サスメドは、2024年の1月29日に保険適用希望書の取り下げのIRが出されてから「いつからサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリが販売開始できるのか」辺りが注目されています。
そのような状況の中、2025年6月期第1四半期の決算が2024年11月7日に発表されたため、その内容と今後の展望予測についてまとめていきます。
製薬業界でかれこれ10年以上働いています。X(旧Twitter)でのフォロワー数は6,200人程。最近は薬事承認申請関連の業務で多忙を極めています…
※本記事は筆者の個人的な見解も含んでいます。投資は自己責任でお願いします。
2025年6月期第1四半期決算が発表された時点での状況
2024年6月期決算が8月9日に発表されましたが、その3週間後の2024年8月30日にサスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリの製造販売承認事項一部変更承認申請が行われたことがプレスリリースで発表されました。
参考:「サスメド Med CBT-i®不眠障害用アプリ」製造販売承認事項一部変更承認申請のお知らせ
業界では、「製造販売承認事項一部変更承認申請」と長々と言わずに「一変申請」と言うので、当記事でも以下はその表現を使用します。
この段階では、「取り下げをした保険適用希望書をいつ再提出するのか」ということを意識していた方が多かったわけですが、Xなどを見ていると「一変申請の提出」と「保険適用希望書の再提出」を混同されている方が多かったように感じました。
この辺りの制度は慣れていないと分かりにくいかもしれませんが、一変申請は薬事承認申請というスキームのお話であって、保険適用希望書はまた別のスキームのお話です。
つまり、薬事承認がされたとしても薬価が付かない…ということもあるということですね。
一変申請をしたことは、確かに進捗としては進んだことを意味していますがまだまだ途中段階のお話であり一変申請が受理された後に保険適用希望書を再提出することになるので、これからが本番と言っても良いでしょう。
詳しくはまた後述していきます。
2024年1月からのサスメドの株価推移
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2024年1月12日(金)終値1,382円
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2024年1月15日(月)終値1,082円(S安)医療技術評価分科会の審議資料でサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリについて「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」と記載され、場中にストップ安へ。
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2024年1月26日(金)終値613円第581回中医協総会にてサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリの保険適用が見送られたことが確定。取引終了後に医療機器のインターネット広告規制緩和のニュースが流れる。PTSの株価上昇。1月29日(月)には保険適用希望書を取り下げ。
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2024年8月5日(月)終値375円日経平均の歴史的暴落があり、サスメドについても激しく売られる展開に。
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2024年9月2日(月)終値676円(S高)8月30日(金)の後場終了後に一変申請を提出したことを受けS高へ。ただ、9月3日、4日と売られ終値587円となった。
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2024年11月11日(月)終値XXX円(記事は11/10作成のため後日更新)11月8日(金)に2025年6月期第1四半期決算された。
今までの流れなどについては、以下の記事にもまとめています。
サスメドは、今年の1月29日に保険適用希望書の取り下げのIRが出されてから、「いつ保険適用希望書の再提出がされるのか」、「いつからサスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリが販売開始できるのか」辺りが注目されています …
2024年1月15日の終値1,383円から下落を続けていたサスメド株でしたが、医療機器のインターネット広告規制緩和のニュースが流れ1月29日はストップ高の713円を付けました。 ただ、同日の取引終了後にサスメドより保険適 …
2025年6月期第1四半期決算の概要と感じたこと
2024年11月8日にサスメドの2025年6月期第1四半期決算が発表されました。
ここからは、2025年6月期第1四半期 決算短信と2024年6月期第1四半期 決算説明資料に掲載された情報の概要と臨床開発職目線で感じたことをまとめていきます。
開発パイプライン
まずは開発パイプラインの進捗状況ですが、前回の決算時(2024年8月9日)から今回の決算時(2024年11月8日)までの約3ヶ月間でSMD403(耳鳴り)とSMD107(持続性知覚性姿勢誘発めまい)の2つにおいて進捗があったようです。
そのうち、耳鳴りの特定臨床研究について詳細に調べてみたところ、特定臨床研究の被験者登録は少なくとも9月4日の時点では完了していたことが分かりました。
最終の被験者の適格性の確認日がいつなのかは分かりませんが、試験デザインとしては16週間の治療用アプリの使用をするはずですので、仮に9月4日に適格性が確認されたとすると、そこから4ヶ月なので2025年1月あたりにLPO(Last Patient Out)が完了して総括報告書の作成に進んでいくものと推測できます。
次のステップに進むためには、製薬メーカー視点としては総括報告書の内容を見て決めたいところかと思うので、来年の本決算頃までには何かしらの動きがあるのかなと勝手に予想しています。
2022年11月9日に発表された杏林製薬との共同研究開発及び販売に関する契約により、開発進展などに応じたマイルストーン収入として総額最大 6億円(判明分)と製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを得ることが決まっていますので注目の開発パイプラインですよね。
最大総額 | 受領済 | 残り | |
マイルストーン収入 | 6億円(判明分) | 2億円 | 4億円(判明分) |
ロイヤリティー収入 | 不明 | 0円 | 不明 |
最大総額 | 受領済 | 残り | |
マイルストーン | 6億円 (判明分) |
2億円 | 4億円 (判明分) |
ロイヤリティー | 不明 | 0円 | 不明 |
将来的にマイルストーン収入が期待できるもう1つの開発パイプラインであるSMD106(産婦人科領域)については、今回では進捗が報告されていませんでしたが今後に期待です。
アキュリスファーマのPhaseⅢ試験
アキュリスファーマは、日本のドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消の先駆者となることを目指している製薬メーカーでサスメドのブロックチェーン技術を利用したモニタリングを治験に導入して実施しました。
2024年10月21日には、「アキュリスファーマ、ナルコレプシー患者を対象としたpitolisantの国内第Ⅲ相臨床試験で良好な解析結果を示す」というニュースリリースが出され治験が無事に完了したことが報告されています。
良好な解析結果とのことですので、次に薬事承認申請に向けて準備が進められているはずです。
ブロックチェーン技術を応用したモニタリングについては、論文等が出される可能性もありますが、臨床開発職目線では薬事承認申請後のPMDAによる信頼性調査で指摘を受けるかどうかというポイントが非常に気になります。
ここで問題無く信頼性調査を通過することができれば、前例ができるので他の製薬メーカーへの強いアピールポイントにも繋がるはずです。
私のプロジェクトでも可能であれば実装をしてみたいとも思っていたりします。
ブロックチェーン導入に際しては、施設側の理解を得る必要もあるので制度上の問題はクリアできたとしても、オペレーション上のハードルを越えていけるかどうかという点も併せて議論が進んでいくのでしょうね。
今後の注目ポイント
今後の1番の注目ポイントとしては、引き続き「保険適用希望書の再提出はいつになるのか」というところかと思います。
本記事の冒頭で少し触れましたが、現在は薬事承認に関するスキームの中で一変申請を出している段階で一変申請が承認されれば保険適用希望書の再提出へと進んでいくことになります。
一変申請承認→保険適用希望書再提出→保材専→中医協→価格決定になります。
では、一変申請はいつ承認されるのか…というところが気になるところなのでその辺りをお話していきます。
まずは、今回の場合は一変申請なのでPMDAより公表されている審査期間の目安位は6ヶ月(180日)となるかと思います。
次に、2020年度~2024年度の実際の一変申請の審査期間を調査したところ以下の結果となりました。
n | 最大値 | 最小値 | 平均値 | 中央値 |
44 | 363 | 33 | 159.5 | 136.5 |
n | 最大値 | 最小値 | 平均値 | 中央値 |
44 | 363 | 33 | 159.5 | 136.5 |
今回のサスメドのような理由で一変申請をするのは恐らく初となるので、今までの実績がどれほど参考になるのか…というところですが、仮に中央値の137日だとすると一変申請の承認時期は2025年1月14日ということになります。
この推測はほぼ当てにはならない気もしますが、個人的な感覚では「年明け頃かな~」くらいの気持ちで考えています。
まとめ
今回はサスメドの2025年6月期第1四半期決算についてまとめていきました。
最近は衆議院議員選挙があったり米国大統領選挙があったりとビックイベントが立て続けに実施されていましたが、年末にかけては少し落ち着く頃合いでしょうか。
サスメドにとっては、ちょうど制度改革の過渡期にあたってしまい多大な影響を受けてしまいましたが、プログラム医療機器の今後の発展のことを考えると厚労省でも柔軟に対応していただくことを望んでいます。
あまりに厳しいと後続のプログラム医療機器の開発が躊躇されてしまい、機器だけではなく医薬品開発の発展の阻害にも繋がり兼ねないので一臨床開発職として良い方向に進むことを切に願っています。