【公務員が治験参加はOK?】処分事例などを含めて解説!

公務員は国家公務員法と地方公務員法によって副業が制限されていますが、神戸市が副業を解禁するなど柔軟な動きもみられてきています。

そこで、今回は公務員が治験に参加することがOKかどうかを解説していきたいと思います。

この記事で分かること
公務員でも治験に参加することができるか
公務員が治験に参加して処分されたことがあるか
治験に参加する上での注意点
のりすのりす

治験を専門にかれこれ製薬企業で長年働いています。Twitterもやっています。フォロワー数は4,900人程。今回もなるべく分かりやすく解説をしていきます

公務員が治験に参加をしてもOKか?

公務員は治験に参加をしても問題無いか?

公務員は法律で副業が制限をされており、2022年には消防士がYouTubeでゲーム実況をして約115万円の収入を得たことで減給10分の1(1か月)の懲戒処分となったというニュースがありました。

では治験はどうかというと、公務員が参加をしても問題はありません。

治験は世間一般では「バイト」と誤って認識をされていますが、実はバイトではなく正確には「ボランティア」になるので国家公務員法と地方公務員法での規制の対象外になってきます。

公務員が治験に参加をしても問題無い根拠をもう少し詳しくお話をしていきましょう。

国家公務員法と地方公務員法の規制の範囲

国家公務員法と地方公務員法での副業の規制範囲

そもそも公務員が副業を禁止されている根拠は国家公務員法地方公務員法に以下のように記されているからです。

■国家公務員法第103条(私企業からの隔離)
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。) を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企 業を営んではならない。

■国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限)
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、 顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

■地方公務員法第38条(営利企業等の従事制限)
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第1項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第22条の2第1項第2号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

元の条文だけでは難しい言葉が多くて分かりにくいのでもう少し分かりやすい資料で確認をしていきましょう。

総務省が提示している資料

総務省から提示されている地方公務員の社会貢献活動に関する兼業についての資料で分かりやすく事例紹介がされています。

注目すべきは以下のスライド。

公務員の副業_兼業許可を要しない行為であることが明確な事例出典:地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について(総務省)

要するに「働いた対価(労務等の対価)として報酬を得ることは禁止だけど交通費のみを受領しているのであればOKですよ」ということですね。

のりすのりす

大体の副業は、働いた対価として報酬を貰っているのでNGということになりますね。

ここではまずは以下のポイントを押さえておいてください。

ポイント
働いた対価として報酬を受け取ることはNG
交通費のみを受け取る場合はOK

社会貢献活動には前向き

先程の総務省の資料の中には公務員でも治験に参加できるかどうかを考えるうえで、重要な情報がもう1つあります。

以下のスライドを見てみましょう。

兼業による社会貢献活動への積極的な参画を可能とするための課題

このスライドでは公務員の社会貢献活動への積極的な参画が課題として取り上げられています。

問題点としては、兼業が可能かどうかを判断しにくいことが原因で社会貢献活動であっても躊躇してしまうというものです。

のりすのりす

これはまさに皆さんが「治験に参加をしても良いか」と悩んでいることを指していますね。

この資料からも総務省としては公務員が積極的に社会貢献活動をすることが推奨されていることが分かるかと思います。

ポイント
総務省では公務員が積極的に社会貢献活動をすることが推奨されている

公務員が治験に参加をしても大丈夫な根拠

公務員が副業をして処分された事例

ここまでで、国家公務員法と地方公務員法で規定されている範囲と総務省の副業に対する考え方が分かってきたかと思います。

それでは、いよいよそれを治験に当てはめるとどうなるのかを解説していきたいと思います。

①治験はバイトではなくボランティア

治験は「高額バイト」や「副業」など、世間一般では誤解をされやすいのですが正確には「ボランティア」になります。

治験がボランティアであるということは厚生労働省のHPに掲載されている医療機関の治験実施体制に関する現状調査班_報告書の以下の記載からも読み取れます。

被験者候補登録システムと個人情報への配慮については、疾患等別に被験者の候補となりうるボランティアを事前に登録しておく仕組みは、治験の迅速化にとって重要と言えるが、わが国において「患者パネル」又は「被験者パネル」として、現在、主として医療機関やSMOが有しており、個人情報の保護が重要となっている。

また、同じく厚生労働省のHPに掲載されている全国治験活性化3カ年計画からも読み取れます。

○ 治験は患者にとって、開発中の最新の医薬品等へのアクセスを可能にするという面がある一方で、肉体的・精神的負担等を自ら進んで引き受けるというボランティア的側面もある。

治験は医薬品を開発する上では必要不可欠なものであり、ボランティア的な側面が強いことからも社会貢献活動に該当します。

のりすのりす

総務省では公務員が積極的に社会貢献活動をすることが推奨されているので治験への参加もピッタリ当てはまることが分かりますね。

②治験参加で貰えるお金は報酬ではない

「ではでは、ボランティアなのにも関わらず治験に参加をすると多くのお金が貰えるけれど、あれは大丈夫なの?」と思いますよね。

治験は先ほどお話をした通りボランティアになりますが、治験はゴミ拾いなどのボランティアと違い時間的拘束がされてしまったり病院に通院するための交通費がかかったりと様々な面で負担が掛かってしまいます。

「ボランティアなので何も支払いはできません」とするのも手ではありますが、いくらボランティアとはいえそこまでの負担を強いておきながら無料で協力してもらうというのはさすがに…というところなのですよね。

この点については、厚生労働省の「治験を円滑に推進するための検討会」報告書について(概要)にもしっかり以下のように記載されています。

○治験参加に伴う物心両面の種々の負担を勘案した、社会的常識の範囲内における費用の支払いによる被験者の負担の軽減

つまり、治験で貰えるお金は治験に参加した対価として支払う報酬ではなくて、治験に参加することで生じる様々な負担を軽減する目的で支払われるもの(負担軽減費)になります。

のりすのりす

総務省では、働いた対価として報酬を受け取ることはNGでしたが交通費を受け取ることはOKでしたよね?交通費は治験でいうところの「負担」の一種ですね。

このことからも、治験に参加をすることによって得られるお金についても規定に抵触しないと考えられます。

③治験に参加をして処分されたという事例は無い

過去のニュースを遡って公務員が副業によって処分された事例の一部をまとめてみました。

報道日 内容 職業 処分
2023/3/25 食品配送の副業で数万円から15万円の報酬を受けていた。 消防士 減給10分の1
2023/2/10 スニーカー転売で1,900万円の転売益を上げていた。 市職員 減給10分の1
2022/11/11 所属病院以外の産科医院で助産師として月1回程働き報酬を受けていた。 看護師/助産師 戒告
2022/9/2 接待を伴う飲食店で副業をして報酬を受けていた。 看護師 戒告
2022/6/11 知人にカウンセリングをして200万円の報酬を受けていた。 小学校教諭 停職
報道日 内容 処分
2023/3/25 消防士が食品配送の副業で数万円から15万円の報酬を受けていた。 減給
2023/2/10 市職員がスニーカー転売で1,900万円の転売益を上げていた。 減給
2022/11/11 看護師が所属病院以外の産科医院で助産師として月1回程働き報酬を受けていた。 戒告
2022/9/2 看護師が接待を伴う飲食店で副業をして報酬を受けていた。 戒告
2022/6/11 小学校教諭が知人にカウンセリングをして200万円の報酬を受けていた。 停職

この表からも分かる通り、治験に参加をしたことによって公務員が処分されたという事例は過去にはありませんでした。

とはいえ、確定申告のことなど色々と心配なこともあるかと思うので気になる方は以下の記事も併せて読んでみて下さいね。

治験に参加する上での注意点

治験に参加する上での注意点

ここまででお話をしたように治験は副業には当たらないと言えますが、治験に参加するにあたってしっかりと注意をしておかなければいけないこともあります。

その辺りについて簡単にお話をしていきます。

3原則は守るように

そもそもなぜ公務員は副業が禁止されているのかということですが、その根源には3原則の存在があります。

3原則

①信用失墜行為の禁止
公務員全体のイメージを壊す行為や信用をなくすような行為は禁止するというもの。
②守秘義務
職務上知りえた秘密を他所へ漏らしてはいけないというもの。
③職務専念の義務
本職に専念しなければならない。本職に支障がでる行為も控えなければならないというもの。

治験に参加をする際に特に注意が必要なのは「③職務専念の義務」です。

治験に参加をすることで本職に支障が出てしまう場合はNGとなるので、この点だけには注意が必要です。

不審な治験募集サイトを使わない

ネット上には情報が氾濫しており、中には治験募集サイトと謳った悪質なサイトも存在します。

知らずともそのようなサイトと関わってしまうと最悪の場合、信用失墜行為に繋がる恐れがあるため、身元がしっかりとしている安全な治験募集サイトを使う必要があります。

【2024年最新版】プロがゼロから解説!おすすめの治験募集サイトをご紹介では安心して利用できる治験募集サイトをまとめていますので、よく分からない場合には闇雲に登録をせずにこちらの記事に載っている治験募集サイトの中から選ぶようにしましょう。

まとめ

今回は公務員が治験に参加することについてまとめていきました。

治験は世間では時々「闇バイト」や「高額バイト」などと言われてしまうこともありますが非常に社会貢献度が高いボランティアになります。

正しい知識を持って医薬品開発に貢献して貰えたら私としてもとても嬉しいです。