サスメドの2025年6月期第2四半期を臨床開発職目線でまとめてみた

サスメドは、2024年8月30日にサスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリの製造販売承認事項一部変更承認申請をしましたが、今は承認取得のIRがまだかまだかと待ち望まれている状況かと思います。

そのような中で発表された2025年6月期第2四半期の決算について臨床開発職目線から見ていきたいと思います。

のりすのりす

製薬業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は6,400人程。最近も相変わらず厚労省やPMDA対応に追われる日々を過ごしています。。

2025年6月期第2四半期決算が発表された時点での状況

2025年6月期第2四半期決算が発表された時点での状況

2024年1月29日にサスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリの保険適用希望書の取り下げがあって以降、「いつ保険適用希望書を再提出して保険収載されるのか」というのがサスメドの株主の大きな関心のポイントになっているかと思います。

保険適用希望書を再提出するためには、まず製造販売承認事項一部変更承認申請(以下、「一変申請」)を出して承認を取得する必要があります。

一変申請は、2024年8月30日に提出されましたがそれから約5.5ヶ月が経過しているためヤキモキしている状況が続いている…というのが、2025年6月期第2四半期決算時点での状況と言えるでしょう。

前回記事での一変申請の承認時期の推測

一変申請などの薬事承認申請を出すときには、申請前に概ねのスケジュール感や申請内容の共有をPMDA(医薬品医療機器総合機構)とします。

のりすのりす

PMDAは、厚生労働省のもとで医薬品や医療機器などの審査業務を担う独立行政法人です。

そのため、概ねの承認取得時期は申請者(今回はサスメド)も分かっているのですが、詳細については実は申請者もその時にならなければハッキリ分からないということが多々あります。

前回の第1四半期の決算の記事では、PMDAより公表されている審査期間の目安である6ヶ月(180日)と2020年度~2024年度に行われた一変申請の審査期間の中央値である136.5日から大体年明け頃には承認になるだろうと推測をしました。

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2024年8月30日に一変申請をしたので、2025年1月14日~2月26日あたりが目安となりますね。

現時点での一変申請の状況

一変申請は変更内容により「報告」となるか「審議」となるかに分岐します。

今回のような一変申請は前例が無いため正直どちらに該当するか予測しにくいのですが、新規アルゴリズムの導入や重要な機能追加には該当しないと考えられるため、「報告」になるのではないかと推測していました。

そのような中、2月6日のプログラム医療機器調査会において報告事項として、議題1「疾病治療用プログラム医療機器の臨床的位置付け及び治療スキームの変更を伴わない承認事項の変更について」と議題5「調査会報告品目について」が議題として挙がったため、時期的にもサスメド関連かと思いました。

しかし、同じ2月6日にプログラム医療機器調査会にて審議された「ENDEAVORRIDE(エンデバーライド)」と「CureApp AUD 飲酒量低減アプリ」が共に2月18日に正式に厚生労働大臣より承認を得たとのことが分かった時点で2月6日にはサスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリの報告ではなかった可能性が高まりました。

今後の一変申請についての見通し

審査期間の目安は申請から6ヶ月であるため2月26日が目安とはなりますが、前例が無い一変申請なだけに目安通りにはいかないのかもしれません。

ただ、今回のような事例の場合は特に一変申請前にPMDAとの事前面談をしてから申請をしていると思いますので「一変申請で承認されなかった」という事態が起こることはほぼ無いはず…

薬事承認申請についてある程度理解している人であれば、一変申請の結果よりも問題はその先の保険適用希望書再提出後と思っている方も多いかと思います。

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とはいえ、一変の結果がいつになるのかあまり見えないのはもどかしさがありますが…

最近のサスメドの株価の推移

  • 2024年1月12日
    終値:1,382円
  • 2024年1月15日
    終値:1,082円(S安)
    医療技術評価分科会の審議資料でサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリについて「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」と記載され、場中にストップ安へ。
  • 2024年1月26日
    終値:613円
    第581回中医協総会にてサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリの保険適用が見送られたことが確定。取引終了後に医療機器のインターネット広告規制緩和のニュースが流れる。PTSの株価上昇。1月29日(月)には保険適用希望書を取り下げ。
  • 2024年8月5日
    終値:375円
    日経平均の歴史的暴落があり、サスメドについても激しく売られる展開に。
  • 2024年9月2日
    終値:676円(S高)
    8月30日(金)の後場終了後に一変申請を提出したことを受けS高へ。ただ、9月3日、4日と売られ終値587円となった。
  • 2024年11月11日
    終値:572円
    11月8日(金)に2025年6月期第1四半期決算が発表された。目立つ進捗は無く株価も荒れず。
  • 2025年2月17日
    終値:623円
    2月14日(金)に2025年6月期第2四半期決算が発表された。2月12日にあすか製薬と締結している共同研究契約のマイルストン達成(1億円の受領)や業績上方修正(主に採用費の圧縮、臨床試験のスケジュール変更)を発表するも株価にあまり影響を及ぼさなかった。

今までの状況の詳細については過去の記事にまとめてありますので、ご興味があればそちらもご覧ください。

2025年6月期第2四半期決算の概要と感じたこと

2025年2月14日にサスメドの2025年6月期第2四半期決算が発表されました。

ここからは、2025年6月期第2四半期 決算短信2025年6月期第2四半期 決算説明資料に掲載された情報の概要と臨床開発職目線で感じたことをまとめていきます。

開発パイプライン

2024年11月8日から2025年2月14日までのサスメドのパイプラインの進捗状況_PC用
2024年11月8日から2025年2月14日までのサスメドのパイプラインの進捗状況

開発パイプラインの進捗としてはSMD106(月経前症候群・月経前不快気分障害)の進捗がありました。

その他については明確な進捗報告はされていませんでしたが気になった点を含めて見ていきたいと思います。

SMD106(PMS/PMDD用アプリ)

PMS_PMDD用アプリの進捗状況

SMD106(PMS/PMDD用アプリ)は、2025年1月28日のプレスリリース「⽉経前症候群・⽉経前不快気分障害を対象とした治療⽤アプリの特定臨床研究の開始」で特定臨床研究がスタートしたことが発表されました。

また、2025年2月12日のプレスリリース「あすか製薬株式会社との共同研究開発及び販売に関する契約に係るマイルストン達成のお知らせ」より、探索的試験用アプリの利用が開始されたことに伴い1億円のマイルストン収入が入ることが発表されました。

新たに開始された探索的試験ですが終了予定日が2026年6月30日となっているため、治験に進むのは2027年に入ったからなのかもしれませんね。

のりすのりす

一般的な治験ではあまりハードルにはならないのですが、この試験は18~45歳の女性が対象のため、除外基準に「研究期間中の妊娠を希望する場合」が入っているのはもしかして障壁になるのでは?と感じました(設定をするのは妥当なので致し方ないのですが…)。

本案件は、マイルストーン収入として総額最大 25億円と製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを得ることが決まっているため今後の展開が楽しみなパイプラインの1つです。

最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 25億円 3億円 22億円
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明
最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 25億円 3億円 22億円
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明

SMD403(耳鳴り用アプリ)

耳鳴り用アプリの進捗状況

2022年11月9日に発表された杏林製薬との共同研究開発及び販売に関する契約により、開発進展などに応じたマイルストーン収入として総額最大 6億円(判明分)と製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを得ることが決まっています。

SMD403は前回の記事で2025年1月あたりにLPO(Last Patient Out)が完了して総括報告書の作成に進んでいくものと推測していました。

LPO後にどれだけ迅速に総括報告書をまとめあげられるかによりますが、私の経験上はLPO後にデータ固定をして2、3ヶ月くらいという感覚です。

杏林製薬としてはポジティブな結果なのであればすぐに治験を開始したいと考えるはずですので、ポジティブな結果が出たら楽しみな案件の1つです。

のりすのりす

特定臨床研究完了後には治験開始に向けてPMDAの対面助言の準備等大変かと思いますが、2025年内に治験開始が出来たら同業者として尊敬します!(杏林さん、応援しています!)

次の決算の時に「次試験に向けて準備中」にステータスが変わるかが注目ですね。

最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 6億円(判明分) 2億円 4億円(判明分)
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明
最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 6億円(判明分) 2億円 4億円(判明分)
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明

サスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリ

サスメドの不眠症概要アプリの進捗状況

サスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリは、先ほども少し触れた通り現在は一変申請の承認待ちのステータスです。

詳細については先ほど触れた通りです。

また、2024年12月23日に日本認知療法・認知行動療法学会と日本プライマリ・ケア連合学会からの共同声明として「不眠症の認知療法・認知行動療法の診療報酬化に関する共同声明」が出されました。

内容は、一見するとサスメドの不眠障害用アプリについて懸念を示しているように見えるかもしれませんが実は私はそのようには見えませんでした。

というのも、日本睡眠学会を委員長として作成された「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ 適正使用指針」の委員には日本認知療法・認知行動療法学会と日本プライマリ・ケア連合学会の先生方が含まれており、学会との連携がうまく取れていないとも考えにくいのではないかと思っています。

これは医薬品でもそうなのですが、通常保険適応を取りにいくのであればKOL(Key Opinion Leader)の先生方や関連学会に話を通しておくのはこの業界のお作法のようなものなのです。

そのため、それを全くしないで話を進めることはこの業界で仕事をしているのであれば考えにくいです。

ではどうしてこのような声明を出したか…個人的にはこの声明で最も学会が主張したかったのは以下の部分ではないかと推察しています。

当該アプリによる治療が期待通り進捗しない場合や有害事象が生じた場合等に、不眠症の認知行動療法に習熟した医療者が対応できる体制を整備しておく必要があります。

適正な医療の確保の観点から、対面による不眠症の認知行動療法を実施できる体制が不可欠と考えます。

以上から、当該アプリを診療報酬収載する際は、対面による不眠症の認知行動療法の診療報酬収載を同時に行うことが適切と考えます。

学会側の立場になってみれば、強いエビデンスを有している対面による不眠症の認知行動療法について診療報酬収載を目指すのは自然であり、サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリの議論をしているまさにこのタイミングこそが診療報酬収載の好機であると思われます。

サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリが保険適用されるのであれば「対面による不眠症の認知行動療法も」という主張はしやすくなるため、適正使用指針の作成に協力した点も納得できます。

長くなりましたが、上記より例の声明はサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリの保険収載の障壁とはならないのではないかというのが私の見方です。

のりすのりす

本記事を執筆するにあたり両学会が記載されている対面による不眠症の認知行動療法についても拝見させていただきました。
個人的には、学会が仰る通り臨床的意義は高く強いエビデンスが示されているため、両学会の主張がしっかりと通ることを願っています。

サスメドの株主からすると両学会が横やりを入れてきたように見えるかもしれませんが、落ち着いて冷静に分析をしてみることも重要なのかもしれませんね。

本件は、マイルストーン収入の額が大きいので今後の進捗がどのようになるかが楽しみなパイプラインと言えるでしょう。

最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 47億円 6億円 41億円
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明
最大総額 受領決定 残り
マイルストーン収入 47億円 6億円 41億円
ロイヤリティー収入 不明 不明 不明

まとめ

上記以外にも上方修正が出ていましたが、インパクトが大きいものではないので特に本記事では触れていません。

人件費の圧縮については、確かに最近サスメドさんからのオファーが少なくなったなぁと思っていたので決算説明書に記載している通りリファラルが順調なようですね。

その他、アキュリスファーマの治験でブロックチェーン技術を利用したモニタリングについても実施されており、臨床開発職としてとてもとても興味を持っています!

私のブログは多くの臨床開発職の方にも読んでいただいているので、開示可能な資料があれば当ブログでも臨床開発職向けに記事を書かせていただきますのでお声掛けいただきたいくらいです!

サスメドは制度変更の過渡期の影響をモロに受けてしまっているので非常に辛い状況かと思いますが、時間はかかりながらも最終的には保険収載まで辿り着けると思っていますので心から応援をしています。