臨床開発職志望の就活生が抱える悩みとは?実際の声をまとめてみた

就活は、今後の将来を左右する人生の一大イベントのうちの1つかと思います。

そんな大事な就活ですが、2020年はCOVID-19の影響もあり、普段とは違う形態での就活を強いられ、例年以上に負担を強いられたかと思います。

そこで、22卒の就活生の皆様を対象に就活相談会を行い18人の就活生と直接お話をして見えてきた就活生の悩みについて考えていきたいと思います。

臨床開発職を志す就活生の心情変化

22卒の就活は、20206月から徐々に会社説明会やインターンシップが始まり、本記事を執筆している2020年12月28日現在では、一部CROで早期選考が始まっている状況です。

就活がスタートした6月から、選考直前までに就活生が臨床開発職についてどのような心情変化があったのかをまずは見ていきたいと思います。

就活開始~夏インターン


メーカー志望が55%に対してCRO志望が28%と、CROが大きく引き離されている状況でした。

当時の就活生のお話などを聞いていても、恐らくこのタイミングではCROという職種自体がそれほど認知されていなかったと思われます。

就活方針としては、例年通り大手思考は変わらず、半分以上の方がメーカーの開発職を目指していたようです。

夏インターン後


2ヵ月前の就活初期と比べ、メーカー志望が47%に対してCRO志望が36%CRO志望が大きくメーカー志望に詰め寄る形となりました。

このタイミングでの就活生のお話からは、段々とCROについての理解が深まってきた印象を持ちました。

会社説明会も徐々に始まり夏インターンを通して、CRO各社がその魅力についてアピールできた結果が伺えます。

正直なところ、CRO志望のこの追い上げには驚きました。

数年前は、メーカー思考・大手思考がとても強かった印象ですが、最近はCROも勢力を伸ばしてきているのでしょうね。

冬インターン~早期選考直前


ここの結果も始めは意外に感じました。

冬インターンを経験し、これから本格的に選考が始まる直前になり、「メーカーかCROか悩んでいる」と「職種自体悩んでいる」の合計が29%に跳ね上がりました(2ヵ月前は17%)。

この時期では、グループディスカッション等で他の就活生とディスカッションする機会も増えてきており、そのレベルの高さに圧倒されているとお話していた就活生が多かったように思います。

その為、“こんな強豪の中で勝ち残らなければいけないのか…”という不安も出てきており、開発職そのものを見直すといった声もチラホラ聞こえてきました。

その他、この時期では、ESが通過をしてインターンに参加できている就活生と苦戦している就活生が明確に二分されてきたように思います。

特に開発職以外の職種でのESは通過をするが、開発職のESはなかなか通過をしないという方も多かったようです。

意識調査まとめ

2020.08.04 2020.09.28 2020.11.29
メーカー志望 55% 47% 42%
CRO志望 28% 36% 29%
メーカーかCROか悩んでいる 12% 11% 16%
職種を悩んでいる 5% 6% 13%
N 58 75 146

それぞれの時点においてサンプルサイズも異なるため、正確には比較できないと思いますが、傾向を掴む程度には結果が出てきたと思います。

就活相談会は、2020.11.29に実施した意識調査で悩みを抱えている就活生が想像以上に多かったことを受けて、その後3週間程度で実施したものですが、具体的な悩み事については、後ほど詳細を記載していきます。

今回お話をした就活生18人のバックグラウンド

人数 割合
薬学部 12人 66.7%
非薬学部 6人 33.3%
非薬学部(学士) 0人 0%

相談会にご参加いただいた就活生のバックグラウンドになります。

割合を見ると、臨床開発職全体の志望者の割合と近い感じかと思いますので(若干、非薬学部が多いかな?)、どちらかの学部の方に悩みが集中しているということは無さそうです。

就活生が実際に悩んでいたこと

就活生が実際に悩んでいたこと

ここでは、実際に私が受けた相談の中で主な相談事項を相談件数が多かった順に紹介していきます。

就活生の方には、同じ就活生がどのような悩みを持っているのかを共有することが出来ると思いますし、私たちのような現役で業界で働いている人にとっては、就活生の悩みを知ることで、業界としてどのようなことをもっと就活生に伝えていかなければいけないのかが見えてくるのではないかと思っています。

就活生の皆さんにとっては、少しでも悩みを解決できるような糸口になれば幸いです。

メーカーかCROかで悩んでいる

この質問は、相談会の中で最も多く聞かれたことでした。

メーカーでもCROでも「臨床開発職」として募集をしていますが、その意味するところは随分違います。

この辺りの詳しいお話は、以前開催した就活生セミナー(第1回、第2回)でもしたのですが、メーカーでCRAをやることとCROCRAをやることにはその意味合いは異なってくる場合があります。

メーカーのCRA(特に内資系)は、将来的にマネジメントをおこなうための修業的扱いでCRAを経験してもらうことが多くあります。

また、自社にモニタリング部門を持つメーカーについては、マネジメント部門とモニタリング部門が分かれているメーカーもありメーカーであればすべてマネジメントを想定しているという訳ではないのが、混乱を引き起こす原因になっているかもしれません。

一方で、CROCRAは基本的には、その後もCRAとしてキャリアを積み重ねて行き、プロジェクトリーダー(PL)を目指していくというキャリアパスがよく見られます。

CROでも外資系CROでは、ラインマネージャー(LM)の道に進む方もいますので、内資系か外資系かによってもやはりキャリアパスは変わってきます。

この相談を受けた場合は、まずは、ご自身が本当にやりたいことは何なのかを、メーカー、CRO関係なしに考えてもらうところからスタートしていきました。

すると、“CRAのエキスパートとして活躍して、将来的にはプロジェクトリーダーを目指したい”という考えや、“色々な領域・製薬メーカーのやり方を広く学びたい”という結論になる方もおり、目指すべき方向性が実は違っていたなんてこともありました(この場合は、CROの方が目的達成には近い)。

私も就活生の時には持ってしまっていたのですが、意識調査の結果からも分かるようにメーカー優位・大手思考の考えは今も根強くあり、“自身が何をやりたいのか”よりも先にメーカーで働くことありきで考えがスタートしてしまっていることが原因であると思われました。

逆に“CRAとしてモニタリングをやりたい”というよりも、“CRAにこだわりがあるわけではなく、医薬品開発全体に関わりたい”と強く思っている方は、メーカーの方が向いているかもしれません。

これは勝手な個人的な意見ですが、メーカーのインターンに参加した場合はメーカー寄りに、CROのインターンに参加した場合はCRO寄りの内容になっているため、中立的な立場であまり考える機会が少ないのが原因なのではないかなと思いました。

そういう意味では、就活からは外れた中立的なTwitterのような場で色々と考えてみるのも良いかもしれませんね。

ちなみにですが、私は、最終的にはメーカーで臨床開発をやっていきたいと思っていましたが、経験はCROで積んでいきたいと考えていました。

今では、メーカーで臨床開発の仕事をしている訳ですが、CROで得た広い領域やメーカーでの経験はとても役に立っています。

もちろん、転職難易度は物凄く高いのですが、新卒時とは違い、業界のことをよく知ったうえで、自分のペースでじっくりと準備を整えられる(英語の勉強をしたり、経験を積んだり…)ので、その人のやる気次第では十分にメーカーに転職することも可能だと思います。

そういうキャリアプランもあるのだなと選択肢のうちの1つとしてご参考になれば嬉しいです。

CROの特色が正直分からない

主にCROCRAを目指している就活生からの質問で、こちらも結構な数の相談を頂きました。

CRO各社は、会社説明会やインターンで自社の特色をアピールしていることと思いますが、なかなか就活生にはそれが伝わっていない印象を持ちました。

就活生からのお話を聞いた感じ、CRO各社の大まかな特徴(シミックだったらPVCモデル、A2だったらRBMなど…)についてはしっかりと把握をしていましたが、結局その先のイメージが沸いていないことが原因でモヤモヤしてしまっている感じでした。

このような相談に対しては、実際の臨床の現場でそれがどのように役立っているのか具体的な例を示すことでイメージをクリアにしてもらいました。

例えば、CROに関しては、主にメーカーに対してサービスを提供する形態の業種ですので、“顧客満足度”がキーになってくるかと思います。

なので、CRO各社はこの顧客満足度向上に向けて自社のサービスを強化している訳ですが、その道筋は会社によって異なってきます。

CROがゴールを目指す手段

いくつもの道筋があり、その向かう先は同じなのですが、その道筋はCRO各社がそれぞれ考えて導き出した道筋になります。

就活生の皆さんは、その道筋について賛同できるのか、あるいはどう考えているのか、更にはどんな可能性があるのかなどをじっくり考えていくことで、強固な志望動機になってくるかと思います。

そして、それを考えるのに必要なのが業界研究になります。

業界研究はいわば引き出しのようなもので、業界研究を深くやっていればやっている程、引き出しを多く持っていることになるので、考察する幅が広がっていきます(当然、考察する幅が広い方が多角的な考え方も出来るので有利なのは言うまでも無いと思います)。

では、「どうやって業界研究を進めたら良いのか」についてはまた記事にもしっかりとまとめていきたいと思いますが、Twitter内にも様々な方が情報提供して下さっているので、併せてご参照下さい。


※ツイートのリプ欄に製薬業界の皆様からの情報提供があります。

ちなみに…

「目指すべきゴールは同じ」と書きましたが、それは当面のゴールであって、もっともっと先の将来を見据えるのであれば、ゴール地点は別のところにあるCROもあるのです・・・が、その辺りについては想像の域に入るのでここではあえて触れていません(相談会や就活セミナーのときにはちょいちょいお話しています)。

志望するCROの無限の可能性を考えるのであれば、そのような想像を語ってみるのも良いかもしれませんね。

熱い想いを語る就活生には面接官も悪い印象は持たないのではないでしょうか(少なくとも私は熱い想いを語ってくれる就活生は好きです、笑)。

メーカーの開発職と他の職種を悩んでいる

主には、臨床開発職とMRかで悩んでいる方が多かったように思います。

あるメーカーでは、新卒での臨床開発職よりもMRとして入社した後に臨床開発職を目指すキャリアプランを提示していたようで、その影響も少なからずあったようです。

また、メーカーの臨床開発職の場合、採用人数は若干名の場合がほとんどですので、採用人数的な意味で広い視野で応募する職種を考えMRを目指す(開発職に絞ると内定が決まらず、怖い)という方もそれなりにいらっしゃいました。

この悩みについては、会社によって状況が大きく異なるため、考えるのは非常に難しかったのですが、弊社では臨床開発職へのキャリアチェンジ(MR→開発職)はそれほど多くは無いので、臨床開発職へのキャリアチェンジありきの考え方はリスクがあることをお伝えしました。

もちろん、MRの経験から学べることも非常に多くあるでしょうし、それが臨床開発の場でも役に立つことは大いにあり得ます。

MRの仕事に興味があるようであれば、もちろんMRからのアプローチをおすすめしているのですが、仕事内容に不安があるようであれば、“医薬品開発全体的に”という部分ではメーカーと比べ引きを取ってしまいますが、CROという選択肢を取ることをおすすめしています。

これはCROにいた私からのプチアドバイスですが、CROに入社して働いてみると意外に仕事が面白く、労働環境も悪くないと思えることもあったりします。

もちろん辛い時もあるのですが、それでもCRAというお仕事が好きでそのままCROでの仕事を選んでずっとその道を極めている方も多くいらっしゃいます。

悩み相談を受けて感じたこと

今回の相談会に限ったことではないのですが、就活生からの悩みはそのほとんどが具体的なイメージが沸いていないことによって生じているものだと感じました。

もちろん、各社インターンで実際におこなう仕事のロールプレイングなどを行ってはいるのですが、参加するにも人数制限があり、ESを通過させなければインターンにすら参加できないことも多くあります。

また、インターンに参加経験がある方も18人の中には多く含まれていたので、もしかするとインターンを受けてもなお、仕事に対する具体的なイメージが出来ていない可能性が考えられます。

就活生の皆さんのお話から、その会社の強みについては会社説明会などで説明を受けているので知ってはいるのですが、その強みの“活かし方”についてはまだイメージしきれていない印象を持つことが多かったです。

なので、私は現在の医薬品開発のトレンドや方向性を噛み砕いて説明をしたうえで、その企業の強みの“活かし方”を具体的な例を使ってお話することを意識していました。

よりリアルなお話(その時の苦労など体験談なども)を就活生に聞いてもらうことで、印象に強く残るエピソードになり、そこからイメージが膨らんでいき、自身の考えをアウトプットするという流れが私の中のアドバイスの成功イメージでした。

これからも就活生向けの記事では、なるべくイメージが膨らむような内容を意識して書いていきたいと思います。

まとめ

ありがとう

今回は多くの就活生の方と140分という時間ではありましたが、11で直接お話を聞くことが出来ました。

お話をしていく中で、現役で働臨床開発職の1人として、どのようなことを未来の後輩たちに伝えていかなければいけないのかをとても考えさせられる場面も多くありました。

私が出来ることはとても限られてはいますが、これからも粛々と就活生のみならず多くの方にとって有益と思ってもらえるような記事を書いていきたいと思います。(鈍足ですが…!)

あ、最後に。

色々な気付きをいつも与えてくれる就活生の皆さん、ありがとう!

私は、早くみなさんと一緒に仕事をするのを楽しみにしていますが、きっと私以外の業界のみなさんも楽しみにしていると思います!