サスメドの株価が3日で半値に!現在の状況を整理してみる

2024年1月15日に医療技術評価分科会で使用する審議資料に「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」という記載があったことから、サスメドの株価は1月15日の終値1,383円から1月18日の終値712円まで約半値近くまで急落しました。

今回の記事では、現在の状況について整理をしていきたいと思います。

のりすのりす

治験業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は4,900人程。今回も分かりやすさを重視して解説をしていきます!

※本記事は筆者の個人的な見解も含んでいます。投資は自己責任でお願いします。

株価急落の背景にある恐怖

まずは、簡単にですが株価急落前の状況と急落時、急落以降の状況について整理をしていきたいと思います。

そもそもサスメドはどのようなアプリを開発しているのか…ブロックチェーン技術を応用したモニタリングとはどのようなものなのか…については過去記事をご参照下さい。

株価急落前の状況

株価急落前のサスメドは、「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」の薬事承認を取得し、“保険点数がいつ付くのか、何点付くのか”、“いつから販売が開始して塩野義からのマイルストーン収入が入るのか”というポイントが着目されていました。

順調にいけば、2023年8月または11月に中医協で了承されて保険点数が決まるはずでしたが、予定が遅れておりヤキモキしている…という空気感だったように思います。

2023年12月15日には、りそなアセットマネジメントがサスメド社の株式保有比率を5.00%→6.22%に増やしており、株価も1,300円代後半に向かってゆっくり上昇していました。

株価急落

しかし突如、2024年1月15日に医療技術評価分科会で使用する審議資料である医療技術の評価(案)の「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」の欄に「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」と記載され、「医療技術評価分科会としては、今回改定では対応を行わない技術」にカテゴライズされている資料が公開されました。

これを見た多くの方は、「医学的な有用性が十分に示されていない…もしかして、承認の取り消し(あるいは保険点数が付かない)になるのではないか」という恐怖にかられ大量の売り注文が殺到し1月15日はストップ安を付ける展開に。

のりすのりす

サスメドにとっては、Med CBT-iをリリースしてからが収益フェーズになるので、その前提が崩れてしまったら当然焦りますよね。

株価急落後

更に株価が急落した翌日の1月16日にはサスメドより「昨日の厚生労働省からの公表資料について」というIRが出されました。

IRでは「現在、公表内容の詳細については確認中であり、詳細が判明次第、速やかにお知らせいたします。」と記載され、公式としても現在の状況が把握しきれていないという状況であることが分かり、株価は更に下落を続けました。

本記事を執筆している1月19日の終値で702円でしたので、株価急落直前の終値(1月13日:1,383円)から実に約50%もの下落があったことになります。

このように、「もしかしたら保険点数が付かないのではないか…赤字企業のままなのではないか…」というのが恐怖のコアの部分かと推察できますが、それでは実際のところどうなのかについて見ていきましょう。

保険適用までの流れを簡単に

保険適用までの流れを簡単に

「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」は、治験を行って有効性と安全性が検証され、良好な結果であったことから2023年2月15日付での医療機器製造販売承認を取得しています。

このことは、「不眠障害治療において患者と医師を支援するアプリの医療機器製造販売承認取得について」でIRでも正式に発表されていますね。

有効性と安全性が確認できて製造販売承認を取得すると、次に保険点数を決めるフェーズに入ります。

のりすのりす

保険点数は1点10円です。そのため、1,920点が付くと19,200円ということですね。

保険適用…ということは、税金が使われているわけですので、製薬会社や医療機器会社が勝手に値段を決める事が出来ず(希望を出す事はできますが)、適切な点数であるかが議論されて決まります。

一般的には、保険医療材料等専門組織(略して「保材専」と呼ばれることもあります)で議論されたあとに中央社会保険医療協議会(中医協)で了承されて保険点数が決まります。

ですので、サスメドの株を持っている方は、中医協総会でいつサスメドの保険点数が了承されるのかということを注視しているということですね。

ただ、「保材専→中医協総会での了承」とはすんなりといかない場合もあったりして、今回のサスメドはそのパターンに該当していました。

どういうことか見ていきましょう。

医療技術評価分科会での審議

医療技術評価分科会で審議する流れ

薬事承認を取得した後には、保険医療材料等専門組織で保険点数が議論をされる訳ですが、分野横断的な幅広い観点からの評価が必要と考えられる場合等には、医療技術評価分科会での審議を求めることができます。

サスメドの「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」は、“治療用アプリ”という新しいカテゴリーの治療の選択肢になります。

薬は医師から処方されるというイメージを皆さんお持ちかと思いますが、治療用アプリも医師から処方されます。

のりすのりす

「アプリなんだから勝手にスマホにダウンロードして使えば良いのでは!?」と思うかもしれませんが、医師から処方されなければアプリを動かすことは出来ません。

日本には高血圧治療補助アプリのCureAppも治療用アプリとして存在していますが、まだまだ治療用アプリは一般的ではないため、幅広い観点から評価をして保険点数を付けていく必要があるのかなと推測しています。

そんなこんなで開催された医療技術評価分科会での審議で提示された医療技術の評価(案)の記載が今回の話題の的になっているのですよね。

医療技術評価分科会において評価の対象となる医療技術

分科会では数多ある医療技術を全て評価するわけにはいきません。

そのため、以下の条件に合致する医療技術が評価の対象になっています。

  1. 評価の対象となる医療技術は、医科診療報酬点数表第2章特掲診療料第1部「医学管理等」から第 13 部「病理診断」、又は歯科診療報酬点数表第2章特掲診療料第1部「医学管理等」から第 14 部「病理診断」に該当する技術として評価されている又はされることが適当な医療技術であって、医療技術としてアウトカムが改善する等の有効性をデータで示すことができるものに限る。
  2. また、提案書が提出された医療技術の実施に当たり、薬事承認されていない医薬品、医療機器又は体外診断薬を使用するものは、原則として分科会における評価の対象外とする。承認が見込まれるものについては、令和5年8月末日までに確実に承認取得が可能な場合のみ、評価の対象となる。

出典:令和6年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価方法等について(案)

    医療技術の評価(案)

    今回話題になっている医療技術の評価(案)は以下のように作成されました。

    医療技術の評価(案)の作成の流れ

    出典:令和6年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価方法等について(案)

    サスメドの場合は、日本睡眠学会から提案書(ページ番号:4194)が提出され、事務局によるヒアリング・WGからの意見聴取等の結果、評価案が作成されています。

    分科会は提案書に記載されている内容等などから妥当と思われる保険点数を審議していくわけですが、評価にあたっては、診療ガイドラインの改訂やレジストリ等のリアルワールドデータの解析結果を把握し、それらを踏まえた適切な医療技術の評価が求められています。(令和4年度診療報酬改定における中医協答申書附帯意見より)

    ここからは私の推測ですが、上記を加味するとレジストリ等のリアルワールドデータの解析結果を把握するには相応のデータ量が必要になってくるので、データ量が足りずに分科会において評価するだけの有用性が示せていない(物理的に致し方ない)のではないのかなと思っています。

    のりすのりす

    「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」はまだ使われ始めていないので当たり前なのですがね!

    治験では、選択基準や除外基準などで症例バックグラウンドをしっかりと揃えた状態でデータを取っていきますが、リアルワールドで使用される時には(実臨床で使用される時には)、色々なバックグラウンドを持った患者さんが使用することになります。

    そのため、将来的にはリアルワールドデータの解析結果から適正な保険点数を付けていくことが重要かと思いますが、現段階では「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」の使用実績がないため、まだ分科会で対応を行う段階でも無いのかなと思っています。

    実際に分科会でどのような理由で「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」と判断されたかについては、今後のサスメドからのIRにて説明される等、何かしらの方法で知りたいところではあります。

    まとめ

    「推測」という言葉を多く使ってしまいましたが、実は今は保険点数の決まり方が変わっていく過渡期にあるため、実際のところは近い業界にいても見えずらいところがあったりします。

    ただ、現時点の個人的な印象では「薬事承認が取り消されてしまう」や「保険点数が全くつかない」という最悪の事態にはならない確率が高いのではという感じです。

    薬事承認についてはスキームが異なるため、取り消されてしまう可能性は皆無に等しいですが、保険点数については今回の分科会の決定で技術料は付かなそうなので、再度保険適用希望書を提出して保材専で特定保健医療材料として評価されるのではないかと思っています。

    希望書を出し直すので時間的なロスはありそうですが、特材の点数も付かない(つまり点数が全く付かない)という確率は低いのかなという推測です。

    そういう意味では、まずは保険収載がされるか否かという点が明確に確認できるまで気が抜けませんね。

    また色々と実際のところが分かってきたり本記事の内容に誤りがあった場合には修正をしていきます。