いったいなんで?女性の治験の募集が少ない理由と女性におすすめの治験をご紹介

「女性の治験バイトの募集は男性ばかりで少ない!なんで!?」という質問をよく受けるのですが、みなさんもそのように感じたことはないですか?

治験で女性の募集が少ない理由や女性でも参加できる治験にはどのようなものあるのかについて分かりやすく解説をしていこうと思います。

この記事で分かること
女性の治験が少ない理由
女性でも参加可能な治験の情報
賢い案件の探し方
のりすのりす

製薬メーカーで治験のお仕事をしているプロが分かりやすく解説をしていくよ!

治験と臨床試験と臨床研究

治験と臨床試験と臨床研究

みなさんは「治験」というとどのようなものを思い浮かべますか?

病院に入院をして、治験薬を飲まされて注射などで採血をされて…というようなイメージですかね?

実は、治験にも色々な種類があったりします。

主な治験の種類
入院型の治験
通院型の治験

↑のように、治験は実は入院で参加するもの以外にも通院で参加できる治験もあります。

それぞれについては後で詳しくしっかりと説明しますね。

さて、治験の種類の他にヒトを対象にした研究には以下のような種類があります。

臨床研究と臨床試験と治験の関係

治験と言うのは、主に医薬品に対してのことを言いますが、例えば化粧品や健康食品については医薬品ではないので臨床試験と呼ばれています。

よく世間では「化粧品の治験」や「健康食品の治験」と言われていることがありますが、それらは全て間違った言い方ということですね。

その他、臨床研究というものがありまして、これはヒトを対象にしたもので医薬品や化粧品や健康食品の効果を調べる以外のものになります。

例えば、「宇宙区間での人の心理状況の検証」とか「人が驚いた時は血圧がどのように変化するのかの検証」とかです。

治験と臨床試験と臨床研究はそれぞれ別物なのですが、基本的にはどれも参加をすることで負担軽減費というお金を貰うことができるのは共通しています。

なので、参加者の方からすればどれもあまり変わらなく見えるかもしれません。

ただ、実はこの「治験」と「臨床試験」と「臨床研究」でそれぞれ女性の募集件数が違っていたりもするのです!

女性の治験募集数はどれくらい?

世間では「女性の治験バイトの件数が少ない」というお話をしている方が多いのですが、実はこれは半分正解で半分不正解です。

どういうことかというと、治験というのは実は第I相~第III相まで分かれていてそれぞのフェーズで女性の募集数が大きく異なっているためです。

医薬品開発の流れ

第I相の治験というのは、主に健康成人男性が対象の治験で一般的には入院型の治験で募集がかかります。

そして第II相と第III相の治験では患者が対象になってくるので女性の募集数も多くなってきます。

それぞれの開発相(第I相~第III相)の特徴と女性の募集数は以下のようになります。

開発相 調査内容 主な対象 女性の募集
第Ⅰ相 安全性・薬物動態 健常成人男性 ×
少ない
第Ⅱ相 用法・用量 軽度な患者
男性と変わらない
第Ⅲ相 有効性・安全性 軽度~重度な患者
男性と変わらない

※上記の表には、主な内容を記載しています。

第I相の主な対象者は健康成人男性になるので、女性の募集数が少ないことが分かります。

しかし、第Ⅱ相と第Ⅲ相に関しては、性別による違いはほとんどありませんし、むしろ女性のほうが若干多い場合もあります。

具体的には、「不眠症」、「月経前症候群(PMS)」、「乾燥肌」や「便秘」あたりの治験は女性に多い疾患なので男性でエントリーする人が少なく女性でも参加できる確率が高くなります。

つまり、治験で案件を探す時には患者が対象の第II相か第III相の治験を探してみると女性の募集数も多いはずです。

そして「健康・美容食品モニターの募集数」「各層の治験募集数」の具体的なデータは以下の通り(2022年7月30日のデータです)。

開発相 女性 男性
第Ⅰ相 0件 11件
第Ⅱ/Ⅲ相 13件 11件
美容・健康食品 10件 7件

第Ⅰ相治験の女性の募集数はなんと0件!

しかし、第II相や第III相の治験や化粧品や健康食品モニターの募集件数については女性の方が多い傾向なのが分かるかと思います。

ポイント
治験には第I相~第III相の3種類がある。
そのうち入院型の治験が多い第I相の治験は基本的には男性の募集のみとなる。
しかし、患者が対象の第II相や第III相の治験であれば女性の募集数も多い。
その他、化粧品や健康食品のモニターも女性の募集数が多い。

女性の治験が少ないと思われる理由

女性の治験が少ないと思われる理由

多くの人が「協力すると大金がもらえるのが治験の魅力」と感じていると思います。

そして第Ⅰ相治験の方が、負担軽減費(治験に参加した際に貰えるお金)が高い傾向にあるため、大体の人が「よし、稼げる治験を探そう!」ということで、「第Ⅰ相の治験の募集」を探すことになります。

すると、「あれ、女性の募集は少ないな」という印象を受けるわけですね。

では、なぜ第I相の治験では女性の募集が少ないのでしょうか?

それは、製薬メーカーが治験の計画を立てる時に参照するガイドライン(厚労省が作成)に、以下のような文章が存在するからです。

第Ⅰ相試験は、治験薬を初めてヒトに適用する試験で、原則として少数の健康男性志願者において、治験薬について臨床安全用量の範囲ないし最大安全量を推定することを目的とし、あわせて吸収・排泄などの薬物動態学的検討を行ない、第Ⅱ相試験に進み得るか否かの判断資料を得るための試験である。

厚生労働省 「新医薬品の臨床評価に関する一般指針」より

特別な理由のない限り、健康成人男子志願者を対象とする。

被験者については適切な 理学的、生化学的健康診断検査を行い、治験薬の性質と試験内容 (すなわち試験意義、目的、方法、予想される薬効・副作用、随意の参加の撤回及び事故に対する補償など)を十分理解させた上で、試験に対して自発的な意志で参加する旨の同意書を得る必要である。

厚生労働省 「新医薬品の臨床評価に関する一般指針」より

そもそもガイドラインに「第Ⅰ相治験は、基本的に男性に協力してもらうこと」と記載されているのですね。となれば製薬メーカーも当然それを守ります。

ちなみにお腹に赤ちゃんがいる(かもしれない)女性に関して、このような文章があります。

一般に、臨床試験の初期においては、妊婦及び妊娠している可能性のある女性は被験者から除外しなければならない。

妊婦及び妊娠している可能性のある女性に用いられる治験薬の場合には、これらを被験者としない第Ⅱ相試験で有効性と安全性について適切な情報が得られ、さらに動物を用いる生殖試験の全てが終了した後に試験が組まれるべきである。

投薬中に妊娠した場合には、胎児についても追跡検討を行う必要がある。また可能な限り治験薬又はその代謝物の乳汁中への移行についても検討すべきである。

なお、妊婦及び妊娠している可能性のある女性に対してのみ使用される医薬品については、第Ⅰ相試験から女性について試験を行うが、試験の進め方については、これまでの記述を参考として慎重に行う必要がある。

厚生労働省 「新医薬品の臨床評価に関する一般指針」より

治験薬の女性への投与に関しては、ガイドラインに「胎児や乳汁に対する影響に関して、動物実験によりしっかりとチェックした上で、細心の注意を払って行うべき」と記載されています。

一般的には、「『胎児などへの悪影響がない』と動物実験により判明したら、女性の募集もスタートする」という流れがあるため、第Ⅱ相になってからでないと女性の募集が多くならないことが多いのです。

「そういう伝統だから」などの理由ではなく、しっかりとした科学的な根拠があって女性の募集数が少ないという事がお分かりいただけたのではないでしょうか。

このように治験はガイドラインなどで安全性についてもしっかりと厳しく規制されているのですが、それでもやっぱり危険ではないかと怖くなる方もいますよね。

治験が危険かどうかについては、治験は危険なもの?メリットやデメリット、案件の例まで徹底解説!にも詳しく書いていますので気になる方はこちらも見てみて下さい。

女性でも参加できるおすすめの治験

女性でも参加できるおすすめの治験

さて、治験の募集事情を知ったところで、次は女性におすすめできるような治験や女性でも参加できる治験について詳しくお話をしていきます。

今までお話をしてきた内容を踏まえると、女性におすすめな案件は以下のようになります。

女性におすすめの案件
患者が対象の第II相か第III相の治験
健康食品や化粧品のモニター
臨床研究のモニター

これらは全て参加をすると負担軽減費というお金が貰えますが、その金額も気になるところだと思います。

大まかな目安になりますが、以下のようになっています。

種類 回数等(例) 協力費(目安)
治験(通院) 10回 100,000円
治験(入院) 5泊 115,000円
健康食品(在宅) 30日間使用 20,000円
健康食品(通院) 5回 50,000円
化粧品(在宅) 30日間使用 20,000円
化粧品(通院) 3回 30,000円

この大まかな負担軽減費の額を見ると、「高額=危険な案件」と思う人も多いのですが、「治験バイトは高額で危ない」は本当?相場と高額な理由を解説でもお話をした通り、よくよく考えてみると実は高額でも何でもないのですよね。

「高額=危険な案件」ではないので、その辺りは心配しすぎなくてもOKです。

先ほどもお話した通り、入院型の治験の募集で女性が対象になることはかなりレアなのですが、極稀に募集をしていることもあるので、狙いたい方は治験募集サイトでこまめに情報を探してみると良いと思います。

運が良ければ治験以外にでも「健康な成人女性の血圧値の変化の測定(7日間)」のような臨床研究で入院生活を7日間継続して、その期間中は血圧のデータを継続的に取るというようなデザインの試験もあったりします。

基本的には、「患者が対象の第II相か第III相の治験」、「健康食品や化粧品のモニター」を軸に探して「臨床研究のモニター」を視野に入れる感じがおすすめです。

女性におすすめの案件については、【女性の治験は少ない?】女性におすすめの治験と探し方を解説!でも詳細にお話しています。

おすすめの治験募集サイト

Wedding Studyへの招待状

「女性でも参加できるおすすめの治験」でいくつかの案件の種類を載せましたが、その中で一番気になったのはどのような案件でしたか?

治験募集サイトも得意な案件とそうでない案件があるので、どのような案件を探すかによっておすすめする治験募集サイトは変わってきます。

↑のような感じでOKです。

おすすめ治験募集サイトのまとめ記事でもそれぞれの治験募集サイトの特徴や評判や口コミを紹介しています。

↑の治験募集サイトであれば安全ですが、自力で探す場合は詐欺サイトのようなものもあるので注意して下さいね。

まとめ

ここまで女性の治験・臨床試験に関して解説しました。

「そもそも第Ⅰ相治験は男性が受けることが前提となっている」という事実については、知らなかった人も多かったのではないでしょうか。

お腹の中の赤ちゃんへの悪影響なども考えられますから、これは仕方がないことだと言えますよね。

ですが、女性の場合は「安全性に関するデータがそれなりに収集されてから治験に協力することが可能」ということでもあります。

また、第Ⅱ相・第Ⅲ相治験、各種モニターについては女性の募集も多いですから、今回ご紹介したサイトなどを利用して探してみてはいかがでしょうか。

治験に参加する方が多くなれば、それだけお薬を必要としている患者さん・医療従事者さんたちとしては助かりますのでぜひ検討してみてくださいね。

また、「やっぱり治験って、なんだか怖い……」と感じる方は、筆者のTwitterをご覧いただけると幸いです。

医薬品開発に携わっている方々は皆さん誠実に日々尽力しているのですが、やっぱり実際に見てみないと分からない部分が多いですからね!