治験で副作用が出た時の補償について分かりやすく解説!2

「治験に参加したい!」と思っていてもやはり副作用や副反応のことが心配で治験に参加をしてしまうのを躊躇されてしまう方もいるのではないでしょうか。

本記事では、治験に参加をして健康被害が出た時にどのような補償をしてもらえるのか、そしてどのようなことを注意しなければいけないのかをご紹介していきます。

治験での補償のルール

数々の製薬メーカー、医療機器メーカーが治験を実施していますが、実は各会社で補償についての規定を決める時に参考にしている資料があります。

それは、医薬品企業法務研究会が公表している被験者の健康被害補償に関するガイドライン」(よく「医法研ガイドライン」と呼ばれています)になります。

このガイドラインには、治験に参加した被験者さんに健康被害が発生した際にどのように健康被害補償をすべきかの方針が示されており、製薬メーカーや医療機器メーカーの補償の規定は大半がこのガイドラインの内容が軸になっています。

そして、世の中には数多くの治験が実施されていますが、その治験毎に補償の概要が定められています。

治験に参加する時には、先生や治験コーディネーターの方から治験に関する説明がされますが、治験に参加することになった場合に治験に参加した時には「健康被害補償の概要」が渡されます。以下のような資料です。

健康被害補償の概要について

出典:医薬品企業法務研究会HP

治験に参加された際には、この健康被害の補償に関する資料を受け取っているかを必ず確認して下さい。

もし治験に参加しても受け取っていない場合は、治験コーディネーターさんに聞いてみると良いでしょう。

今回の記事では、治験での補償に関しての基本的な考え方等についてお話をしていきますが、参加している治験固有のルールについては、この「健康被害被害補償の概要」に記載されているので、治験に参加した際には必ずご確認下さいね!

補償の対象

さて、いよいよ補償についてお話をしていきますが、この記事は一般の方も多く見られていると思いますので、なるべく噛み砕いて簡単に説明をしていきたいと思います。

まず補償の対象についてですが、治験に参加したことによって健康被害が発生してしまったときに”必ず”補償してくれるかというと実はそうではありません。

「え!?補償してくれない時もあるの!?」と驚かれた方もいるかもしれませんが、順番にゆっくり説明をしていきますね。

まず補償の対象についてですが、医法研ガイドラインでは”治験での健康被害”について以下のように解説されています。

「治験に係る被験者に生じた健康被害」には、治験薬の他、治験実施計画書で定めた薬剤の投与、検査等の臨床上の介入及び手順により生じた健康被害が含まれ、「治験」との因果関係が否定されない健康被害をいう。

ちょっと専門用語が色々あって難しいと思うので噛み砕いて説明をします。

健康被害が補償されるのは、以下の2パターンになります。

治験での健康被害が補償されるパターン
治験に参加したことによって健康被害が発生したことが明らかな場合
治験に参加したことによって健康被害が発生したかもしれない場合

治験では、「治験実施計画書」という資料で、どのような手順でどのような対応をするのか等が詳細に決められています。

治験は、この治験実施計画書に沿って行われるのですが、そこで規定されている手順によって健康被害が生じた(あるいは生じたかもしれない)場合が健康被害補償の対象となるわけです。

お気付きの方もいらっしゃいますかね。

治験での「補償」というと、治験薬を飲んで発生した副作用で健康被害が出た場合と思っている方も多いかと思いますが、治験では各種検査や採血等も規定されていることが多く、それらで健康被害が発生した時も補償の範囲内になるということです(各種検査や採血等で健康被害というのは私も経験が無い程レアケースですが…)。

また、「治験に参加したことによって発生したかどうかなんてどうやって判断すれば良いんだ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

”発生した健康被害が治験と関係あるのか”については、被験者さんが判断することは難しいため、ガイドラインではメーカーが判断することとされています。

「え?それじゃ、『治験との関係はなし!だから補償しない!』とか言うんじゃないか!?」となる方もいますよね。あるいは、「その補償内容ではない納得できない」という方もいるかもしれません。

ご安心下さい。ガイドラインでは、そのような場合も想定しており、「外部専門家による意見を求めることもでき、その費用についてはメーカーに請求できる」という趣旨の記載があります。

セカンドオピニオンのようなイメージなので、補償に納得いかない場合などにはこのような方法も考えてみても良いのかもしれません。

また、治験での補償の対象外となるのは以下のようなパターンになります。

治験での健康被害が補償されない可能性があるパターン
治験に参加したことと健康被害の関係性が明らかに否定できる場合
被験者に重大な過失がある場合
プラセボにより治療効果が得られなかった場合
治験薬が効かなかった場合

治験とは全く関係ないところで健康被害が生じた場合や治験で決められているルールを破っている等、被験者さんに過失がある場合については健康被害が補償されない可能性があります。

ですので、治験に参加した際には決められているルールはしっかり守るようにしましょう!

ルールを守っていなかったが故に健康被害が補償されない…なんてことにならないようにご自身のためであると言えるでしょう。

その他、治験は「安全性と有効性確かめるための試験」ですので、”治療効果が得られなかった”という主張は通らないことには注意しておきましょう。

補償の種類

ここまでで、治験に参加して健康被害が起きてしまった時に補償をしてもらえるのには条件があるということが分かったかと思います。

ここからは、補償がされることになった場合にどのような補償があるのかを見ていきたいと思います。

まずは補償の全体像を見てみましょう。

健康被害補償の種類

治験の健康被害の補償は、このように大きく分けて「医療費」、「医療手当」、「補償金」の3要素が軸になっています。

それぞれの補償の内容とどのような補償なのかを簡単に説明をすると以下のようになります。

医療費

入院時、通院時問わず支給対象になる。
健康被害の治療にかかった費用をメーカーが負担するという補償。

医療手当
入院時に支給対象となる(入院が必要で通院の選択をした場合も含む)。
医療手当は健康被害の治療で入院が必要になった場合を想定している。
何故なら、医療手当は入院が必要になった場合の諸経費(交通費や入院で必要なグッズの費用等)を補填することが目的とされているためである。
補償金
補償金には、以下の4種類があり、支給条件に該当した場合のみ支給対象となる。
【障害補償金】
健康被害により一定以上の障害(詳細は後述します)が残ってしまった場合に支給対象となる。
【遺族補償金】
被験者が死亡してしまった場合に支給対象となる。
【休業補償金】
健康被害によって療養しているため働くことが出来ず、賃金を受け取れない場合に支給対象となる。
「賃金を受け取れない場合」が条件なので、傷病手当金の申請をした場合には支給対象から外れてしまう場合がある
【障害児養育補償金】
18歳未満の子どもい一定以上の障害が残ってしまった場合に支給対象となる。

医療費や医療手当は比較的イメージがしやすいと思いますが、補償金は更に色々な種類があって少し複雑になっています。

大まかには、「障害が残ってしまった場合」、「死亡してしまった場合」、「療養で仕事が出来なくなってしまい賃金が貰えていない場合」に支給対象となります。

また、治験の補償について考えていくには、まず治験の種類を把握しておく必要があります。

補償では、治験の種類を大まかに以下のように分類して考えていきます。

治験の分類
健康人を対象にした治験(例えば、ワクチンの治験など)
患者を対象にした治験(例えば、慢性便秘の治験など)
小児を対象にした治験
抗がん剤や免疫抑制剤の治験

実は、それぞれの治験によって健康被害の補償のされ方に違いがあります。

根本となっている考え方として「治験に参加することは健康人にとってはボランティア活動であり、一方患者さんにとっては『日常診療と違った濃厚な診療が受けられる』や『治療費が低減する』などの便益がある」というものがあります。

このことから、健康人を対象とする治験の方が健康被害の補償について手厚く設定されている傾向にあります(例えば、健康人には「休業補償金」の支給があるが、患者には「休業補償金」の支給は無い等)。

健康被害補償の内容

では、ここからは健康被害が発生してしまった時に具体的にどの程度の補償になるかを見ていきましょう。

なお、海外の健康被害の補償の決め方は、”補償額について個々の状況を踏まえながら話し合いにより決めていく”というやり方がですが、日本の場合は、”補償する側(メーカー)が予め一律・定額の補償金を定めておき、その内容に従って支払う”というやり方になります。

ですので、日本ではある程度どのくらいの補償がされるのかが予め分かるということですね。

補償の詳細な内容や金額は治験毎に定められているので、先ほどお話をした治験参加時に貰う「健康被害補償の概要」を確認するようにしましょう。

ここではガイドラインで紹介されている補償内容について紹介をしていきます。

健康人対象の治験の場合

健康人対象の治験とその他、患者さんにとって治験に参加をしても治療上のメリットが無い場合(例えば、既に治療薬は他にもあって、治験薬の効果と同等であることが想定される等)の治験に参加する方も同じ考え方です。

適応される健康被害の補償は以下のようなものがあります。

健康人対象の治験の健康被害補償
医療費
医療手当(主に入院をした場合)
障害補償金(障害が残った場合)
遺族補償金(死亡した場合)
休業補償金(働けず賃金が貰えなくなった場合)

医療費は、健康被害の治療費を負担してもらうもので、医療手当は入院が必要になった時(または、入院相当の通院治療が必要になった時)に支払われる補償です。

医療費

医療費の支払は、健康人対象の治験に関わらずその他の治験についても同様の基準になります。

基本的には、治験が原因で健康被害が発生してしまい、治療費がかかった場合の補償になりますが、治療費が高額療養費制度の限度額を上回る場合は、限度額適用認定証の申請または高額療養費制度の申請が必要になる点に注意が必要です。

医療手当

医療手当は、医薬品副作用被害救済制度の給付額に準じて設定されていることが多く一律以下のような給付額になります。

通院のみの場合
(入院相当程度の通院治療を受けた場合)
1ヵ月のうち3日以上 月額 37,000円
1ヵ月のうち3日未満 月額 35,000円
入院の場合 1ヵ月のうち8日以上 月額 37,000円
1ヵ月のうち8日未満 月額 35,000円
入院と通院がある場合 月額 37,000円

こちらの表は令和3年4月1日現在のものですが、最新の情報はPMDAのこちらのページから確認できますので、詳細は最新情報を確認されたい方は見てみると良いでしょう。

障害補償金・遺族補償金

治験に参加したことで障害が残ってしまった場合に支払われる補償金になります。

ここで示している「障害」とは、国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級又は労災保険制度で定める 8 級~1 4 級程度の障害のことを指しています。

その等級によって、以下のように障害補償金が設定されています。

治験の障害補償金及び遺族補償金の額2

出典:医法研ガイドライン

赤枠で囲われている部分が「国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級」で青枠で囲われている部分が「労災保険制度で定める 8 級~1 4 級」、そして緑枠の部分が死亡した場合の遺族補償金の支給額です。

この表からも分かる通り、死亡してしまった場合は、4,210万円の遺族補償金となりますが、若くして重い障害が残ってしまった場合の方が支給額が多くなっています。

さて、「第●級と言われてもどの程度の障害なのよ!」ということですが、その基準については以下のようになっています。

国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級

1級~3級は以下のような基準になっています。

なお、原文は非常に難しい表現が使われているため、当記事では分かりやすい表現に書き換えていますので、オリジナルの文章をご確認されたい場合は、こちらをご参照下さい。

障害等級 障害の状態
1級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状によって介護無しでは自分で日常生活の用をすることができない程度の障害。例えば、病院内の生活でいえば、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲が概ね就床室内に限られるものである。
2級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状によって日常生活が著しく制限されてしまう程度の障害。
第1級と違い、必ずしも介護が必要とはしない程度。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作りや洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲が概ね屋内に限られるものである。
3級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害。

国民年金・厚生年金保険制度の障害等級を元に作成

1級と2級は、日常生活がどの程度できるのかという視点ですが、3級は「日常生活で」はなく「労働」にスポットが当たっています。

国民年金・厚生年金保険の障害認定基準では、上記のような障害の等級分けがされていますが、実は症状ごとに更に具体的な基準が設けられています。

 例えば、「眼の障害」では“両眼の視力がそれぞれ0.03以下”は1級、“両眼の視力がそれぞれ0.07以下”は2級などの定義が記載されているように、障害等級が認定されるにはそれらの基準に合致している必要もあります。

どの部分に障害が出来たかによって場合分けして書かれているので、詳細が気になる方は、国民年金・厚生年金保険の障害認定基準のオリジナル版を確認してみて下さい。

労災保険制度で定める 8 級~1 4 級

厚生労働省の「障害等級表」で以下のように定義されています。

こちらも原文は非常に難しい表現になっているので、当記事では「障害等級表」の内容を基に分かりやすい表現に書き換えています。

障害等級 障害の詳細
8級
・片眼が失明、又は片眼の視力が0.02以下になった
・片手の親指を含み2つの手指又は親指以外の3つの手指を失った
・片手の親指を含み3つの手指又は親以外の4つの手指が機能しなくなった
・片方の上肢の三大関節中の1つの関節が機能しなくなった
・片方の下肢の三大関節中の1つの関節が機能しなくなった
・片方の上肢に偽関節を残すことになった
・片方の下肢に偽関節を残すことになった
・片足の足指の全部を失った など。。
9級
・片眼の視力が0.06以下になった
・両眼のまぶたに著しい欠損が残った
・鼻を欠損し、その機能に著しい障害が残った
・咀嚼(そしゃく)及び言語の機能に障害が残った
・両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声が聞き取れない程度になった
・片耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を聞き取ることが困難となった
・片耳の聴力を全く失った
・外貌に相当程度の醜状を残すもの など。。
10級
・片眼の視力が0.1以下になった
・14本以上の歯に歯科補てつをおこなった
・両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を聞き取ることが困難になった
・片手の親指又は親指以外の2つの手指の機能を失った など。。
11級
・両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害が残った
・両眼のまぶたに著しい運動障害が残った
・両耳の聴力が1m以上の距離では小声を聞きとれなくなった
・片耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
・片足の親指を含み2つ以上の足指の機能が無くなった
・胸腹部臓器の機能に障害が残り、労務の遂行に相当な程度の支障がでるようになった など。。
12級
・片眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害が残った
・片耳の耳かくの大部分が欠損した
・鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形が残った
・片手の小指を失った
・局部にがん固な神経症状が残った
・外貌に醜状が残った など。。
13級
・片眼の視力が0.6以下になつたもの
・片眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状が残った
・胸腹部臓器の機能に障害が残った
・片手の小指の機能が無くなった など。。
14級
・3本以上の歯に対し歯科補てつを加えたもの
・片耳の聴力が1m以上の距離では小声が聞き取れない程度になった
・上肢の露出面に手のひらの大きさの醜い痕が残った
・下肢の露出面に手のひらの大きさの醜い痕が残った
・片手の親指以外の手指の指骨の一部を失った
・局部に神経症状が残った

労災保険制度の「障害等級表」を元に作成

障害等級が一番下の14級ですら、それなりの障害が残っている印象ですので、治験に参加をしたことで障害補償金を貰うケースというのは非常に珍しいかと思います。

休業補償金

健康成人の場合、治験に参加したことで健康被害を受けて働くことが出来ず賃金が貰えない状況になった時のために休業補償金というものがあります。

原則、患者が対象の治験ではこの休業補償金は無いのですが、その理由は患者さんの場合、”治験に参加することで治療上のメリットもあるため”ですので、これに該当しない場合(つまり、患者さん対象の治験ではあるものの治療上のメリットが見込めないような治験)は、支払い対象になる場合があります。

この休業補償金は、労災保険制度で定められた給付基礎日額の最高限度額に基づいて支払われるため、所得は関係なく年齢に応じて一律になります。

具体的な金額は以下の通りです(令和3年7月29日時点)。

年齢階層 休業補償金 年齢階層 休業補償金
~19歳 10,366円 45~49歳 18,318円
20~24歳 10,366円 50~54歳 20,151円
25~29歳 11,188円 55~59歳 20,255円
30~34歳 13,357円 60~64歳 16,818円
35~39歳 15,751円 65~69歳 12,894円
40~44歳 17,205円 70歳~ 10,366円

厚生労働省「労災年金給付等に係る給付基礎日額の年齢階層別最低・最高限度額」より作成

上記は本記事を執筆している時点での最新ですが、こちらの「労災年金給付等に係る給付基礎日額の年齢階層別最低・最高限度額」という項目に大元の情報がありますので、そちらも併せてご確認してみて下さいね。

また、休業4日目から支給対象になるのでその点だけお気を付け下さい!

患者対象の治験の場合

治験の中で最も多いパターンであるのが、この患者を対象とした治験になります。

このページをご覧になっている方の中でも患者対象が治験の場合の補償が一番気になるという方も多いかと思います。

それではまずは、患者対象の治験の健康被害の補償を見ていきましょう。

患者対象の治験の健康被害補償
医療費
医療手当(主に入院をした場合)
障害補償金(障害が残った場合)
遺族補償金(死亡した場合)
障害児養育補償金(18歳未満の場合)

医療費・医療手当

医療費、医療手当については、「健康人対象の治験の場合」と同じ内容になりますので、そちらをご参照下さい。

障害補償金・遺族補償金

治験が原因で健康被害を受けて障害が残ってしまった場合や死亡してしまった場合の補償金になります。

健康人の「障害」については、国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級又は労災保険制度で定める 8 級~1 4 級程度の障害が想定されていますが、患者対象の治験の場合は、”国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級”の障害が補償の対象になります。

1級~3級がどの程度の障害かについては、健康人対象の治験の「国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級」の項目をご覧下さい。

また、具体的な補償金額の目安は以下の通りです。

患者対象治験の障害補償金及び遺族補償金

出典:医法研ガイドライン

障害児養育補償金

18歳未満の方が治験に参加したことで、一定以上の障害の状態となってしまった場合に支払われます。

障害等級の考え方は、健康人対象の治験の「国民年金・厚生年金保険制度の 1 級~3 級」の項目をご覧下さい。

また、具体的な補償金額の目安は以下の通りです。

小児治験の障害補償金及び遺族補償金

出典:医法研ガイドライン

抗がん剤や免疫抑制剤の健康被害補償の注意点

抗がん剤や免疫抑制剤は、「相当の頻度で重い副作用の発生が予想されること」や「治療のためにその使用が避けられずかつ代替する治療法がないこと」などの理由から、健康被害の発生時は医療費と医療手当のみメーカーが支払うこととしている場合が多いです。

ただし、抗がん剤の中でもホルモン療法剤のように性質が他の抗がん剤と異なることから、医療費や医療手当に加えて補償金の支給対象にもなる可能性があるので、抗がん剤や免疫抑制剤の治験に参加する場合は、どの程度までの補償かはしっかりと確認をしておきましょう(多くの場合は、医療費と医療手当のみ支払うことになっていると思います)。

予防を目的としたワクチンの治験の場合

最近では、新型コロナウイルス感染症のワクチンの治験も活発に行われているので、ワクチンの治験についても触れておきましょう。

ワクチン治験の健康被害の補償
医療費
医療手当(主に入院をした場合)
障害補償金(障害が残った場合)
遺族補償金(死亡した場合)
障害児養育補償金(18歳未満の場合)

医療費・医療手当・遺族補償金

医療費、医療手当、遺族補償金については、「健康人対象の治験の場合」と同じ内容になりますので、そちらをご参照下さい。

障害補償金

ワクチンの治験の場合、「A類疾病を対象とする治験」と「B類疾病を対象とする治験」の2つに分かれ、それぞれでによって障害補償が異なります。

A類疾病を対象とする治験

A類疾病のワクチンは、発症すると重症化するリスクがあったり後遺症が残るような病気が対象で個人の費用負担発生しないタイプのワクチンです。

A類疾病の主な種類は以下のようなものがあります。

A類疾病の主な種類

結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎など

現時点では新型コロナウイルス感染症のワクチンはA類疾病のワクチンということになります。

A類疾病を対象にしたワクチンの治験の場合は「健康人対象の治験の場合」の障害補償金が適用されます。

治験の障害補償金及び遺族補償金の額2

出典:医法研ガイドライン

B類疾病を対象とする治験

B類疾病のワクチンは、個人の発病または重症化の予防に重点が置かれており本人が希望する場合には費用の一部を自己負担(治験の場合は自己負担は無し)で接種をし、接種の努力義務が課されてないタイプのワクチンです。

B類疾病の主な種類は以下のようなものがあります。

B類疾病の主な種類

季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症など

B類疾病を対象にしたワクチンの治験の場合は「患者対象の治験の場合」の障害補償金が適用されます。

患者対象治験の障害補償金及び遺族補償金

出典:医法研ガイドライン

障害児養育補償金

18歳未満の方が治験に参加したことで、一定以上の障害の状態となってしまった場合に支払われます。

障害の等級についての詳細は、上記にある「障害補償金・遺族補償金」の項をご参照下さい。

補償金の額の目安は以下の通りです。

小児ワクチン治験の障害補償金及び遺族補償金

出典:医法研ガイドライン

「患者対象の治験の場合」にも「障害児養育補償金」がありますが、ワクチンの場合とワクチン以外の場合では補償額が異なるのでご注意下さいね。

この項目に貼っているのはワクチンの治験の場合についてです(ワクチン以外の治験についての補償は「患者対象の治験の場合」の「障害児養育補償金」をご参照下さい)。

休業補償金

予防を目的としたワクチンの治験の場合、休業補償金はありません。

その理由は、「健康人にとって医療上の利益があると期待される治験薬(ワクチン)であること」と「予防接種法自体に休業補償がないこと」が挙げれます。

ただ、これは制度上のお話であり、メーカーが独自に補償をしている場合もあります。

そのため、治験に参加した際に配られる「健康被害被害補償の概要」を確認するようにしましょう!

補償の申請方法

治験に参加していて健康被害があったと思われる場合は、まずは治験の担当の先生や治験コーディネーターさんにお話をしてみましょう。

対応方法について、丁寧に説明をしてくれるかと思いますので、指示に従いながらご対応いただくことで申請ができるはずです。

まとめ

本記事では、治験の補償についてまとめていきました。

治験に参加をする時には、どうしても「副作用が起きて健康被害が起きた時にどう補償してもらえるのだろう…」と心配になるかと思いますが、本記事でも記載しました通り、健康被害発生時の補償についてもしっかりと決められています。

また、度々となりますが、今回まとめた情報はあくまで一般的な情報で実際には治験毎にカスタマイズされた補償内容が決められているため、治験参加時には必ず「健康被害補償の概要」を確認するようにして下さいね!

皆様が安心して治験に参加してもらえることを願っています。