看護師からCRCへの転職はあり?業界の基礎知識もあわせてご紹介

最近、看護師さんから治験関連のお仕事への転職の相談を受ける機会が増えてきました。そこで、治験の基礎知識から治験関連の職種全般の簡単な特徴と業務内容等なるべく簡単な表現を意識しながらまとめてみました。

また、看護師から最も転職している実績が多いであろうCRCについては面接時のアピールポイントなども紹介をしていきたと思います。

私は製薬メーカー側の立場で仕事をしていますが、医療機関側の方の知り合いも多くいて、実際に一緒に仕事をしてきましたので、本記事も1つの考え方として参考にしていただければと思います。

治験の基礎知識

看護師さんから治験関連のお仕事への転職を考えるうえで、まずは医薬品開発がおおまかにどんな流れでおこなわれているのかを把握するところから始めていこうかと思います。

聞いた話にはなりますが、看護師から治験関連の職種に転職をする際に面接で治験について理解しているかを問われることもあるようです。

そのため、簡単にでも良いので、治験の仕組みについても知っておくと良いかと思います。

詳細については、後でしっかりと説明をしていきますので、まずはざっくりと“こんな感じなのかぁ~”程度に眺めてみて下さい。

医薬品開発の大まかな流れ

医薬品開発の大まかな流れの中で、治験はヒトに対して行う臨床試験のことを指します。

医薬品開発の流れの中で、治験薬をヒトに投与をして、用法・用量を決めたり、有効性や安全性を検証することを治験と言います。

ここで1点注意していただきたいのは、『治験』ということばの使い方。
よく世間一般では、“健康食品の治験”や“化粧品の治験”と言われていることがありますが、その使い方は誤りです。

臨床研究と臨床試験と治験の違い

治験は、承認を目的として、医薬品または医療機器の有効性や安全性等を調べることを言います。つまり、“治験”という言葉は、医薬品か医療機器に対してしか使われません。

健康食品で血圧が改善する効果を調べたり、化粧品で美白効果を調べたりするのは“臨床試験”になります。

ちなみに、治験にも臨床試験にも該当しない部分(臨床研究の青色だけの部分)には、例えば、カルテから過去の患者のデータを集めてきて解析をするような研究のことを指します。

細かいことを言えば、もっと色々あるのですが、とりあえずはこれくらいまでを知っておけば十分なのではないかと思います。(これ以上のことは、入社したあとの研修などでやるかと思います)

治験に関わる会社のお話

治験関連の転職先を探す時にまず始めに頭に浮かぶのは製薬メーカーかと思います。

ただ、製薬会社が未経験者可で募集をかけている職種はほとんど無いのが現状です。(派遣や契約社員ならあるかも?)

世間ではあまり認知されていないと思いますが、治験に関わる会社は製薬メーカーや医療機器メーカーだけではなく、CROやSMOといったカテゴリーの会社も治験に大きく関わっていて、看護師からの転職者も多くいる業種の会社になります。

CROやSMOはどんな仕事をしているのか、文字だけで説明をすると分かりにくいと思いますので、絵を使いながら見ていきましょう。

CROとSMOとメーカーと医療機関の関係

治験に関わる仕事は、すごく大雑把に分けるとメーカー側と医療機関側の2つに分けることができます。
そして、メーカー側には、CRO、医療機関側にはSMOという会社があり、治験に関わる仕事をする場合、この4つのうちのどこかに所属することになります。

もう少し詳しく見ていきましょう。

CROはメーカーから業務委託を受けている会社

新薬や医療機器を開発するのは、皆さんご存知の通り製薬メーカーや医療機器メーカーになります。

かつては、ほとんどのメーカーが自社のリソースで研究や治験をして上市までおこなっていました。

しかし、それを全て自社でやろうとすると多大なコストがかかってしまうため、最近では治験に関する業務を外部委託する流れになってきており、そのメーカーからの外部委託先がCRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関)となります。

つまり、CROはメーカー側の立場で仕事をしている会社ということになります。

SMOは医療機関から業務委託を受けている会社

製薬メーカーから業務委託を受けるのがCROに対して、医療機関から業務委託を受けるのがSMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)になります。

大学病院や一部の市中病院では、院内に治験管理室などの部署がありそこに所属しているスタッフで治験に関する業務をおこなっていますが、リソースが足りない大学病院、市中病院やクリニックでは、治験業務をSMOに委託をしています。

SMOは、医療機関側での立場で仕事をするので、看護師からの転職の場合、看護師の経験を最大限に活かせるSMOを選ぶ方が多い傾向にあります。

転職の相談をエージェントにしに行った場合もまず始めに勧められるのがSMOという方が多いかと思います。

ちなみに、EP綜合という会社やシミックヘルスケア・インスティテュートという会社がSMOというカテゴリーの会社になります。
両社は、SMOでも大手なので、SMOへの転職を考える際には1度は目にすることになるかと思います。

CROの仕事とSMOの仕事

ここまでで、治験についてのなんとなくの知識と治験に関わる立場として、メーカー・CRO・医療機関・SMOの4つがあるということは分かっていただけたかと思います。

ここからは、治験に関連する職種について、どんな業務内容でどのような雰囲気で仕事をしているのかを解説していきます。

治験に関わる各職種とその特徴

CRCの業務内容や求められる能力は?

CRC(Clinical Research Coordinator:治験コーディネーター)は、治験関連の職種の中で看護師のスキルを最も活かすことができる職種です。

医療機関側の立場でお仕事をすることになります。

医療機関の雰囲気などを知っており、看護師としてのスキルも活かせることから、看護師からの転職先の職種としては最もスタンダードと言えるのがこのCRCとなります。

転職エージェントに相談に行くとまずこのCRCを提案されるパターンが多いかと思います。

そして、CRCはCRCでも、病院のスタッフして勤務する院内CRCとSMOに所属をして勤務するCRCの2パターンがあります。

OLを目指して転職されるのであれば、SMOのCRCを選択することになります。

CRCについては、看護師からの転職も多いため、少し詳しく見ていきましょう。

業務内容

CRCは、ほとんどの時間を院内に設置されている治験管理室(クリニックの場合は、治験管理室が無い場合がほとんどなので、クリニックが用意した治験用のスペースや部屋)などで過ごすことになります。

仕事の内容は、大まかに以下のようなものとなります。

CRCの主な業務内容

医療スタッフの補助、質問対応
被験者対応
SDV対応
治験で必要になる資料の作成

治験の対応をされた方であれば分かるかと思いますが、各医療スタッフにとっては、治験というのは通常の業務+αの対応をしなければいけないことになります。

もちろん、治験開始時にはメーカー側の立場であるCRAから各医療スタッフ向けに治験の説明会を実施しますが、やはり各医療スタッフがその全てを覚えているわけではありません。

そこで登場するのがCRCです。

CRCは、治験の手順(どのような患者が対象か、併用禁止薬にはどのようなものがあるのか、臨検は何を測定するのかなど…)が決められている治験実施計画書というものを読み込み、医師や各医療スタッフから治験についての問い合わせが入った場合に対応をします。(もちろん分からないこともあるかと思うので、その場合はCRAに確認すればOKです)

具体的には、治験で使用する資材(スピッツ管などの検査資材、同意説明文書など)の準備であったり、治験薬の準備であったりをします。

また、もし医師が併用禁止薬を処方した場合には、医師への問い合わせもする場合があります。(治験では使用不可であることを医師に伝える。もちろん最終判断は医師)

また、被験者対応では、医師から治験について説明を受けた患者に対して、スケジューリングや治験独特の決まり事について被験者に補助的な説明をするのもCRCになります。

その他、治験のために収集したデータをPCへ入力をしたり、そのデータを確認するために訪問しているCRAの対応(日程調整やCRAからの質問事項の対応)をしたりするのが主な業務となります。

CRCはこのように、医師や看護師を始め、院内の薬剤科や検査科などとも関わる仕事であるため、看護師の経験がある方を優遇して採用する企業もあるのです。

文字で見ると『こんなこと本当に出来るのか…』と思うかもしれませんが、看護師から転職された方でも活躍されている方を多く見たことがありますので、そこはもう慣れだと思います。

働き方

深夜勤務はもちろんありません。

そして、タイミングにもよりますが、繁忙期でなければ残業も多い方ではありません。

被験者対応がある日は、被験者が来院する時間に合わせて治験の資材の準備をしたり、被験者の案内をしたりしますが、被験者が来院しないときは、オフィスに戻って働いている方も多くいます。(クリニックや病院に常駐して勤務されている方や、いくつかの医療機関を移動しながら働いている方もいます)

医療機関への訪問時は直帰できることも多くあると聞くので、看護師時代よりはフリーダムな働き方をしている方が多い印象です。

求められる能力

治験に参加している被験者への同意説明の補助であったり、治験のための来院時には一緒に診察室に入ったりと被験者ととても近い位置で仕事をすることになります。

「治験」というと、一般ではまだ馴染みが無い方もいて、治験参加中は被験者が様々な不安を抱えることもあるでしょう。

そんな被験者に寄り添い不安を解消したり、適切な接し方をする必要があり、その点で求められる能力は看護師と被る部分があるかと思います。

面接時にアピールするとしたら、看護師時代に実際に患者にどのように接していたのか、どのような工夫をしていたのかなどをお話してみるのも良いのではないでしょうか。

また、治験では医師を始め、検査部、薬剤部、看護部など様々な人や部門と関わることになるので、折衝力が必要となります。

治験の手順は面倒なものも多く、現場スタッフからすれば正直面倒に思われることが多くあります。それでも治験なので、やってもらうしかありません。

CRCからお話をしてもなかなか聞いてくれないときは、医師から各現場スタッフにお話ししてもらうという方法を取られている方もいるようです。

その他、CRCになると、色々なメーカーの治験の対応をしなければならず、治験1つ1つにはしっかりとした手順や決まり事が定められています。

特に治験に患者をエントリーする際には、その患者が治験にエントリーして問題無いかどうかをCRCもチェックする必要があります。

例えば、「過去3年以内に重篤な肝機能障害の既往がある患者」を除外しなければいけないと設定されていたら、過去3年分のカルテを見て“重篤な肝機能障害”と思われるような記載があったら、医師に確認をする必要があります。

もちろん、それは医師がしっかりと把握して、そのような患者を組み入れないようにしなければいけないのですが、実際には医師も忘れてしまっていることがあるので、もし“重篤な肝機能障害”の既往があると思われる患者さんが治験にエントリーされそうになったら、CRCからも確認をする必要が出てきます。

また、患者が治験に参加したあとは、製薬メーカー側の立場にいるCRAが医療機関に訪問をして、適切な患者をしっかりと組み入れているかの確認に来ますので、そこで何かを聞かれたら予め医師に確認した内容をCRAに伝えることになります。
(もし聞かれたことが分からなくても、あとで医師に確認をしたり、CRAからの直接医師に確認してもらうことも出来るので大丈夫です)

以上のことから、CRCには、治験実施計画書に記載されている内容を理解するための能力なども必要となるでしょう。(始めは分からないのは当然で、理解力というより理解しようとする力の方が大切かもしれません)

CRCに求められるスキルの一例

コミュニケーション能力
折衝力
理解力/理解しようとする力

SMA

SMA(Site Management Associate:治験事務局担当者)とは、治験を実施するうえで発生する様々資料の作成、保管・管理などをおこなうお仕事です。立場としては、医療機関側の立場でお仕事をすることになります。

SMOの場合、CRCは医療機関で仕事をすることが多いのですが、SMAはオフィスで仕事をすることが多く、内勤業務がメインとなります。

SMOによっては、治験関連資料の管理以外にも、各医療機関に訪問をして、営業的なお仕事を兼務することもあるようです。

オフィスでの仕事がメインになるため、医療機関スタッフとはあまり接する機会が無く、“看護師としてのスキルを最大限に活かす”という意味では、あまり親和性が無いと思われます。

IRB事務局

医療機関で治験を実施するには、IRB(Institutional Review Board:治験審査委員会)で審査され承認をもらう必要があります。

また、治験を開始する時だけではなく、治験実施中も安全性情報に関連した情報や手続き上の変更などについて継続的に審議がされます。

IRB事務局は、審議資料を取りまとめたり、IRBの内容の議事録を書いたりなどの仕事になり、基本的には内勤業務がメインとなります。

場合によっては、SMAと兼任しているところもあるようです。

CRA

CRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)とは、治験実施施設で治験が適切に実施されているかをモニタリングする仕事になります。

立場としては、製薬メーカー側の立場になります。

CRCと同じく外で仕事をすることも多いのですが、CRCとの大きな違いはその移動範囲です。

CRAは、全国各地の医療機関を訪問して、仕事をしますが、CRCの場合は、基本的には各地域にある支社に所属し、その支社がカバーしている範囲内の医療機関での業務となります。

CRAは、CROに所属するCRAとメーカーに所属するCRAがいますが、看護師からCRAになる場合は、ほとんどがCROに所属するCRAになる場合がほとんどです。

メーカーのCRAの場合は、未経験者の中途採用は皆無で、CROの場合は、最近やや少なくなってきた印象もありますが、未経験者からの転職も受け入れもあります。

SMOは様々な都市に支社がある一方、CROは東京、大阪などを拠点にしてそこから全国に飛び立つとイメージになります。

CRAに必要な能力は色々とあるのですが、看護師が特に強みを発揮するのは、コミュニケーション能力の部分かと思います。

CRAは医療機関に訪問し、治験についての疑義事項については医師に確認する場面が出てきます。看護師であれば、医師とのコミュニケーション方法も知っているため、そのような能力がCRAでは活かすことができます。

CRAも看護師からの転職者がそれなりにいる職種になるので、転職先の候補の1つになるかと思います。

安全性情報担当者、DM

安全性情報担当者は、治験や市販後調査で収集された副作用情報について取りまとめるお仕事で、DM(Data Management)は治験で使用するシステムの構築や運用などをするお仕事になります。

いずれもメーカーサイドの内勤業務がメインで、未経験者を募集していることもありますが、看護師のスキルを活かすという意味ではあまり親和性が無い職種かと思います。

”メーカーサイドで治験に関わる仕事をしたい“ということであればチャレンジしてみるのも良いかと思います。

MR・MSL

MR(Medical Representatives:医薬情報担当者)とMSL(Medical Science Liaison:メディカルサイエンスリエゾン)などは、製薬メーカーに所属しており、治験とは関係が無い職種になります。(細かいことを言えば関係ありますが、ほとんど関係ないくらいに思っておいてもらってOKです)

凄く大雑把に言うと、MRは医薬品の営業、MSLは臨床研究のサポートや医師への医療知識の情報提供(論文情報等)をするお仕事になります。

いずれも医師とのコミュニケーションが必須なので、未経験者の募集がある際には看護師から転職される場合も極僅かですがあります。(私の知る限り2人だけ…)

可能性として0ではないので、ここには書きましたが、看護師からMR、MSLというキャリアを選択される方もいないことはないといった感じでしょうか。

まとめ

このように治験に関わる職種について色々と見てきましたが、やはり看護師からはCRCの道を選ばれる方がかなり多く感じます。

現実的には、CRCかCRAかといった感じになるでしょう。

今回の記事では、転職サイトを見てみて、未経験でも募集をしていた治験関連の仕事をピックアップして紹介していきましたが、実際には治験に関わる仕事は今回紹介した以外にも多くあります。

ただ、ほとんどの職種はCRCまたはCRAの業務経験が条件となっていたので、これから治験の業界で働いていこうという看護師の方にとっては、CRCやCRAが登竜門的位置付けになっていると言えるのでしょうね。