統一書式の英訳など治験に使える英語表現と注意点をまとめてみた

最近では日本で行われている治験もグローバル試験の割合がかなり増えてきました。

そのため、治験の現場でも英語で資料を作成しなければいけない機会も増えてきています。

そこで、今回は、治験関連の英語表現について簡単にまとめてみました。CRA向けではありますが、CRCさんにも共通する部分があると思います。

統一書式の英訳

本記事の英語表現は私が使用しているものですが、もちろん他の表現方法などもあるかと思います。

ですので、一例としてご覧いただければと思います。

さて、最初は言わずもがな、治験で最も使用する頻度が高い資料の1つ、統一書式について。

しかし、ネットで検索をしてもなかなか英訳が見つからないことも。

訳し方はもしかすると各社微妙に違ったりすることもあるかもしれませんが、私の経験上、「この表現を使っている方が多かったな」と思う英訳をまとめてみました。

書式番号 資料名 英訳
書式1 履歴書 Curriculum Vitae
書式2 治験分担医師・治験協力者リスト List of Sub investigators and study staff
書式3 治験依頼書 Clinical Trial Request
書式4 治験審査依頼書 Clinical Trial Review Request
書式5 治験審査結果通知書 Notification of Results of Clinical Trial Review
書式6 治験実施計画書等修正報告書 Report on Amendment of Protocol and Other Study Documents
書式8 緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書 Report on Deviation from Protocol to Avoid Immediate Hazard
書式9 緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書 Notification of Deviation from Protocol to Avoid immediate Hazard
書式10 治験に関する変更申請書 Application for Modification of Clinical Trial
書式11 治験実施状況報告書 Report of Clinical Trial Implementation Status
書式12 重篤な有害事象に関する報告書(医薬品治験) Serious Adverse Event Report
書式14 重篤な有害事象及び不具合に関する報告書(医療機器治験) Serious Adverse Event and Device Malfunction Report
書式16 安全性情報等に関する報告書 Report on Safety Information,etc
書式17 治験終了(中止・中断)報告書 Report on Completion (Termination・Discontinuation) of Clinical Trial
書式18 開発の中止等に関する報告書 Report on discontinuation,etc. of Clinical Development
書式19 重篤な有害事象及び不具合に関する報告書(再生医療等製品治験) Serious Adverse Event and Device Malfunction Report

統一書式以外で使えそうな英語表現

統一書式以外にも治験に出てくる用語は沢山あり、英語でどのように表現をしたら良いのか分からない用語もあるかと思います。

ここではその中の一部ではありますが、いくつかピックアップしてみたいと思います。

日本語 英訳
保険外併用療養費 Medical expenses combined with treatment outside Insurance coverage
検査・画像診断料 All fees for testings and diagnostic imaging
同種同効薬 Medicines with the same indication as investigational products
負担軽減費 Patient travel fee
被験者への支払に関する資料 Documents about payment to subjects
被験者の健康被害の補償について説明した文書 Documents explaining the compensation for health damage
被験者の募集の手順に関する資料 Material concerning procedures for subject recruitment
被験者の安全等に係る資料 Material concerning the safety of subjects
本審査 IRB’s review
迅速審査 Expedited review

保険外併用療養費については上記の英訳ですが、以下の緑の部分と併せて使うと保険外併用療養費支給対象外経費のことを指しますので、適宜使用してみても良いかと思います。

CRA confirmed that this site requested payment for combined medical expenses not covered by health insurance, “Medical Expenses Combined with Treatment Outside Insurance Coverage” from the initial informed consent date to the last follow-up visit date.

よく見かける誤解しやすい表現

ここでは、モニタリング報告書を書くときに気を付けていたポイントや逆に自分が読み手になった時に気になったポイントをいくつかまとめてみました。

人によっては気にならなかったり間違いという程ではないものもありますが、「へ~、そうなんだ」程度に眺めていただければと思います。

will」と「be to不定詞」

CRAは、施設で色々な確認をするわけですが、1日で確認が終わらず次回に確認が繰り越しになることもあります。

そのような時にモニタリング報告書には、「次回、XXを確認する」というAction Itemを立てると思いますが、その際によく間違って使用される表現が「will」になります。

CRA will confirm XX at the next visit.

will」は、自身の意思や一般的な未来を表す表現ですが、CRAが次回確認しなければいけない事項は、自らの意思で決めるものではなく、PRTGCP上、確認しなければいけないことで、既に決定している予定になります。

その為、be to不定詞を使用した以下の表現の方がより適切になります。

CRA is to confirm XX at the next visit.

会話などでは、willを使うことが多いので、間違いとまでは言えないかもしれませんが、報告書に記載する表現としてはbe to不定詞の表現の方が多く見かける印象です。

日本語でも話し言葉と報告書の文章は違うと思うのですが、そのような類のものと考えて良いかと思います。

「check」と「confirm」

CRAは様々な資料を確認しますが、その時によく「check」が使用されていることを見かけます。

CRA checked ISF on the Site Initiation Visit.

checkは、確認するといってもニュアンス的には「しっかりと間違いが無いかを確認する」というよりも「さらっと確認する」くらいのニュアンスになります。

当然、CRAとしてはさらっと確認するだけではダメですので、しっかりと間違いが無いかを確認するというニュアンスである「confirm」を使用する方が適切です。

CRA confirmed ISF on the Site Initiation Visit.

また、状況によっては「真実かどうかを実証する」というニュアンスのverifyを使用できます。

私は適格性確認など、症例関連の確認をする際にはその適格性判断か妥当かどうかを確認した時にはverifyを使用しています。

CRA verified the eligibility of the subjects.

file」と「store

CRAは、資料が保管されていることを確認したり、治験薬が適切に保管されていることを確認したりと、「保管」を確認する場面もよくあります。

その時によく見かけるのが「store」。

store」は、治験薬や検査キットが保管されていることを示すには良いのですが、資料が保管されているという意味では「file」の方がより適切だと言えます。

CRA provided protocol training to the PI and SubI and confirmed that the training log was filed in the ISF.

CRA confirmed that IP was properly stored in the refrigerator with the calibrated data logger.

読みやすいモニタリング報告書のために

モニタリング報告書では、日本語で記載する場合もそうなのですが、英語で記載する際もなるべく短く簡潔に記載をした方が読み手も読みやすい報告書になります。

あまり多用はされていないように思いますが、やはり時々見掛けたりすることもあるので、一部の例を載せておきたいと思います。

日本語 簡潔な表現 長い表現
~について about In reference to
As regards
~と and As well as
また~ also In addition to
なぜなら because By virtue of the fact that
Considering the fact that
Due to the fact that
~しなければならない must There is a need for
同意する agree Form a consensus of opinion
approximately As estimated
~の時 when At the same time as
At the time of
~の前 before Prior to
~の後 after Following from
~の間 while During the course of

まとめ

今回は息抜き的に少しコンセプトを変えた記事でした。

本当は書き始めたら際限がないくらい色々なポイントがあるのですが、長すぎても疲れてしまうと思いますので、今回は思い付いた順に書き出してみました。

現役でばりばり英語でモニタリング報告書を書いている方たちにとっては当たり前の内容でつまらなかったかもしれませんが、これからCRAになって英語を使っていく方にとって、ほんの少しでも将来役に立てば嬉しいです。

実際に「英語でモニタリング報告書を書く」と思うと、「本当に着いていけるのかな…」、「いや…自分書けないかも…」と不安に思ってしまう方もいるかもしれませんが、出てくる用語や言い回しは大体お馴染みのものばかりですので、そのうち慣れていくので過度に心配しなくても大丈夫です!

それに今の時代はDeepL先生もGoogle先生もいるので、読み書きに関しては相当強力なサポートになるはずです。

ちなみに私が弊社の新人には、「ちけ文&ちけ単 治験に役立つ医学英文事例集 CRC&CRAとして国際共同治験に対応する」をおすすめしています。

どちらかというとCRCさんよりの英文集ですが、CRAでも使える表現が結構あるので、本屋さん等で見かけたら少し見てみると良いかもしれません。

 

英語以外にCRAやCRCさんに役に立ちそうな本はこちらの記事にもまとめてありますので、お暇な時にでも是非!