CRA時代のモニタリングスタイルをまとめてみた(施設訪問編)

前回は訪問前準備編のモニタリングスタイルについてお話をしていきましたが、今回はいよいよ施設訪問編についてまとめていきたいと思います。

CRAとしてのモニタリングスタイルの確立に少しでもお役に立てれば嬉しいです。

のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterでのフォロワー数は4,200人程。今回も分かりやすさを重視して解説をしていきます!

はじめに

CRA時代のモニタリングスタイルをまとめてみた(施設訪問編)_はじめに

CRA時代のモニタリングスタイルをまとめてみた(準備編)の記事でもお伝えをしましたが、CRAとしての仕事のスタイルはその人の性格や得意不得意によって何が最適かは異なります。

例えば、私の場合は「忙殺されると対応漏れが所々出てしまう」という弱点や、「心配性なのでしっかりと事前準備をして心に余裕を持って仕事をしたい」というような考え方だったので、それに最適化した方法を確立していきました。

本来は、このような“仕事のやり方”は先輩社員からじっくり教えてもらうことが良いかと考えていますが、特に中途入社をした方は会社から“即戦力”として求められているケースが多く、なかなか時間を取って研修や指導の時間を取ってもらえないという現状もあるかと思います。

新卒でも忙しいプロジェクトにアサインされた場合には、なかなかじっくりと教えてもらう時間が無いこともあります。

そこで、本記事では私のCRA時代のモニタリングスタイルをなるべく分かりやすくお話させていただき、みなさんのモニタリングスタイル確立のヒントになればという想いで書かせていただきました。

CRAをやっているとご施設や上司からご指摘を受けることもあるかと思います。

その度に「なんでうまくいかないんだろう…」と悩んでしまうこともあるでしょう。

でも大丈夫です。

しっかりと自分の弱点に向き合って、原因や対策を考えてモニタリングスタイルを試行錯誤して組み立てていけば今よりもずっと精神的にも楽になってくるはずです。

準備7割、当日3割

準備7割、当日3割

私のモニタリングスタイルは準備7割、当日3割くらいの配分を意識していました。

外勤が無い日には準備編でご紹介をしたことをまとめておいて、当日は事前に準備をしていたことの「確認」程度の位置付けというイメージです。

本記事では、当日の動きについてスポットを当てながら時系列順にご紹介をしていきます。

さあ施設に到着!まずは入館手続き!

さあ施設に到着!まずは入館手続き!

施設に到着するとまず最初の関門…入館手続きが待っています。

と言っても、入館手続きは全ての施設で必要というわけではなく入館手続きをしなくてもOKな施設もあるためその辺りは適宜という感じです。

また、入館の際にはアプリを事前にダウンロードしていなければいけなかったり、名刺を提出する必要があったりと独自のルールがある施設もあるので訪問前にはしっかりと病院HPを確認しておくことが重要です。

のりすのりす

担当施設の引継ぎをする時にもこの辺りの情報をまとめておくと後任者にも喜ばれます。
小さな気遣いではありますが、積み重ねていくと評価に繋がることもありますよ!

ネームバッジは大丈夫!?

施設に到着したらネームバッジの装着ですね。忘れずにしっかり持ってきましたか!?

これが実は、前日に他のスーツで外勤をしていてそのスーツのポケットにネームバッジを入れっぱなしにして忘れてしまった…なんてこともあったりするのでお気を付け下さいね。

私は心配性なので実は吊り下げ名刺ケースをカバンの中に常備していて、ネームバッジを忘れた時に名刺を使った即席のネームバッジで凌いだことがあります…

吊り下げ名札ネームバッジを忘れた時には応急処置で活躍することも…

ネームバッジをしなくても問題無い施設の場合は良いのですが、その辺りが厳しめの施設を担当している場合には持っておくと少しは安心できるかもしれません(もちろん出番が無いことを祈りますが…)。

コートを入れる袋はお持ち?

トートバック

冬場はコートを着て施設に向かうかと思いますが、コートはそのまま持たずに施設内では袋に入れて持ち歩いています(今も施設訪問時はそうしています)。

この辺りは施設からあまり厳しく言われた記憶はありませんが、マナーに厳しい方がいてもおかしくはないので私は無難に袋に入れて持ち歩いています。

のりすのりす

こんなことで怒られるのは嫌ですからね…

マナー的な意味を除いても袋に入れていた方が手の自由度も高くなりますし、私は機能性の観点でも袋を使っています。

結構エレベーターを使うことも多いので手でコートを持っていると邪魔になることもあったりします。

病院が迷路みたいになっていることも…

病院が迷路みたいになっていることも…

施設によっては中が迷宮のようになっている施設も…

受付を済ませてから医局に向かったり治験管理室に向かったり色々な所に向かうわけですが、やたらルートが複雑な施設もあります。

時間に余裕を持って向かっておかないと迷って遅れてしまう…なんてこともあり得るので、初めての時は特に注意が必要です。

のりすのりす

私も何度ハラハラを経験したことか。。施設によってはCRCさんが迎えに来てくれることもあり、そんな施設のCRCさんには後光が差して見えます!!

他にも「エレベーターが予想以上に混んでいてなかなか来ない…」ということも地味にあったりするので、時間には余裕を持っておいた方が良いですよ!

SDVをする部屋に到着!

SDVをする部屋に到着!画像はイメージ…というか願望です(強調)

さてさて、「SDVをおっ始めるぞ!」と意気込みたいところですが、ちょっと待った!

SDVを始める前にも確認をしておいた方が後々スムーズに仕事ができることもあるので、その辺りを少しご紹介していきます。

先生との面会の予定を確認する

先生の面会のアポを取っている場合には大体どれくらいになりそうか予め把握しておくと心の準備ができますので、CRCさんに何となくのお時間を聞いていました。

施設によっては、午前診療後、午後診療後など日によって違うこともあるので念のため当日にも確認をしていました。

のりすのりす

まぁ、先生によっては「近くを通ったから!」という感じでいきなり現れることもあるんですけどね…
割合としては時間の近くになったら診察室の前で待機とかが多かったように感じます。

CRCさんと話す時に意識をしていたこと

新人の頃はいちいち改まって「今日の先生の面会のお時間は何時くらいになりますでしょうか?」や「CRCさんのご都合がよろしくなる時間帯はどれくらいでしょうか?」という聞き方をしていました。

CRCさんとの関係性が出来上がるまではこれでも良いと思いますが、ある程度関係性が構築されてきたらなるべく雑談に混ぜるような感じで必要な情報を聞き出していくとその後の関係も良くなっていくことが多かった気がします。

例えば、先生の面会時間を確認する時に唐突に「今日の先生の面会のお時間は何時くらいになりますでしょうか?」と聞くよりも、以下のように会話の中から聞き出す流れを意識していました。

のりすのりす

最近でもまだコロナの患者さんがそんなに減ってないとニュースで見たんですが、●●病院はどうですか?

女性3(右)

そうですね~、前より少し減ったくらいですかね。
他に担当しているクリニックの方では患者さんの数は結構減ったんですけど、この施設(大学病院)の場合はそれほど減ってない印象ですね。

のりすのりす

軽めの疾患だと受診控えとかありそうですけど、重めの疾患だとそうはいかなそうですもんね。
自分が患者さんの立場でも重めの疾患だったらやっぱり病院に行きますしね~。
それじゃ、ほっちゃれ先生も最近でもまだ忙しそうな感じですか?

女性3(右)

ほっちゃれ先生、死んだ魚のような目をしていることが多いので多分結構限界に近そうです(笑)
それでもWSの署名は容赦しないでいきますけどね(本気)

のりすのりす

私としてはありがた過ぎますが…ほっちゃれ先生ごめんなさい(笑)
それじゃ、まだ忙しそうですし今日の面会もこの前と同じように午後診療後あたりになりそうですかね?

女性3(右)

多分そうなると思いますよ~。
私、今日は10時~11時頃は被験者対応なんですけど、それが終わったら先生に確認して一度連絡入れますね。
最近は時間通りに終わっていることがほぼ無いので30分くらい待ってもらうことになってしまいそうですが。

のりすのりす

ありがとうございます!10時~11時は被験者さん対応なんですね。
待つのは全く問題無いです!それじゃ、私も何かお問い合わせがある時はその時間以降にご連絡するようにしますね~。

ちなみに、この会話からは以下の情報を拾い出すことができます。青字は私の心の声です。

上の会話から得られた情報
この施設の場合は、コロナの影響で来院する患者さんの数に変化は無そう。
症例のリクルーティングでの弊害にはあまりなっていなそう。クリニックは来院患者数減の影響でリクルーティングに影響が出そう。
ほっちゃれ先生はまだ忙しそう。
面会の時にも疲れているかもしれないので、要点をまとめてサクッと話すようにした方が良さそう(先生のキャラにもよりますけどね…)。
ほっちゃれ先生との面会は午後診療後になりそう&少し待たされそう。
ギリギリで飛行機や新幹線の予約をしている場合は、1本後ろの便に変更した方が良いかもしれない。ハラハラチャレンジをするかはその時の気分次第!
CRCさんは10時~11時に被験者対応が入っている。
その時間は連絡を避けなければいけない。その前も準備等で忙しいと思うので極力連絡はしないようにしよう。できれば、直後もバタバタしてそうなので、お昼食べた後あたりに連絡かな~。

これらを1つ1つ改まって聞いてしまうと、正直なところ尋問みたいになってしまいコミュニケーションを取るという観点でも微妙なのかなと思っています。

始めは意識しながらお話をしなければいけないので疲れますが、慣れてこれば自然と会話の中から情報を引き出せるのでおすすめです。

このあたりができないと“新人感”を抱かれてしまいますが、逆に自然とできるようになると“ベテラン感”を感じてもらえるようになるのではないかなと思います。

私も新人時代は同じでしたが、やっぱり新人さんのモニタリングに同行をしていると、特に先生との面会の時には尋問のようになっていることが多く感じます。

のりすのりす

先生やCRCさんとうまく関係が構築できるようになったと実感したのは、この「新人感」から脱出して「ベテラン感」を出せるようになってきた頃辺りからでした!

私も新人時代は同じでしたが、やっぱり新人さんのモニタリングに同行をしていると、特に先生との面会の時には尋問のようになっていることが多く感じます。

修得までには時間もかかるかと思いますが、目指すべきゴールが見えているのと見えていないのでは雲泥の差だと思います!

いよいよモニタリング開始!

いよいよモニタリング開始!

さあ、いよいよモニタリングを始めていきましょう!

試験特有で確認しなければいけないこともあるかと思いますが、どのプロジェクトでも意識していたことや後輩に教えていたことを書いていきたいと思います。

ちなみに、モニタリングの作業は自分の中で流れを確立して如何にルーティンの作業に乗せるかということを意識していました。

自分の中で流れが決まればあとはそれを症例毎に繰り返すだけなので、慣れたらモニタリングが楽になります。

本記事では私の例を出しながらご紹介をしていきます。

最初は同意説明文書から確認(重要)

まずは被験者さんの同意説明文書から確認をしていきます。万が一にも、治験の同意がしっかりと取れていなかったら倫理的に非常に問題となるためですね。

何故かというと、「同意」の中にはモニターによるカルテの閲覧等も含まれているからです。

つまり、同意が適切に取られていなかったらそもそもカルテをモニターに見られることについても患者さんが同意していないことになります。

のりすのりす

個人の病気の情報というのは非常にデリケートなものです。間違ってでも「同意をしていないものも見てしまった」ということが無いように注意する必要があります。

なので、まずは絶対に同意説明文書から見るようにしていましたし、後輩にも同じように教えていました。

ちなみに、同意書を確認する時には以下のポイントを押さえておくと良いと思います。

同意書を確認する際のポイント
治験責任医師または分担医師による説明があるか。
時間を記入するフォーマットの場合、時系列に問題はないか。
各自署名が適切にされているか。
被験者提供用はしっかりと被験者に提供されているか。

最近では同意書に時間まで記載しているものは少ないかと思いますが、試験によっては時間まで記載が必要な同意書に遭遇することがあるかもしれません。

同意取得と同時にスクリーニング検査を実施している場合には、特に時間の逆転が起きていないか(同意取得時間が検査時間よりも前か)をしっかりと確認しておくようにしましょう。

のりすのりす

同意関連はプロトコルの逸脱どころか、GCP不遵守に該当してしまうケースもあるので特に慎重に確認する必要があります。

スクリーニング名簿(Subject Log)を手元に準備

同意に問題が無ければカルテを見ていくわけですが、電子カルテの仕様によっては自分でカルテ番号を入れて検索をかけて被験者さんの情報を見に行く必要があります。

スクリーニング名簿には被験者番号とカルテ番号が書いてあることが多いかと思うので、手元に用意をしておいた方が作業はスムーズです。

のりすのりす

ちなみに、過去にスクリーニング名簿をいちいち見るのが面倒なのでカルテ番号を自分の資料にメモをしようとしていたモニターがいましたが、あれは個人的にはNGです。
被験者さんのカルテ番号が分かれば個人との紐付けの情報になるためですね。

また、システムによっては、予め治験に参加している被験者さんのみの情報(被験者番号付き)にしかアクセスできないようなアカウントを付与されることがありますが、この場合はスクリーニング名簿を毎回手元に置いておかなくても大丈夫です。

私の場合はカルテ番号の検索以外にも、先生と面会をする時にはスクリーニング名簿を持って行っていました。

CRAからすると、「1番さんのこの有害事象ですが~」のように被験者番号で呼びますが、先生にとってはその1番さんが誰さんのことなのか結び付かない場合もあります。

なので、スクリーニング名簿を持っておけばスッと先生にご提示できるというわけですね。

お問合せシートを開く

原資料を色々と見ていると問合せるべきことが出てくるかと思います。

管理の方法は色々あると思いますが、私は問い合わせ事項がある度にExcelに入力をして作成する問合せシートという資料を作っていました。

SDVが完了したらCRCさんへのFBを行いますが、口頭でガーっと言ってもCRCさんがメモを取るのが大変だと思うので、口頭でも説明しつつ「問い合わせ事項をまとめたファイルを後で送っておきますね~」という感じでやっていました。

モニタリングFBのお問い合わせシートのイメージ2
私が使っていたお問い合わせシートのイメージ

お問い合わせシートは、CRCさんへのFBにも使っていましたが、次回のモニタリングで確認すべき内容がまとまっているので自分でもモニタリング時に使っていましたよ!

ソート機能を利用して、「Statusがopenのもの」と「確認する症例番号」で絞り込みをしておくと当日かなりモニタリングがやりやすくなるので私はよくその方法を使っていました。

のりすのりす

ちなみに、「ワークシートのここに誤記があります」や「EDCとの入力に齟齬があります」のような軽いものは付箋を貼ってお知らせしていました。

ワンポイント

付箋を貼った位置は1つ1つメモをしていなかったので、対応後にCRCさんに付箋を外されてしまうとどこを再確認すれば良いのか見失ってしまうことがあります。
付箋を使う場合は、対応後にもそのまま付箋を貼っておいて欲しいとお願いしても良いと思います。
あるCRCさんは対応済の付箋には「✓」を付けてくれたりしてくれて非常にありがたかったです!

カルテを日付順に見ていく

適格性を確認する時には、プロトコールで定められた期間まで遡って片っ端から電カルの情報を見ていきます。

場合によっては結構量が多いので、さらっと見て適格性に引っ掛かりそうな記載が無いかどうかに意識をしながら確認をしていました(じっくりと見ていたら分量的に時間内に見終わらない可能性もあります)。

もちろん、治験期間中のカルテについてはしっかりと全て目を通しておく必要があります。

院内検査記録の確認

大抵の治験では血液検査が規定されていると思いますが、治験で規定された検査とは別に院内で検査をしていることもあります。

もちろん、治験で規定された検査以外でも異常が認められるようであればそれが有害事象に該当しないかの確認が必要となります。

のりすのりす

ただし、院内検査である検査値が微妙に基準値上限を超えているだけで1つ1つ「これはAEに該当しますか?」と聞いていくのは微妙です。
対象疾患によっては気にしなければいけない検査値もあるかと思うので、この辺りはどの程度までの確認が必要か同じプロジェクトの先輩にも確認してみましょう。

実はモニタリングに慣れてくると「さすがにこれは確認しなくても良さそうだよね」という感覚が分かってきますが、始めのうちは何が“確認しなくて良いもの”かが分からないと思います。

なので、悩んだとき、疑わしいものについてはしっかりと確認しておく方が無難です。

色々聞いていると、「そんなの聞かなくても分かりますよね?」と言われてしまうこともあるかもしれませんが、本当は確認しなければいけないことを見落として被験者さんの安全性を脅かすことになるより遥かにマシです。

段々と経験を重ねて「力の抜きどころ」を覚えていけば良いので、先輩は優しくフォローしてあげて欲しいです。

処方記録の確認

新たに薬剤が追加されていたり増量されていたりする場合、有害事象が発現している可能性があります。

薬剤師さんではない場合、薬剤名を見てすぐにイメージできないこともあるので、PCのブックマークにPMDAの添付文書検索を入れておくと重宝します。一般名でも商品名でも検索できます。

また、併用薬が併用禁止薬に該当しないかのチェックにも使えます。

「薬効分類名」や「有効成分に関する理化学的知見」にある「一般的名称」あたりを見てみると良いかと思います。

併用薬管理シートのイメージ

私が使っていた併用薬管理シートのイメージ

私は基本的には、上にあるような併用薬管理シートを作っていました。

基本的には以下のような使い方をしていましたよ!

併用薬管理シートについてのポイント
併用禁止薬に該当しない薬剤名は青字、該当する薬剤名は赤字、まだ調べていない薬剤名は黒字にしていました。(これで併用禁止薬の確認漏れが防げます)
施設訪問時に確認する項目は基本的に「処方日」と「変更」の部分のみにしていました。
もちろん新規の併用薬が追加されていないかの確認もお忘れなく。(EDCに反映されていない可能性もあるので…)
併用薬管理シートはEDCから出力する帳票を利用すると楽に作れますよ!
のりすのりす

この例では、合併症「糖尿病」の治療のために服用しているメトホルミン塩酸塩が2023/2/3の処方で500mg/日→750mg/日に増量しているので合併症の悪化が無いかの確認が必要ですね。

ただ、オンコロジー領域の場合は併用薬が恐ろしい数になっていることもあるのでそれを全て追い切るのは得策ではない場合があります。

私なら有害事象の治療のために使用された併用薬や治験使用薬などに絞って管理をすると思います。

臨機応変にどこまでカバーするか決める必要があるので、新人さんは先輩と相談してみても良いと思いますよ!

他院レターの確認

新人の頃に意外に見逃しやすい資料の1つが他院レターです。

その名の通り、他院から紹介されて来院した被験者さんの場合はこの資料が発生していることがあるのですが他院レターには治験として収集すべき情報が書かれていたりすることがあります。

のりすのりす

例えば、適格性に関わることだったり、合併症、既往歴、併用薬なんかの情報もあったりします。

場合によっては検査結果も添付されていることがあるので、そのあたりも一通り見て収集すべき情報に漏れが無いかをチェックしていました。

電カルのシステムによってはどこをクリックすれば他院レターが出てくるのか分かりにくいものもあるので最初にCRCさんに使い方を聞いておくのも良いでしょう!

ワークシートの確認

事前準備でEDCを確認しているかと思うので、ワークシート(WS)に関しては大体何が書いてあるか分かっているかと思います。

正直なところ、WSに多少誤記があってそれをCRAが見逃したとしても大きな問題になることはほとんどありません。

のりすのりす

そこをネチネチ責めてくる先輩がいたとしたら…CRAとしての本質を見失っているのかも!?
CRAは単純な間違え探しをするのが本質な役割ではないですからね。

間違え探しに全力を注ぐ必要は無いので、WS⇔EDCの整合性についてはサラッと終わらせていました。

それよりも、治験で報告すべきこと(例えば有害事象など)が原資料にあるのにEDCに入力されていないという方がよっぽど問題だと思います。

原資料にある“治験で報告すべきこと”をしっかりと察知することがCRAとして求められるところですのでそちらに集中をすべきだと思います。

WS確認時のポイントを一部ご紹介しておきます。

CRCさんの下書きが無いか

時々、鉛筆での下書きが残っていることがあるので注意しましょう。

また、「消せるボールペン」のようなもので書いている場合も改ざんが可能な状態と見なされてしまうため、鉛筆と同じ理由でNGです。

適切に修正がされているか

WSを作成していると、どうしても誤記が発生してしまうことがあります。

また、誤記でなくてもあとから情報が更新され修正されることもあります。

それ自体は全く問題ないのですが、CRAとしてはそれらの記録が適切に修正されているのか確認する必要があります。

特に新人の時に引っ掛かりやすいのは修正液や修正テープが使用されている場合です。

「適切な修正」というのは、「いつ、誰が、どのような理由で、何をどのように修正したのか」という一連の記録が残っている修正のことを指します。

のりすのりす

修正液や修正テープを使用してしまうと、「何を」の部分が隠れてしまうのでNGということですね。

正しくは、以下のようなイメージになるのでSDV初心者の頃には特に注意しておきましょう。

誤記の直し方2

ワンポイント
1枚の資料で修正箇所が複数ある場合には、1つ1つ修正履歴を付けるのではなく「*」等でまとめると良いです!
上の例はあくまで一例なのでこのスタイル以外でももちろん大丈夫です(ALCOAの要件が満たされていれば)。
修正液や修正テープは絶対NGです。これだけは覚えておきましょう。

医師判断が必要な部分をCRCさんが記載をしていないか

WSの各項目には、CRCさんでも記載できる部分と医師でなければ記載できない部分がある場合があります。(WSの構成次第なのでプロジェクト毎に状況は異なります)

具体的には、医学的な判断を伴わないような部分はCRCさんでも記載OK、AEの情報は医学的判断が伴うのでCRCさんの記載はNGなどがあります。(AEの情報がカルテに書いてあり、WSに転記するのみはOKということもよくあります)

CRCさんが記載OKな箇所とNGな箇所があるWSの場合、多くは見分けがつくように医師のみ記載の項目が太枠で囲われていたり、色が変わっていたりなど工夫がされていると思うので、中止して見ていきましょう。

FB時の準備

私は、FB時にすぐにお話ができるようにFBがあるWSには付箋を貼っていました。

私の場合は、付箋ごとにグレード分けをしていて例えば以下のような使い分けをしていました。

WSに使用する付箋ごとのグレード分け
●水色の付箋
単純な誤記修正。FB時に1つ1つ説明はしないもの。
●黄色の付箋
原資料間との齟齬があるもの。問い合わせシートへの入力&FB時にCRCさんに説明をする。
●赤色の付箋
先生に確認をしたいもの。問い合わせシートへの入力&FB時にCRCさんに説明をする。
CRAから先生に聞いて良いか、それともCRCさんから先生に聞くかを打ち合わせる。

医師面会に慣れていないと面会時は気持ち的に落ち着いていないため、先生に確認すべき箇所が一目で分かるようにしておくと便利です!

CRCさんへのFB時もサクサク進むので個人的には結構お気に入りの方法でした。

検査伝票の確認

規程Visit分の検査伝票が揃っているかをチェックしていきます。

WSを確認した時に規定外来院で検査をしていることが分かっている場合は、規定外の伝票もしっかりとあるか確認していきましょう。

基本的には検査伝票は「あるか無いか」を見ておけば十分かと思います。

のりすのりす

私の印象では「検査伝票紛失」もチラホラ見かけるので、油断ならない…

治験薬関連の資料の確認

治験薬管理表や温度管理表など治験薬関連の資料もあるため確認が必要になっておきますね。

整合性確認では、以下の全てのパターンで齟齬が無いかを確認していきます。

  1. 治験薬管理表と治験薬の現物
  2. 治験薬管理表とEDCの情報
  3. EDCと治験薬の数量

1と2をしっかりと確認出来ていれば③は必然的にOKとなるはずなので施設では①と②に注力をしていました。

症例数が多いと治験薬関連の確認だけでも結構時間を取られてしまうので、症例数が多い試験を担当する場合はある程度定期的に見ておく方が個人的におすすめです。

のりすのりす

私は以前に20症例分ほど一気に見ることがあってほぼ半日潰れてしまいました…

その他資料の確認

原資料特定リストで原資料として定められている資料が他にもある場合はもちろん確認をしていきます。

慣れない頃は原資料の確認の見落としがないように原資料特定リストを元に簡単なチェックシートを作って確認をしていました。

いざ、緊張の医師面会

いざ、緊張の医師面会

医師面会は経験が浅いCRAの場合はかなり緊張してしまう方も多いのではないでしょうか。

私も最初の頃は相当緊張していましたし、先生に何かを説明する時もロボットみたいに資料に書いてあることを読み上げているだけでした…

何かの質問をする時には尋問のようになってしまっていましたね~。

当然それでは先生も飽きてしまいますし、場合によっては「この人…大丈夫?」と思われてしまうこともあるでしょう。

CRA側としては必死なんですよね。それもよく分かるのですが、ステップアップも必要なのでCRA時代(今もですが)に意識していたことを共有します。

面会時間の把握

可能であればお時間をどれだけ貰えるのかは事前に把握しておきたいところです。

面会時間によっては全て問い合わせできないこともあるので、問い合わせをする優先順位を決めておく必要があります。

先生のキャラを押さえておく

先生の中には、「はい、はい、で?」のような感じで話の主旨をテンポ良く聞きたいという先生もいれば、じっくりと背景を含めたお話を聞いて下さる先生もいます。

先生からのクレームに繋がりやすいのは当然前者なのですが、CRAの中には(かつては私も…、説明が回りくどくなってしまう方がいます。

理解が曖昧であったり頭の中が綺麗に整理できていなかったりする場合に説明が回りくどくなってしまうことが多いようですので、慣れないうちは先生にどのように問い合わせをするかメモでも良いので書き出しておくと改善されることがあります。

担当の先生にはどのようにお話するのが効果的かなるべく早い段階から掴んでおくと良いと思います。

いきなり本題から入らない

時間的な都合上で致し方なかったり、先生のキャラクター的にすぐに本題に入った方が良かったりとシチュエーションは異なりますが、本題に入る前にアイスブレイクをするようになってから先生との信頼関係(CRCさんとも)の構築がうまくいくようになってきた気がします。

以前までは、「本日はお忙しい中お時間をお取りいただきましてありがとうございます。早速本題なのですが~」とすぐにお話をしていました。

しかし、最近では「本日はお忙しい中お時間をお取りいただきましてありがとうございます。先生、この前の●●学会での座長お疲れ様でした。あの時は台風も来ていたかと思いますが飛行機大丈夫でしたか?」のような感じで少し雑談も交えるように意識をしています。

CRA(特にCROの場合)は、「アイスブレイクするだけのネタなんて無いわ!」と思うかもしれませんが、例えば、「先日、●●さんがご入院された時にご対応いただきありがとうございました。報告書を読ませていただいた感じでは軽快に向かわれていそうな印象でしたが、その後●●さんのご容態は安定していそうですか?」という話題でも良いと思います。

その他、「私、実は●●病院も担当しているのですが●●病院の●●先生が先生のご施設の進捗が良くて良い刺激を受けているとお話されていましたよ!」などのお話をしたことがありまして、先生の表情もほぐれてその後スムーズに問い合わせをさせてもらったこともありました。

この辺りは経験も必要かもしれませんが、社内やTwitter内でも情報共有しながら引き出しを増やしていくのもおすすめですよ!

開発戦略などのお話や医学的なお話も出来ると尚良い

先生と話にする時に事務的なお話ばかりだと正直先生もモチベーションがなかなか上がらないと思うのですよね。

ですので、開発戦略についてお話できることがあればなるべくそのようなお話も交えたが方が先生のモチベーションを高めることができます。

最近では、「●●製薬さんで●●の治験が開始されたそうなのですが、先生はどう思われますか?この治験薬からすると競合薬になるので正直社内でざわついています(笑)」のようなお話から入って、「●●製薬さんに負けたくないので、先生!是非治験の症例お願いします!!」というようなお話をしてウケが良かったですよ!

淡々と「来月の候補症例はいらっしゃいますでしょうか?」や「なぜ候補症例が挙がらないのか心当たりはありますでしょうか?」などを詰問するよりもコミュニケーション上も良かったことが多かったので是非ご参考までに。

ただ、CROの場合は開発戦略的なところのお話は依頼者から教えてもらないことがあるので、学会や論文のネタの方が良いのかもしれませんね。(依頼者さんはなるべく情報を開示した方が、症例のブースト的にも良いと思うので是非可能な限りの情報開示を!!)

施設から帰宅しましょう

施設から帰宅しましょう

さてさて、帰宅する時にも注意ポイントがあります!

先生の面会時間が押してしまい、急いで施設を出る時などは油断をしていると退館手続きを忘れてしまうことがあります。

私が前に依頼者としてCRO/CRAさんに同行した時にはCRAさんが入館証を首にぶら下げたままタクシーに乗り込んでいたので冷や汗をかいたという経験もあったりします。

退館申請をしっかり済ませて安全に帰宅しましょう!

のりすのりす

極稀に「原資料が鞄の中に紛れ込んでいた!!」みたいなインシデントも聞くので、その辺りもご注意を!!

まとめ

1万文字を超える大ボリュームな記事でしたがここまで読んでいただきましてありがとうございました!

細かいテクニックはもっともっとあるのですが、ザックリとしたモニタリングスタイルはお伝えできたのかなと思っています。

CRAとしてこれからご活躍される方は私以外のモニタリングスタイルも見聞きしてみてご自身に合った最適なモニタリングスタイルを確立していってもらえればと思います!

モニタリングスタイルがしっかりと確立できれば仕事の質も上がりますし、負担も抑えることができます。

Twitterでは、うぱさんや大木さんもモニタリングまわりをまとめていたのでそちらも是非ご覧下さいね!

是非一緒に頑張っていきましょう!!