CRAには論文知識のアップデートは必要なのか?経験談をお話してみます

最近、ツイッター上で「CROが自発的に論文情報を調べたりすることが不足しているのでは?」という問題提起がされTL(Time Line)でも様々な意見が出ていました。

この件について、私の意見を聞かせてほしいというご要望をDMで何件か頂いているため、私見にはなりますが本記事でまとめてみようと思います。

はじめに

複数ご連絡が来ていますが、最もメインなご質問は「CRAには論文知識のアップデートは必要なのか?」という趣旨であったので、そちらの内容をメインとして記事を書いています。

「CROはなぜ論文の情報を調べないのか?」についても聞かれてはいますので、サブ的位置付けで組み込んでいます。

さて、実はその議論の少し前に臨床開発職を目指す就活生向けに行っている「第2回 就活生のための臨床開発セミナー」内でCRAと論文について話題を出していました。

そのような背景もあり、実は就活生の方からも複数のご連絡を頂いています。

タイミング的に同じような話題であったため、ご連絡を頂いた方以外にも少し困惑してしまった就活生の方もいるかもしれませんね。

セミナーではあまり重点を置いておらず、サラッとお話をしたただけでしたので、ここではもう少し詳しくお話をしてみようと思います。

ちなみに、「第2回 就活生のための臨床開発セミナー」でお話した内容は要約すると以下のようなものでした。

セミナー内でお話した概要
私が考える「できるCRA」の一例を紹介したスライド。
選択除外基準について、依頼者見解と医師見解が対立したシチュエーションを想定。
このシチュエーションでは医師やCRCさんの主張を汲み取るというコミュニケーション能力が重要。
依頼者見解が間違っている可能性もあるため、時にはCRO(CRA)も依頼者とディスカッションが必要なこともある。
その時に論文の情報など根拠を持って説明すると説得力がある。
そして、それが出来たとしたらその人は「できるCRO(CRA)」だなと感じる。

依頼者からは無理矢理な解釈であったり無茶ぶりな要求されることもあるので、それをしっかりと食い止めることも大切。

サイエンスの話題であれば、論文などを根拠にした方が説得力があり必要に応じてそこまで準備できるというのが理想形…というお話をしました。

その他、症例プッシュや医師と医学的なディスカッションをする際には役に立つので、なるべく論文やガイドラインの情報をフォローしておきたいけれど、様々な理由で出来る人が少ないというのが現状という趣旨のお話でした。

それでは、「CRAには論文知識のアップデートは必要なのか?」という本題について私の考えを書かせていただきます。

結論:BetterではあるけどMustではない

結論:BetterではあるけどMustではない

CRAの仕事は、最新の論文の情報を頭に入れていなくても仕事はできるため、Mustではないだろうと考えています。

また、論文や競合試験の状況や最新の治療方針などを頭に入れておくことで、モニタリングの質が上がったり進捗が良くない時の要因分析に役に立つこともあるため、Betterであると考えています。

だがしかし…私がCRAをやっていた時にどこまでやっていたかというと…正直本気では調べられていなかったのが現実ですね。

論文情報までしっかりフォローできているCRAは本当に凄いと思っていました。自分には無理だったな~。

情報をインプットした方が良いのは分かっていたけれど…

チームでの勉強会はよくやっていたので、インプットは多少なりともあったとは思いますが、やはり自発的に情報を集めにいっていないせいか、私が頭が悪かったせいか、さほど深くは理解できていなかったと思います。

自分で情報を集めるために論文を自発的に読む方が良いのは分かってはいたのですが、やはりMustの対応を優先的にしていたので、論文まで手が回らなかった…(正直に言うと、あまり読むモチベーションも無かったです…)

新人の頃の私は、チームで情報をシェアすることや論文を読むことは漠然と「その方が良いのだろうな」という程度で、具体的にどの程度役に立つのかがイメージできていなかったのだと思います。

医師面会

CRAとして、先生と数えきれないほど面会をしてきましたが、先生の方から最新の論文のことやその他学術的なことについて質問されたことはほとんどありませんでした。

それも拍車をかけたのか、心のどこかで「別に論文読まなくても何とかなるのでは…?」と思い始め、論文からの知識のアップデートの優先順位はしばらく低空飛行でしたね。

6年目での転機

そんな感じで低空飛行のモチベーションでしたが、6年目を迎えた時に担当施設で症例が全然入らないという壁にぶち当たってしまいました。

なぜだろう。語り始めると長くなるのでまとめちゃいます。

当時肺がんの試験を担当していた私は、シスプラチン承認当時、2.5 L~3 L 以上の補液が約 10 時間以上かけておこなわれていたハイドレーションからショートハイドレーションに切り替わったことまではフォローしていましたが、”ショートハイドレーションの成績が近年で特に良くなっている”ということまではフォローできていませんでした。

ショートハイドレーションでは腎毒性がもう少し出るものだと思っていましたが、そこまでではなかった。

詳しくは特定に繋がるので控えますが、実はこの変化が症例のリクルートメントにも影響を及ぼしており、その察知に遅れてしまい苦い思いをしました。

この失敗から、最新情報のアップデートの重要性を認識し直して頑張って知識をアップデートしていこうという気持ちに切り替わったのだと思います。

日々の業務に追われて出来ないことも多々ありましたが、可能な限り頑張ろうとしていましたね。

チーム(CRO)というよりは私個人(CRA)の意識が変わった転機でした。

人それぞれゴールへのアプローチが違う

例えば、「質の高い医薬品を患者さんの元により早くお届けしたい」というゴールがあったとします。

そのゴールに対してのアプローチ方法は人それぞれだと思うのですよね。

最新の論文情報などをアップデートしておいて、それを武器に達成しても良いし、それよりもガンガン施設を回して体力勝負で多くの施設を回すのだってありだと思います。

自分に合ったやり方でゴールを目指せば良いと思うんです。

論文の最新情報などをアップデートしていてそれを活かして仕事をしている人がいたら単純に「忙しい中よく勉強しているな~、凄いCRAだな~、自分はほとんど出来なかったのに能力高いな~」と感じます。

論文の最新情報は疎いかもしれないけど、体力があっていくつもの施設を担当できるというCRAだって「私にはそんなタフに働くのは無理だ…凄いな~」と感じます。

”CRA1人あたりの担当施設数が少なくてコスパが悪い”と日本はグローバルから思われているわけで、それを体力という側面から支えるのだって凄くないですか?

私は新人の頃は体力全振りでいっていましたが、意外にも論文を読んでディスカッションすることの楽しさも感じたので論文を途中から読み始めました。

やり方は合う合わないがあるので、自分が必要だと思えば読んだ方が良いと思いますし、ちょっと違うなと思えば別のやり方で全然OKじゃないですかね。

CROが論文を自発的に調べないことについて

CROが論文を自発的に調べないことについて

こちらの話題についても意見を求められていたので、お話しますね。

この話題を話す時に1つ意識をしておいた方が良いのは、先ほどはCRAという個々の単位でお話をしていましたが、CROの場合は組織としての単位であるということなのかなと思います。

それでもって、「なぜCROは自発的に論文を調べないのか」の問いについては以下のような流れで判断されているからなのではないかと考えています。

CROが”自発的に論文を調べない”という結論に至るまで
CROが論文の内容について勉強会などに時間を割くか割かないかは、業務に必要か否かに依存する。
そして、CRAの業務においてはbetterではあるがmustではないと考えている。
とすると、やはり優先順位としては下がる。
つまり、費用対効果が低いアクションとして認識されている。

CROにとって論文を読むことは費用対効果が低いと認識されている可能性が高く、論文を読むことを求めるのであれば、論文を読むことについて費用対効果が高いアクションなのだと思ってもらう必要があるのかなと。

その必要性に納得をすれば、組織としてそのアクションに投資(人件費をかける)をするのではないでしょうか?

私の認識としては、論文を読むことによって得られるプラスの要素はCRA個々によって大きく異なっていて、効果がある人もいれば薄い人もいる。

そして、平均すると、効果が薄い人の方が多いのだと思っています。

さらに、論文の内容が本当に必要であった場面がどれだけあるかというと、やはりかなり限られたシチュエーションでしかなかったですね。

論文の情報をキャッチアップするというのは、結構労力がかかりますよね。CROの場合は、有料論文へのアクセスも制限されるでしょうし。

それだけ大変な思いをして工数をかけて、それで得られるものが少ないのであればやはりそこへの設備投資は後回しになる(経営学的にもそうすべきだとすら思います)。

であれば、やはり組織としては費用対効果が低いアクションには投資しないことには頷ける。

「効果が薄い人の方が多いかもしれない」というテーマについての議論はまた別なのでここでは深くは触れません。

ただ、先ほども少しお話した通り、ゴールの設定やゴールへのアプローチ方法は人それぞれなので、均衡が取れていればさほど問題だとは思っていません。

まとめ

CRAに論文の知識が必要か、そしてなぜCROは論文について自発的に調べないという選択をするのかについての私なりの解釈をお話させていただきました。

この問題について考えながら、論文などの知識を重要視しているCRAとその他の要素(例えば体力勝負など)を重要視しているCRAは将来的には分岐させるのもありなのかもしれないと思いました。

「論文などの知識を重要視しているCRA」は今でいう所のMedical Monitor寄りで現状はMDが担当していることが多いと思いますが、そこをもう少し職務範囲を広げて、症例リクルートメントなどの戦略的な部分を「論文などの知識を重要視しているCRA」にやってもらうなどなど…

もし私がCRAの時代に戻って症例リクルートメントについて戦略的に考察するチームがあったのであれば結構興味があってチームへの配属を希望していたと思います(プロマネよりももう少し実践的なイメージ)!

のりす製薬にはそういう部署もあっても良いと思っている…(ボソボソ。訳:みんな来て!!)