薬剤師を離れてからブランクが10年、20年となると、しっかりと復帰できるか怖いなと思う方もいるのではないでしょうか?
日々色々な新薬が開発されているため、現場を離れているとどうしても知識がアップデートできていなかったり忘れていることも多々ありますよね。
そこで、今回は産休・育休でブランクを経験された薬剤師のチャイさんにお話をお伺いしていきます!
薬剤師のブランクからの復帰におすすめの勉強本5選
薬剤師としてのブランクが10年、20年と長くなればなるほど復職が心配になる方も多いかと思います。
復職前に少しでも勉強をしておくと気持ち的にも落ち着いて復職をすることができるため、ここでは勉強はもちろん、復職後にも役に立つおすすめの本を5冊ご紹介していきます。
治療薬マニュアル
薬剤師であればご存知の方も多い本だと思いますが、この本のいいところはとにかく圧倒的な情報量があるところです。
後発医薬品も含めほぼすべての医療用医薬品の情報があり、作用機序だけでなく警告・禁忌・副作用等の安全性情報も収載されています。
さらに、添付文書に忠実な情報のため確実な情報を入手できるだけでなく専門医の臨床解説が載っており適応外処方について勉強することができます。毎年最新版が出版されるため新薬や添付文書改訂の情報にもついていくことができます。
AG(オーソライズドジェネリック)が一目で分かるようになっているところも嬉しいですね!
読むための本というよりは辞書としての活用をすることが多い本だと思いますが、休職中や復帰前にパラパラ流し読みしてみると、知らない間に発売された新たな系統の薬を発見したり、既存の薬であっても用法容量の変更や投与禁忌事項の追加などに気が付くことができるかもしれません。
調剤薬局や病院の薬剤部で常備したものを勤務中に使うのもいいとは思いますが、購入者限定でWeb電子版がついてくるためマイブックとして一冊手元に持っておくことをおすすめしたいです。
Web電子版はスマートフォンでも閲覧可能であり、薬価改定など書籍発行後の情報提供も充実しています。
添付文書の必要な情報がぎゅっと詰まっているこの一冊はブランクから復帰するためにまず必要な一冊であると思っています。
●専門医の臨床解説が載っており適応外処方について勉強することができる。
●AG(オーソライズドジェネリック)が一目で分かるようになっている。
●Web電子版はスマートフォンでも閲覧可能。
ポケット医薬品集
先述の治療薬マニュアルは添付文書の情報が詰まっておりまず一冊手元に欲しい本ではありますが、2024年度版では分厚さが6センチ近くあり白衣のポケットにはまず入らない大きさです。
復職し、現場で活用したくても、調剤薬局や病院の調剤室はあまり広くないことが多く持ち込みづらい大きさです。
Web電子版はスマートフォンで閲覧可能ですが、私物スマートフォンの持ち込みが禁止されている職場もあると思いますし、患者さんから見える場所ではスマートフォンは操作しづらい場合が多いです。
そんな時におすすめしたい本が、ポケット医薬品集です。こちらも治療薬マニュアルと同じく、後発品を含むほぼすべての医療用医薬品が収載されており、添付文書に基づいた情報が主となっています。
厚さは2024年度版では3センチと、治療薬マニュアルの約半分の厚さであり、寸法も小さいため白衣のポケットに入る大きさです。
おすすめのポイントとしては、添付文書の情報だけでなく薬の作用のメカニズムや薬剤選択・薬物療法管理に必須となる医薬品情報を掲載しており、同種同効薬の比較もあるため添付文書にない情報まで得ることができます。
こちらも治療薬マニュアルと同じく辞書として使用される本ですが、ブランクがあり復職前に流し読みをしておくと知識の再確認やアップデートとなると思います。
個人的には、治療薬マニュアルかポケット医薬品集は両方ではなくどちらか一冊持っておけば良いと思います。
治療薬マニュアルは読みやすくWeb電子版があることが特徴であり、ポケット医薬品集は文字が小さく読みづらいですが添付文書+αの情報が収載されており白衣のポケットに入れて持ち運びやすいことが特徴です。
●厚さは3センチなので白衣のポケットに入る。
●薬の作用のメカニズムや薬剤選択・薬物療法管理に必須の情報が掲載されている。
●同種同効薬の比較もある。
絶対わかる抗菌薬はじめの一歩‐一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター
絶対わかる抗菌薬はじめの一歩‐一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター(羊土社)
抗菌薬の勉強をするならこの本がおすすめです。
抗菌薬は種類も多く組織移行性や適応菌種など覚えることが多く、私自身も正直苦手意識がある分野です。
抗菌薬を理解することは難しいですが、投与禁忌や耐性菌などの問題で代替薬をどれにするか医師から薬剤師に相談があったり、薬剤師の腕の見せ所が多い分野でもあります。
病院勤務の薬剤師であればICT(Infection Control Team:感染対策チーム)に参加する機会もあると思います。
ブランクがあり抗菌薬の使い方を忘れてしまった方はこの本で勉強することがおすすめです。
この本では細菌の種類を大きく分けて説明してあり、この菌による感染症ならこの抗菌薬が使える、などと標準的な使い方が記載されています。
合併症や感染部位、起炎菌から抗菌薬の選択ができるようになるため、単なる暗記ではなく抗菌薬を理解することができると思います。
●合併症や感染部位、起炎菌から抗菌薬の選択の理解が深まる。
●抗菌薬の使い方を網羅的に学習できる。
薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100
こちらの本は題名の通り薬の使い分けについて勉強することができる本です。
調剤薬局の薬剤師にも病院の薬剤師にも両方におすすめできます。
ブランクがある薬剤師だけでなく現役で働いている薬剤師が読んでも、今までなんとなく使ってきた同種同効薬の違いに気付くことができたり医師の処方意図を理解することができたりするため一度読んでみることをおすすめします。
文字ばかりでなく図も多いので読みやすく、薬効分類ごとに分けて記載されているため、隙間時間に少しずつ読むことができます。
実際に私も育児休暇中、子供が昼寝をしている時間などにこちらの本を読んで知識を増やしていました。
実際のエビデンスを照らし合わせて解説されており、その参考文献がきちんと記載されているので、安心して勉強することができる本です。
●文字ばかりでなく図も多く読みやすい。
●薬効分類ごとに分けて記載されているため、隙間時間に読める。
OTC医薬品の比較と使い分け
先述の薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100は調剤薬局や病院の薬剤師におすすめですが、こちらの本はOTC医薬品の使い分けを解説しており特にドラッグストアの薬剤師におすすめの本です。
調剤薬局や病院では医師や薬剤師が治療薬を決定するのに対し、ドラッグストアでは患者さん(お客さん)が自らOTC医薬品を選び、購入します。
ドラックストアの患者さん(お客さん)は医療の専門家ではないことがほとんどだと思われるため、薬剤師に質問することも多くあります。
患者さん(お客さん)の訴える症状を聴取しそれに対してより有効なOTC医薬品を選択するためにとても参考になる本です。
また、調剤薬局や病院の薬剤師はOTC医薬品を販売することは少ないですが、併用薬の確認などでOTC医薬品の名前を耳にすることもあると思います。
そのため、調剤薬局や病院の薬剤師が知っていても無駄にはならない知識だと思います。
こちらの本も先述の通り隙間時間に少しずつ読める構成になっており、ブランク中に手軽に知識を得ることができると思います。
実践で役立つ情報ばかりなので復職前に読むことがおすすめです。
●文字だけではなく図表も多く見やすい。
●ブランク明けの状態でもとても読みやすい。
10年、20年の薬剤師のブランクからの復帰にもおすすめできるアプリ
ここまでは、薬剤師としてのブランクがあって復職前の勉強におすすめの本をご紹介してきましたが、本以外にも今はアプリも充実しているためここからはアプリのご紹介もしていきます。
ファルマラボ
ファルマラボのアプリを起動するとユーザー登録の画面が出ますが、ユーザー登録をしなくても業界動向のコラムや薬剤師QUIZは利用可能です。
添付文書はこのあとご紹介するヤクチエ添付文書でも十分フォローできるため、ファルマラボは業界動向や薬剤師の業務で必要な知識の再確認用に利用するのがおすすめです。
また、ファルマラボのアプリを出しているファルマスタッフはブランク明けの求人にも力を入れているため、復帰を考えている方はファルマラボで勉強をしたあとにファルマスタッフなどのブランク明け歓迎の求人を多数取り扱っている転職エージェントを利用するとスムーズに復帰することができるでしょう。
ヤクチエ添付文書
このアプリのおすすめポイントは、迅速な検索機能とオフライン使用が可能な点です。
医療現場で必要な薬剤情報をすぐに確認できるため、時間をかけずに正確なデータを入手できるのが大きな魅力です。
また、処方時に便利な機能として、軟膏の重さやジェネリック医薬品の比較が簡単に行える点も素晴らしいです。
特に、ジェネリック医薬品の一覧表示や薬価の確認がスムーズにできるため、薬の選択がしやすくなっているのも嬉しいですね。
さらに、オフラインでも使用可能なため、ネット環境が不安定な状況でも利用できるのが便利なので、薬剤師のブランクがある期間での勉強に使用するだけではなく復帰後も仕事で役立つことでしょう。
端末間のお気に入り同期や病名での検索機能が追加されれば、さらに利便性が向上するので、今後はそのあたりのアップデートにも期待ですね!
ヤクチエ早見表
このアプリでは、薬剤師800人のポケットを大調査して業務によく使用する以下の早見表がまとめられています。
- ステロイド剤の強度一覧
- 糖尿病治療薬配合剤の成分一覧
- 降圧薬一覧
- 抗血小板薬・抗凝固薬の休薬期間一覧
- 後発品と適応が違う先発品の一覧
- 睡眠薬の効果の長さ一覧
- 吸入薬一覧
- 降圧薬配合剤の成分一覧
- 抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の眠気強度、運転可否一覧
先ほどご紹介したヤクチエ添付文書とも連携ができるため、ブランク明けで記憶に不安がある場合にはインストールしておくと精神的にも余裕が出てくると思うのでおすすめです!
10年、20年のブランクがあっても安心!復職歓迎の薬剤師求人に強い転職サイト
薬剤師としてのブランクがある場合には、復職歓迎の求人や研修制度が整っている求人に応募することをおすすめします。
求人によっては即戦力を求めているものもあるため、復職歓迎であることが分かりやすいように求人に記載されていたり、復職のマネジメント経験が豊富な転職エージェントを利用した方が復職の成功率もあがってきます。
そこで、復職の案件に強い転職エージェントをご紹介します。
ファルマスタッフ
ファルマスタッフは、ブランクあり歓迎の求人特集を組んでいたりと復職の求人についても力を入れています。
ファルマスタッフの求人検索画面の「フリーワード」の部分に「ブランク」や「復職」と入力をして検索をするとブランクアがある方も歓迎している求人を探すことができます。
上の画像では「ブランク」で検索をした結果を貼っていますが、求人が1,487件もあることが分かります。
その他にも、「希望条件を選ぶ」→「ブランク可」へチェックを入れることで求人を絞り込むこともできるのですが、個人的には上記のようにフリーワードで探す方が精度が高くておすすめです。
フリーワードで探しても近くの薬局がヒットしなかったら、「ブランク可」にチェックを入れて調べてみても良いと思います。
2024年9月時点では2万件以上ヒットしたので、かなり選択肢は広がるはずです。
特に案件名の中にしっかりと研修制度が充実していることが明記されている方が安心できます。
案件名にしっかりと書けるくらいのアピールポイントということなので、復職で少し不安という方にとっては特に良い環境である確率が高いです。
ヤクジョブ
ヤクジョブもブランクがある薬剤師の転職成功に向けてのコラムを投稿していたりと、復職支援に力を入れている転職エージェントの1つです。
トータルの掲載求人数も約5万件と業界最大級規模で特にドラッグストアの求人にも強みがあります。
ヤクジョブの求人検索の「こだわり条件」の中に「教育研修充実」というチェックがあるので、そちらにチェックを入れると研修が充実している求人を絞り込めます。
2024年9月時点では2万5,000件以上ヒットしたので、ヤクジョブでも教育研修が充実している求人の掲載数が多く良い求人を探しやすいと言えるでしょう!
ヤクジョブに登録をしてから検索をかけると非公開求人も見れるようになるため、なるべく登録をしてから求人検索をすることをおすすめします。
まとめ
以上、復職時におすすめの勉強方法についてをご紹介しました。
上記ではご紹介していませんでしたが、日経DIのサイトで勉強することもおすすめです!
私も産休・育休中にこまめにチェックしていたサイトです。薬剤師向けの、医薬品にまつわる最新情報を得ることができ、情報のスピードが早いです。
最近ではスギ薬局が調剤過誤を起こし糖尿病薬を混入させ提訴されたニュースがありましたが、ニュース番組や新聞で取り上げられるのとほぼ同時に日経DIのサイトでも記事がアップされていました。
休職中は薬の最新情報が手に入りにくいため、私はかなり重宝していました。
ブランク明けから復職されるのは不安が大きいと思います。私の主観になりますが、意外となんとかなるものです。
自信をもってひとつひとつ焦らず確認して仕事をしていると、すぐに感覚が蘇ると思います。
忘れてしまったことや休職中に変わってしまったことは勉強しなおしていけば問題ないです。復職を応援しています。