディネーターという職種自体が廃れるわけではないので、経験を積んで「CRC経験者」として転職できるだけの経験を積むことに注力すると良いかと思います。
ちなみに、最近の医薬品開発のトレンドで在宅治験(業界では「DCT」と呼ばれています)というものがあり、これは通院が困難な患者さんでも治験に参加できるよう訪問看護ステーションと連携を取るやり方が模索されています。
大手SMOはその新しいトレンドに対応するために、看護師資格がある治験コーディネーターの採用を強化していたりします。
そのような観点でも、「看護師資格がある治験コーディネーター」に関しては特に将来性があると言えます。
治験コーディネーター(CRC)のキャリアパス
治験コーディネーターを経験しておけば、治験業界のキャリアパスの選択肢が一気に広がります。
看護師、臨床検査委技師、薬剤師などの未経験から治験コーディネーターに転職されている方が多くいるので、治験業界でキャリアを広げていこうと考えている場合には入口としてはとても良い選択だと思います。
一例ではありますが、未経験中途からスタートしてどのようなキャリアパスがあるかは以下のようなイメージです。
未経験中途からは、SMOの治験コーディネーター、治験事務局担当者、そしてCROの臨床開発モニター(CRA)やCRAサポート等の募集が比較的多いです。
治験コーディネーターは、自宅付近の地域の施設を担当できるため例えば地方にいたとしても東京や大阪などに出社する必要が無いので選ばれる方も多いのですが(地元で働きたいため)、年収面では下がってしまう方も多く、将来のキャリアパスを考え直す方も多く見てきました。
年収面で気になるのであれば、本社は東京や大阪などの都心になりますが、臨床開発モニター(CRA)を目指すというのも手です。
治験コーディネーターほどは多くないものの、臨床開発モニター(CRA)も未経験者の募集をしているので向き不向きや年収面などを考えてみてご自身に合う方にチャレンジしてみると良いと思いますよ。
治験コーディネーターとしてキャリアを積む場合は、経験を積んでCRCマネージャーやエリアマネージャーなどを目指していくこととなります。
いずれにしても、しっかりと治験コーディネーターに転職をする場合はしっかりと環境が整った会社や医療機関に就職する必要があるためしっかりと実績のある転職エージェントを利用するようにして下さいね!
最近ではありがたいことに、CRAへの転職だけではなく治験コーディネーター(CRC)への転職についてもご相談のDMを頂く機会が増えてきました。 そこで、今回はCRCへの転職の経験談とおすすめの転職エージェントについてまとめ …
まとめ
治験コーディネーターの将来性は、SMO所属の治験コーディネーターの場合、所属するSMOによって明暗が分かれるというお話をしました。
しかし、治験コーディネーターという職種自体の将来性が無いというものではなく、万が一の場合に備えて治験コーディネーターとしての幅広い経験をなるべく積んでおいていざという時には転職が出来る体制を整えていくことが重要だと思います。
これからは、再生医療関連の治験や医療機器関連の治験が活発化していくと言われているので、医薬品に限らず色々な経験を積んでおくことで、将来性がある治験コーディネーターを目指せると思うので、是非トライしてみて下さいね!
“【明暗分かれる】治験コーディネーター(CRC)の将来性を分かりやすく解説” への1件のフィードバック