転職=キャリアアップなのか?私のキャリアプランについて語ってみた

最近Twitter上で、私のキャリアアップ/転職の考え方に関するご質問を多く頂くため、今回の記事では私の考え方についてまとめていきたいと思います。

私は医薬品開発の仕事をしているため、記事の内容も医薬品開発についての話題になりますが、他の職種についても共通する部分があるかもしれません。

少しでも参考になりましたら幸いです。

私の考えの根幹(のりすの野望)

私の考えの根幹(のりすの野望)

私はキャリアプランについて、自分が将来思い描いているゴールを想像しながら組み立てていくものだと考えています。

そのため、私のキャリアプランを説明していくには考え方の根幹、つまり、どのようなゴールを目指しているのかをお話しておく必要がありますので簡単に触れさせていただきます。

最終ゴール

最終ゴール地点2

この最終ゴールは、就活生の時に設定したものですが、今も変わっていません。

世間からの治験の印象は以前と比較すると、様々な啓蒙活動の成果もあり、大分良くなってきているとは思いますが、それでもやはり「人体実験」、「闇バイト」と呼ばれているのをしばしば見かけます。

そして、誤った情報が独り歩きをして人々の恐怖心を掻き立て、治験に対してネガティブな印象を持ってしまった場合、治験に参加する人たちも少なくなり、結果として患者さんの元に薬を届けることも遅れてしまいます。

その他、治験が治療の選択肢の1つとなる場合もあり、治療の選択肢の幅を狭めてしまう懸念もあります。

この問題を解決するには、世間の人々からの信頼を得る必要があるため、信頼を得るためには何が必要なのかを考えていきました。

ゴール達成に必要な3要素

ゴール達成に必要な3要素

私は、最終ゴールの達成には、「自己研磨」、「啓発」、「人材確保・人材育成」の3つの要素が必要だと考えました。

とても時間はかかりますが、これら3つの要素を粛々とこなしていくことで世間の人々からの信頼を得られるのではないかと思っています。

それぞれの要素について、簡単にですが説明をさせていただきます。

自己研磨

自己研磨を3要素に加えた理由についてですが、私自身が経験を積んだり、スキルを磨くことで、その力を質の高い治験の計画や運営に活かしていきたいと考えたからです。

治験の質を高めるためには、色々なアプローチがありますが、今回の記事のテーマは「キャリアプラン」についてなので、そちらにスポットを当ててお話をします。

私は、治験の質を高めるためには、なるべく広い経験を現場で積み、その経験を活かし、試験の計画段階で質を作り込むこと(今で言うところの、Quality by designですね)が必要だと考えました。

後に詳しくお話をしますが、この時、「なるべく広い経験を積むのに最も効率的な方法は?」と自身に問いかけ考えた結果が「メーカーよりもCROの方が、様々な依頼者(メーカー)の様々な疾患領域の現場経験(モニタリング経験)を積むことができるので効率的に経験を積める」というものでした。

治験の計画を立案したり、マネジメントをする際には、当事者目線が重要で、会議室での話し合いのみでは当事者の立場に立って物事を考えるのは難しいと考え、やはりCROでの経験が私には必要だと考えていました。

その他、自己研磨は、この後ご紹介する「人材育成・人材確保」や「啓発」にも繋がる大切な要素になります。

人材育成・人材確保

「治験の質」というと、考え方に色々な切り口がありますが、私は主に”人々からの信頼”という部分に重きを置いているので、「質が高い治験→不正が無く、逸脱が最小限である治験」ということを主に考えています(もちろん、このこと以外の「治験の質」も疎かにしている訳ではありません)。

そこで、「不正は何故起きるのか?」、「逸脱を最小限に留めるには何が必要なのか?」を考え、導き出されたキーワードが「環境」と「人」でした。

1つ目の「環境」の主な例は、「現場の実態にそぐわない無理があるPRTや手順の存在により、不正/逸脱が発生する恐れがある」等が挙げられます。

これは、先ほどの自己研磨の項で出た「試験の計画段階で質を作り込む」という部分に該当するため、そちらで対応しなければいけないものです。

2つ目の「人」の主な例は、「無謀な要求を出す(相手の立場に立てない)依頼者の存在により、不正/逸脱が発生する恐れがある」、「パワハラ気質な人の存在により不正が発生する恐れがある」、「相手を気遣える真摯な人(気が利く人)の存在により不正/逸脱を防げる期待がある」等です。

これらは、医薬品開発に携わる関係者の質が更に向上することで防げるものがあるのではないかと考えています。

この取り組みの一環として、就活生向けにセミナーを開いたり、相談を受け付けたりをしています。それらの取り組みにより、医薬品開発についての認知が広がり、質の高い開発者で溢れることを期待しています(現状が、質の悪い方が多いという意味ではなく、質の高い状態を維持したいという意図です)。

更に、主に経験が浅い臨床開発に携わる方たち向けに治験に関わる内容をブログで発信をしたりもしています(このブログですね!)。

社内で相談したくてもなかなか相談できないような方のケアも必要だと考えています。

啓発

既に治験のイメージアップの啓発は他方で行われていますが、私のブログでも一般人向けに治験に関する情報を発信し、少しでも正しい知識を一般の方に持ってもらいたいと活動しています。

やはりネット上を見ていると、治験に関する誤った情報(「人体実験」や「闇バイト」など)がまだまだあり、時にはインターネット検索上で上位に表示されることもあるのが現状です。

継続的にブログを更新し、治験関連のワードについて検索をした方に正しい情報が提供できるよう今後も継続が必要だと考えています。

就活生時代に考えたキャリアプラン

就活生時代に考えたキャリアプラン

さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、ここからがいよいよ本題になります。

考えの根幹については、実際に現場で働いてから追加されたものもありますが、大枠は就活生の頃には既に決まっていました。

そのため、キャリアプランについても就活生の時に大枠は計画を立てていました。

具体的には、以下のようなキャリアプランを想定していました。

就活生時代に想定していたキャリアプラン
◼︎新卒入社:CRO
◼︎入社3年後
1人で施設を担当できるようになる。
◼︎入社5年後
後輩に指導できるようになる。
◼︎入社10年後
プロジェクトリーダーになる。
◼︎入社15年後
製薬メーカー/開発職に転職する。
◼︎入社20年後
プロジェクトマネージャーになる。

私は将来何がやりたいのかを明確に決めていましたので、その目標が達成できるようなキャリアプランを考えていました。

「私の考えの根幹」でも述べたように、現場での経験を広く経験した後で、最終的に試験計画の立案/運営に携わりたいと思っていたので、就活ではメーカーの開発職からも内定が出ていましたが辞退し、CROに進んでいます。

新卒入社の時点から、将来的なプランを思い描いていたので、転職を視野に入れていましたが、CROでの経験は最終的なゴール達成のためには必要な経験でしたので、全力で仕事をしていました。

もちろん、全てが思い描いたキャリアプラン通りにいく訳ではないので、”CROでCRAを経験してみて生涯CRAとしてやりたいと思えばそのまま全力でCRAを全うするのでも良いのではないか”と思っていました。

今考えてみても、CRO側で仕事をしていたからこそ、彼らの考え方や視点も知っているので今の経験に活きています。

結果的に、CRO→メーカーに転職をしているので、現状は思い描いていたキャリアプランの通りに歩んでこれていることになります(想定していたよりも入社●年後の部分が前倒しになっていますが)。

社会人になってから考えたキャリアプラン

社会人になってから考えたキャリアプラン

就活生の頃は、会社説明会やインターンやOB/OG訪問などで聞いた情報を元にキャリアプランを立てていましたが、当然のことながら細かい部分までのプランは立てていませんでした。

ここからは、社会人になってから更にキャリアプランについて細かく考えていった経緯についてお話をしていきます。

CRO時代

まず、CROに新卒で入社したわけですが、入社したからにはCROで学べること、経験できることはなるべく広く関わっておきたいと考えていました。

具体的には、目標として入社10年目を目処にプロジェクトリーダーを目指していました。

実際のところは、日々の業務が忙しく、入社当初は目の前の仕事をこなすことでいっぱいいっぱいでしたが、なんとか3年目までには施設を1人で回せるようになり、CROでのキャリアパスも順調に歩んでいました。

しかし、4年目に入り問題が起こります。

色々な要因が組み合わさり、私が所属していたCROでは案件の受注数が減り、CRAがプロジェクトにアサインされず待機が長期間(1年近く)に及ぶ方が増え始めてきたのです。

4年目にとっての”1年間”と、10年目にとっての”1年間”は、その重さは異なると思っています。

経験年数と経験値のイメージ

10年目以降になると、豊富な経験を積んでいることが多く、1年間で得られる経験値は頭打ちになることが比較的多く感じますが、4年目はまさに発展途上。

同じ1年でも4年目の1年は大きいと考え、ここで他のCROに転職を決意することになりました。

当初はCRO→CROの転職は考えていませんでしたが、経験を積むことが大切な時期での足止めリスクはなるべく回避したいと考え、キャリアプランを修正することにしました。

その後、転職をしたわけですが、転職後は色々なことが起きつつも、なんとか順調に経験を積んでキャリアを積み上げることができ、リーダーもある程度経験したことから、メーカーへの転職を具体的に考え始めました。

ちなみに、キャリアプランとは少し逸れますが、CROにいた頃には依頼者(メーカー)からの指示や対応にかなり思うところがありました。

無茶ぶりなメーカーからの依頼によって精神的に苦しみ業界を去っていった仲間もいました。

CROは立場上、なかなか依頼者に強く言い出しにくいこともあるため、この状況を改善させるためにはやはり依頼者側に行くしかなく、依頼者側に行ってからの大きな課題の1つとして考えるようになりました。

製薬メーカー時代

メーカーでは、CROでの経験を最大限に活かして試験計画や手順に現場視点を織り交ぜ、私なりの質の作り込みをしていくことを重要なタスクとしていました。

当然、会社に入社したての頃は、影響力はほとんどありませんでしたので、会社内で影響力を発揮できるポジションにまで駒を進める必要がありました。

ここで当面の目標をプロジェクトマネージャー(会社によって呼び方は違うかもしれませんが)とし、自分にしかない武器を使って実績を残していくことに注力しました。

具体的には、やはり「CROで経験をした引き出しの広さ」という武器が非常に役に立ちました。

結果として、運が良かったこともありますが、短期間でプロジェクトマネージャーというポジションに就くことができ、質の高い試験計画/運営を実行できるまでに至りました。

ジェイエイシーリクルートメント

今後の展望

現状として、私がメインで回せるプロジェクトについては、私の裁量で対応できることがかなりありますが、グローバルに主導権がある場合は、私の影響も限定的です。

そのため、今後はPh.Dの取得なども視野に入れながらキャリア構築をしていく必要もあるのかなと思い始めています。

ただ、私の場合は、「世界よりもまずは日本を」という考えなので、その点はもしかすると多くの方とは異なる部分かもしれません。

しかし、私はグローバル治験から日本が排除されないためには、まず日本の治験環境をなんとかしないといけないと考えており、その為に自分ができることをひたすらに頑張りたいと考えているのです。

キャリアプランについて思うこと

キャリアプランについて思うこと

このように私は、私なりのゴールがあり、それを達成するためのキャリアプランを考え、キャリアプランを計画通りに進めるためのキャリアパスを描きながら日々キャリア構築をしています。

当然その過程では、転職という選択肢も出てきますが、実は私の中では「キャリアアップ」と「転職」という言葉はあまりリンクしていません。

もっと言うと、転職は、ゴールに到達するまでに必要な過程の一部であり、それ自体に「キャリアアップ」という意味合いを私は感じていません。

転職は、目的達成のために必要だからしているのであって、キャリアアップをするためにしている訳ではないということです。

しかし、私の考え方は少数派な気もしています。

実際には、転職によって年収やポジションが上がることもあるでしょうし、それをキャリアアップとして目指されている方もいます。(私はその考え方を否定するつもりはありません。)

ただ、「年収や役職が上がること=キャリアップ」という考えではなく「目的に近付く=キャリアアップ」と考えるなら、私の転職はキャリアアップに該当するのかもしれせん。

すなわち、「キャリアアップ」をどのように定義しているのかにもよって考え方が変わるので、他人とこの手のお話をする際には、まずその定義から話すところからスタートしなければいけないですね

ただ、いかなる場合であっても、所属をしている会社での仕事は手を抜くべきではないと思いますし、決してないがしろにしていいものだとは思っていません。

その時その時を全力でやり切れば良いと思います(もちろん、精神的に疲れてしまってリタイアするという選択肢もあっても良いと思っています)。

まとめ

私のキャリアプランは、自分が成し遂げたいことを達成させるための計画の一部で「●年後に、●●で昇格したい」というキャリアアップ的な要素はあまり考慮していないものになります。

そのため、みなさんの参考になったかというと、少し疑問は残るところですが、よくご質問を頂くということで、私の価値観を含め、思い描いているキャリアプランについてお話をさせていただきました。

キャリアを順調に積む為には、運と武器と準備が必要になってくるかと思います。

私みたいなやや特異な経験(武器)を持つのも1つの方法ですし、転職エージェントと仲良くして、常に新鮮な情報を仕入れつつ、チャンスが来たらいつでもチャレンジできるよう備えておく(英語や経験など)こともまた1つの方法なのではないでしょうか。

また、キャリアパスを順調に歩むには私は、「できる人が少ないことをやる(マクロを使ったモニタリングツールを作ったりしていました)」や「チーム全体の役に立つようなことをする」や「積極的に開発に対する知識を付けにいく」ことを心掛けていました。

そこで、何かの知識やスキルで他の方より頭1つ抜けるようになれば、段々と評価が上がってくるような気もします。

いずれにせよ、キャリアを積んだその先にあるゴールをイメージしながら”挑戦すること”を続けるのが、うまくいくコツだと思っています。

私事かつ駄文にも関わらず、ここまで読んでいただきありがとうございました。