CRA時代のモニタリングスタイルをまとめてみた(訪問前準備編)

私がCRAとして仕事がやりやすくなったなと感じた瞬間は、自分なりのモニタリングスタイルが確立された時でした。

そこで、今回はこれからCRAとして活躍していこうと思っている方やモニタリングスタイルが確立していない方に向けて少しでもヒントになればという思いで私のモニタリングスタイルについてご紹介をしていきます。

のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。Twitterでのフォロワー数は4,200人程。今回も分かりやすさを重視して解説をしていきます!

モニタリングスタイルの確立

モニタリングスタイルの確立

モニタリングスタイルは、CRAの性格や得意・不得意や経験値によって最適解が異なるため誰かが「これが最適」と言ってもある人にとっては最適ではないことがよくあります。

これはCRAに限らず他のお仕事でもそうなのですが、「先輩によって言っていることが違う…」と思う場面がありませんか?

その一因は、先輩それぞれの最適解が異なっているためと考えることもできるかと思います。

例えば、私のように心配性な性格であれば事前準備を万全に固めておくことで現場では冷静に対応することができるので「入念な準備」は大きな効果を発揮します。

一方で、私とは逆でやるべきことはサッと頭に入って現場に行っても対応漏れがほぼ無いような方であれば「入念な準備」は時間の無駄であり、ただのオーバークオリティな準備と言えます。

このように、それぞれの性格や特性によって、更には「CRAのあり方の解釈」によってもモニタリングスタイルは変わってきますので、これからモニタリングスタイルを確立していかれる方は色々なCRAのモニタリングスタイルを見ていき、最終的には自分に合った形に最適化していくことをおすすめします。

今回は私のモニタリングスタイルについて、「訪問前準備編」と「現地編」の2つに分けてご紹介をしていきます。

1つでもみなさんのモニタリングスタイルの確立のお役に立てたら嬉しいです。

また、うぱさんもモニタリングの立ち回りをとても分かりやすくまとめて下さっているのでこちらのツイートも必見ですよ!

施設訪問前の準備

施設訪問前の準備

本記事は新人さんやこれからCRAになるという方も見ているかと思うので、新人の時の立ち回りも含めてお話をしていきます。

初めての施設への訪問

私は結構心配性な性格なので、初めての施設の場合は徹底的に準備をして訪問していました。

じゃあ、実際どんな感じに調べてまとめていたのかというと↓のような感じになります。

治験_訪問前資料

私は心配性なので、慣れない頃は「しっかり施設に着けるのか…」や「忘れ物無いよね…」や「対応漏れは無いよね…」と色々なことが頭の中を駆け巡っていました。

そのため、準備に関してはかなり入念に行なっていたと思います。

その甲斐もあって、アポイントに遅刻したことはありませんでしたし(事故等は除く)、忘れ物や対応漏れもほぼありませんでした。

ちなみに、これを作る前は漏れがちょいちょいあって失敗することがあったので、私の性格的にはここまでやるくらいがちょうど良かったのだろうと思います。

EDC入力状況の確認

私は、担当施設の被験者情報についてはExcelでVisit管理やEDC入力状況やSDV状況の管理をしていました。

アローワンスは自動計算で出てくるようにしてあり、アローワンス逸脱を自動で感知できるようにしていました。↓のような感じです(001番さんのDay21がアラートで赤文字になっています)。

被験者管理ツールのサンプル

この画像で言えば、水色のセルはSDV済、黄色のセルは未SDVとして分けていて、次回のSDVでは001さんのDay14、21と002さんのIC/SCR~Day14を確認しにいけばOKということが分かります。

被験者さんのVisitの状況を把握しているので、SDVの量がどれくらいかの予測も立ちますし、どの症例も確認しなければいけないのかも予めイメージすることができます。

これは蛇足ですが、このようなモニタリングに使えそうなツールをExcelで作り上げてチーム内に展開する…というチームへの貢献方法もあったりするので、PCが得意な方はチャレンジしてみるのも面白いと思います。

SDV症例の臨検値の確認

どの症例を見に行くかを把握したところで、同時に対象Visitの臨検値についても確認をしていました。

私は、いきなり先生が現れた時にも捕まえて話せるように臨検値についてはプリントアウトをして紙で持っていました。

このあたりは紙ではなくて電子で持っている方や何かにメモをしている方も多いでしょうね。

イメージとしては↓のような感じです。

治験の臨床検査値のイメージ図

臨検値については、CSVに出力できない検査会社もありますが、出力できる場合は次回のSDVで確認をすべき項目を色付けして視認しやすくしていました。

例えば、上記の例の場合はDay14、Day21を次回のSDVで確認するのですが、いくつかの臨検値が基準値から外れていることが分かるかと思います。

白血球とCRPの高値があるので、「風邪でもひいたのかな?」や、「肝機能値に関してはBaselineから高めではあるけど、Day14のASTはGrade1→2に変化しているのでさすがに確認が必要かな」など色々事前に考えておくことをしました。

臨検値の変動は合併症にも関係していることがあるので、それらを一通り把握しておくと先生との面会の時にもしっかりとしたディスカッションができていたように思います。

臨検値については推移を見ながら異常変動かどうかを確認することも多いので、先生に聞くときにはしっかりと推移が追えるような状態で見せていました。

また、転帰をどうするかについてはよくモニターとして問合せさせていただくことが多かったです。

「重篤な有害事象等に関する報告書」について依頼者視点から解説をしてみる!の記事でも最後の方に出てきましたが、新人さんは以下のようなイメージを持ちながら臨検値を見てみると良いかもしれませんね(画像では「SAE」となっていますが基本的にはAEでも同じ考え方です)。

臨床検査値の推移と転帰

モニタリング報告書の下書き

SDVの事前準備で何をチェックしなければいけないのかを把握した上で、予めモニタリング報告書のひな形を作ってから施設訪問をしていました。

以下のような感じですね。

モニタリング報告書の雛形のイメージ
  • Day14にて白血球とCRPが高値であるが、【2023/5/11よりAE「感冒」を発現しており、感冒の影響により上昇している】ことを確認した。
  • Day14にてASTが125であったが、【合併症「肝機能障害」の症状の範囲内であることから有害事象に該当しない】ことを確認した。
  • AE「腰部脊柱管狭窄症の悪化」について、●●●のため合併症「腰部脊柱管狭窄症」の悪化があったと判断された旨、確認した。
  • ●●●●●●

予め下書きしておくことで、何を確認しなければいけないのかが分かりますし穴埋め箇所に結果を入れ込めばMVRがほぼ完成する仕組みになっています。

ただ、原資料を見て新たに書かなければいけないこともあるかもしれないのでその際は下に追記していく形にしていました。

ちなみに、モニタリング報告書にどこまで記録を残すかは、依頼者やチームによって方針が異なると思うので、プロジェクトにアサインされたらなるべく初期の頃にスタンスは確認するようにしていましたよ!

協力者リスト

これも普段はあまり使わないのですが、先生とお話する時には「●●先生に頼んで」など、ふとした時にお話されることがあるのでいつでも見られるように施設ファイルにはファイリングをして持ち歩いていました。

あとは年度末になると異動になる先生やCRCが出てくることも多いので、2月、3月あたりの施設訪問時には忘れずに持ち歩いていました!

治験分担医師協力者リスト(書式2)

原資料特定リスト

原資料特定リストは、日本のGCPには登場しない資料なので試験によっては作成しないこともあります。

もし作成する試験の場合は、原資料をモニタリングすることになるため何が原資料に該当するのかはリストをしっかりと持っておいた方が分かりやすいです。

国立病院機構のページに原資料特定リストのサンプルがあるのでどのようなものかよく分からない方は覗いてみましょう。

もちろん形式は色々ありますが、「どの項目についてどの資料を参照すれば良いのかを示すもの」という定義は変わりません。

Delegation Log

こちらも日本のGCPには登場しない資料なので試験によっては作成しないこともあります。

治験に登場する用語について解説付きで紹介してみたの記事でも登場したDelegation Logですが、こちらは誰がどのロールでどの範囲の業務まで行うかを定めた資料になります。

例えば、「治験薬処方」という業務にDelegateされていない人が治験薬処方をすることはできないということですね。

Delegation LogはPI作成で施設保管の資料になるのでCRAが持ち歩くとしても原本ではなく写しを持ち歩くことになります。

手持ちとして持っておけば便利なのですが、私は手持ち資料にはあえてしていません。

というのも、施設作成の資料なので気が付いた時に更新されていることがあり自分が持っている写しの情報が古い(=最新情報を参照できていない)という可能性があるためです。

この辺りはみなさんのお考え次第で決めても良いと思っています。

症例毎にタブ分けできるノート

これはPCを開けるスペースがあまり無い施設限定だったのですが、施設毎にタブ分けできるノートを使っていました。

ルーズリーフ&B5判のサイズのものを使っていてCRA時代は結構お気に入りで使っていました!

まとめ

私のモニタリングスタイルは準備に結構時間をかけるスタイルなのですが、その代わり現地では見るべきところをサラッと見てあまり時間をかけないで進めていくようなやり方でした。

ちなみに、気持ちだけは「帰りの飛行機や新幹線でモニタリング報告書を仕上げてしまおう」という心意気だったのですが大体は疲れて寝てしまう…という感じでしたね。

今回は私のモニタリングスタイルについてお話をしましたが、モニタリングスタイルの幅を広げるためには考え方の引き出しを多く作っておくことが重要です。

ふでさんの「治験Twitterブレスト」などもモニタリングの考え方の幅を広げられる良い機会になると思うので、まだご参加されていない方はそちらも是非参加してみて下さい!

次回は「現地編」について書いていこうと思います!