治験の中にはイギリスやアメリカで行う海外治験の案件があり、日本から参加をすることで100万円を超えるお金を貰えることがあり興味がある方もいるのではないでしょうか?
今回はイギリスの治験に参加をした経験談となぜわざわざ海外で治験をやるのかについてご紹介をしていきたいと思います。
●なぜ海外治験で貰えるお金が多いのか
●私が海外治験に参加した体験談
治験を専門にかれこれ製薬企業で長年働いています。Twitterもやっています。フォロワー数は4,300人程。今回もなるべく分かりやすく解説をしていきます
海外治験への参加はやばい?
日本人の参加者を募ってイギリスやアメリカなどの海外の病院で治験に参加をする…しかも、100万円近いお金も貰える…
これだけ聞くと明らかに「怪しすぎでしょ!?」と思われる方も多いかと思います。
実は私も大学生時代にイギリスの治験に参加したことがありますが、その時は期待がありつつも不安もかなり大きかったのを覚えています。
今となっては製薬企業で働いていて逆に治験を運営する側の立場になったので、見え方は随分と違いますが何も知らなかった時はやはり怖いなという気持ちもありましたね。
ちなみに、結論からお話すると海外で何かやばいことをされるとか物凄く危険ということはないので参加を考えている方はその辺りは安心してもらって大丈夫です。
とはいえ、ただ「大丈夫です」と言われても安心できないと思うので、なるべく分かりやすくそのからくりをお話していきたいと思います。
製薬企業が日本人を集めて海外治験をやる理由
日本には沢山の医療機関があるのにわざわざ日本人を集めてイギリスやアメリカで治験をやるのには製薬企業側の事情があります。
また、海外治験に参加することで高額なお金を貰える理由もしっかりとあるので1つ1つお話をしていきます。
日本人の薬物動態のデータが欲しいから
薬は製薬企業が勝手に販売して良いというわけではなく、治験をやって有効性や安全性などのデータをしっかりと取らなければ販売することは出来ません。
効果が無い薬や危険過ぎる薬が勝手に販売されてしまったら大変なことになりますからね。
治験薬のデータを色々と取らなければいけないわけですが、その中の1つに薬物動態というものがあります。
これは、ざっくり言うと薬を服用して体の中で吸収されて便などで排出されるまでの一連の流れの事です。
この薬物動態というのは、人種差が出るものもあるため日本では「日本人の薬物動態のデータが必要である」とされています。
つまり、イギリスやアメリカで治験をやることになったとしても日本人のデータが必要ということですね。
日本で治験をやると開発が遅れてしまうから
「日本人のデータが必要なのであれば日本で治験をやれば良いのでは?」と思ったかもしれませんが、実はそれをやってしまうと治験薬の開発が遅れてしまう可能性があったりします。
最近の治験は国際共同治験といって複数の国で同時に治験が行われているケースが多くなってきています。
しかし、日本は手続きが色々と煩雑なこともあり海外と同時に「よーい、ドン」でスタートをしても出遅れてしまうことが多いのです。
製薬企業からすれば少しでも早く販売したいので、時間がかかる日本でやるよりも海外で外国人のデータと一緒に日本人のデータを集めてしまう方が効率的なのですよね。
イギリスやアメリカは日本人留学生が多いから
では海外といっても色々あるのになんでイギリスとアメリカが多いのかというと…
イギリスやアメリカは日本人の留学生が多いので他の国よりも日本人が集めやすい環境になっているからです。
出典:データで見る日本の留学(文部科学省)
データで見る日本の留学(文部科学省)に掲載されている2020年度の日本人留学生の留学先を見てもアメリカとイギリスが上位にいることが分かりますね。
臨床試験は日米欧が主導をしてきた背景があるので、欧州の中で最も日本人留学生が多いイギリスが選択されることが多いのですね!
現地で日本人の参加者が集まらなければ日本で参加者を募って海外の医療機関で治験に参加してもらうことになるのですが、それこそまさに日本で「イギリスでの治験があります!」のように募集されているということですね。
日本から海外に連れて行く方が色々とコストがかかるように思えるかもしれませんが、薬の販売が1ヵ月遅れた時の売上のロスと比べれば微々たるものです。
数百万円のコストがかかっても治験が早く終わるなら製薬企業からしたら安いものです!
なので、日本からの参加者を募集してでも早く治験を終わらせたいと考える製薬企業が多いということですね。
海外治験に参加して貰える負担軽減費が高額な理由
海外治験に参加をすると「15泊の入院で100万円以上」など、かなり高額な負担軽減費が貰えることもありますが、これだけ高額だと「何かやばいことされるんじゃないか?」と思われる方もいるかもしれません。
実はそれには物価や為替の影響が大きく関係しています。
治験に参加をした時に貰えるお金(負担軽減費)は製薬企業が決めていると思っている方も多いかもしれませんが、実は医療機関が決めている場合がほとんどです。
そのため、イギリスやアメリカで治験をする場合はイギリスやアメリカの物価に合わせて費用設定がされていることになります。
このあたりについて少し掘り下げて説明をしていきます。
物価や為替の影響
治験に参加をした時に貰えるお金(負担軽減費)は製薬企業が決めていると思っている方も多いかもしれませんが、実は医療機関が決めている場合がほとんどです。
そのため、イギリスやアメリカで治験をする場合はイギリスやアメリカの物価に合わせて費用設定がされていることになります。
それぞれの国の最低時給と為替を比較してみましょう。
最低時給 | 為替レート(2023/8/10 終値) | |
日本 | 1,041円 | – |
アメリカ | 2,232円 | 144.76円/ドル |
イギリス | 1,535円 | 182.75円/ポンド |
最低時給 | 為替レート (2023/8/10 終値) |
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日本 | 1,041円 | – |
アメリカ | 2,232円 | 144.76円/ドル |
イギリス | 1,535円 | 182.75円/ポンド |
日本はイギリスやアメリカと比較すると平均時給がかなり低いですよね。
具体的に計算をしてみるともっと分かりやすくなりますので見ていきましょう。
計算をしてみる
過去に15泊の海外治験(アメリカ)で$8,000の負担軽減費がある治験がありましたのでこれを例に考えてみましょう。
まず、$8,000ですがこれは日本円に直すと約115万円になります(2023/8/10時点)。
日本人の感覚からしたら「凄すぎる!」となるかと思いますが、アメリカ人の感覚ではどうでしょうか。
15泊の治験なので拘束時間は単純計算で384時間(24時間×16日)としておきます。
384時間で115万円なので時給換算にすると2,944円になります。
アメリカの最低時給は2,232円ですので「最低時給よりは少し良いね」くらいの感覚なのが分かりますね。
ちなみに、2023年5月時点のアメリカの平均時給は4,700円なので平均時給よりは遥かに少ないことになります。
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海外治験は「ヤバい」から負担軽減費が高いわけではない
このように為替や物価の影響もあって海外治験に参加すると日本円が沢山貰えるという仕組みになっているということですね!
薬物動態は血中の治験薬の成分の濃度を観察することになるので、入院中は採血が多くありますが、その点は日本で薬物動態を調べる治験でやることと変わりありません。
もちろん、禁酒や禁煙や激しい運動の禁止などのルールも日本と同じです。
私が海外治験に参加をした体験談
先程も少し触れましたが、私は大学生時代にイギリスのロンドンで治験に参加したことがあります。
その時の経験談を簡単にご紹介します。
英語があまり話せなくても大丈夫だった
海外治験に参加する時に結構気になるのが、「英語が喋れないけど大丈夫か…」というところだと思います。
私が参加した時には、大手外資系CROのパレクセルという会社がオペレーションに入っていて、日本語スタッフも現地入りしていました。
英語が話せなくても問題無い環境になっているので、その辺りは心配する必要はないかと思います。
英語の勉強になった
私が治験に参加をした時には外国人も一緒に参加をしていたので待機時間には外国人と話をする機会がありました。
当時は英語が得意ではなく、ネイティブに話されるとあまり聞き取れていなかったのですがその場のノリで何とかなりました(笑
待機時間は結構あって暇な時間も多いのですが、プチ留学みたいな感じで英語が自然に耳に入ってくる環境なので勉強にはなったなぁと感じましたね。
流れ作業感があった…
日本の治験に参加をすると、施設スタッフさんが結構愛想良く話をしてくれたりするのですが、私がイギリスの治験に参加をした時にはほぼほぼ無表情で流れ作業的な感じで採血を受けたりしていました。
もちろんスタッフにもよるのかもしれませんが、愛想の良さなどでいったらやっぱり日本人の方が丁寧だなと感じました。
ご飯は美味しくなかったけれど施設は綺麗だった
海外だと日本よりも少し雑に掃除がされていたりするのかなと思っていましたが、私が参加をした時には普通に綺麗でした!
日本で治験に参加をする時とあまり遜色がないほどだったので、この辺りも個人的には心配し過ぎなくてもOKだと思います。
ただ、ご飯はお米が無かったので日本人としてはお米が恋しくなるところでしたね。
電化製品が使えなかった…
これは完全に私が忘れていたのですが、日本のコンセントは100Vですがイギリスのコンセントは250Vなので変換プラグが無いと日本の電化製品は使えません。
電化製品といってもスマホの充電器とかPCの充電器とかだったのですが、重電が出来ないのはしんどすぎますよね。
私の場合は一緒に参加をしていた日本人の方に貸してもらえましたが、海外治験に参加される方は変換プラグを忘れずに用意しておきましょう!
事前検査に落ちても費用の自己負担は無かった
私は事前検査で落ちなかったのですが、1人だけ事前検査に落ちてしまった日本人の方がいました。
治験では肝機能や腎機能の数値が悪いと事前検査で落ちてしまい治験薬投与に至らないこともあるのですが、その場合にはすぐに帰国することになります。
ただ、治験薬が飲めなかったからといって交通費等は全て自己負担ということは無いのでそのあたりは問題無しです。
負担軽減費は治験薬を投与して治験を完遂した時よりも少なくなってしまいますが…
総合的に参加して良かったと思った
海外治験に参加をするまでは不安も大きかったのですが、終わってみれば海外治験に参加して良かったなと思えました。
ご飯が不味かったりスタッフさんの愛想が良くなかったりしましたが、トータルで考えればプラスの方が遥かに大きかったですね。
今となっては治験に参加をする側ではなくて治験を企画する側にいますが、海外治験に参加をした経験も役に立っていますし、良い経験でした!
実は海外治験への参加の経験は就活でもネタとして使えました!
まとめ
今回は海外治験について製薬企業目線と参加者目線からお話をしていきました。
海外治験はどうしても高額な負担軽減費に目を奪われがちで、「何かやばいことでもされるんじゃないか…」と不安な気持ちになるかと思いますが、今回お話をしたように色々な事情などがあったりします。
ネット上では色々なデマ情報も溢れていますが、皆さんには是非正しい知識をしっかりと知ってもらえたらと思います!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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