治験の重複登録は、ばれる?ばれない?

治験に参加をすると負担軽減費が貰えますが、治験になるべく効率良く参加をして負担軽減費を稼ぎたいと思っている方もいるかと思います。

そこで今回は、治験に重複登録をしたり休薬期間を無視して短期間で連続して治験に参加をしてばれるのか、それともばれないのかについてお話をしていきます。

この記事で分かること
治験の重複登録はばれるのか、ばれないのか
休薬期間を無視してばれるのか、ばれないのか
ルールを破った場合の大きな代償
おすすめの休薬期間の過ごし方
のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterのフォロワー5,100人超え。治験に関する正しい情報をお伝えしていきます!

治験の種類と重複登録

まず、治験参加者の情報をどのように管理しているのかといったところから見ていきましょう。

治験の種類 調査内容 主な対象
第I相 安全性・薬物動態 健常成人男性
第II相 用法用量・有効性・安全性 少数の軽度の患者
第III相 有効性・安全性 多数の軽度~重度の患者

治験は大きく分けると3種類に分かれています。

第I相は主に健常成人男性を対象にした治験で恐らくこの記事を見ている方の多くがこの相の治験に参加しようとしているのではないでしょうか。

第II相と第III相は患者さんが対象になっているので、治験募集サイトからの登録というよりは担当医師から紹介されて参加する方が多いのが特徴です。

いずれの相の治験でも治験参加者の情報はしっかりと管理されているのですが、その中でも健常成人が対象の第I相の治験では採血が多いデザインの治験が多いため、重複登録については特に慎重に管理されています。

その他、休薬期間が約4ヵ月として設定されていたりする治験が多くあります。

重複登録の実態

治験に参加をすると、参加者の情報は臨床試験受託事業協会(臨試協)が運用している被験者照合システムを使って重複登録がないかを確認されます。

臨試協に掲載されているデータを覗いてみましょう。

西暦 照合件数 登録件数 二重登録
防止件数
2020 47,058 10,874 1,086
2019 42,094 9,037 928
2018 40,738 11,538 933
2017 42,094 11,916 743

臨試協「二重登録防止件数一覧」より作成

被験者情報は、毎年約1万件新規で登録がされていて照合件数は大体4万件程度。

二重登録防止件数も2020年は1,000件を超えていますので、結構多くの方がこの被験者照合システムで重複登録がバレてしまっていることになります。

重複登録での掛け持ち参加や短期間での連続参加の悲劇

では、複数の治験に重複登録をして掛け持ちをしたり休薬期間を無視して連続で治験に参加をしたりするとどうなると思いますか?

その辺りについてお話をしていきます。

今後治験に参加できなくなることも

臨試協の被験者照合システムでは年間で1,000件近くの重複登録が見つかっています。

もし被験者照合システムで見つかってしまった場合には、今後の治験の参加が出来なくなる可能性もあります。

血を抜かれ過ぎてしまい健康被害に…

健常成人が対象になっている第I相の治験では、採血が多い特徴があるとお話をしました。

当然、短期間に血を抜かれ過ぎてしまうと体に大きな負担がかかりますし結果として貧血や立ちくらみや酷い場合には命に関わる健康被害が生じてしまう可能性が出てきます。

「血を抜かれ過ぎると何となくヤバそう!」というのはイメージできる方も多いのではないでしょうか。

薬の飲み合わせにより健康被害に…

血液を短期間に大量に抜いてしまうことによる健康被害についてお話をしましたが、それ以外にも薬の飲み合わせにより健康被害が生じてしまう懸念もあります。

食べ合わせでも“天ぷらと氷を一緒に食べたらお腹が痛くなる!”というようなものがありますが、薬の場合はそんな生半可なものでは留まらないこともあります。

薬の飲み合わせでは、1993年に起きたソリブジン事件という有名な出来事が起きました。

帯状疱疹の治療薬であるソリブジンと5-FU系抗がん剤を併用した際に重篤な血液障害が発現し、治験段階では3名の死者が出てしまいました。

治験に参加する際には、必ず医師が併用薬の確認をおこない、飲み合わせについて問題無いことをチェックしますが、このときに他の治験に参加していることを隠して申告しないと医師は飲み合わせに問題が無いか確認出来ないことになってしまいます。

飲み合わせが原因ではありませんでしたが、2019年には健康成人を対象にしたエーザイの治験で被験者が死亡する事案がありましたので治験に参加をする時にはルールを守ることが非常に重要です。

補償を受けられない可能性がある

治験に参加した際に、治験薬や治験でデザインされている手順に関連して健康被害が生じた場合は、補償を受けられる場合があります。

しかし、補償を受けるにも条件があり、「被験者自身の故意によって健康被害が生じた場合は、補償の対象外である。」というような条件を設定している場合が一般的です。

治験の重複登録は禁止であることは、治験に参加した際に説明されるはずですので、それにも関わらず重複登録をおこなった場合は、補償の対象外になってしまう可能性があるということですね。

重複登録で健康被害が生じてしまったうえに、補償まで受けられないとなってしまったらそれこそ大変なことなので、やはり重複登録についてはおすすめできません。

ちなみにですが、治験に参加する場合には同意説明というものがあり、補償について書かれている資料はその際に渡されるはずですので、そちらで詳細を確認できます。(もし受け取っていないという方がいましたら、治験コーディネーター(CRC)に言えば貰えるはずです)

HP上にある重複登録の裏ワザの盲点

そんなこんなで、重複登録や休薬期間を無視した連続参加についてはおすすめしていないのですが、ネット上で色々と検索してみると重複登録してもばれない裏ワザ的な記事も見かけるので、その盲点についても解説しておきます。

そのように紹介されている裏ワザは、先ほど紹介をした臨試協に所属していない医療機関で治験を受ければ良いという趣旨のものが多いように感じます。

確かに臨試協に所属していない医療機関であれば、被験者照合システムを使用することが出来ないため、この方法ではバレないかもしれません。

しかし、残念なことにそううまくはいきません。なぜかは、治験に多数参加されている方であれば気が付くかもしれません。

臨試協に所属している医療機関を見てみると、第Ⅰ相試験(健常者対象の治験)を積極的に実施している医療機関(俗に言う治験施設)の有名どころが軒並み登録しています。

つまり、臨試協に所属していなくて、かつ治験を実施していて、かつ第Ⅰ相試験(健常者対象の治験)をやっている医療機関となると、数はかなり絞られてしまうということです。

例え上記の条件に合致するような医療機関を見つけたとしても、血液検査の結果などから他の治験に参加していることが分かる場合もあります。(通常では上がらないような数値が上がっているなど)

それらを全てすり抜けたとしても…健康被害のリスクが大きすぎるうえに補償もされない可能性があることを考えると…

休薬期間中を有効に使う正しい方法

とはいえ、休薬期間中に何もせずにいるのではなく有効活用したいと思っている方も多いのではないでしょうか?

そのような方には、健康食品モニターや化粧品モニターがおすすめです。

治験よりも少なめにはなりますが、健康食品モニターや化粧品モニターも参加することで負担軽減費が貰えます。

健康食品モニターや化粧品モニターの募集サイトで有名どころのチヨダモニター倶楽部あたりであれば案件も豊富にあるので治験の休薬期間中はこちらの試験に参加しておくという方法がおすすめです。

もちろん、健康食品モニターや化粧品モニターは休薬期間が一般的には設定されていませんので、堂々と参加することが出来ます。

重複登録がバレて治験に参加出来なくなったり健康被害に怯えるよりもルール通りに正当に参加できる健康食品モニターや化粧品モニターに参加しておく方が精神衛生上も良いですよね。

まとめ

治験の重複登録や連続参加は、場合によってはバレないこともあるでしょう。

ただ、そこでバレなかったとしても健康被害の代償が大き過ぎることになってしまうこともあるので、おすすめはしません。

また、重複登録で得た治験データは正確な情報ではないので、将来治療薬を待ち望んでいる患者さんにとっても不利益になってしまいます。

治験薬の休薬期間中は健康食品モニターや化粧品モニターで繋ぐという賢い方法もありますので、是非そちらも検討してみて下さいね!

あとは、しっかりと信頼できる治験募集サイトに登録しておくこともお忘れなく!