依頼者視点から考えるSMOの将来性とは?明暗を分かつ要因を考えてみる

今回は、11/12に招待していただいたヒロシズRadioで私がお話をした内容をまとめてみました。

主なお話の内容は、キャリアのお話とSMOの将来性などでした。

今回の記事では、ヒロシズRadioでお話したことはもちろん、お話した内容を補足する形で色々と情報を補強していますので、お時間がある時にでも読んでやって下さい。

ヒロシズRadio


ヒロシズRadio(読み方は「ひろしずれいでぃお」←重要)は、ヒロシズさん(@Hiro_health_biz)が主導となって開催された座談会で、現役CRCさんの治験のおねいさん(@chiken_no_lady)とレモンさん(@CRClemonpart2)を含む4人で開催されました。

医薬品開発のホットなテーマを扱っているヒロシズさん、Twitter界の売れっ子CRCのおねいさん、Twitter界の癒しCRCのレモンさん…とそうそうたるメンバー。

こんな豪華なメンバーに囲まれながら、私も色々お話をさせてもらったわけなのです。

ちなみに、ヒロシズRadioというハイセンスな命名をしたのは我らがおねいさん!

流石ですねヾ(*´∀`*)ノ

私のキャリアについてのお話

私のキャリアについてのお話

始めにお話ししたのは私のキャリアについて。

Twitterやブログを見ていただいている方は「何度も聞いたわ!!」と思われるかもしれませんが、私が歩いてきた道についてお話をさせていただきました。

就活時

実は、就活を始めるまで「臨床開発職」という職種については全然知らなかったんですよね。

そんな私ですが、たまたま同じ研究室から製薬メーカーの開発職に内定が決まった先輩から色々話を聞いたことがきっかけで、臨床開発の世界に興味を持つことになりました。

その時に私は1つの大きな目標を掲げました。

「治験のネガティブなイメージを払拭する」

当時はTwitterなども無く、情報量は少ない中、私なりに色々調べた結果、治験に対してネガティブなイメージを持っている日本人が意外に多いことを知りました。

今でも時々見かけますよね、「人体実験」とか「闇バイト」とかそんな類のお話。

就活生のりすは以下のように考えました。

今問題となっているドラッグラグは、こうした治験に対するネガティブなイメージも影響しているのでは?

治験のイメージが良くなれば被験者がもっと早く集まって患者さんにより早く薬を届けられるのでは?

こんな感じで、医薬品開発の世界に足を踏み入れていくわけですね。

ちなみに、のりすの野望については以下の記事でもう少し詳しく触れています。

CRO時代

CRO時代_ひよっこのりす

就活生のりすは、新卒としてCROに入社をしました。

製薬メーカーの開発職からも内定は出ていたのですが、周囲の反対を振り切ってのCRO就職でした。

何故頑なにCROに就職をしたか。

その時には既に壮大な戦略(妄想)があったからなのですよね。

「治験のネガティブなイメージを払拭する」とたいそうな事を発した私ですが、それをどのように実現させていくのかという課題がありました。

私はこの課題について、以下のように考えました。

のりすの脳内
治験のネガティブなイメージを払拭するには、それなりに影響力があるポジションに就かないと達成できない。ルール等を決める上流の仕事に関わる必要がありそうだ。
業務内容を考えると、最終的には製薬メーカーに行く必要がありそうだ。
では、質の高いルールやプロトコルを作成するためにはどうしたら良い?
1つの製薬メーカーや限られた領域ではなく成功例、失敗例を含めてとにかく幅広い経験と知識が必要だと思う。
では、キャリアはCROからスタートすべきでは?CROでは幅広い経験と現場の実状を知ることが最優先になるだろう。

この考えの軸でCRO時代を過ごしました。

楽しいこともあったけど、それと同じかそれ以上に辛いことも沢山ありました。

私の歩んできた道が順風満帆に見える方もいるかもしれませんが、実際は荒れ狂った大海原を途方もなく彷徨ったこともあったりします。

恐らくこの考えの軸が無かったら私は途中で迷子になって沈んでいたことでしょうね。

CRO時代を終えた頃には、ひよっこのりすもニワトリのりすくらいには進化したのではないでしょうか。

製薬メーカー時代

製薬メーカー時代_チンパンジー

CROでどこまで経験を積むかは求めようと思えば果てしなかったけれど、ある事をきっかけに製薬メーカーの開発職として転生しました。

ニワトリからチンパンジーへの進化です。

転生のきっかけは子どもでした。チンパンジーのりすにも子どもが出来ることになったのですね。

仕事も大事ですが、やっぱり家族が一番大事です。なので、家族との時間、子どもとの時間をなるべく確保できるような環境に身を置こうと決心したのです。

奥さんにワンオペをさせないようにとも思いましたが、何より一緒に子どもを育てていきたかった。

CRAはやはり外勤が多く、遠方になると日帰りの場合は早朝に出かけて夜遅くの帰宅、時間によっては前泊、後泊もあるので、家にいる時間が時期によってはどうしても短くなってしまうお仕事です。

一方で、メーカーの開発職(Project Management)の外勤はCRAよりも少ないので家にいる時間を確保することができます。

なので、私の家族に対する考え方と仕事をする環境がうまくマッチしていたのです。

仕事では、CROで培った経験・視点が大いに役に立っていて、私の場合はCROからキャリアをスタートして正解だということがやっとこの段階で分かりました。

途中、「本当に正しい道なのだろうか…」と思うこともありましたが、今考えてみればCROでの経験があったからこそ、今は私にしかできない仕事もできているのではないかと感じています。

最近は、メーカーでの仕事もかなり馴染んできてそれなりに意見が出来る立ち位置まで来たので、やっと目標を目指せる基盤が整いました。

スタート地点に立てたということですね…(あれ、ひよっこのりすに戻ってしまった!?)

依頼者視点から考えるSMOの将来性

依頼者視点から考えるSMOの将来性

製薬メーカーにいる私が、SMOの将来性について語るなんて、なんともおこがましいのですが、ヒロシズRadioでテーマになっていたので、少しばかりお話させていただきました。

完全に私の私見ですので、大いに異論はあると思いますが、”依頼者側からの視点”ということで、生暖かくご覧いただければと思います。

SMO費用

最近は、薬価改定が進み、その煽りもあって開発コストに対する縛りが一層厳しくなってきたと感じています。

プロジェクトのBudget管理もやっている立場ですが、開発コストの削減のためにあらゆる方法を模索しています。

その中で「SMO」について考えてみると、やはりBudget的には厳しい印象なのですよね。

試験内容やSMOにもよると思いますが、少なくとも私が管轄するプロジェクトではSMO費用が施設の研究費等その他もろもろの費用を上回っている状況がよく見られます(1施設なのに2施設分のコストがかかっているようなイメージ)。

院内CRCさんにご対応いただく場合と比較すると、数倍のコストがかかることもあり、1試験に占めるSMO費用の存在感も非常に大きいのが現状です。

また、これはしょうがないことなのかもしれませんが、他社SMOが病院にいない場合、競合がいないこともあり、強気の価格設定となることもよくありました(その他のエリアと比較して症例単価が1.5倍程高い等)。

このようになってくると、やはりコスト削減で矛先が向かってしまう場合もあるのではないかと思っています。

CRCあり方会議で、このSMO費用についてどう考えているのか等も本来は”あり方”として議論して欲しいところではありますが、なかなか触れにくいですよね。

Twitterやブログという本音で話せる場だからこそ出せたお話です。

今後の医薬品開発のトレンドから

私が所属する会社に関わらず、製薬メーカー各社は、やはり開発コスト削減に向けてかなり試行錯誤をしているかと思います。

そのような状況の中、最近ではブロックチェーン技術を用いたSDV、リアルワールドデータ(RWD)を薬事承認に使用できるようにする流れも活発化してきています。

RWDをヒストリカルデータとして既存療法群のデータとして使用する試験が増えてこれば、必然的に治験で必要になる症例数も減ることになるため、実績に応じて支払いのあるCRC費用等はダイレクトに影響してくるものだと考えています。

特にRWDは日本主導で進めていることもあり、近い将来、治験のデザインもガラッと変わり新たなフェーズに移行していくことになるのではないでしょうか。

そうなると、SMOの売上にもネガティブな影響を及ぼす恐れもあり、時代に取り残されないためには、SMOも新たな試みをしていく必要があると感じています。

新たな試みに挑戦できるSMOは生き残り、そのままの状態を維持するだけのSMOは生き残りが難しくなるのではないかと勝手に思っています。

SMOの新たな試み(のりすの妄想)

具体的に取り組まれている新たな試みとしては、DCTのカテゴリーで訪問看護を利用した治験支援等でしょうが、ヒロシズRadioでは私の妄想話をさせていただきました。

それは…

SMO側にもデータサイエンティストを配置して、全国の支援施設においてどの施設を選択することで最も効率良く症例を組み入れることが出来るかのデータを提供する試みです。

依頼者側でもこの試みはあるかと思いますが、私の妄想では、”治験をやる上で”という付加情報を持たせたデータのことを指しています。

施設の運用、実施体制、リソース状況…治験を円滑に実施する上では、一般では公開されていない様々な要因があるかと思いますが、それらの情報を一番持っているのはSMOなのではないかと考えています。

であれば、その強みを活かして、コンサル的な要素を含んだサービス提供も面白いのではないかなと感じたのです。

これはただの妄想なので、現実味があるかどうかは分かりませんが、気軽に話せるヒロシズRadioの雰囲気に甘えて好き勝手喋らせてもらいました!(ありがとうございます)

依頼者視点からCRA・CRCに求めること

依頼者視点からCRA・CRCに求めること

既に色々とご尽力いただいているのは重々承知しているので、ヒロシズRadioでも多くは語りませんでした。

お話させてもらったのは1点だけ。

担当している治験では、どのようなデータの収集が求められていて、どのように添付文書に載せたいのかを一緒にイメージして欲しいということです。

これは、物凄くハードルが高いことだとは思いますが、プロとして敬意を払ってあえてお願いしました。

私たちメーカーの治験でのゴールは、医薬品を目標としていた用法用量で承認を得ることです。

私は、ゴールとして添付文書を常にイメージしながらプロトコルを作成したり、その他色々な指示を出しています。依頼者見解を出す時もそうです。

プロトコルの書きっぷり次第で、承認される条件が変わってしまうこともあるので、例えば、選択除外基準などに本当は詳しく明確に記載したくても記載出来ない都合などもあったりします。

CROにいた頃は、「何で明記していないんだ!書いてなきゃ分からないじゃないか!」と思うこともあったのですが、今考えてみると色々な事情もあったのかもしれないなと感じることもあります(もちろん、普通に書き忘れていたり、配慮できていなくてその表記になっていることもあります…笑)。

選択除外基準の設定根拠の背景には、色々な都合もあるということです。

その背景を理解した上で、現場でどのようにそれらのデータを集めていくのかということを考えるプロがCRCさんやCRAだと思っています。

しかし、現状は依頼者側からそこまでのニュアンスをCROにしっかりと伝えられているかというと、はてなマークが浮かぶ状況です(少なくとも弊社はそうです…)。

その点は、依頼者の課題ということになりますよね。

ICH E9に記載されているestimandについて意識するなど、出来ることからでも取り組んでもらうと、依頼者にプロトコルや手順書についての何かを交渉する際に建設的な議論ができるのではないでしょうか。

…と、真面目なこと言ってみましたが、もちろん↑のことを求めてるなんて言ったら「え…?」となることも分かっております!

なんでしょう、薬が承認された時の喜びをもっと一緒に共有するためには色々な背景を知っていて、建設的な議論でぶつかり合って、苦労を一緒に越えてきたときなのかなとか思ってのお話だったのですよね。

薬が承認された時に、CRCさんやCRA(特にCRO)と思いっきり同じレベル感で喜びたいのです。

キャリアについて伝えたいこと

キャリアについて伝えたいこと

お仕事をしていると、色々な困難に直面することも多いかと思います。

特にCRCさんやCRAはコミュニケーションを取らなければいけない人たちが多く、ストレスもかなり溜まるお仕事です。

人間関係がうまくいかないこと、仕事でミスをしてしまってなかなかうまくいかないこと、いっぱいあると思います。

ただ、その時その時でやっている仕事は必ずどこかで役に立つことがあると思っています。

例えば、看護師さんからCRCに転職をしてCRCをやってみたものの、自分には合わなくて看護師さんに戻った方は、CRCを経験することで、「治験のことを知っている看護師さん」に進化して戻っていくわけです。

これってとても価値があることだと思いませんか?

CRCさんやCRAを続けていくことやステップアップしていく方はもちろん、他の職種に行かれる方もCRC・CRAの経験を無駄にしないためにも、日々のお仕事を全力で頑張っていればどこかでその知識や経験が役立つのではないでしょうか。

”今を無駄にしないで!!”と偉そうにお伝えさせてもらいました。

まとめ

こちらの記事には私がお話した内容とその補足をまとめましたが、ヒロシズさんもこちらのブログで、ヒロシズRadioでお話された情報をまとめています!

ヒロシズさんのキャリアについて分かりやすく読みやすまとめられていますので、是非そちらもご覧下さい!!

最大人数100人近く集まっていて大盛況だったヒロシズRadio。とても楽しかったです!

スピーカーとして一緒にお話いただいた皆様、スペースで視聴して下さった皆様、ありがとうございましたにゃー!