コロナワクチンの治験参加でいくら貰える?

私は治験に関するお仕事をしていますが、治験について一般の方からはよく「治験に参加すると報酬はいくら貰えるの?」や「治験での謝礼金の相場は?」など、お金関連のお話をよく聞かれます。

今回は治験に関わるお金のお話をしていきたいと思います。

はじめに

治験は実はアルバイトではなく、扱いとしてはボランティアになります。

ただ、地域のゴミ拾い等のボランティアと違い、治験の場合は未承認のお薬を服用する必要があったり、治験では様々な検査をするため通院が必要となり交通費などの金銭的な負担がかかったりと他のボランティアとは少し状況が異なります。

それにも関わらず、「他のボランティアと同じく無償でやってね!」というのはあまりに酷なもの。

そのため、治験ではそれらの負担を軽減することを目的として、治験に参加して下さった被験者さんには負担軽減費という費用を支払っているのです。

この負担軽減費というのが、いわゆる世間一般で言われている「報酬」や「謝礼金」や「協力費」と呼ばれているものと同じものになります。

ネット上には個人が書いている治験に関する情報が多くありますが、治験を専門に仕事をしている身からすると誤った認識で書かれている記事が散見されるため、皆さんにも気を付けていただければと思っています。

特に治験の業界では、「治験に参加することで謝礼金がいっぱい貰えますよ!」などお金で治験参加を誘引する行為は厳しく禁止されています。

お金で治験参加を誘引しているサイトには特にご注意下さいね!

治験に参加することで登場する「お金」

治験に参加することで支払われる費用または、軽減される費用は主に「負担軽減費」と「検査費用」になります。

それぞれについて、簡単に説明をしていきましょう。

負担軽減費

負担軽減費は、治験に参加する際に検査や診察のために通院が必要になるので、主にその際に必要になる経費(交通費や診察費等)や軽食代を負担するという名目で支払われる費用です。

通院のみの治験の場合と通院+入院の治験の場合について例を出しながら見ていきましょう。

負担軽減費の仕組み

負担軽減費は、1回の通院ごとに7,00010,000円で設定されている場合がほとんどです。

負担軽減費の額は医療機関毎によって異なりますので、ご自身が参加される医療機関での負担軽減費はいくらなのかを確認しておきましょう(こちらから確認をしなくても教えてくれると思います)。

通院のみの治験の場合はとてもシンプルで、負担軽減費の単価に通院回数を掛ければ良いのですが、入院を伴う治験の場合少しだけ複雑になります。

負担軽減費は、あくまで「通院」に対して費用を補填するためのものですので、入院が伴う場合は、入退院で1回分の負担軽減費とすることが一般的です。

こちももちろん医療機関によって決まりが異なる場合があるので、詳細は治験参加時に確認をしてみて下さい。

健康人対象の治験の場合の負担軽減費

健康人が対象の治験の場合、治験募集サイトでも「2泊×2回で133,000円」など、高額な負担軽減費を目にすることもあるかと思います。

よくネット上でも「治験に参加して高額報酬をゲットして稼ぐぜ!」という投稿も見かけたります。

健康人が対象の治験の場合は、ほとんどが入院で行う治験になるので「通院時の経費的な負担を軽減する」という目的からすると、負担軽減費も僅かとなるはずです。

しかし、実際には僅かではない額になっている…なぜでしょうか?

実は、負担軽減費の役割については、平成10年に提言された「治験を円滑に推進するための検討会」の最終報告書内で「治験参加に伴う物心両面の種々の負担を勘案した、社会的常識の範囲内における費用の支払いによる被験者の負担の軽減」と記載されています。

その後に発出された「政医第196号(平成1172日)」の資料内で、国立病院・療養所で実施される治験の負担軽減費については「当面、7,000円を標準とすること。」とされており、各医療機関はこの額を基準に負担軽減費を設定している背景があります(約200施設への調査の結果、平均7,000円の負担軽減費を支払っているという調査結果であったため)。

「治験参加に伴う物心両面の種々の負担」という部分の解釈が、通院の治験の場合「交通費や軽食代」としているのですが、健康人の治験の場合、健康であるにも関わらず治験のために長時間病院にいなければいけなかったり、採血をしなければいけない精神的な負担も考える必要があります。

「精神的な負担」を軽減する目的の額として、各医療機関がそれぞれ定めているため、通院の場合の「7,000円×通院回数」のような単純な計算にはならないということです。

治験ではリスクが高い代償として高額の負担軽減費が設定されている?

では、その「精神的な負担」に対して高額額な負担軽減費が設定されているわけなのだから、大きなリスクの代償として大金が支払われるのではないかという疑問が湧いてくるかと思います。

そのためか、世間では「治験は闇バイト」、「危ないことやられるから高額な報酬が貰える」というデマが広がってしまっているのが現状です。

しかし、”高額に見える”理由にはからくりがあります。

健康人対象の多くの治験では入院を伴いますので、1日あたりの拘束時間は約24時間となります。

実際にある治験では「2泊×2回で133,000円」という額が設定されていました。4日で13万円と言われると高額と思われるかもしれませんが実際にはどうでしょう?

時給換算をしてみると分かりやすくなります。

2泊が2回なので、大雑把に考えると約96時間が拘束時間になります。

96時間で133,000円ですので、時給換算をすると時給1,385円(133,000÷96=1,385円)になります。

令和3101日の東京の最低賃金は時給1,041円なので、最低賃金より少し高い程度となります。更に、治験の負担軽減費の中には交通費や軽食代が含まれているので、それを考えるとほぼほぼ同じ水準と考えることができます。

治験では高額な賃金を提示して治験の参加を促すことは厳しく禁止されていますが、このように最低賃金と比較しても実は常識の範囲を越える程の高額ではないことが分かります。

このことからも治験は「闇バイト」や「高額アルバイト」では断じてないということがお分かりいただけたのではないでしょうか?

検査・画像診断の費用

治験に参加をした時のお金では「負担軽減費」がよく話題に出てきますが、実は治験に参加している時には治験のための検査・画像診断料の費用が無料になるケースがあります。

治験期間中の検査画像診断費用

治験に参加をすると、治験薬を服用するわけですが、治験薬を服用している間の検査や画像診断の費用は実は保険が適用されない期間になります。

つまり、治験薬を服用している期間内に検査や画像診断をした場合には患者さんが10割負担をしなければいけないのです。

ですが、ご安心を。

この患者さんが10割負担をしなければいけない費用については、全て製薬会社・医療機器会社が負担することになります。

治験では、参加者の安全性をしっかりと確認するために実施する検査が規定されていますが、治験薬を服用している期間中は、治験で計画されている検査・画像診断の費用については無料になります(もちろん、治験薬の費用も無料です)。

治験薬を服用していない期間中の検査については、保険が適用されるので参加者が支払わなければいけないこともありますが、医療機関によっては治験薬を服用していない期間でも治験期間中であれば治験で規定された検査の費用が無料になるケースもあります。

このように、患者さんを対象とする治験の場合、検査費用的な意味でも金銭的な負担が軽減されることもあることを覚えておきましょう(「診察料」など、検査・画像診断料以外の費用は被験者さん負担の場合がほとんどです)。

治験薬を服用していない期間の自己負担分は上の絵では3割と記載しましたが、70〜74歳は2割(現役並の収入の場合3割)、75歳以上は1割となります。

ちなみに、健康人の治験の場合は、検査費用を負担しなければいけないことは滅多にありません。

まとめ

このように治験では、治験に協力して下さる参加者の負担を軽減するために様々な仕組みがあります。

ついつい高額な費用だけに目が行ってしまい、「危ないんじゃないか」、「何されるか分からない」などネガティブな印象を持たれがちな治験ですが、負担軽減費の考え方を知ってしまえば全然怪しくないことが分かったのではないでしょうか。

ちなみに私は治験に関するお仕事をしていますが、普段の様子をTwitterでも公開しています。

専門的なお話ばかりでつまらないかもしれませんが、私の周りにいる治験の界隈で働く方は勉強熱心で意識が高い方が多いので、気が向いた時にでも覗いてみて下さい。

治験の界隈の皆さんは、治験のことを本気で考えていますし、参加者の方の安全や有用な素晴らしい薬を患者さんに届けたいという強い意識のもと働いています。

きっと、「治験をやっている奴は怪しい奴だ!」という印象は無くなると思いますよ!